pennf
| 別名 | Pennf索引規約 / Pennf運用草案 |
|---|---|
| 分野 | 目録学・台帳暗号・情報管理 |
| 成立時期 | 1960年代末〜1970年代初頭 |
| 主な利用先 | 関連アーカイブ・の自治台帳 |
| 関連技術 | 採番規則、照合ハッシュ、照応参照(クロスリファレンス) |
| 特徴 | 一見すると符号体系だが、実態は「運用の作法」を含む |
| 論争点 | 略号が何の頭文字かが資料ごとに揺れる |
pennf(ぺんえぬえふ)は、暗号史の資料整理で用いられたとされる略号である。主にの目録改革計画や、分散台帳の採番規則に関連して語られてきた[1]。もっとも、運用実態は省庁文書の裏面にも断片的に現れ、真偽をめぐって議論が続いている[2]。
概要[編集]
pennfは、図書館の目録と台帳システムを接続するための規約(rule set)として扱われることが多い[1]。具体的には、同一著者・同一版の識別を「形式の一致」ではなく「参照の収束」によって行う思想が特徴とされる。
もっとも、pennfが最初から暗号技術を目的としていたのか、あるいは紙のカード目録の破損を減らすための便法だったのかは定かでない[2]。この曖昧さが、後の研究者に「一種の文化的符号」としての意味を与えることになったと推定されている。
初期資料の断片では、pennfはペンシルバニア大学(通称ペン大)周辺の「資料の混流」を止める運用語として記録されている[3]。一方で、同名の運用草案がベルリンの官僚向け研修資料にも現れるため、少なくとも“同じ発想の別物”が複数存在した可能性が指摘されている[4]。
成立と発展[編集]
「目録の渋滞」が招いたpennf[編集]
pennfが必要になった背景は、の大型改訂計画に求められるとされる。当時の資料センターでは、カード目録の更新が月次から日次へと拡大したものの、現場は「差し替え渋滞」に疲弊していた[5]。その解決策として持ち出されたのが、カードを直接並べ替えるのではなく、参照番号の収束を先に作っておく方式だった。
ここで参照番号の規則が、略号であるpennfとしてまとめられたとされる。ただし、規則書の表紙には「Penn — filing, numbering, next-fix(仮)」のような注記があった一方で、別冊には「Penn — file, numbering, nudge-forget(仮)」と書かれており、pennfの由来が揺れている[6]。この揺れが、後に「定義より運用」を重視する思想へ接続されたと推定される。
なお、最初の試験導入はフィラデルフィアの地下倉庫(空調が一定でなかったため、紙の伸縮が問題になっていた)で行われ、対象箱数は「正確に1,237箱」と記録されている[7]。箱の“正確さ”が後世の検証を逃げ道にしたとされるが、同規則はなぜかこの箱数に依存する形で「照合の手順書」が整備されたとも語られている[8]。
自治台帳への波及と、架空の成功指標[編集]
1970年代初頭、pennfは目録改革から自治台帳へと波及したとされる。特にの区役所では、住所変更と住民票の更新が同時に遅れ、職員が「似た住所」を暫定的に同一視していた[9]。そこで、pennfの“参照収束”の考え方が、住所の形式ではなく参照履歴の整合で処理する手順として採用された。
このとき作られた成功指標が奇妙に具体的で、「翌四半期の差戻し率を—0.0042(パーセントポイントではなく指数)まで下げる」ことが掲げられた[10]。指数の意味は資料によって異なるが、現場の回覧では「差戻しは“戻りきる前に見つける”」と説明されていたという。
ただし、この自治台帳への導入は、後に側の請求書様式と衝突し、参照が二重に収束する“ねじれ事象”が報告された[11]。そのため、pennfは「規則そのもの」ではなく「規則の使い方」を管理する枠組みとして再定義され、さらに専門研修のカリキュラムに組み込まれていったと考えられている[12]。
国際展開:ベルリン研修と“同名別物”説[編集]
pennfは米国での運用から、欧州の官僚研修へと輸入されたともされる。1974年にベルリンで開かれた「台帳整序・演習」では、pennfという略号が“同一”として教えられたが、研修資料の付録には「Nが何を意味するか未確認」と明記されていた[13]。
この点が、pennfを単なる符号ではなく、組織が自分たちの作法を正当化するための“ラベル”と見る説を生んだ。つまりpennfは、理念を隠すための記号だった可能性があるとされる[14]。
一方で、目録研究の側からは反論があり、スイスの工学系アーカイブ(ローザンヌ)で行われた“照合の自動化”実験では、pennf規約の書式が実際にハッシュ関数の入力順と一致したと報告されている[15]。ただし、その報告書の署名欄には別人の職名が併記されていたため、編集の過程で混入があったのではないかと指摘されている[16]。
運用の実像:pennfにまつわる細部[編集]
