world war z
| 作品名 | world war z |
|---|---|
| 原題 | world war z |
| 画像 | worldwarz_poster.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| 監督 | 渡辺精理 |
| 脚本 | 渡辺精理、三浦栞子 |
| 原作 | 『終末感染作戦報告書』 |
| 製作 | 東方映像協同組合、災害演出研究所 |
| 配給 | 環状シネマ配給 |
| 公開 | 2013年9月 |
『world war z』(わーるど うぉー ぜっと)は、[[2013年の映画|2013年]]の[[9月]]に公開された[[東方映像協同組合]]制作の[[日本]]の[[パニック・サバイバル映画]]。原作・脚本・監督は[[渡辺精理]]。興行収入は112億円で[1]、[[日本審査機構]]の[[大災厄記録映画賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
『world war z』は、都市封鎖と避難輸送の失敗を“感染の物理”として描くことを狙ったパニック・サバイバル映画である。劇中では、感染者が歩き回るのではなく「人流ネットワークの空白」を埋めるように群れが再配置される、という独特のルールが採用された。
企画段階では、当初「世界戦争のZ=善意の終わり」を主題とする政治風刺案が多かったが、最終的に[[日本危機通信]]の公開資料を“脚本の温度調整”に転用する形で、より実務的な災害描写へと寄せられたとされる。結果として、観客はゾンビ映画の文法を期待しつつ、実際には輸送計画・検疫動線・広域通信が主役になる構造が形成された。
なお、公開前から「原作の年代設定が実在の港湾データと矛盾しているのではないか」という指摘があり、編集者の間では“資料の整合性を破るほど物語が強くなる”という方針が共有されていた[3]。この点が、後年の再評価で“嘘が多いほど説得力が増す作品”という評価につながったとされる。
あらすじ[編集]
物語は、海運大手[[大海運コンソーシアム]]の元危機管理官・[[叶澤和馬]]が、世界規模の感染拡大に関する“聞き取り”を開始するところから始まる。感染は単なる病理ではなく、通信網と交通網の接続状態に追随して広がるとされ、叶澤は各地の証言を“地図の上で折り畳む”手法で整理していく。
最初の焦点は[[横浜港]]での検疫ブース再配置事件である。実際には港湾作業員の制服色の変更が原因だった、という証言が複数の人物から出るのだが、映画ではそれを「波長帯の誤読が群れの同調を誘発する」という超常的解釈で補強する。ここで登場するのが、[[海上保安技術研究所]]出身の[[宮石玲奈]]であり、彼女は“検疫ゲートの速度は人間ではなく床の摩擦係数で決まる”と断言する。
次に、[[台北市]]での避難列車が“止まらずに抜けていく”という描写が挿入される。運行停止命令が出ているのに車両が残存するのは、列車が回収されたのではなく「時刻表の穴に感染者が流入した」ためだ、という説明がなされる。さらに[[マニラ]]では、通信衛星の故障が感染の主機能を肩代わりしたのではないか、という推理が提示され、物語の論理が段階的にねじれていく。
終盤、叶澤は“世界戦争のZ”を、最終的に「避難所の収容率ではなく、避難所に届く前の“音声案内の到達率”」で決まると結論づける。したがって勝利条件は、血の匂いを断つことではなく、情報の遅延を断つことになる。観客の涙腺を狙うように、彼が最後に聞き取る一文はたった9語で構成されるとされ、スタッフはその9語を撮影前日にだけ再生できるよう編集で工夫した[4]。
登場人物(主要人物/その他)[編集]
主要人物としては、聞き取りを行う[[叶澤和馬]]、検疫動線の設計者[[宮石玲奈]]、港湾通信に詳しい[[北条真理子]]が配置されている。叶澤は冷静な実務家として描かれる一方で、証言の食い違いを“地図の歪み”として扱うため、次第に精神的なズレが作劇上の緊張として現れる。
宮石は、検疫ゲートの素材変更が感染の“同調率”に影響するという独自理論を持つ人物である。彼女は序盤で「靴底の模様は偶然ではない」と発言し、ここが後半の象徴的回収につながるとされる。
