#手上
| 名称 | #手上 |
|---|---|
| 読み | てじょう |
| 英語表記 | #Tejō |
| 発祥 | 日本・首都圏の掲示板文化 |
| 成立時期 | 2010年代前半 |
| 主な用途 | 投稿冒頭の強調、位置指定、儀礼的注記 |
| 普及媒体 | SNS、画像投稿サイト、匿名掲示板 |
| 関連組織 | 日本ネット記号学会、東京デジタル民俗研究所 |
#手上(てじょう)は、主に上で画像や短文の上部に添えられる記号的なタグ、または投稿の「開始位置」を示す編集上の符号であるとされる。日本では半ばから流行したとされ、のちに内のネット文化研究者らによって準公式な分類が試みられた[1]。
概要[編集]
は、文字通り「手の上」に置かれた情報を示すための記法として成立したとされるが、実際にはとの接触点で独自に発達した記号である。とくにごろ、スマートフォンの縦長表示に合わせて「上部を意味ある場所として扱う」編集慣習が広まり、そこにハッシュ記号が結合したことが契機とされる[2]。
なお、#手上は単なるタグではなく、投稿者が「この内容は手元ではなく画面の先頭に置くべきである」と宣言する半儀礼的な合図でもあった。このため、料理写真や旅行記、さらには自治体の防災情報の草稿にまで用いられ、の一部部署が「掲示先頭符号の過剰使用」に関する注意喚起を検討したとの記録が残る[3]。
成立史[編集]
掲示板時代の前史[編集]
前史は末の系文化にさかのぼるとされる。匿名投稿では本文先頭に「>>1」や「」が置かれることが多かったが、の小規模な同人掲示板で、画像の最上段に手書きの矢印を描き込む習慣が生まれたことが、#手上の原型になったという説がある。
この段階ではまだ記号は定まっておらず、記述例としては「▲上」「※頭」「#top」などが混在していた。編集履歴の解析によれば、からにかけて、これらのうち最も入力しやすかった「#」が定着したとされるが、母集団が極端に少ないため、学術的には要出典扱いである。
命名の由来[編集]
命名については複数の説がある。もっとも有力なのは、のモバイル写真サークル「上段会」が、投稿の上部に注釈を置く運用を内輪で「手上げ」と呼んでいたことに由来するという説である。一方で、の民俗記号研究者・は、手のひらを上に向ける所作から転じた「受け渡し記号」であると主張した[4]。
また、英語圏の一部フォーラムでは、#handup と誤訳されたものが逆輸入され、それが日本語圏で「手上」と再解釈されたという奇妙な経路も指摘されている。これはの国際シンポジウム「Digital Margins and the Body」において、発表者のスライド上で偶然確認されたという。
拡散と定着[編集]
2010年代中頃には、#手上は系の画像キャプション文化と親和性を示し、とくに「一枚目の写真にだけ意味を持たせる」投稿で多用された。東京都内のカフェチェーンでは、メニュー写真の先頭に「#手上」を添えるとSNS投稿が18.4%増加したとする社内資料が流出し、のちに広告代理店が模倣したとされる。
普及のピークはからであり、の高校生を対象にした調査では、回答者の31.2%が「#手上はタイトルの一種」と誤認していたという。この誤認がむしろ機能美を生み、短い投稿ほど効果が高いとされた。なお、長文投稿で使うと「先頭に立ちすぎる」として敬遠される傾向もあった。
運用上の特徴[編集]
画像文化との結合[編集]
#手上は、文字列として単独で置かれるよりも、画像の余白や被写体の上端とセットで認識されることが多かった。とりわけやでは、上辺に小さく配置されることで、閲覧者の視線を上から下へ誘導する効果があるとされた。
の内部報告書によれば、上部に#手上を置いた画像は、置かない場合と比べて平均滞在時間が0.8秒長かったという。数値の妥当性には疑義があるが、引用されやすい簡潔さがあり、以後の論文でたびたび再利用された。
儀礼的な用法[編集]
一部のコミュニティでは、#手上は「本文を読む前に一礼する」意味を持つと解釈された。たとえば同人即売会の告知文では、冒頭に#手上を付けることで、サークル側が「まず上を見てほしい」という控えめな願いを表現したとされる。
また、の料理写真愛好家の間では、#手上を付けた投稿に限り、皿の左上に必ず副菜を置くという不文律が存在したという。この慣習は2021年に一度消滅したが、翌年、復古派によって「上段主義」として再興された。
社会的影響[編集]
社会的には、#手上は「目立たせること」と「控えめに添えること」を両立した稀有な記号として評価された。教育現場では、授業の教材として採用され、東京都立の一部高校では「タグを先頭に置くと文意が変化する」という演習が実施された[5]。
一方で、行政文書への流入が問題化し、ごろには複数の自治体サイトで「#手上」の削除ルールが設定された。担当者は「伝達効率は高いが、正式文書の上端が私的感情で埋まる」と説明したとされる。これに対し愛好家側は、上端の私有化こそが表現の自由であると反論した。
批判と論争[編集]
#手上をめぐる最大の論争は、それが本当に「上」を指すのか、それとも「投稿の先頭に置かれたものが上位である」という順位概念にすぎないのか、という点である。の比較メディア研究ゼミは、2023年にこの問題を「先頭と上部の混同」として整理したが、結論は出なかった。
また、#手上の濫用により、ハッシュ記号全般の意味が希薄化したとする批判もある。特にの匿名ブログ圏では、意味の薄い#手上が1投稿あたり平均2.7個も付く現象が確認され、「記号のトッピング化」と呼ばれた。逆に、純粋主義者は「#を付けた瞬間に手上ではない」とまで述べ、内部対立は現在も続いている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 西園寺久代『投稿上端記号の民俗誌』東京デジタル出版, 2018, pp. 41-68.
- ^ 田辺光一「#記号の位置論と可視性」『情報文化研究』Vol. 12, No. 3, 2017, pp. 115-132.
- ^ Margaret A. Thornton, “Top-Edge Semantics in Mobile Posting,” Journal of Digital Folklore, Vol. 9, Issue 2, 2019, pp. 55-79.
- ^ 佐倉美里『SNS儀礼の形成と崩壊』中央民俗新書, 2020, pp. 88-104.
- ^ Hiroshi K. Arai, “Hashtag and Hand: A Comparative Semiotics,” Proceedings of the Tokyo Media Symposium, 2021, pp. 203-219.
- ^ 日本ネット記号学会編『ハッシュと上部空間』青嵐社, 2022, 第4巻第1号, pp. 7-26.
- ^ 鈴木啓介「『上』の誤読が生む共同性」『現代コミュニケーション論集』第18巻第4号, 2023, pp. 9-33.
- ^ Elizabeth M. Rowe, “The Hand-Up Theory in East Asian Caption Culture,” Asian Internet Studies Quarterly, Vol. 6, No. 1, 2020, pp. 1-18.
- ^ 渡辺精一郎『記号が先に立つとき』港の人社, 2016, pp. 11-39.
- ^ 小野寺理沙「#手上の流行と行政文書」『地方行政と表現』第7巻第2号, 2024, pp. 66-81.
外部リンク
- 日本ネット記号学会
- 東京デジタル民俗研究所
- デジタル上端アーカイブ
- ハッシュタグ文化年表
- 上段主義保存会