onちゃん音頭
| ジャンル | 盆踊り調の楽曲 |
|---|---|
| 制作主体 | 北海道テレビ放送音楽制作室 |
| 対象キャラクター | |
| 作詞(架空) | 札幌市在住の音頭研究家・笹川一徹 |
| 作曲(架空) | バンド『北極星サーカス』の上原マサキ |
| スーツアクター | |
| 振付 | ・ |
| 初回放送日 | 7月 |
| 収録媒体(架空) | 『HTB夏の音頭大全集』 |
(おんちゃんおんど)は、(HTB)のマスコットキャラクターのために制作された楽曲である。歌唱は劇中の音頭風にアレンジされ、夏祭りの振付として全国的に広まったとされる[1]。
概要[編集]
は、夏期の地域キャンペーンにおける“動くマスコット”施策の一環として生み出された楽曲である。HTBのスタジオで録音された歌声は、実演時にスーツの動きへ同期させることを前提にテンポが調整されたとされる[1]。
成立のきっかけは、HTBが内の商店街連携企画で着ぐるみ出演を増やしたところ、観客が歌詞よりも「腕の角度」「足の出るタイミング」を目で追ってしまう現象が報告されたことである。そこで制作陣は、音頭を単なるBGMではなく振付の“計時装置”として設計したと説明される[2]。なお振付はとが担当し、観客の身体感覚に合わせて“二拍遅れ”が意図的に仕込まれたという[3]。
番組内ではが盆踊りの円陣を作る演出が反復され、視聴者投稿の動画が集計されていった。結果として、楽曲は放送枠を越え、地域の学校行事や企業の納涼会にも持ち込まれたとされるが、いくつかの地域では歌詞の解釈が揺れ、後述のように論争も発生した[4]。
制作背景[編集]
制作は、HTBのが中心となり、札幌の大道芸チームや舞台振付家から助言を受けたとされる。とくに、着ぐるみが回転する際の慣性を考慮し、ドラムの1小節目が「人間の視線が追いつく速度」に合わせて設計されたと記録されている[5]。
また、がonちゃんのスーツアクターとして抜擢された経緯は、運動量の推定に基づく“安全寄りのオーディション”だったとされる。具体的には、振付練習の初日における衣装重量が想定より増えたため、汗の吸収と通気の両立が必要になり、結果として動作の安定性が高い人物が選ばれたという[6]。
当時の関係者メモでは、テンポ設定が「1分あたりの足拍数」から逆算されたと記されている。ここでいう足拍数は、通常の盆踊りよりも細かいを基準にし、サビ前のブレスが平均遅れる設計だったと説明される[7]。さらに、カウント用の掛け声が“視聴者の拍手”に近づくよう、母音の響きをわずかに丸めているとされる[8]。
このようにして、楽曲は「踊れる歌」ではなく「踊らせるための音響プロトコル」として語られるようになった。一方で、音頭研究家のは「音頭は本来、土地の方言が混ざって完成するもの」であり、テレビ制作側の都合が強い場合にはねじれが生じると指摘したという[9]。
楽曲の構造と振付[編集]
楽曲は大きく分けて、導入(呼び込み)・中盤(手踊り)・転調(囃子の高揚)・締め(輪踊り)の4要素で構成されたとされる。公式資料では、導入部がで完結する点が特徴として挙げられている[10]。
振付はとが監修したとされ、手の開き角度が“見た目の健康度”に直結するという発想から設計されたと説明される。特に有名なのが「右手を胸の高さから肩のラインまで上げ、最後の一瞬だけ停止する」振りである。この停止がのスーツの“首振り”と干渉し、観客が思わず合わせてしまう効果が狙われたという[11]。
さらに、音頭特有の囃子は、通常の三味線・太鼓の想定ではなく、スタジオ収録用に低域を厚くする方向で調整されたとされる。結果として、携帯端末の再生環境でも音の立ち上がりが残るよう、のコンプレッションが採用されたと記述される[12]。ただし、録音エンジニアは後年になって「その数値は現場のメモが先走ったもので、厳密には別テーブルだった」とも述べており、資料の揺れが見られる[13]。
締めの輪踊りでは、onちゃんが回転しながら円の中心へ“戻る”動作が必須とされた。視聴者が真似しやすいように、戻るタイミングは小節ではなく“拍の裏”に合わせる設計になっていたとされる[14]。この細部は、動画投稿が増えるにつれて模倣精度が上がり、地域差が“個性”として可視化される要因になったとされる。
放送・普及の経路[編集]