pennf運用では、最初に「参照番号を作る者」と「参照番号の妥当性を確かめる者」を分ける手順が重視された[17]。この分業は、単なるセキュリティ対策ではなく、誤りが“収束の向き”を誤るのを防ぐためだと説明されたという。
実務の細則として有名なのが、「照合は常に“左から三階層目”を見る」という合言葉である[18]。三階層目の意味は資料により異なるが、目録では階層が、台帳では部門—区—担当者に相当するとされる。この揺れのせいで、pennfを学術的に追うほど迷子になる構造が生まれた。
また、pennfの実装草案では“物理の癖”への配慮が異様に細かい。「紙が湿った場合は、照合表を—8.3度の部屋に48分置いてから確認する」といった記述があり[19]、現場で本当に温度管理が行われたのかは不明とされる。ただし同規約は、確認手順の心理的負荷を減らす目的で書かれたのではないかと解釈する研究者もいる[20]。
さらに、pennfは“書式の冗長性”を好んだ。たとえば参照番号の末尾にチェック用の文字を必ず付けるのだが、その文字が同じでも位置だけが変わるケースがあり、これを「気づきの差」と呼んだとも伝えられる[21]。皮肉にも、こうした癖が後の移行(別規格への乗り換え)の妨げになったとされる。
批判と論争[編集]
pennfは、当初から「暗号っぽい言葉を使っただけではないか」という批判を受けた[22]。実際、略号の展開(pennfが何の略か)には複数説があり、統一された出典が提示されていない。Wikipedia風の編集環境では「要出典」相当の扱いを受けやすい領域だとも言及される[23]。
一方で擁護派は、pennfが“暗号”と呼ばれるのは、計算のためというより「運用における責任分界を暗号化した」からだと主張する[24]。つまり、pennfを巡る議論は技術論争というより、組織論争だったというわけである。
もっとも、最大の論争は“成果指標の作法”にある。自治台帳で掲げられた—0.0042の指数について、後年の監査では測定方法が不透明だとされ、数字だけが一人歩きした可能性が指摘された[25]。その結果、pennfは「数値目標を現場が守るための方便」と見なされ、研修から段階的に外される動きがあった[26]。
なお、この削除の過程でpennfの周辺文書が一部、ワシントンD.C.の行政文書庫ではなく、民間の“目録復元ベンダ”へ流れた可能性があるとも報じられた[27]。ただし報道は裏付けが薄く、真相は資料の取り違えだとする説もある[28]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ M. Thornton『Card Index Traffic: Filing, Numbering, and the Pennf Method』University of Pennsylvania Press, 1979.
- ^ E. K. Müller『Quasi-Encrypted Cataloging: Administration Training in Berlin (1974)』De Gruyter, 1981.
- ^ 渡辺精一郎『参照収束の思想とその運用史』日本図書館協会, 1986.
- ^ R. H. Calder『Municipal Reconciliation Metrics and the -0.0042 Index』Journal of Civic Data, Vol.12, No.3, 1983.
- ^ S. Iwasaki『湿度と照合表:実務の温度管理が生む規約』情報管理研究, 第5巻第2号, 1991.
- ^ A. Dubois『Cross-Reference Convergence in Library Systems』Springer, 1996.
- ^ J. Patel『On N as Unverified: The Problem of Pennf Expansion』Proceedings of the Archivist Computing Workshop, pp.41-58, 2002.
- ^ T. Nakamura『番号は嘘をつくか:pennf周縁文書の編纂過程』学術情報学会誌, 第9巻第1号, 2008.
- ^ L. Thompson『Index Resurrection and the Lost Boxes (1237)』Cambridge Catalog Studies, Vol.2, No.1, pp.9-27, 2014.
- ^ K. Erikson『The Convergent Left-Third Rule in Real-World Audits』Oxford Administrative Technology Review, pp.201-219, 2010.
外部リンク
- Pennf資料室
- 目録整序アーカイブ
- 台帳整合性研究会
- ベルリン研修フォーラム
- 差戻し指数観測所