『スプラッタ・アンド・マッシュポテト』
| 作品名 | 『スプラッタ・アンド・マッシュポテト』 |
|---|---|
| 原題 | Splatter and Mashpotato |
| 画像 | スプラッタ・アンド・マッシュポテト(ポスター) |
| 画像サイズ | 250px |
| 画像解説 | “血のグレイビー”を模した赤いソースが飛び散るビジュアルが特徴とされる。 |
| 監督 | 刈谷モトアキ |
| 脚本 | 泉水アサヒ |
| 原作 | 泉水アサヒ(映画オリジナル脚本とされる) |
| 原案 | 刈谷モトアキ |
| 製作 | マッシュグラビティ製作委員会 |
| 製作総指揮 | 御園サイコウ |
| ナレーター | 浅井カンナ |
| 出演者 | ベラ・コルネリ、瑞穂ユウナ、鶴川ノゾム ほか |
| 音楽 | エルモア・ヴァリエンヌ |
| 主題歌 | 『マッシュが語る』歌:ミズラ・ロウ |
| 撮影 | 鳴海ツバサ |
| 編集 | 畑中ルミ |
| 制作会社 | 夜霧フィルムズ |
| 配給 | 東北恐怖配給協同組合 |
| 公開 | 2017年10月7日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 7億4,300万円 |
| 興行収入 | 22億9,800万円 |
| 配給収入 | 15億1,200万円 |
| 上映時間 | 113分 |
| 前作 | なし |
| 次作 | 『スプラッタ・アンド・マッシュポテト:夜更けのマッシュ』 |
『『スプラッタ・アンド・マッシュポテト』』(すぷらった あんど まっしゅぽてと)は、[[2017年]]に公開された[[日本]]の[[ホラー映画|ホラー]]映画である。監督は[[刈谷モトアキ]]、主演は[[ベラ・コルネリ]]。113分。食卓の裏で起きる“血のグレイビー”騒動を描く作品として興行的に大ヒットし、[[2019年]]に続編の『スプラッタ・アンド・マッシュポテト:夜更けのマッシュ』が作られた[1]。
概要[編集]
『スプラッタ・アンド・マッシュポテト』は、家庭料理の“再現性”に執着した人々が、調理工程そのものを神聖化していく過程を、食卓ホラーとして誇張して描いた作品である。とりわけ、じゃがいもの裏ごしを模したという特殊なリズム編集と、血液表現に見える赤いソースの演出が、公開当時から話題となった[1]。
作品の成立経緯は、昭和末期のテレビ番組における食レポ倫理問題が発端とされることがある。もっとも、実際には企画段階で[[農林水産省]]の外郭研究費の“衛生演出”枠に似た資金が紐づけられたとされ、刈谷モトアキは「安全に見えるほど怖い」と語った[2]。このため、ホラーでありながら観客が“作りたくなる”味覚を前面に出す作風が採用された。
なお、本作は[[第12回日本不穏食映画祭]]で批評家連盟賞を受賞し、続編でも同じ“赤いグレイビー”演出が踏襲されたとされる[3]。ただし、細部の制作資料には一部矛盾があり、脚本の原案と映像トーンの記述が編集者の間で揺れたという証言もある[4]。
キャッチコピーと宣伝戦略[編集]
キャッチコピーは「裏ごしは祈り、飛沫は告白」。配給は[[東北恐怖配給協同組合]]が担い、劇場入口では“マッシュの匂い”を模した香りカートリッジを配布したと報じられた。初日動員は上映回ごとに検算され、公開初週だけで3,416人が“匂い付きパンフ”を購入したとされる[5]。
作品の題材解釈[編集]
題材である“スプラッタ”は、流血の俗称として理解されがちだが、本作では「失敗した家庭料理の比喩」として扱われると説明される場合がある。もっとも、配給資料では“血の粘度”を1.7倍に見せる比率設計が明記されており、比喩が実務として実装された点が論争の種にもなった[6]。
あらすじ[編集]
主人公の瑞穂ユウナは、地方都市[[青森県]][[弘前市]]にある小さなケータリング店で、客の「口に残る余韻」を数値化して再現する“味覚監査”を受け持っていた。ある日、取引先の御園グループが開発した新調味料「黒帯グレイビー」を使うよう命じられるが、試作の鍋底から現れた“赤い渦”が、調理者の記憶を奪うと噂されるようになる[7]。
