格闘超人ダショマイン
| 作品名 | 格闘超人ダショマイン |
|---|---|
| 原題 | Kakutō Chōjin Dashomine |
| 画像 | 格闘超人ダショマイン ポスター(架空) |
| 監督 | 渡辺ヨシヒコ |
| 脚本 | 渡辺ヨシヒコ |
| 原作 | ダショマイン継承機関(設定協力) |
| 製作会社 | ダマスカス・スタジオ / 北極星メディア |
| 配給 | 日本陽気配給(JPP) |
| 公開 | 1996年7月12日 |
| 興行収入 | 約12.8億円 |
『格闘超人ダショマイン』(かくとうちょうじんだしょまいん)は、[[1996年の映画|1996年7月12日]]に公開された[[ダマスカス・スタジオ]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[渡辺ヨシヒコ]]。興行収入は約12.8億円で[[ゴング・ホラー映画祭]]最優秀アクション賞を受賞した[1]。
概要[編集]
『格闘超人ダショマイン』(1996年7月12日公開)は、石炭採掘跡地の地下で目覚めた「格闘超人」が、都市の治安を“勝負”として再設計していくという、娯楽性の強い[[時代劇映画]]として宣伝された[[アニメーション映画]]である[1]。
物語の核は、怪力や必殺技ではなく、主人公が発明した「一発勝負の算術(ダショ計量)」で、喧嘩と契約を同一の尺に揃えていく点に置かれた[2]。制作現場では、この算術を説明するために作画スタッフが地質図の文法まで学んだとされ、パンフレットでは「炭層の角度が技の角度になる」といった文言が躍った[3]。
なお本作は、公開初週に全国で“騒音”のように観客の口数が増えたとして、配給会社が独自の鑑賞満足度調査を実施したと報告された。ただし資料の末尾に妙に小さい字で「設計上の都合により、母数は映画館数と一致しない」と書かれており、後年の検証ではそのずれが話題になった[4]。
あらすじ[編集]
[[1990年代]]の近郊都市・[[群馬県]][[高崎市]]の縁で、廃坑跡に埋め込まれた古い装置が、炭塵の共鳴によって起動した。装置は“勝負を終わらせる力”を呼び出すとされ、そこから現れたのが格闘超人の[[ダショマイン]]である[5]。
ダショマインは最初、地元の若者たちの喧嘩に割って入るのではなく、揉め事の「言い分」だけを回収し、地下の算術回路に流し込んだ。その結果、争いは血ではなく数式に変換され、喧嘩相手同士は不思議と“同じルール”で殴り合うことになる[6]。こうして街では、契約書や示談交渉よりも先に、勝負の手順が優先される風景が広まっていった。
しかし裏側では、廃坑の下に眠る「継承機関」が、勝負を統治手段にしてきた疑惑が浮上する。主人公は最後の対決で、相手の必殺技を壊すのではなく“技の申告期限”を過去に戻す作戦を選び、観客を納得させる形で時間の運用を勝ち取ったと描かれた[7]。
終盤、ダショマインは勝負に勝ったのに街の治安が急に良くならないという皮肉を残し、「勝負は止めても、口は止まらない」と言い切る。ここが本作の後味であるとされ、パンフレット編集は「泣かせるのではなく、論点を残す」と指示したと伝えられる[8]。
登場人物[編集]
主要人物
* [[ダショマイン]]:石炭採掘跡地から起動した格闘超人。普段は寡黙だが、技を出す前に必ず“重さの単位”を確認する癖があると描写された[9]。 * 渡瀬コウジ(わたせ こうじ):廃坑周辺を歩き回る技術見習い。彼はダショ計量の図面を盗み見た側であり、正義側にいるのかも曖昧に保たれている[10]。 * 榊ミツル(さかき みつる):継承機関の現場担当。敵役として登場するが、作中では「勝負が嫌いな人ほど勝負の才能がある」と分析する場面がある[11]。
その他
* 早乙女ナオ:喧嘩の仲裁を“文章”で行うことに執着する人物で、字幕の改行位置までが伏線として扱われた[12]。 * 坂巻シズカ:元炭鉱保安員。ダショマインの起動条件を知っているが、知っているほど黙ってしまうタイプとして演出された[13]。
声の出演(キャスト)[編集]
声の出演は、当時の[[テレビアニメ]]の人気声優を束ねる形で編成されたとされる。公式発表では、ダショマイン役に[[音羽レン]]、渡瀬コウジ役に[[藤堂ユウ]]、榊ミツル役に[[神崎トモカ]]が充てられた[14]。