7月、HTBの特番枠で初披露されたとされる。番組では、道内の商店街と中継を結び、onちゃんがメインストリート中央で旋回しながら音頭を開始する演出が組まれた[15]。
普及は、楽曲の同一性が担保されていた点に加え、視聴者参加型の仕組みが用意されたことで加速したとされる。すなわち、各回の放送後に“振り返しテロップ”が配信され、学校の体育授業や町内会の集会で再現しやすいように、動作が単位で切り出されていった[16]。
その結果、道内の複数自治体が、行事名に音頭を組み込むようになった。たとえばの「港まつり」では、締めのタイミングだけが独自に早まり、転調部が“合唱の呼吸”に変換されたと報告されている[17]。
一方で、放送波の届きやすさは地域差を生んだ。北海道から本州へ動画が転載される際、テンポ指示が字幕化されていない場面では、視聴者が独自解釈で拍を前倒しにしてしまったとされる。この“ズレ”が結果的に「地域オリジナル版」として認知されるようになり、楽曲は単一の作品から“更新される伝承”のように見られるに至った[18]。
批判と論争[編集]
批判は主に、テレビ制作由来の振付が“伝統の音頭”を上書きしてしまうのではないか、という点に集約された。民俗音楽の研究者は、音頭は本来、共同体の声が混ざって成立するものであり、放送局がテンポを固定すると地域の個性が薄まると指摘したという[19]。
また、歌詞の中に含まれるとされる象徴表現が、当時の世相と結び付けて解釈されることがあった。ある匿名掲示板では「締めの一言が政治的スローガンに似ている」と主張され、HTBには問い合わせが相次いだとされる。ただしHTB側は「歌詞は祭りの所作説明として作られた」と反論したと報じられ、公式側と非公式側の解釈が並走した[20]。
さらに、onちゃんのスーツアクターであるの参加が話題となり、「身体表現が過剰に職能化され、誰でも踊れる音頭ではなくなったのではないか」という意見も出た[21]。この批判に対し、振付のは「誰でもできる“間”を残すことが目的だった」と述べたと伝えられるが、関係者の証言には温度差があったとされる[22]。
もっとも、最終的には批判も含めて楽曲の“知名度”を押し上げた側面があり、炎上が広報に転じたとする見方もある。実際、問い合わせ件数は初回放送の翌月に前年同時期比でに達したと、HTBの内部資料に記されている[23]。この数値は出典が明示されていないものの、番組担当者の回顧録では「たぶん合っている」と曖昧に肯定されたため、真偽をめぐって再び議論が起きた。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北村セイジ『テレビ音頭の設計思想:視聴者参加型フォーマットの検証』北海道テレビ放送出版部, 2012.
- ^ 佐藤マリア『公共放送におけるマスコット運用の変遷(第◯巻第◯号)』放送文化研究会, 2013. pp. 41-58.
- ^ Yoshida, Haruto. “Synchronization Mechanics in Mass-Mascot Choreography.” Journal of Broadcast Choreology, Vol. 7, No. 2, 2014. pp. 101-119.
- ^ 松本ユウ『音頭の“拍”は誰のものか:固定テンポ論争の系譜』音響民俗学会, 2015. pp. 23-39.
- ^ 田端キヨミ『着ぐるみパフォーマンス安全学:回転・視界・疲労の数値化』北海道衛生工学協会, 2016. pp. 77-92.
- ^ 森脇レン『地域映像アーカイブと振付の再利用』メディア史叢書, 2017. 第3巻第1号, pp. 12-30.
- ^ Carter, Elowen. “On-Channel Ondo: A Study of Audience Timing.” International Review of Festival Media, Vol. 12, Issue 4, 2018. pp. 55-73.
- ^ 小笠原フミ『HTB夏の音頭大全集(解説編)』HTBメディア・ブックセンター, 2011.
- ^ 伊丹コウ『音頭研究入門(新版)』東北民謡普及社, 2010.(ただし第2章の参照は誤記があるとされる)
外部リンク
- HTB公式音頭アーカイブ
- onちゃん振付練習室
- 北海道夏祭り映像ライブラリ
- 音頭拍研究会(非公式)
- スーツアクター動作データベース