こんな寒い日に冷房かけやがって(職質倶楽部のシングル)
| 名前 | 職質倶楽部 |
|---|---|
| 画像 | ShokushitsuClub_1998.jpg |
| 画像説明 | 1998年、渋谷区の防寒キャンペーン会場で撮影された宣材写真 |
| 画像サイズ | 250px |
| 背景色 | #F2E9D8 |
| 別名 | 職質クラブ、レイボウ反対同盟 |
| 出身地 | 東京都板橋区 |
| ジャンル | ポスト演歌、寒冷パンク、生活密着型ロック |
| 職業 | バンド |
| 活動期間 | 1996年 - 2007年、2014年 - |
| レーベル | 北風レコーズ |
| 事務所 | 有限会社シモヤケ企画 |
| 共同作業者 | 寒暖計三郎、渡会マサト |
| メンバー | 墨田トシオ、佐伯みどり、北沢レン |
| 旧メンバー | なし |
| 公式サイト | shokushitsuclub.jp |
「こんな寒い日に冷房かけやがって」(こんなさむいひにれいぼうかけやがって)は、日本の3人組バンド職質倶楽部の2枚目のである。冬季のにおけるとのやり取りを題材にした作品として知られ、のちに「気温逆走ソング」の代表例と評された[1]。
概要[編集]
職質倶楽部は、東京都北東部の深夜営業店と前の空気感を主題にした日本の3人組である。結成当初は路上寸劇と短いコーラスを組み合わせた「注意喚起芸」として活動していたが、1998年のシングル「こんな寒い日に冷房かけやがって」によって広く知られるようになった[2]。
同作は、車内の空調をめぐる些細な口論を、特有の湿度感との実感に置き換えた詞が特徴であり、当時の集計では最高13位を記録したとされる。なお、発売週の東京都内では最低気温が平年比で3.4度低かったことが、後年の再評価に拍車をかけたとの指摘がある[3]。
メンバー[編集]
職質倶楽部のメンバーは、結成時からの3人で固定されている。
墨田トシオはボーカルと木製の笛を担当し、深夜のコンビニ前での観察日記を歌詞に転用することで知られる。佐伯みどりはベースと副詞の選定を担当し、詞の中に「やけに」「なんとなく」などの曖昧語を積極的に残した。北沢レンはギターと交通安全標語の監修を務め、ライブではサポートメンバーとして交番勤務経験者を招いた回がある[4]。
3人はいずれも板橋区の区立文化会館で開かれた「冬の生活音コンテスト」出身とされ、ここでの審査員が後に北風レコーズの創設者となった。もっとも、本人たちはこの経歴を「半分くらいしか覚えていない」と述べている。
バンド名の由来[編集]
バンド名は、結成前夜にメンバーがの定食店で受けた職務質問に由来するとされる。冬なのに店内のが稼働していたことから、墨田が「こんな寒い日に冷房かけやがって」と漏らした一言がそのまま採用されたという[5]。
ただし、初期のファンクラブ会報では、別案として「夜回り三兄弟」「赤外線クラブ」「車内温度20度事件」が併記されており、最終的に最も不機嫌な語感を持つものが選ばれたとされる。なお、名称中の「倶楽部」は古典的な社交性を装うために付されたが、実態は月2回しか開かれない反省会であった。
来歴[編集]
結成[編集]
1996年、墨田、佐伯、北沢の3人は池袋のライブハウス「地下室マフラー」で初めて共演し、終演後の暖房設定をめぐる口論からバンドを結成した。結成当初はアコースティック編成で、曲間に「上着を脱ぐか着るか」の相談を挟む形式であった[6]。
翌年にはに所属し、同社の事務所で配布されていた湯たんぽを私物化したことが、のちのインディーズ時代の美談として語られている。
デビュー[編集]
1998年、北風レコーズからシングル「こんな寒い日に冷房かけやがって」でメジャーデビューした。レコーディングは横浜市の海沿いにある旧倉庫を改装したスタジオで行われ、冷房の設定温度を18度に固定したまま、演奏者の呼気を可視化するために霧吹きが使われたという[7]。
ミュージックビデオは、新宿区の喫茶店と東京駅八重洲口の待合室で撮影され、通行人が実際に寒そうな顔をしていたことから「演技を超えた現実」と評された。
1999年 - 2007年[編集]
1999年には2ndシングル「コートの裏地で季節を知る」が発売され、前作の延長として“服装で社会を読む”姿勢が明確になった。2001年のアルバム『検温と黙祷』は週間7位を記録し、累計売上枚数は約18.2万枚とされる[8]。
2004年にはを敢行したが、札幌公演のみ演出用の人工霜が過剰で、観客の半数がアンコール前に退席したと報じられた。2007年、メンバーは「季節との対話が一巡した」として活動休止を発表し、事務所の冷蔵庫に活動休止届を貼り付けた写真が話題となった。
再結成以降[編集]
2014年、地方FM局の特番『深夜の灯油事情』への出演を機に再結成した。再結成後は「霜柱の上で踊る」を発表し、ストリーミング再生回数が1億回を突破したと称される[9]。
2020年代には、自治体の防災イベントや東京都内の商店街イルミネーション点灯式にたびたび出演し、冬の生活歌謡を代表する存在として語られることが増えた。一方で、夏季にも同じ曲を歌い続けるため「季節感の暴力」と批判されたことがある。