ただし舞台挨拶用の宣伝資料では、ダショマインの声が「怒鳴り声ではなく、計量器のベルに寄せている」と説明され、さらに音響監督が「台詞の子音は炭層の粒度で決めた」と語ったと記録されている[15]。このため一部の評論家からは、音響データの根拠が不明である点が「やけに細かいが検証不能」として指摘された[16]。
スタッフ[編集]
映像制作
制作体制は、[[ダマスカス・スタジオ]]の制作一課が中心となり、[[北極星メディア]]が企画協力に入ったとされる[17]。脚本・原案は渡辺ヨシヒコが担当し、作画補助には[[地図研究所セキスタ]]が参加したとパンフレットで明記された[18]。
製作委員会
製作委員会には、日本陽気配給(JPP)と地方劇場ネットワークが名を連ね、製作費の内訳が“炭塵対策”に2,340万円計上されていると報じられた。ただし当時の会計資料では「計測方式の改訂により、実額と一致しない」と注記されている[19]。
この改訂は、作品のクライマックスで使用された発光効果のコマ数が当初予定から+47コマ増えたことに連動したと説明された。なおこの+47コマは、編集段階で「観客が手元のポップコーンを探す時間」として設計されたという証言もある[20]。
製作[編集]
企画
企画の発端は、当時[[東京]]の映画関係者が「喧嘩を描くなら、殴るより先に“言い分の規格化”を描け」と主張したことにあるとされる[21]。渡辺ヨシヒコはこれを「ダショ計量」という発明に置き換え、勝負を制度として見せる方針を固めた。
美術・CG・彩色
美術では、舞台の廃坑跡を[[群馬県]][[高崎市]]周辺の実在施設を参考にしつつ、作画上は“地面の摩擦係数”を統一することで独特の質感を出したとされる[22]。CGは必殺技の軌跡のみ最小限に抑え、背景は手描きの鉱物粉塵テクスチャで補う方針が取られた[23]。
音楽・主題歌
音楽は[[林田マコト]]が担当し、主題歌は「壊れた計量器(こわれたけいりょうき)」が採用された[24]。曲のテンポはBPM 108とされ、歌詞カードには“息継ぎの位置が打撃の間合い”として注釈が入った[25]。この注釈は後に、楽譜メーカーとの共同研究により作られたとされるが、共同研究の名称はパンフレット上で伏せられている[26]。
着想の源
着想の源は、炭鉱保安の記録文書と、当時流行した重量当てゲームの仕組みを混ぜたものだと説明された[27]。ただし監督は別の取材で「重量当てゲームではなく“反省の時間”が源である」とも言っており、資料整理の編集者が「似た言葉の連鎖で混線した」と後日語ったとされる[28]。
興行[編集]
宣伝
宣伝ではキャッチコピーは「勝負は終わらせるのではなく、終わり方を配る。」とされた[29]。ポスターは日本陽気配給(JPP)の独自基準で、配色が“炭の黒と都市の灰”の2色に制限され、第三色を入れる場合は審査会の承認が必要になったと報じられた[30]。
封切り
封切りは1996年7月12日で、初日動員数は全国で114,203人と発表された。ただし翌週の新聞折り込み広告では動員数が113,987人に修正されており、配給会社は「上映回数の再計算」による誤差と説明した[31]。
再上映・テレビ放送
本作は1998年にリバイバル上映され、[[BSジャパン]]では“計量回”として前半を分割して放送したとされる[32]。視聴率は特番として公表され、平均で9.6%を記録したと報じられたが、同時期の別番組の掲載データが欠落していることが後から指摘された[33]。
海外公開
海外では翻訳版タイトルを変え、英語圏では「Mine of Martial Justice」と名付けた配給方針が採られた[34]。ただし米国配給会社のプレスリリースには、ロゴの鉱山アイコンが“勝負の拳”に置き換えられている画像が掲載されており、現地で「宣伝が過剰に寓話的」と話題になった[35]。
反響[編集]
批評
批評では、必殺技の演出よりも“勝負のルール化”が新しかった点が注目された[36]。一方で、算術回路の説明が長い場面ではテンポが崩れるとの指摘もあり、作中の独白が地質用語に寄っていることが読後感を重くしたとされる[37]。
受賞・売上記録
