ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ
| 作品名 | ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ |
|---|---|
| 原題 | Gaochi–Masima Gorō Incident II |
| 画像 | 架空のキービジュアル(夜霧と黒い紙片) |
| 画像サイズ | 320px |
| 画像解説 | 主人公が《証文の欠片》を指で押しのばす場面 |
| 監督 | 渡辺精磐 |
| 脚本 | 渡辺精磐 |
| 原作 | 雲間スタジオ・原作部(後述する“資料監修”方式) |
| 製作 | 雲間スタジオ/蒼藍フィルム研究所 |
| 配給 | 白鷺映像配給 |
『ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ』(ごうぉち・ましまごろうそうどうつー)は、[[2011年の映画|2011年10月14日]]に公開された[[雲間スタジオ]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]。原作・脚本・監督は[[渡辺精磐]]である。興行収入は13億4,700万円で[1]、[[第29回旭月アニメ大賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
『ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ』は、架空の“旧家文書”をめぐる騒動を、法廷と大道芸の反復構造で描いた娯楽映画である。前作『ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅰ』で“真犯人”が宙吊りになったまま終わったことから、本作は「落下しない証拠」を主題に据えたとされる[1]。
作風は[[黒紙の演劇]]と呼ばれる編集上の癖を持ち、字幕が1行増えると場面転換が1フレーム遅れるなど、観客の体感に介入する仕掛けが多数取り入れられた。なお、この「フレーム遅延」は当時の視聴環境では再現不能であったとも指摘されている[3]。
物語の鍵は、主人公の[[真島吾朗]]が携える“ごうぉち式・証文読み取り機”と、[[太縁警備局]]の記録係が残した台帳の矛盾にある。社会的には、行政手続の“読み取りの癖”が市民の不安を増幅する現象として語り継がれた[2]。
あらすじ[編集]
市街地が霧で白く塗りつぶされる[[昭和]]末期の港町・[[長浜南港]]。真島吾朗は、行方不明になった父の署名が“偽造ではなく、文字の順番が逆だっただけ”だと主張する[4]。ところが、太縁警備局の監査官・[[志賀螢]]は、順番の入れ替わりを「意思の偽装」と断定し、吾朗を“騒動の二次発生源”として追跡した。
本騒動の中心には、旧家に伝わる《証文の欠片》がある。欠片は全部で7枚のはずだが、台帳上は「6枚+1枚(見えない)」という奇妙な表記が残っていた。吾朗は“見えない欠片”を探して港の倉庫へ向かうが、倉庫の扉は毎回開く方向が逆であり、さらに鍵穴の深さが「ちょうど18ミリだけ短い」と映像内で測定される[5]。
やがて吾朗は、行政と娯楽が同じ手つきで人を信じさせていることに気づく。太縁警備局の記録係は、真実を固めるためではなく、証言を“観客が納得する順番”へ並べ替えるための装置として台帳を使用していたとされる[6]。結末では、吾朗が最後の欠片を声に出して読む寸前で、文字が沈黙し、物語は“続きがあるように見える”余白だけを残して終わる。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
・[[真島吾朗]]:港町の小間物屋の息子。ごうぉち式・証文読み取り機を改造し、文字の“癖”を音に変換することで真偽を判別するとされる[7]。なお、本人の口癖「順番は嘘を食べる」は、台本上では15回登場し、平均間隔は約3分21秒と計測されたとされる(制作資料より)[8]。
・[[志賀螢]]:[[太縁警備局]]の監査官。厳格な記録主義者でありながら、記録の整合性より“社会の落ち着き”を優先する。吾朗と同じく旧家文書に深く関与していたと推定される[9]。
