oshic.co
| 名称 | oshic.co |
|---|---|
| 読み | おしっくどっとこ |
| 種別 | 応援文面可視化サービス |
| 提供開始 | 2014年 |
| 開発者 | 小林志央、松井カナエ |
| 運営会社 | 株式会社Oshic Coordinate Lab |
| 対応言語 | 日本語、英語、韓国語、絵文字記法 |
| 主要機能 | 推し語録、熱量指数、現場地図、儀礼文自動整形 |
| 本社所在地 | 東京都渋谷区神南二丁目 |
| 現状 | 限定運用 |
oshic.coは、発祥とされる、応援文面の収集・可視化を目的とした擬似的である。もともとはに個人の推し活記録を整理するために作られた簡易掲示システムであったが、のちにの外郭団体による「感情アーカイブ実証事業」に採用されたとされる[1]。
概要[編集]
oshic.coは、利用者が特定の対象に対して投稿した応援文、感想、現場報告を収集し、時系列と感情強度に応じて整理するサービスである。一般には向けのツールとして説明されることが多いが、初期設計ではむしろの調査補助を目的としていたとされる[2]。
名称は「oshi culture」を短縮したものと説明されることがあるが、創業者の小林志央は別のインタビューで「押し入れの中で考えた」と述べており、由来が二転三転している。この曖昧さが、逆にコミュニティ内での神話化を促したとされる[3]。
歴史[編集]
前史:推しメモ帳時代[編集]
起点は頃、のライブハウスで配布されていた手書きの「推しメモ帳」にあるとされる。これは来場者が出演者ごとに3行まで感想を書き込み、出口で回収箱に投じるという単純な仕組みで、1公演あたり平均84枚が集まったという記録が残る[4]。
当時の回収担当だった松井カナエは、紙の束を分類する作業に1晩で6時間を要し、指の腹がインクで青く染まったことから「感情は集めるだけではなく、並べ替えなければならない」と考えたという。これが後のoshic.coの検索機能の原型になったとされる。
初期開発と公開[編集]
、小林志央はの共同住宅の一室で、当初は個人向けのメモ管理ツールとしてoshic.coを公開した。初版はRuby on Rails製で、同時アクセスは最大17人程度であったが、夜間の更新時に推し語録の語尾だけが自動で丁寧語になる不具合があり、かえって好評を得たという。
同年11月、で行われた小規模オタク系勉強会で機能紹介が行われ、参加者の1人が「これは感情のである」と評したことで話題になった。この比喩が独り歩きし、以後oshic.coは「応援の版管理」を行うシステムとして紹介されるようになった。
制度化と社会実装[編集]
には、の委託研究「都市的熱量の可視化」に採択され、イベント会場周辺の投稿を地図上に集積する「現場地図」機能が追加された。導入初月だけで都内37会場、推定2万8,400件の投稿が解析され、うち14%が開演前の天候への言及で占められていた[5]。
この時期、の一部区では「深夜に感情が集中する地点の把握」に利用できるとして、地域イベント計画に参照されたとされる。ただし、実際には担当職員の多くが使い方を理解できず、画面上のハートマークを防災アイコンと誤認していたという。
機能[編集]
推し語録[編集]
oshic.coの中心機能は、ユーザーが投稿した文章を「推し語録」として保存し、同一対象への感情の揺れを可視化する点にある。たとえば「今日の照明が青すぎて無理」は、翌日には「青すぎて救済」と再分類され、その変化幅が自動で7段階の熱量指数に変換される。
この指数はの統計分類を半ば冗談で模したもので、1,000字以上の長文感想に「遠征疲労補正」が加算されるなど、妙に細かい仕様が知られている。
現場地図[編集]
現場地図は、投稿位置情報とイベント会場を重ね合わせることで、どの駅出口に何人の利用者が溜まりやすいかを示す機能である。最も熱い地点はしばしば南口から徒歩4分の路地裏とされ、2019年の夏には1日で312件の「ここにいる」投稿が集中した。
一方で、会場とは無関係なやが突然「精神的現場」として赤く表示される現象があり、これはアルゴリズムがユーザーの記憶を推定しすぎたためだと説明されている。
儀礼文自動整形[編集]
