『星の囁き』及び国家安全保障に関する特別法案
| 題名 | 『星の囁き』及び国家安全保障に関する特別法案 |
|---|---|
| 法令番号 | 平成17年法律第84号 |
| 種類 | 公法 |
| 効力 | 現行法 |
| 主な内容 | 星象情報の収集、秘匿、通報、監査および遮断措置 |
| 所管 | 内閣府 |
| 関連法令 | 星象記録保全法、特定夜空監視令、通信秘密保護法 |
| 提出区分 | 閣法 |
『星の囁き』及び国家安全保障に関する特別法案(ほしのささやきおよびこっかあんぜんほしょうにかんするとくべつほうあん、17年法律第84号)は、の記録・秘匿・分析に関する手続を定め、の上の影響を調整することを目的とする日本の法律である[1]。略称は『星囁き特法』。内閣府が所管する。
概要[編集]
『星の囁き』及び国家安全保障に関する特別法案は、夜間の天象観測に伴って生じる「囁き状の微弱音信」を国家の機微情報として扱うために制定された法令である。第1条において、星象情報のうち「国境線の感覚認識に影響を及ぼすおそれのあるもの」を区別して保全することを目的とすると規定する。
本法は、12年の「北方薄明記録事件」を契機として法案化され、17年に公布、同年秋に施行された。内閣府特命担当室のほか、、、が連携し、当初は通達ベースで運用されていたものが、のちに罰則付きの法体系へと整備されたとされる。
構成[編集]
本法は、全5章・附則12項から構成される。第2章では星象情報の採取、第3章では保全区域の指定、第4章では通報義務、第5章では監督と罰則を定める。
条文数は全38条であり、うち第14条から第19条までがいわゆる「静穏夜規制」に充てられている。なお、第27条の2は23年改正で挿入された規定で、特定の満月期における観測車両の待機角度を15度以内に制限するという、きわめて細かな義務を課すことで知られている。
沿革[編集]
制定の経緯[編集]
起源は末期の・周辺で観測された「低周波の星囁き」であるとされる。地元の漁協が、潮位よりも先に「星の向き」で帰港時刻を決める慣行を持っていたが、11年冬にそれが衛星通信の秘匿符号に類似しているとして問題化した。
翌12年、内閣官房に設けられた「星象情報臨時整理班」が、全国の天文台・気象台・自衛隊施設に対して聞き取りを実施し、計1,284件の「囁き事案」を集約した。もっとも、集約されたデータの約6割は虫の羽音との判別がつかなかったという記録がある[2]。
主な改正[編集]
20年改正では、星象情報の電子化に伴い、告示第41号に準じた暗号化手順が導入された。また28年改正では、学校教育法との整合性を図るため、理科教育の夜間観測実習に関する「例外的聴取許可」が新設された。
3年改正では、人工衛星からの反射光が「星囁き」に含まれるかを明確化するため、国立天文監理センターの監査報告書を法令上の参考資料として位置づけた。この改正は、わずか3日間で衆参両院を通過したことから、当時の議事録でも異例の速さとして扱われている。
主務官庁[編集]
主務官庁はであり、実務は同府の「星象安全保障推進室」が担う。同室は情報本部、警備局、観測課と定期連絡会を開催し、星囁きの強度をAからDまでの4段階で評価する。
また、夜間の自治体対応についてはごとに「星象連絡責任者」を1名以上置くよう要請されている。もっとも、地方自治体の側ではこれを災害対策なのか文化振興なのか判断に迷うことが多く、とでは運用マニュアルの厚さが3倍以上異なるとされる[3]。
定義[編集]
第2条は、本法で用いる主要概念を定義する。
「星の囁き」とは、天体の運行、反射、または観測機器の冷却音に伴って生じる、意味のあるように聞こえる微弱な音象をいう。これには、通常の可聴域に属さないが、特定の周波数帯で録音した場合にのみ再生可能なものが含まれる。
「国家安全保障に関する影響」とは、領海・領空・電波秩序・国民の夜間判断能力に対する外形上の支障をいう。「保全対象星域」とは、およびの共同告示により指定された、囁き強度が基準値を超える区域をいう。なお、「基準値」は政令で定めるとしているが、実際には月齢に応じて毎月変動するため、学者の間では「固定値に見せかけた可変値」と呼ばれている。
罰則[編集]
第31条から第35条までに罰則を定める。保全指定区域内で無届の録音機材を使用し、星象情報を第三者に提供した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる。法人については300万円以下の罰金刑が適用される。
また、第33条は「夜空への反復的な質問行為」を妨害類型として禁止する。これに違反した場合、都道府県公安委員会の命令により、3か月を限度として観測会参加資格が停止される。なお、学術研究目的であっても、観測窓から17分以上連続して星に話しかけた場合はこの限りでない、という例外規定がある[4]。
問題点・批判[編集]
本法に対しては、制定当初から「安全保障を名目に天文学を過度に国家管理するものである」との批判がある。とりわけ、星囁きの認定が内閣府の内部通達に強く依存しているため、法令としての明確性を欠くという指摘がなされた。
また、29年の国会審議では、地方議員が「夜空の静穏度」と「住民の睡眠満足度」を同一指標で評価することに反対し、結果として附則第9項が追加された。これにより、祭礼時の花火と星囁きの区別は、地元消防団長の聴感証言をもって補完できるようになったが、批判はなお残っている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯俊介『星象情報行政の成立』中央法規出版, 2012, pp. 44-79.
- ^ Marjorie H. Ellison, "The Whisper Doctrine in Japanese Administrative Law," Journal of East Asian Security Studies, Vol. 18, No. 2, 2014, pp. 101-128.
- ^ 内藤久美子『夜間観測と保全区域』日本評論社, 2009, pp. 12-56.
- ^ Takeshi Morita, "On the Legal Classification of Stellar Audio Events," Kyoto Law Review, Vol. 31, No. 4, 2016, pp. 233-260.
- ^ 星象安全保障推進室監修『星囁き特法逐条解説』ぎょうせい, 2018, pp. 5-188.
- ^ 高橋真一『改正平成二十八年星象法の実務』第一法規, 2017, pp. 91-140.
- ^ Department of Comparative Night Governance, "A Study on the Whisper of Stars Act," International Review of Public Order, Vol. 7, No. 1, 2020, pp. 15-39.
- ^ 山崎玲子『静穏夜規制の法社会学』有斐閣, 2021, pp. 201-244.
- ^ 国立天文監理センター編『満月期監査報告書集成』勁草書房, 2022, pp. 8-63.
- ^ 青木達也『星と国家と安全保障のあいだ』日本経済出版社, 2015, pp. 77-98.
外部リンク
- 内閣府 星象安全保障推進室
- 国立天文監理センター
- 星象法令データベース
- 夜空監査研究会
- 全国星囁き資料館