ここぽん
| 名称 | ここぽん |
|---|---|
| 界 | 動物界 |
| 門 | 鳴嚢門(めいのうもん) |
| 綱 | 環鳴綱(かんめいこう) |
| 目 | 環輪目(かんりんもく) |
| 科 | ここぽん科 |
| 属 | Kokopon |
| 種 | K. chirpuformis |
| 学名 | Kokopon chirpuformis |
| 和名 | ここぽん |
| 英名 | Kokopon |
| 保全状況 | 国内準絶滅(想定) |
ここぽん(漢字表記、学名: ''Kokopon chirpuformis'')は、に分類されるの一種[1]。
概要[編集]
ここぽんは、に分類されるであり、体表に連なる環状構造から発する「こ・こ・ぽん」と段階的な音列を特徴とする動物である[1]。音は単なる鳴き声ではなく、湿度や足場の硬さに応じて変調される通信手段とされている。
本種は、北太平洋岸の霧帯林で断片的に観察されてきたが、1890年代後半にへ生息場所を移した個体群が記録を増やしたとされる[2]。この「塔こぽん」個体群は、のちに地方自治体の広報資料にも登場し、観光導線に組み込まれたという逸話が残っている[3]。
一方で、近年は発信音の解析から個体数推定が試みられているが、推定値がしばしば「観測者の歩行速度」に比例して揺れることが指摘されている[4]。このためここぽんは、保全生物学の対象であると同時に、計測工学の教材としても扱われているとされる。
分類[編集]
ここぽんはに属し、環状の器官を持つことからに分類される[5]。環鳴綱の中でも、音列が一定周期で折り返す性質はの診断形質として位置づけられている。
は、同音節反復の頻度が高い系統群をまとめた分類群であり、ここぽん属はその中で「二相停止」を示す系統に特徴づけられる[6]。つまり、音が最初の二回で止まり、直後に「ぽん」を含む第三相が必ず出現する型が、属としての同定根拠とされている。
ここぽん属は単型とする見解が多いが、亜種「ココポン・クラビペス」(音の終端が鋭い系)を認める研究者もいる。ただしこの亜種の存在は、同時期に複数の観測員が同じ回数(たとえば1日17往復)で誘導した結果にすぎないのではないか、という反論もある[7]。要するに、分類学的な見かけが人為的な条件で作られている可能性が指摘されている。
形態[編集]
ここぽんの体長は、平均で約18.4 cmとされるが、報告のばらつきは±4.9 cmである[8]。これは個体が「環状クッション」を展開する際に体表面積を変えるためと説明されている。
体表は半透明の薄膜で覆われ、その下に「環輪(かんりん)」と呼ばれるリング状の支持組織が並ぶ。環輪は音の反響板として働くと考えられており、外観上はゼリー状の輪郭が連なるように見えるとされる[1]。
また、ここぽんは耳介らしき突起を持たない一方で、前肢付け根に「嚢(のう)」と呼ばれる鳴嚢があり、ここに空気ではなく微細な霧粒を保持してから発音する行動が観察される[2]。このため、乾燥した室内では鳴嚢が正常に機能しないとされる。
さらに、足跡は円形に見えるが、実際には左右非対称の微細な段差が含まれていることが分かっている。国立研究機関の報告では、段差の差が平均で0.23 mmであるとされ、同一個体の「足跡ID」同定に応用されている[9]。ただし、この0.23 mmという数字は、測定器の校正値に依存して変動した可能性があると、後年の編集者がこっそり追記している。
分布[編集]
ここぽんはの沿岸部での観察が中心であり、とくに北東部の霧帯域から津軽側の斜面林にかけて「断続的な生息が観測されている」[10]。分布は連続的ではなく、観測記録が「20〜30 kmごとに点在」する傾向を示すとされる。
環境要因としては、霧の発生頻度と、地表の苔が保持する微水分が関連すると考えられている。気象庁系の内部資料では、霧日数が年間約112日の年は記録が増え、逆に約74日の年は報告が減るとされる[11]。
ただし、分布が塔へ吸い寄せられる現象も知られている。特定のにある旧式のでは、塔の基壇にここぽんが集まり、夜間に音列を同期させる行動が複数回記録されたという[3]。この事例は「都市でも霧が作られれば生息可能」という解釈を補強するものとして引用された。
一方で、都市部の記録は観測員の導線(たとえば階段の角度)に影響される可能性もあるとされ、自然分布を過大評価しているのではないか、という指摘がある[4]。ここぽんの分布研究は、地理学よりも計測学との境界領域に置かれているとされる。
生態[編集]
食性[編集]
ここぽんの食性は、苔類と微細な浮遊粒子を併用する「霧苔摂食型」とされる[12]。観察では、鳴嚢へ微霧粒を保持した後に、その粒に付着した微生物を舌状の器官で回収する様式が報告されている。
具体的には、胃内容物から由来の微片が検出される一方、単純な藻類のみではなく、霧に含まれる塩分を介して繁殖した菌叢(きんそう)を摂取している可能性が指摘されている[6]。この説では、塩分濃度が摂食回数に影響し、乾塩度指数が「1.6」を超えると鳴嚢の回転率が上がるとするモデルが提示された。ただしこの指数の定義は資料内で明示されておらず、編集側から「要再現」との注記が添えられたという経緯がある[7]。
繁殖[編集]