・[[太縁警備局]]記録係・[[桂戸織彦]]:台帳を編む職人。数字に異常なほど執着し、「人は数字が1つ欠けると、物語で埋める」と語ったとされる。劇中では、彼が鍵の“18ミリ不足”を測った回数が3回と描写される[10]。
その他[編集]
・[[長浜南港]]の倉庫番・[[浦田鶴次]]:扉の開閉方向が逆転する現象を“霧の層”のせいだと説明する。もっとも、その層の厚みが0.8センチメートルで固定されている点が後に議論になった[11]。
・[[雲間スタジオ]]の“資料監修”担当・[[草薙静馬]]:実在する史料ではなく、似た構造の地方紙を複製していたとされる。編集者は「出典は人間の記憶より遅い」とメモを残したという[12]。
声の出演またはキャスト[編集]
本作の声の出演(キャスト)は、公式発表によれば以下の通りである[13]。
・真島吾朗:[[日下部ハル]] ・志賀螢:[[小柳ユカ]] ・桂戸織彦:[[神谷ヒサト]] ・浦田鶴次:[[田辺キョウ]]
追加キャストとして、港の霧を表現する“声だけの登場人物”[[霧の案内人]]が含まれる。クレジット上は役名のみで、同一人物の声が複数オーディションを勝ち抜いた結果と説明された[14]。
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
・監督:[[渡辺精磐]] ・脚本:渡辺精磐 ・プロデューサー:[[小野寺英嗣]](雲間スタジオ) ・制作:[[雲間スタジオ]]、[[蒼藍フィルム研究所]] ・製作委員会:[[白鷺映像配給]]、[[港町書房]]、[[旭月メディア]]、[[太縁信用機構]]
スタッフの特徴として、脚本段階で“字幕の行数”を先に確定し、後からカメラワークを合わせる工程が採用されたとされる[15]。また、編集部は「視聴者の脳内補完を前提にしたリズム設計」として、後半の畳み掛けを“毎回60フレーム”で揃えたと記録している[16]。
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色・撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画は、前作の騒動が“結論の置き場を誤った”という批判を受けて立て直されたとされる。渡辺精磐は会見で「犯人より先に、証拠の呼吸を作る」と述べ、台帳と声のタイミングを同期させる方針を明かした[17]。
美術では、倉庫の扉を基準面から“左右どちらかに0.3度ずらす”手作業が繰り返された。彩色は[[霧色]]という独自工程名で管理され、塗料の粘度が毎日測定されたとされる。記録係の桂戸織彦が測定する18ミリ不足は、実在の金具寸法ではなく、制作スタッフが偶然見つけた古い定規の欠けから転用されたという逸話がある[18]。
音楽は[[星野マサキ]]が担当し、主題歌は[[『沈黙の欠片』]]。曲のサビは3回繰り返されるが、3回目の終止が意図的に“0.2拍だけ遅れる”よう制作されたとされ、ライブ収録版では聞き取りが難しくなるという[19]。
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
封切りは[[2011年10月14日]]の全国一斉公開で、初週は都市部で先行上映された。宣伝では“台帳の矛盾を探せ”という謎解き広告が展開され、映画館の入口に設置された質問票が1万2,304枚配布されたとされる[20]。そのうち、回答が一致したのはわずか9.7%だったという数字が、後に広報資料で話題になった[21]。
テレビ放送では[[2012年]]に特別枠で放送され、視聴率は8.6%を記録したとされる[22]。ただし、再現性の低い“フレーム遅延”の部分は、放送局の変換で吸収された可能性があると番組解説で触れられている[3]。
ホームメディアは[[Blu-ray Disc]]版が先行し、初回生産には《証文の欠片》型のブックレットが付属した。色調問題が指摘され、霧色の深度が視聴環境により変化する“仕様”として説明された[23]。海外では[[白鷺映像配給]]のライセンス網を通じ、英語圏での邦題はGaochi–Masima Gorō Incident IIとされた。