赤いソースは、同じ味を作ろうとするほど増殖する現象を起こし、店の厨房は数センチ単位でレイアウトが変化していく。ユウナは「裏ごし機の速度が速すぎる」と結論づけ、鳴海ツバサ撮影による“逆再生カット”を挟みながら原因を追う。やがて彼女は、ソースに含まれる微粒子が“衛生の見た目”に反応していると知り、[[刈谷モトアキ]]は観客に「安全を信じるほど、危険は増える」と突きつける終盤を用意した[8]。
終盤では、店の常連が一斉に「作れない夜」を語り始め、赤いグレイビーが“告白”のように飛び散る。ユウナはじゃがいもを鍋に落とす直前に手袋を外し、“再現性”ではなく“失敗”を受け入れる選択をする。その結果、赤い渦は薄まり、ただし完全には消えないままエンドクレジットへ移行する[9]。
象徴的な場面(作劇上の役割)[編集]
裏ごしの描写は単なる料理シーンではなく、心理状態を“粘度”として見せる装置と位置づけられる。実際、脚本上は「泡が天井に到達するまでに9.8秒」と厳密に書かれていたとされる[10]。
伏線と回収[編集]
序盤で登場する“赤い取扱注意札”は、終盤で厨房の配置を変えるための符丁だったと説明される。もっとも、この札の出所は作中で曖昧にされており、観客の解釈に委ねる意図があるとする指摘がある[11]。
登場人物[編集]
瑞穂ユウナ(主人公)は、味の再現を“監査”と呼ぶ合理主義者である。彼女の台詞は調理用語に寄せられ、感情が出るほど温度や時間の表現が増えるとされる[12]。
鶴川ノゾムは、常連のうち最も声が大きい人物として描かれるが、物語後半では「声を上げるとソースが粘りを増す」という奇妙な法則を知っていると判明する。なお、この法則は[[第12回日本不穏食映画祭]]の審査講評で“生活倫理への介入”として言及された[13]。
浅井カンナはナレーターとして、調理工程の手順を淡々と読み上げる。しかし彼女が読み上げる文言には、時折だけ料理にならない語尾が挿入されるとされ、編集段階で“意図的に滑らせた”と聞かされているという[14]。
脇役の機能[編集]
御園サイコウ(御園グループの現場監督役)は“衛生演出”の現場責任者という設定で、作中の不安を制度化する役割を担う。彼の登場シーンは全て同じテーブル番号から始まるため、観客が「制度が怪異を呼ぶ」構図を掴みやすかったと分析される[15]。
キャスト[編集]
主演のベラ・コルネリは、感情を抑えながらも“失敗を嫌う眼”を強調した演技で評価された。公開当時のインタビューでは、彼女は「飛沫の方向を決めるのは俳優だ」と語り、撮影現場で赤いソースの粘度確認に立ち会ったと報じられた[16]。
瑞穂ユウナ役には新人の瑞穂ユウナが抜擢され、手袋を外す場面で“素手の皮膚感覚”を演出するため、肌に関する撮影許可が特別に申請されたとされる。もっとも、許可手続きの正式名は資料上で二通りに書かれており、要領の違いがあった可能性も指摘されている[17]。
鶴川ノゾム役は鶴川ノゾム本人が、撮影の合間にマッシュポテトの店舗視察を続けたという逸話が伝わり、結果として“味の説得力”が上がったと評価された[18]。
演技上の小道具[編集]
劇中で使われた裏ごし器は2種類あり、同じ型番に見えて実際には目の粗さが異なるとされる。現場では「粗さ0.8ミリが恐怖の角度を決める」と言われ、撮影スタッフがノギスで測った記録が残っているという[19]。
スタッフ[編集]
監督の刈谷モトアキは、食卓の“日常的な手つき”をホラー化することに重点を置いたとされる。脚本の泉水アサヒは、料理工程の言葉選びが心理操作になるという考え方を導入し、台詞の語尾に一定の“硬度”を設けたと語られた[20]。
撮影の鳴海ツバサは、飛沫の流れを追うために「毎秒960フレーム相当」の高速度撮影を行ったと説明されている。ただし、機材名の記録が映画資料と舞台挨拶記録で食い違いがあり、実機が別仕様だった可能性もある[21]。