本作は[[ゴング・ホラー映画祭]]で最優秀アクション賞を受賞し、続いて[[日本アニメーション協会]]の年次審査で技術部門にノミネートされた[38]。興行収入については、国内で約12.8億円、配給収入が約6.1億円とされる[39]。
ただし当時の業界紙では、配給収入の内訳に「館内物販(炭塵風味ラムネ)」が計上されていると書かれ、純粋な興行成績と混同されていた疑いが持ち上がった[40]。この混同はのちに修正され、売上資料には“飲料は販促費として分離”されたと追記された[41]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送では、テレビ局側が「口論を数式で翻訳する」というテーマに着目し、視聴者向けコーナーを設けたとされる[42]。[[フジテレビ系列]]の深夜枠では、番組内でダショ計量の“3つの判定”だけが実演された。
視聴者参加企画では、架空の標準単位として「ダショ(dasho)」が配布され、投票結果は次回予告の背景CGに反映されたという[43]。この試みは、後年の放送作家によって「作品というより、集団の言い分を整列させる装置だった」と評された[44]。
なお、ある回で画面右下に表示された小さな注意書きには「ダショは重量ではない」とだけ書かれており、視聴者の間で“じゃあ何なんだ”という考察が広がった[45]。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの
本編に関連して、[[ダショマイン]]の必殺技シーンを収録したビジュアルガイド「鉱物発光撮影記録」や、技の手順を遊べるボードゲーム「勝負の算盤(さんばん)」が発売された[46]。さらに映画の前売券特典として配布された「廃坑地図(折りたたみ式)」は、折り目の位置が台詞の間合いに対応しているとされ、ファンの間でコレクション化した[47]。
派生作品
派生として、主人公の“算術回路だけ”に焦点を当てた短編アニメ「ダショ計量講座」も制作された。こちらはあくまで実務講座風に作られ、声優が真面目に“言い分の書き方”を読み上げる形式が採られた[48]。
一部の店舗では、限定で「炭塵風味ラムネ」が再現販売されたが、味の再現性が低いことが話題になり、後に味を“再計量”した改訂版が出たとされる[49]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺ヨシヒコ「『格闘超人ダショマイン』製作メモ(第1回査読)」『日本アニメーション技法誌』Vol.34 No.2, 1996.
- ^ 林田マコト「打撃の間合いとBPM108の相関について」『音響演出研究』第7巻第1号, 1997.
- ^ 山根リサ「廃坑跡表現における粉塵テクスチャの工学的整理」『美術素材工学』pp.112-130, 第3巻第4号, 1998.
- ^ 配給会社年報編集部「日本陽気配給における再上映戦略と館内物販の計上基準」『映画流通年報』pp.58-79, 1999.
- ^ 音羽レン「ベル発声の研究と台詞子音の整列」『声の科学と演技』pp.201-219, 2000.
- ^ 日本アニメーション協会「1996年度 技術部門ノミネート作品一覧と技術要旨」『協会報』Vol.12 No.1, 1996.
- ^ 高崎市文化財保護課「廃坑跡の保存と観光導線の再編—アニメーション影響調査」『群馬地域史研究』第18巻第3号, 2001.
- ^ S. Nakamura「Rule-Driven Fights in Late-Nineties Japanese Animation」『Journal of Martial Narrative』Vol.9 No.2, pp.33-55, 2002.
- ^ M. Thornton「Mining Metaphors and Juridical Rhythm in Dashomine」『International Review of Animation Studies』第5巻第2号, pp.1-20, 2003.
- ^ 『ゴング・ホラー映画祭 受賞記録集(誤記訂正版)』[[ゴング・ホラー映画祭]]事務局, 1996.
外部リンク
- ダショマイン公式アーカイブ
- 北極星メディア作品資料室
- 日本陽気配給 上映記録データベース
- 地図研究所セキスタ 画像館
- ゴング・ホラー映画祭 受賞ログ