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、法廷劇と大道芸の反復構造が評価される一方で、「数字のこだわりが感情を置き去りにする」との指摘もあった[24]。一方で、字幕行数と間の設計に関しては“視聴者の記憶を編集する映画”として論じられ、大学の映像講義で取り上げられたとされる[25]。
受賞面では[[第29回旭月アニメ大賞]]で作品賞を受賞し、あわせて編集賞、作曲賞にもノミネートされた[2]。興行面では、興行収入13億4,700万円のうち、地方での伸びが大きく、[[長浜南港]]に近い地域で再上映が追加されたと報告されている[21]。
売上記録としては、レンタル開始からの2週間で視聴チャネル別の回転率が“平均1.31”を示したとされる。もっとも、この数値がどの店舗データに基づくかは明示されていないという[26]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送は地上波で[[2012年]][[11月]]に特番として組まれた。番組枠の説明では、原作の“台帳編集”部分を解説コーナーとして扱い、視聴者投稿で矛盾箇所の推定が行われたとされる[27]。
データとしては、関東地区の時間帯視聴率が9.1%、近畿地区が7.8%と報告された。地方局では字幕の位置調整が行われ、映画館とは異なる“間”が生じたとする視聴者の声もあり、SNS上で検証スレが立ったという[22]。
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品として、公式ガイドブック『[[沈黙の欠片]]解析帳』が刊行された。内容は、劇中の“鍵穴の18ミリ不足”や“霧色の深度管理”を、制作工程の言葉で再現した構成となっている[28]。
また、派生として小説『ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ—台帳の裏面』が出版され、吾朗が未読の文字をどう“保存”するかが追加で描かれたとされる。加えて、ゲーム化としてスマートフォン向けアプリ『欠片を読む—霧の章』が期間限定配信されたが、アップデートにより難易度が段階的に下がったとされる[29]。
企業コラボでは[[港町書房]]と連動し、レシートに“矛盾のヒント”を印字する試みがあった。もっとも配布条件が複雑だったため、実施店舗は3日間で撤収されたと報道された[30]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精磐「台帳編集から始まる法廷アニメ—『ごうぉち・真島吾朗騒動Ⅱ』の構造」『月刊映像儀礼』Vol.38第4号, 2012年, pp.12-29.
- ^ 小野寺英嗣「興行収入13億円台の裏側—字幕行数企画の反響」『日本アニメ産業年報』第17巻第2号, 2013年, pp.55-73.
- ^ 星野マサキ「“0.2拍の遅れ”が作る沈黙—主題歌『沈黙の欠片』の作曲意図」『サウンド・リズム研究』Vol.9第1号, 2012年, pp.101-118.
- ^ 草薙静馬「資料監修と“似せる出典”—雲間スタジオの新しい根拠設計」『地域史料学会誌』第44巻第3号, 2011年, pp.77-90.
- ^ 『第29回旭月アニメ大賞 公式記録集』旭月アニメ委員会, 2012年, pp.3-18.
- ^ 神谷ヒサト「声だけの霧—霧の案内人のオーディション履歴」『キャラクターボイス・レビュー』Vol.6第2号, 2012年, pp.33-48.
- ^ 英語圏版の配給資料「International Distribution Notes for Gaochi–Masima Gorō Incident II」白鷺映像配給, 2012年, pp.1-9.
- ^ 田辺キョウ「倉庫の扉はなぜ逆に開くのか—制作現場の0.3度調整」『美術監督の手帳』Vol.21第5号, 2011年, pp.140-152.
- ^ 小柳ユカ「検証された間—放送変換で消えるフレーム遅延」『テレビ演出研究』第12巻第1号, 2012年, pp.201-219.
- ^ 『嘘の出典大全(第2版)』編集部編、白鷺書房, 2014年, pp.250-252.
外部リンク
- 雲間スタジオ 公式アーカイブ
- 白鷺映像配給 作品ページ
- 旭月アニメ大賞 記録データベース
- 港町書房 解析帳特設サイト
- 霧色フォーラム(非公式ファン解析)