音楽のエルモア・ヴァリエンヌは、じゃがいもの加工工程に合わせた“低音のうねり”を作曲し、劇中では不協和を抑えつつ、耳の奥でだけ違和感が残るよう設計したとされる[22]。
制作会社と製作委員会[編集]
制作は夜霧フィルムズ、製作委員会はマッシュグラビティ製作委員会である。ここに加わったとされる金融担当部署は[[内閣府]]関連の“芸能リスク分散”と呼ばれた枠に近い名称で、関係者は「怖さを数式に落とすのが目的だった」と述べた[23]。
製作[編集]
企画は「家庭での失敗を、観客が笑いながら許容できる形にする」ことを目標に進められたとされる。刈谷モトアキは準備段階で全国の家庭料理店を巡回し、“マッシュが一度だけ固まる瞬間”を収集したという。記録上、その瞬間は平均で1分42秒付近に集中していたとされる[24]。
赤いソースの演出には、食品素材の見た目を保つための“疑似粘度管理”が使われたとされる。製作費7億4,300万円のうち、半分以上が味の再現ではなく“色の安定化”に割かれたという見積があり、色が変化すると不気味さが消えるためだったと説明された[25]。
なお、特殊な編集として、飛沫が落下する直前に映像を0.12秒だけ遅延させる処理が入れられたとされる。この遅延は編集台本に“食感”とだけ書かれており、具体的理由は明記されていない[26]。この空白が、後年の批評で「意味の霊」が宿ったとされた点が、逆に作品の神秘性を補強したとされる。
撮影ロケ地[編集]
主要撮影は[[青森県]][[弘前市]]の古い給食センター跡地で行われたとされる。建物は当時すでに閉鎖されていたが、“湯気の出方”が似ていたため採用されたとされ、地元では短期間の灯り工事が行われたという[27]。
事故と対応(作中への反映)[編集]
撮影中、赤いソースの一部が想定より硬化し、想定シーンよりも高く飛び上がった。この“事故”は撮影後に採用され、主演の演技プランが一度変更されたと証言されている[28]。
興行[編集]
興行収入は22億9,800万円、配給収入は15億1,200万円とされる。公開初週は[[北海道]]・[[東北地方]]で伸び、2週目に[[関東地方]]へ波及したと報告された[29]。
また、劇場ごとの平均客単価は1,940円で、パンフレットの付加価値が最も高かった劇場では平均が2,310円に達したという。これは“匂い付きパンフ”の回収率が高かったことによると説明された[30]。
リバイバル上映は2020年に行われ、土日だけで視聴の入れ替えが発生したとされる。リバイバル初日の上映回あたり動員は平均178人で、同時期の別ホラーより0.7ポイント高かったとされるが、この差の要因は「料理が恋しくなる宣伝が刺さった」と一部で語られた[31]。
テレビ放送と視聴率[編集]
テレビ放送では、前半の食卓シーンが“安心感”として受け取られた視聴者も多く、裏番組より視聴率が2.3%上回ったとされる。ただし、視聴率の出典が統計公開資料と番組公式発表で異なり、担当記者による集計の差があった可能性もある[32]。
反響[編集]
批評家の間では、本作の“流血”が実際の暴力描写よりも、日常の衛生観に向けられている点が評価されたとされる。[[第12回日本不穏食映画祭]]では批評家連盟賞を受賞し、審査講評では「恐怖の正体が衛生という名の制度にある」とまとめられた[33]。
一方で、食卓描写が過度に具体的であり、料理番組的な好奇心を煽っているという批判もあった。特に、裏ごし器の“粗さ”という物理的要素を出しすぎたことが、家庭での再現につながると懸念されたと報じられた[34]。
ただし観客アンケートでは「笑える怖さ」とする回答が多く、上映後のアンケート自由記述で最も多かったのは「マッシュが食べたくなった」であったという。数字としては1,206件中441件がこの記述で占められたとされる[35]。嘘か真かはともかく、食欲と恐怖が結びつく構造こそ本作の狙いだったと言える。
受賞・ノミネート[編集]
エルモア・ヴァリエンヌの音楽は[[日本映画音楽協会賞]]で作曲賞候補になったとされる。なお、受賞の有無は年度資料で表記が揺れており、ある年報では“候補止まり”、別の新聞記事では“受賞”と書かれているとも指摘される[36]。
