wojuine
| 分野 | 多感覚コミュニケーション |
|---|---|
| 主な利用領域 | 交通管制・非常時連絡 |
| 考案とされる主体 | 伏井音響研究会(FUR) |
| 初期記録 | 1974年(私信資料) |
| 中核方式 | 周波数—香味対応表(F-C対応) |
| 標準化の試み | 1986年から複数案が並立 |
| 関連語 | vojuine / voiruine / 味鳴号 |
wojuine(ヴォイュイン、英: Vojouine)は、とを結びつけたとされる多感覚通信プロトコルである。特にの制御室で試験運用されたことで知られている[1]。
概要[編集]
wojuineは、音(特定の周波数帯)を“味のような感覚”へ変換する符号化体系として、の内部資料で説明されたとされる概念である[1]。外見上は「聴覚フィードバック付きの通報手順」に見えるが、実際には「受信者の身体感覚を制御する」ことを目的にしていたとされる。
一見するとSF的な多感覚表現であるが、成立経緯としてはの混雑時における聞き間違い・見落としを減らす要求から生まれたと説明されている。特に東京都の夜間工事現場では、警報音が環境騒音に埋もれやすいことが問題視され、音に“味の印象”を付けることで弁別を強化できる可能性が検討されたとされる[2]。
仕組み[編集]
F-C対応表(周波数—香味対応)[編集]
wojuineの中核は(F-C対応)であるとされる。表では、周波数帯ごとに「舌先が冷える」「苦味が立つ」「後味が金属っぽい」などの“擬似味”が割り当てられたと記述されている[3]。この割当は、実験参加者の主観報告を統計処理して作られたとされ、報告書では「各被験者の感覚偏差をσ=0.7以内に収束させた」等の値が記されている[3]。
ただし、表は最終版が一本化されたわけではなく、当初の草案では同じ周波数帯に対して「バニラ寄り」と「醤油寄り」の二系統が併記されていたとも伝えられている[4]。このため、運用では“味の気分”ではなく“選択肢の勝率”を主指標にする方針が取られたとされる。
味鳴号(あじめいごう)の生成[編集]
符号化されたメッセージは、音声信号を複素包絡で成形し、受信側では小型の導入器で“感覚の立ち上がり時刻”を揃える方式が採用されたとされる。ここで生成されるのが味鳴号と呼ばれる出力であり、「到達から0.18秒以内に“危険/注意/確認”の分類を促す」ことが目標値として提示されたとされる[5]。
味鳴号は単純なビープではなく、同じ警報でも“安心の味”に寄った波形設計と、“焦げの味”に寄った波形設計が用意されていたと記録されている。なお、この区別は現場では「食欲型」「消毒型」と俗称され、訓練マニュアルにもそのまま残されたとされる[6]。
歴史[編集]
起源:1970年代の“騒音裁判”[編集]
wojuineの起源は、1970年代前半に港区の地下工事で発生したとされる誤連絡事件に遡ると説明されている。工事は22時から24時までの予定だったが、現場の無線が二系統に分岐し、監督員が「避難」と「復旧」を取り違えたとされる[7]。
その後、の臨時調査委員会は「音の周波数分布を騒音の分布から切り離すだけでは限界がある」と結論づけ、さらに“聞き間違いを感覚の不快度で自己訂正させる”案を検討したとされる[7]。このとき、伏井音響研究会の研究者が「音に味を貼れるなら、脳は勝手に選び直す」と発言したことが、起源としてしばしば引用される[8]。
拡張:1980年代の交通管制室での試験[編集]
1980年代になると、警視庁系の交通管制で“多重警報の同時発火”を減らす目的で、wojuineの簡易版が試験導入されたとされる。1984年にのゲート運用で、誤作動率を前年より17.3%低下させたという社内報告が残っているとされる[9]。
一方で、試験は“理解しやすさ”を優先するあまり、受信者ごとに擬似味の解釈が揺れてしまう問題も指摘された。そこで1986年から、味の割当を固定しない「気分追従型」の案が複数並行で進められたとされる[10]。なお、この時期の議事録には「香味の割当を四季で変えるべきか」の議題が立ったと記されており、参加者の一人が“冬は金属が強い”と主張したという逸話もある[10]。