その他としては、災害報道を請け負う[[衛星テレビ局 グラスライン]]の若手ディレクター[[小鳥遊ユウ]]が登場する。彼は“泣く前にコピーを取れ”という編集方針を掲げるが、終盤でそれが最も危険な戒めとして裏返る。
声の出演またはキャスト[編集]
実写映画として製作されたが、劇中証言の回想パートでは“吹替のような音声再現”が繰り返される演出が採用された。[[叶澤和馬]]役は俳優[[遠藤範蔵]]が務め、沈黙が多い演技として知られる。[[宮石玲奈]]役は[[神谷みなと]]が担当し、専門用語を読み上げる場面では口の動きが顕著になるよう撮影が工夫された。
[[北条真理子]]役は[[篠原雪夜]]、[[小鳥遊ユウ]]役は[[城戸ルイ]]である。なお、回想証言の中には本人が存在しない架空の“匿名証言者”が混ざっていると作中で示唆され、公式サイトでは「編集者が足した可能性がある」と明言を避けた[5]。
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
映像制作は東方映像協同組合を中心に進められ、製作委員会には[[災害演出研究所]]、[[環状シネマ配給]]、[[大海運コンソーシアム]]の文化支援部門が名を連ねた。脚本は[[渡辺精理]]と三浦栞子が担当した。
特殊技術としては、都市封鎖シーンでの群衆再配置に、群れの“集合”ではなく“回線の空白”を計算するCGモーションが用いられたとされる。撮影は主に[[みなとみらい地区]]と架空の検疫施設セットで行われ、床の摩擦計測値(平均0.62、ばらつき±0.08)が設計に反映されたと記録されている[6]。
音楽は[[中西燐太郎]]が担当し、後半では心拍とほぼ同一テンポのリズムが段階的にずらされる構成になった。主題歌は[[『Zの予告』]]で、歌唱は[[樹海カナ]]による。
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色・撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画の着想は、渡辺精理が編集作業中に「世界地図の投影法を変えると“感染の形”も変わって見える」経験をしたことにあるとされる。そこで脚本では、証言の矛盾が“敵の都合”ではなく“地図の都合”として扱われた。
美術面では、避難所を統一カラーで統制する案があったが、後に“色は情報であり、色の遅延が同調を生む”という設定に変更された。セットの壁紙は、赤を基準にしたのではなく、照明の分光特性で青寄りに見えるよう設計され、撮影日ごとの色温度ログ(毎日13点)を編集部が保管していたとされる[7]。
CG・彩色では、感染者の群れを人型のまま描くのではなく、最初から「動く点群(dot cloud)」として撮影し、後処理で顔の輪郭だけを“見えないように見える”方向へ寄せた。結果として、観客の視線が不自然に反射することで、作品の不安定さが増幅されたと評論家は述べている。
音楽に関しては、主題歌『Zの予告』のサビが“録音直後に再生すると判別できない音程”を含むよう調整されたという噂があり、スタッフは「意図はあったが、再現性は保証しない」と記した[8]。この曖昧さが“嘘っぽいけれど耳に残る”要因として機能したとされる。
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
宣伝では、劇場ごとにキャッチコピーが微妙に異なる施策が行われた。たとえば[[新宿]][[歌舞伎町]]系劇場のポスターでは「あなたの避難は何秒遅れた?」と問い、[[横浜港]]近隣劇場では「検疫は速度で終わるのではない」と掲げた。
封切りは2013年9月で、初週動員は全国で約182万人、初週売上は29.4億円と報告される。なお、この数字は発表後に訂正が入り、翌週には“チケットの集計方式”が統一されたため、実質差が2.1%となったとされる[9]。この微差が、作品の“数字の嘘”を好むファンの間で伝説化した。
再上映は2016年に“災害月間”企画として全国18館で行われ、上映素材の色調が見直された(いわゆるDVD色調問題に近い対応)。ホームメディアはブルーレイが発売され、特典として聞き取り記録風のブックレットが同梱された。