関連商品[編集]
映像ソフト化は2020年に行われ、Blu-rayには“赤いグレイビー成分解説”という特典映像が収録されたとされる。内容は料理評論家風の人物がスタジオで色味を説明する体裁だが、実際には飛沫の軌跡を幾何学的に解析するコーナーが主であるとされる[37]。
また、劇中で使われた裏ごし器“幻の目0.8”を模した家庭用キッチン用品が、量販店向けに数量限定で販売された。発売初日での販売数は約3万個に達したと報道されたが、出荷台数の記録が公開資料と店舗の棚卸で異なるという疑義も出た[38]。
さらに、主題歌『マッシュが語る』はカラオケ配信でランキング上位に入ったとされ、歌詞の一部が料理手順として引用されたことがあると報告されている。引用元は明記されなかったものの、結果的に“恐怖のレシピ化”が進んだと論じられた[39]。
コラボレーション[編集]
ホラーと食の融合を狙い、[[弘前市]]の一部店舗と期間限定コラボが行われた。メニュー名は「赤いグレイビーうらごし定食」で、提供時間は17:00〜19:30に限定されたとされる[40]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
刈谷モトアキ『恐怖の食卓手引書:スプラッタ・アンド・マッシュポテト制作ノート』夜霧出版, 2018年.
泉水アサヒ『味覚監査と怪異の編集—台詞の硬度設計』マッシュグラビティ文庫, 2019年.
御園サイコウ「衛生演出における色の安定化」『映像衛生研究紀要』第7巻第2号, 2017年, pp. 41-58.
エルモア・ヴァリエンヌ『低音のうねり:食ホラー音楽の編曲論』Aurora Academic Press, 2016年.
鳴海ツバサ「飛沫の幾何学と遅延編集」『シネマトグラフィ技術論文集』Vol. 21, No. 3, 2018年, pp. 12-27.
浅井カンナ『語りの手順:ナレーションが恐怖を作る方法』青森語り研究社, 2020年.
田村レイ「家庭料理の再現性と社会心理」『メディア倫理月報』第33号, 2021年, pp. 90-103.
『第12回日本不穏食映画祭 審査講評集』日本不穏食映画祭事務局, 2017年.
『東北恐怖配給協同組合 年報』東北恐怖配給協同組合, 2018年.
ミズラ・ロウ『マッシュが語る歌詞の裏側』(タイトルが微妙に一致するとされる)Karaoke Folklore, 2020年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 刈谷モトアキ『恐怖の食卓手引書:スプラッタ・アンド・マッシュポテト制作ノート』夜霧出版, 2018年.
- ^ 泉水アサヒ『味覚監査と怪異の編集—台詞の硬度設計』マッシュグラビティ文庫, 2019年.
- ^ 御園サイコウ「衛生演出における色の安定化」『映像衛生研究紀要』第7巻第2号, 2017年, pp. 41-58.
- ^ エルモア・ヴァリエンヌ『低音のうねり:食ホラー音楽の編曲論』Aurora Academic Press, 2016年.
- ^ 鳴海ツバサ「飛沫の幾何学と遅延編集」『シネマトグラフィ技術論文集』Vol. 21, No. 3, 2018年, pp. 12-27.
- ^ 浅井カンナ『語りの手順:ナレーションが恐怖を作る方法』青森語り研究社, 2020年.
- ^ 田村レイ「家庭料理の再現性と社会心理」『メディア倫理月報』第33号, 2021年, pp. 90-103.
- ^ 『第12回日本不穏食映画祭 審査講評集』日本不穏食映画祭事務局, 2017年.
- ^ 『東北恐怖配給協同組合 年報』東北恐怖配給協同組合, 2018年.
- ^ ミズラ・ロウ『マッシュが語る歌詞の裏側』Karaoke Folklore, 2020年.
外部リンク
- 夜霧フィルムズ公式サイト
- マッシュグラビティ製作委員会リソース
- 東北恐怖配給協同組合アーカイブ
- 第12回日本不穏食映画祭データベース
- 弘前市ロケーション・メモ