だらりー
| 名称 | だらりー |
|---|---|
| 英語表記 | Dalary |
| 分類 | 装身具・儀礼具・若者文化 |
| 起源 | 平安末期の結束具説、平成期再発見説 |
| 主な伝承地 | 京都市、横浜市、東京都渋谷区 |
| 使用目的 | 装束保持、注意喚起、集団識別 |
| 普及時期 | 1989年以降 |
| 関連組織 | 日本だらりー文化研究会 |
| 備考 | 一部の資料では『だらり紐』とも記される |
だらりー(Dalary)は、において初期から広まったとされる、長尺の布状装具である。もとはの古式結束法に由来するとされ、のちにの若者文化へ取り込まれて独自の意味を獲得した[1]。
概要[編集]
だらりーは、帯状または索状の素材を長く垂らすことで一定の効果を得るとされる、日本独自の民俗的装具である。一般には衣服の一部と誤認されやすいが、実際にはの寺社儀礼とのストリートファッションが奇妙に融合して成立した概念であると説明される[2]。
その用途は時代により大きく変化した。初期には風向きや足運びを示す視覚補助具とされ、のちに「疲れているように見える美学」を演出する装身法として再解釈された。この再解釈がの雑誌特集を契機に広まり、の一部店舗では月間平均1,800本以上が販売されたと伝えられている[3]。
歴史[編集]
起源伝承[編集]
最古の系譜は、後期に記されたとされる『結索雑録』に求められる。同書では、山伏が長い布を腰後方へ垂らし、道中での合図や祈祷の節目を示したことが記されており、これがだらりーの原型とされる[4]。
一方で、の老舗染織家・は、だらりーは本来、衣の端切れを無駄にしないための再利用技法であったと証言している。もっとも、この証言は52年に地元紙の聞き書きとして載ったのみで、学術的には要出典とされている。
平成期の再発見[編集]
現代的なだらりーの流行は、にの輸入雑貨店主・が、古布を用いた長垂れ飾りを店頭に吊るしたことに始まるとされる。これを見た美術大学生が『歩くときに遅れてついてくる布は、身体の余白を可視化する』と評し、翌年にはのクラブイベントで「だらりー」と命名されたという[5]。
にはの外郭研究班が、地方の祭礼衣装との比較調査を行ったが、報告書では「機能は不明ながら情緒的効能が高い」とのみ記され、逆に流行を後押ししたといわれる。なお、この調査は対象が7件しかなかったにもかかわらず、補遺で213件分の「類似事例」が追加されており、編集過程に不自然さがある。
制度化と普及[編集]
にはが発足し、長さ120cm以上、垂下角度15度以上、歩行時の揺れ幅が4秒周期であるものを「正規だらりー」とする暫定基準を公表した[6]。この基準は厳密すぎるとして批判された一方、全国の大学祭や商業施設での採用が進み、の一部商店街では「だらりーのある日曜」が月1回設けられた。
代には、スマートフォンの肩掛けアクセサリーと結びついた「電子だらりー」が登場し、充電ケーブル、鍵、マスコットを同時に垂らす運用が一般化した。研究会によれば、時点の国内推定保有者は約24万8,000人で、そのうち約3割が用途を説明できなかったとされる[7]。
構造と種類[編集]
だらりーの基本構造は、主体となる帯部、結節部、垂下部の三層からなると整理される。素材は絹、綿、和紙繊維、あるいは再生ポリエステルが用いられ、使用者の職業や季節によって長さが調整されるの専門店では、夏用に18cm短い『涼だらりー』、冬用に内部へ薄い鉛板を入れた『重だらりー』が販売されていた記録がある[8]。
分類としては、儀礼用の「式だらりー」、日常用の「街だらりー」、強調誇示用の「盛りだらりー」、そして極端に長く、階段で踏まれることを前提とした「階段だらりー」がある。とりわけ階段だらりーは周辺で人気を博したが、転倒事故が年間17件発生したため、に鉄道系施設では事実上の自粛対象となった。
社会的影響[編集]
だらりーは、単なる流行を超えて「疲労の可視化」という独特の美意識を社会に浸透させたと評価される。若者は、きちんと整いすぎない外観を通じて勤労倫理への軽い抵抗を示したとされ、の調査では、だらりー着用者の自己評価が平均0.8ポイント上昇したという[9]。
また、広告業界では、商品説明を省略しながら長く垂らすだけで注意を引けるため、店頭サインやの催事装飾に流用された。特にの某化粧品店では、天井から垂らしただらりー型リボンが来店者数を前月比12.6%押し上げたと報告されているが、同時に「通行動線を妨げる」との苦情も相次いだ。
批判と論争[編集]
だらりーは、その起源の曖昧さゆえに、しばしば「後付けの伝統」であると批判されてきた。のは、だらりーの系譜資料の多くが以降に集中的に整備されたことから、民俗学的な真正性に疑義を呈している[10]。
これに対し研究会側は、伝統は保管庫から発見されるのではなく、着用によって成立すると反論している。もっとも、同研究会の年報には版と版で会員数が218名から「おおむね240名」に変動しており、集計の信頼性をめぐる小さな論争が続いている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 藤堂栄助『結びと垂れの民俗史』京都民俗出版会, 1996.
- ^ 松浦由紀夫『街角のだらりー現象』横浜都市文化研究所, 2002.
- ^ 小野寺真理「だらりーの真正性と再構成」『民俗文化研究』Vol. 18, No. 2, pp. 41-67, 2011.
- ^ A. Thornton, "Hanging Aesthetics in Post-Industrial Japan," Journal of Urban Ritual Studies, Vol. 7, No. 1, pp. 12-39, 2014.
- ^ 渡辺精一郎『平成装身具概論』青磁書房, 2008.
- ^ 日本だらりー文化研究会編『正規だらりー基準書 第3版』同会出版局, 2010.
- ^ 宮下理恵「垂下角度と歩行意識の相関」『身体文化学報』第9巻第4号, pp. 88-109, 2016.
- ^ K. Belmont, "Textile Residue and Public Affect," Contemporary Folklore Review, Vol. 11, No. 3, pp. 201-228, 2018.
- ^ 文化庁外郭研究班『地域祭礼衣装における余白表現の比較研究』調査報告第12号, 1994.
- ^ 『だらりーと都市の午後』東京都市史資料館, 2020.
外部リンク
- 日本だらりー文化研究会
- 都市装具アーカイブス
- 渋谷ファッション民俗館
- 京都古結束資料室
- 長布文化データベース