海外では、[[環状シネマ配給]]が配給権を得た地域でサブタイトル版が出回り、ヨーロッパでは“世界戦争Z=地図の歪み”という解釈が主流になった。
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、論理が意図的に揺らされている点を“編集の勇気”として評価する声があった。一方で、実在の港湾施設の撮影比率が過剰であるため「現実の記録を借りて逃げている」という指摘も見られた。
受賞としては[[大災厄記録映画賞]]のほか、[[日本音響評論会]]の“危機サウンド設計賞”を受賞した。さらに作品は[[国際パニック映画連盟]]の長編部門にノミネートされ、最終選考まで進んだとされる。
売上記録としては、興行収入112億円の到達が公開から47日目であると報じられた。ただし、別資料では「48日目」に訂正されたとされ、会計担当者の証言が食い違うことがファンの考察テーマになっている[10]。この“数字の微妙な食い違い”が、映画のテーマである“到達の遅れ”と偶然同期しているとして語り継がれた。
テレビ放送[編集]
テレビ放送は2015年の特別枠で実施され、視聴率は当時の関東地区で12.6%を記録したとされる。放送時は一部シーンの音量が規制されたため、主題歌のサビで用いられた“判別しにくい音程”部分は編集され、ファンからは「嘘の強度が落ちた」との声が出た。
また、放送版では回想証言に挿入されるテロップの一部が差し替えられた。これは放送局の監修手続きにより、架空の機関名が実在機関名に類似して見える可能性を回避したためと説明された[11]。
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品としては、ブルーレイ『world war z - 災害聞き取り完全版 -』が販売された。特典には“検疫動線シミュレーション紙模型”が同梱され、A3サイズで展開されるという。
また、映画の設定資料をまとめた冊子『終末感染作戦報告書(映画版註釈)』が刊行され、宮石玲奈の理論式を“観客向けに言い換えた解題”が収録された。テレビ放送版の反響を受け、さらに同名のラジオドラマ『Zの予告(続・音声遅延)』が制作されたと報じられている。
一方で、公式ライセンスのない二次創作の“地図折り”ゲームがネット上で流行し、作者不明のルールブックが出回った。制作委員会は「無断利用は控えてほしい」と注意喚起したが、結果として作品の話題性はさらに高まったとされる[12]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精理「『world war z』制作ノート—到達率をめぐる編集」『映像災厄学会誌』Vol.12 第3号, pp.41-58, 2014.
- ^ 中西燐太郎「危機サウンド設計の音程制御について」『日本音響評論』第27巻第1号, pp.9-23, 2015.
- ^ 三浦栞子「聞き取り証言の矛盾を物語として扱う方法」『映画編集論叢』Vol.8 No.2, pp.77-96, 2016.
- ^ 遠藤範蔵「沈黙が増すほど嘘が整う—演技上の工夫」『俳優技法研究』第19号, pp.112-130, 2017.
- ^ 神谷みなと「専門用語の口形設計と観客の誤認誘導」『音声表現研究』Vol.5 Issue4, pp.55-73, 2018.
- ^ 国際パニック映画連盟編『災害映画の国際動向(2013-2016)』第2版, pp.201-219, 2017.
- ^ 日本危機通信「都市封鎖時の音声案内遅延モデル(内部資料)[要出典]」『危機通信年報』第6号, pp.3-29, 2012.
- ^ 『大災厄記録映画賞 受賞記録集(2013年度)』日本審査機構, pp.1-64, 2014.
- ^ 環状シネマ配給「興行収入算定方式の改定と劇場集計」『配給実務月報』Vol.21 No.9, pp.14-20, 2013.
- ^ 樹海カナ「『Zの予告』の録音手順とサビの周波数帯」『ポピュラー音楽技術誌』第33巻第2号, pp.88-101, 2013.
外部リンク
- worldwarz 公式記録室
- 東方映像協同組合 ショートドキュメント
- 日本危機通信 音声遅延モデル解説
- 環状シネマ配給 アーカイブ
- 災害演出研究所 資材保管庫