音楽性[編集]
職質倶楽部の音楽性は、の語尾処理、の直情性、の観察眼を接合したものとされる。特にドラムの代わりに金属製のハンガーを叩く手法が特徴で、冬場の静電気をそのままリズムに変換している点が独特である。
詞世界は、交番前、コンビニの温蔵ケース、深夜バスの窓など、都市生活の隙間を淡々と描く。音楽評論家の浅野冬彦は「彼らの曲は寒さを歌うのではなく、寒さで人が少しだけ不機嫌になる瞬間を記録している」と評したが、その一方で「3曲に1曲は冷房のせいで始まる」とも指摘している[10]。
人物[編集]
墨田トシオは、インタビュー中に気温が20度を下回ると語尾が強くなる癖があることで知られる。佐伯みどりは、衣装の内側に使い捨てカイロを最大6枚貼ることを常とし、会場係からは「熱源」と呼ばれていた。北沢レンは、道端の自動販売機の飲料配置から人間関係を推理する特技を持ち、楽屋での会話がしばしば探偵小説のようになるという。
3人とも東京都の区立中学に由来する同級生ではないとされるが、ファンの間では「同じ冬を3回くらい共有した仲」として扱われている。なお、佐伯のみが試験に2回落ちた経験を持つという記述が会報にあるが、真偽は確認されていない。
評価[編集]
職質倶楽部は、発売当初こそ一発ネタ的な扱いを受けたが、のちに生活感覚を歌詞へ落とし込む技巧が再評価された。特に「こんな寒い日に冷房かけやがって」は、公共交通機関の空調問題、飲食店の温度設定、職場のエアコン権力学を1曲に圧縮したとして、から高く評価された[11]。
一方で、寒冷地の聴衆からは「冷房に怒る前に窓を閉めろ」といった実務的な感想も寄せられた。また、教育現場では家庭科教材として引用された例があるとされるが、出典は極めて少ない。
受賞歴・賞・記録[編集]
2001年、『検温と黙祷』で特別賞を受賞した。2004年には「最も冬支度を促した楽曲」として内表彰を受け、記念盾には温度計が埋め込まれていたという[12]。
記録面では、「こんな寒い日に冷房かけやがって」が発売から3か月でラジオリクエスト2万4,881件を集めたとされ、さらに2016年の再結成後にはサブスクリプション再生の65%が11月から2月に集中した。なお、同年の地方紙では「寒い日に聴くと余計に寒い」として半ば悪評も記録されている。
ディスコグラフィ[編集]
シングル[編集]
「こんな寒い日に冷房かけやがって」(1998年) - 代表曲。カップリングの「窓際の正義」は、エアコンの風向きをめぐる3人の議論をそのまま収録したものとされる。
「コートの裏地で季節を知る」(1999年) - 季節感を裏地に求める発想が話題となった。
「灯油切れのブルース」(2000年) - コンビニ前での待機時間を8分17秒延長した実話に基づくとされる。
アルバム[編集]
『検温と黙祷』(2001年) - 生活音を多用した初のフルアルバム。
『暖房戦線異状なし』(2004年) - バンドの音像が最も重くなった時期の作品。
『再び冷える頃に』(2015年) - 再結成後の楽曲をまとめた作品で、配信版のみボーナストラック「厚着の哲学」が収録された。
映像作品[編集]
『職質倶楽部 冬の現場100分』(2005年) - ライブ映像と楽屋の温度記録を交互に収めた映像作品。
『霜柱と照明』(2017年) - 2014年再結成後のツアーを追ったドキュメンタリー。
『深夜二時の空調会議』(2022年) - メンバーがホテルのエアコン設定を巡って30分揉める特典映像が収録された。
ストリーミング認定[編集]
2019年、代表曲「こんな寒い日に冷房かけやがって」は、国内主要配信サービスにおいて累計1億回再生を突破したと発表された。北風レコーズの内部資料では、再生の多くがからに集中し、特に東京メトロの車内で聴かれた割合が高かったという[13]。
また、同曲は「音量を上げると実際に寒くなる気がする」という口コミにより、耳元再生の偏りが生じたとされる。なお、認定基準の詳細は公開されていない。
タイアップ一覧[編集]
「こんな寒い日に冷房かけやがって」は、の節電啓発CM、の車内マナー教材、ならびにの冬物衣料セールのBGMとして用いられたことがある。
また、2002年にはの車内放送キャンペーン「車内温度を見直そう」との非公式タイアップが成立し、アナウンス終了後にイントロが3秒流れる演出が施された。さらに、2021年には某家電量販店の「暖房機の前でも油断するな」企画で、バンドが等身大パネル出演した。
ライブ・イベント[編集]
職質倶楽部は、ライブでは会場の室温を実測し、その値によって曲順を微調整することで知られる。2004年の公演では、開演時の気温が8.6度であったため、アンコールが2曲増えたと記録されている。
また、2015年の再結成記念イベント『暖かいときに言いにくいこと』では、観客1,200人に対して使い捨てカイロ1,450個が配布された。なお、余った250個は物販で「温度の残骸」として販売され、完売したという。
出演[編集]
テレビではの深夜音楽番組に数回出演し、コメンテーターから「歌詞がすでに注意喚起」と評された。ラジオでは系番組のほか、深夜の交通情報番組で替え歌ジングルを担当したことがある。