繁殖期は霧帯が最も厚くなる時期、すなわち概ね6月下旬から8月中旬とされる[10]。ここぽんは地表の苔に半球状の産卵嚢(のう)を作るが、その大きさは外径約3.1 cm、内径約2.6 cmと報告されている[8]。
卵の保温は音によって行われると考えられており、親が「こ・こ・ぽん」を一晩に平均で392回反復することで内部温度を一定に保つとされる[2]。ただし、この392回という値は観測方法により±60回程度揺れるとされ、導入期の観測者の足音が発音回数を増減させた可能性がある[4]。
また、繁殖嚢の配置はコロニー内で同心円状になる傾向があるとされ、中心からの距離が増えるにつれ「ぽん」の音圧が下がるという。音圧が下がる個体は逆に捕食リスクを下げる可能性があるが、因果関係は未確定とされている[6]。
社会性[編集]
ここぽんは単独行動が基本であるが、繁殖期には小規模な「音輪(おとわ)」を形成するとされる[1]。音輪は半径約12 m以内で同調し、音の第三相(ぽん)だけがほぼ揃うと報告されている。
この同調の目的は、捕食者の聴覚を混乱させる「囮同時発音」ではないかと考えられている。実際、同調が乱れると一定時間内に接近者が増えたという観察例があり、研究者は「同期破れ=安全度低下」と記述した[13]。
一方で、音輪の形成には人間の生活リズムが影響したという奇妙な証拠もある。旧の維持点検が行われた週に音輪の同期率が上がり、点検がなかった週には下がったとする記録が残っている[3]。ただし、それが本当にここぽんの社会性由来なのか、あるいは塔の振動が鳴嚢にフィードバックしたのかは確定していない。
人間との関係[編集]
ここぽんは研究対象であると同時に、地域文化に組み込まれたとされる。特に、霧の多い時期に「塔が鳴る」と言い伝えられた地域で、ここぽんの存在が神話化した経緯があると説明されている[3]。
明治末期から大正初期にかけて系の観測員が霧日数の異常を説明するために仮説モデルを作った際、観測機器の近くで規則的な音が聞こえたことが契機になったとされる[11]。のちにその音が「こ・こ・ぽん」と聞き分けられたことから、ここぽんという名称が現場で用いられたという。
さらに、戦後の観測所再整備では、ここぽんの鳴嚢が機器のマイク校正に悪影響を与えるとして、観測スタッフが一時的に防音板を設置した。ところが防音板の裏側にはここぽんが集まるようになり、「遮音=退避」ではなく「遮音=学習された集結条件」だった可能性が指摘されている[4]。
観光面では、音輪の同期が「夜の霧エンターテイメント」として紹介され、の自治体が「霧夜イベント」を企画したとする報道がある[10]。ただし、成功した年の記録が残っている一方で、失敗した年の記録が少ないという編集上の偏りがあるとされ、ここぽんは“都合よく見える生物”としても議論されている[13]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯緑『霧帯環鳴動物の音響同調機構』第3巻第2号, 海岸生物学会出版局, 1932.
- ^ Margaret A. Thornton『Acoustic Bottling in Nectary-Void Fauna』Vol. 14, No. 3, Northern Pacific Press, 1961.
- ^ 伊藤弘誠『気象観測塔に集う鳴嚢門の記録整理』気象塔研究年報, 第22巻第1号, 気象記録社, 1949.
- ^ 坂井真琴『歩行者リズムが音響誘因に与える影響に関する一考察』『環境計測ジャーナル』, pp. 201-219, 第7巻第4号, 1998.
- ^ 鈴木一郁『鳴嚢門の系統学的再検討(環鳴綱を中心に)』生物分類学通信, Vol. 9, No. 1, 1977.
- ^ Kokubun R. & Liao S.『Sympatric Ring-Phonemes and Predation Avoidance』Journal of Nonsense Ecology, Vol. 3, Issue 2, 2008.
- ^ 山本圭介『“クラビペス”亜種の再評価:観測設計と統計の観点から』自然観察史研究, 第5巻第1号, 2016.
- ^ 中村千鶴『ここぽん個体群の体サイズ変動と環輪展開』霧帯動物誌, pp. 33-48, 第18巻第6号, 2001.
- ^ 渡辺精一郎『足跡IDのための微細段差測定法:0.23mmの意味』計測技術論叢, pp. 77-95, 第12巻第3号, 1985.
- ^ 国立霧帯動物センター『霧日数と鳴嚢門記録の相関(年間112日モデル)』年次報告書, 2010.
- ^ A. H. Petrov『Fog-Particle Ingestion and Digestive Microbiota in Ring-Sound Fauna』International Journal of Aerosol Biology, Vol. 21, No. 2, pp. 501-515, 2014.
- ^ 小林悠人『防音板の裏に現れる集結条件:ここぽん事例の再検討』観測所運用学紀要, 第9巻第2号, 2020.
外部リンク
- Kokopon Field Notes Archive
- 霧夜音輪データベース
- 気象観測塔周辺生物リスト
- 環輪目形態図鑑(写本)
- 鳴嚢計測ガイド