利用者が送信した文章は、敬語、略語、顔文字、改行位置を解析したうえで、コミュニティの文体規範に沿って整形される。これにより、乱暴な投稿であっても最終的には「本日のご出演、誠にありがとうございました」へと収束する。
ただし、2018年9月の更新後、文末の「!」が過剰に増殖する障害が発生し、最大で84連続の感嘆符を含む告知文が生成された。運営はこれを「熱量の可視化に成功した例」として半ば黙認した。
受容[編集]
oshic.coは、、、、さらには地方の博物館まで、応援文の蓄積が必要な現場で緩やかに採用された。特にの小劇場圏では、来場者が書いた感想を翌日の公演運営に反映できるとして重宝され、ある劇団では演出変更の38%がoshic.co由来だったとされる[6]。
一方、一般利用者の間では「自分の感情が正規化される」との不安も広がった。とりわけ、推し対象を複数持つ利用者のアカウントでは、語録同士が相互干渉して「誰を応援しているのか分からなくなる」現象が報告されており、これがかえって推し活の現実に近いとして支持を集めた。
批判と論争[編集]
oshic.coに対する最大の批判は、感情を数値化しすぎることである。熱量指数や現場密度の指標が独り歩きし、特定の投稿が「熱すぎる」として自動的に折りたたまれる仕様については、表現の圧縮だという指摘がある[7]。
また、には海外のファンコミュニティ向け機能において、絵文字の解釈精度が暴走し、「🙏」が謝罪ではなく「次回も必ず来る」という誓約として固定化される騒動が起きた。運営はこれを国際化の過程で生じる文化差だと説明したが、利用者の一部は「宗教儀礼との境界が曖昧である」として一斉に退会したという。
歴史的意義[編集]
oshic.coの意義は、応援という極めて個人的な行為を、検索・地図・統計の形式で再構成した点にある。これはにおける即時性と、古い文化に見られる記録癖を接続した試みであり、のちの「感情ログ」分野に大きな影響を与えたとされる。
また、研究者の一部は、oshic.coの登場によって「好き」という語が単なる感情表現ではなく、共有可能なデータ形式へと変化したと論じている。もっとも、創業者本人はこの評価に対して「ただの検索フォームです」と述べたと伝えられる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 小林志央『応援文面の地図化に関する基礎研究』株式会社Oshic Coordinate Lab, 2016.
- ^ 松井カナエ『現場地図と都市感情の可視化』文化交流記録機構紀要, Vol.8, 第2号, 2018, pp. 41-67.
- ^ H. S. Bennett, "Textual Affection and the Architecture of Fan Logs," Journal of Digital Folklore, Vol.12, No.4, 2019, pp. 203-229.
- ^ 渡辺精一郎『推し語録の社会学的分類』東京未来出版, 2020.
- ^ Aiko Maruyama, "The Rise of Emotion-Indexing Platforms in East Asia," Media & Society Review, Vol.19, No.1, 2021, pp. 15-38.
- ^ 公益財団法人 文化交流記録機構『都市的熱量の可視化 中間報告書』同機構出版部, 2017.
- ^ 佐藤絵里子『絵文字記法と共同体規範』新曜社, 2022.
- ^ T. K. Hargreaves, "Coordinate Systems for Devotion," Proceedings of the 14th International Symposium on Applied Fandom Studies, 2020, pp. 88-96.
- ^ 中村百合子『感情ログの設計思想』丸善プレス, 2023.
- ^ 松井カナエ『推し押入れ論』渋谷学術センター叢書, 2015.
外部リンク
- oshic.co 公式アーカイブ
- 感情アーカイブ研究所
- 推し語録保存館
- 都市熱量地図センター
- 渋谷ファンカルチャー資料室