映画では、ドキュメンタリー『交番の裏で会いましょう』に本人役で出演し、CMでは防寒インナーのキャンペーンに登場した。ただし、本人たちは「暖かさを売る仕事は性に合わない」と語っていたとされる。
NHK紅白歌合戦出場歴[編集]
2004年に『こんな寒い日に冷房かけやがって』で初出場した。歌唱中、ステージ袖の空調が演出上の都合で強められた結果、墨田が最後のサビで本当に声を震わせたため、放送後に「演技ではない迫真」と話題になった[14]。
2005年は辞退したが、2016年の再結成後に再び企画枠で登場し、紅白史上まれに見る「カイロ配布のあるステージ」を実現した。
脚注[編集]
1. 代表曲の初出表記には揺れがあり、初期プレスでは「こんな寒い日にエアコンかけやがって」とも記された。 2. 当時のライブフライヤーでは「寒さ系ポップ」と分類されていた。 3. 気象データとの関連は、後年のファン有志による検証に基づくとされる。 4. ただし、交番勤務経験者の氏名は資料ごとに異なる。 5. この逸話は3人のうち誰が言ったかで解釈が分かれる。 6. 会場名の実在性については、複数の証言が食い違っている。 7. スタジオ名は後に改称されたとの記録もある。 8. 売上枚数は各種資料で1万枚単位の差がある。 9. 再生回数は非公開の推計値を含む。 10. 浅野冬彦は実在が確認されていない。 11. 評価の分岐は主に深夜放送の評論番組に由来する。 12. 表彰式の温度計は現在、事務所倉庫に保管されているとされる。 13. 配信サービス別の内訳は北風レコーズ内部資料による。 14. 放送用音声が後日修正されたかどうかは不明である。
参考文献[編集]
・山岸冬彦『都市の冷気と歌謡』北風出版、2003年。
・佐伯みどり『副詞の選び方と感情の温度』シモヤケ文庫、2006年。
・浅野冬彦『ポスト演歌入門』音路書房、2008年。
・石井あきら『路上の空調学』東京生活音研究所、2011年。
・M. Thornton, “The Sociology of Air Conditioning in Popular Music”, Vol. 12, No. 3, East Asia Sound Studies, 2014, pp. 41-68.
・渡会マサト『冬のためのアンプ設定』北風レコーズ刊、2015年。
・K. Bennett, “Unseasonal Hooks and Public Nuisance Pop”, Vol. 7, No. 2, Journal of Fictional Musicology, 2017, pp. 88-109.
・『職質倶楽部 公式会報 第14号』有限会社シモヤケ企画、2018年。
・高橋霜子『カイロの経済史』港南新書、2019年。
・“Why Are You Running the Air Conditioner on Such a Cold Day?” in The Encyclopedia of Mismatched Weather Songs, Vol. 4, 2021, pp. 210-214.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
北風レコーズ公式アーカイブ 職質倶楽部 公式ファンクラブ「冷房反対委員会」 深夜生活音博物館 データベース 東京冬季歌謡研究会 架空音楽年鑑オンライン
脚注
- ^ 山岸冬彦『都市の冷気と歌謡』北風出版、2003年.
- ^ 佐伯みどり『副詞の選び方と感情の温度』シモヤケ文庫、2006年.
- ^ 浅野冬彦『ポスト演歌入門』音路書房、2008年.
- ^ 石井あきら『路上の空調学』東京生活音研究所、2011年.
- ^ M. Thornton, “The Sociology of Air Conditioning in Popular Music”, Vol. 12, No. 3, East Asia Sound Studies, 2014, pp. 41-68.
- ^ 渡会マサト『冬のためのアンプ設定』北風レコーズ刊、2015年.
- ^ K. Bennett, “Unseasonal Hooks and Public Nuisance Pop”, Vol. 7, No. 2, Journal of Fictional Musicology, 2017, pp. 88-109.
- ^ 『職質倶楽部 公式会報 第14号』有限会社シモヤケ企画、2018年.
- ^ 高橋霜子『カイロの経済史』港南新書、2019年.
- ^ “Why Are You Running the Air Conditioner on Such a Cold Day?” in The Encyclopedia of Mismatched Weather Songs, Vol. 4, 2021, pp. 210-214.
外部リンク
- 北風レコーズ公式アーカイブ
- 職質倶楽部 公式ファンクラブ「冷房反対委員会」
- 深夜生活音博物館 データベース
- 東京冬季歌謡研究会
- 架空音楽年鑑オンライン