社会的影響[編集]
導入が進むにつれ、wojuineは交通管制の外へも波及したとされる。まず、聞き取りにくい場所を想定したの代替訓練で採用され、次に災害対策訓練の“役割分担の確実化”に利用されたとされる[11]。訓練では、受講者が同じ周波数帯を聞くたびに「喉の奥が乾く」「酸味が立つ」などの合図を思い出すよう誘導されたとされ、指導者はこれを“身体の履歴書”と呼んだという[11]。
また、テレビ番組の制作現場では、スタジオの騒音対策として“視聴者に誤解させない音”を探す議論が起き、そこで初めて“味の記号”という発想が一般語として広まったとされる[12]。ただし、実際の成果は限定的で、番組の字幕では「危険は赤、注意は青、確認は白…ではなく味で色分けしろ」という無茶な演出指示が出されたとも報じられている[12]。
批判と論争[編集]
批判は早い段階から存在した。第一に、多感覚の割当が個人差を無視できないという点である。ある研究会の報告では、F-C対応表の“危険=焦げ味”が、被験者の嗜好によって「危険なのに甘い」と誤解されるケースが0.9%確認されたとされる[13]。
第二に倫理面の論争である。擬似味を手掛かりに選択を誘導することは、心理誘導に近いのではないかという指摘がの内部で出されたとされる[14]。さらに一部の委員は「味覚は嗜好であり、身体に対する操作になりうる」と述べたと記録されている[14]。なお、この論争のまとめは、なぜか翌年の会議で“味の訓練は実験ではなく技能伝承”という言い回しに差し替えられ、参加者の間で苦笑が起きたと伝えられている[15]。
このように、wojuineは安全性の改善を掲げつつ、受信者の身体感覚への介入という形で評価を二分したとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 伏井 和磨「周波数—香味対応表の試作と誤作動抑制」『日本音響通信年報』第12巻第3号, pp.145-162, 1987.
- ^ 高橋 明里「味鳴号の到達時刻同調に関する検討」『都市交通技術誌』Vol.8 No.1, pp.22-37, 1989.
- ^ M. Thornton「Cross-modal cueing in noisy environments: A speculative protocol」『Journal of Applied Multisensory Engineering』Vol.31 No.4, pp.501-533, 1992.
- ^ 杉浦 玲央「訓練マニュアルにおける擬似味語彙の運用」『安全教育研究』第5巻第2号, pp.77-95, 1991.
- ^ 田中 大祐「港区地下工事における無線分岐と誤連絡要因」『建設安全統計』第9巻第1号, pp.1-18, 1976.
- ^ R. Jensen「Tactile and taste-like representations for alarm differentiation」『Human Factors Review』Vol.19 No.2, pp.140-171, 1994.
- ^ 【要出典】平川 由香「F-C対応表の個人差補正モデル(草稿)」『多感覚通信研究会報』第2巻第7号, pp.33-41, 1986.
- ^ 伏井 響之助「四季で変えるべき“焦げ味”?」『音響社会史研究』第1巻第1号, pp.10-28, 1990.
- ^ 金子 祐介「駅構内放送の代替訓練における想起精度」『公共サイン学会誌』第6巻第4号, pp.209-225, 1993.
- ^ M. Thornton and K. Nishida「Vojouine protocols and emergency role allocation」『International Symposium on Urban Auditory Systems』pp.88-97, 1995.
外部リンク
- Vojouineアーカイブ(仮)
- FUR 多感覚通信資料室
- 味鳴号 訓練動画コレクション
- 港区地下工事メモリアル・サウンド