てれれてっれれー
| 名称 | てれれてっれれー |
|---|---|
| 分類 | 合図音、擬音句、半制度的通知音 |
| 初出 | 1978年頃とされる |
| 発祥地 | 東京都千代田区の仮設試験室 |
| 主な用途 | 達成通知、警告の婉曲化、場の空気の切替 |
| 関連機器 | 卓上端末、家庭用タイマー、初期の着メロ試験機 |
| 提唱者 | 野辺山音響研究会 |
| 普及期 | 1983年 - 1994年 |
| 特徴 | 末尾が上昇調で終わることが多い |
| 異名 | 三拍半ベル |
てれれてっれれーは、における間投的な合図音のひとつで、特に以降のとのあいだで定着したとされる擬音句である[1]。通知、発見、失敗、または妙な自信の到来を告げる音として広く知られている。
概要[編集]
てれれてっれれーは、短い旋律と発話のあいだに位置する音象徴表現であり、音だけで意味を伝えるために用いられる。もともとはの小規模なで用いられた内部合図が、後にやに転用されたものであるとされる[2]。
一般には「何かが始まる」「何かを思い出した」「今のはやり直しになる」といった、文脈依存の感情を通知する機能を持つ。なお、音形が定着したのは後半であり、当初は「てれれ、てっ、れれー」と間に微妙な拍の揺れを含むものが標準とされたが、のちに民間で短縮され現在の形が優勢になったと推定されている[3]。
成立の背景[編集]
この語が生まれた背景には、後半の国産電子機器にみられた「通知音の差別化」競争がある。特にの簡易送出試験用端末と、製の卓上アラームが同時期に開発され、どちらも似たような三拍子の試験音を採用していたことから、現場で区別のために擬音化されたのが始まりであるとする説が有力である。
もっとも、初期資料には「テレレ点灯」「テレレ試験」など表記揺れが多く、最初から音として固定されていたわけではない。野辺山音響研究会の会報『可聴端緒』第4号には、試験担当のが「語尾を上げないと責任者が来る」と述べた記録があり、この一文が後年の“てれれてっれれー”の終止上昇を決定づけたとされる[4]。
歴史[編集]
前史[編集]
前史として、末期の学校や工場における呼び出しベル文化がある。とくに立川市の一部校舎では、昼休み終了前に三度鳴るベルが「てれれ」に近いと児童に評され、そこから「音で状況を読む」習慣が形成されたという[5]。この時期の記録は断片的であるが、黒板に残された「てれれ不可」「本日はてれれ中止」といった謎の板書が複数発見されている。
また、の堺市の業務用タイマー導入実験では、終了音が長すぎるため誰も止めに行かず、結果として会議が14分延長された。この失敗が「軽快で、しかし無視できない音」の必要性を生み、のちの設計思想に影響したとみられている。
普及期[編集]
普及の決定打となったのは、にで行われた実験放送である。同放送では、番組終盤に短いファンファーレを流した直後、字幕で「てれれてっれれー」と表示する演出が採用され、視聴者の23.8%が実際の番組名だと誤認したという[6]。これ以後、擬音句は視覚表示と一体で流通するようになった。
同時期にの玩具卸売業者が、紙製の「てれれカード」を景品付きラムネに封入したことで、子ども文化にも浸透した。カード裏面には「鳴らすと自分が少し有能に感じます」と印刷されており、当時の文具研究家はこれを“自己肯定の最小単位”と呼んだ[7]。
制度化[編集]
にはの外郭団体が、家庭用音響機器の試験規格に「三拍半通知」の推奨例としててれれてっれれーを掲載したとされる。ただし、同規格は企業ごとの解釈差が大きく、系はやや柔らかく、系はきわめて鋭い音色を採用したため、地方紙では「同じなのに怖さが違う」と報じられた。
のいわゆる“無音訴訟”では、集合住宅で深夜に鳴る冷蔵庫の終了音がてれれてっれれーに酷似しているとして近隣紛争が発生した。判決文には「本件音響は、聴取者に対し過度な達成感を与えるおそれがある」との珍妙な一節が含まれ、以後、メーカー各社は終了音を0.3秒ずつ短く調整するようになったとされる[要出典]。
音響構造[編集]
てれれてっれれーの特徴は、前半の三連打に対して末尾がやや長く、しかも語尾が上昇する点にある。音響分析では、基本周波数が平均で412Hzから487Hzへ滑らかに上昇し、最後の「ー」で一瞬だけ無意味な希望を演出することが確認されている[8]。
研究者の間では、この上昇が「完了」ではなく「未完の完了」を示すと解釈されている。つまり、作業は終わったが安心してよいかは別問題である、という日本的な運用感覚を音に落とし込んだものである。なお、三拍目の直後に0.08秒の沈黙を置くタイプは「関係者用」と呼ばれ、職員室や編集室で好まれた。
社会的影響[編集]
この音はやがて、単なる擬音を超えて社交辞令や自己演出にも使われるようになった。たとえばのでは、締切を無事に通過した編集者が机を軽く叩きながら「てれれてっれれー」と言うことで、周囲に進捗を誇示する慣習があったという。
また、の一部IT企業では、障害復旧時の社内チャット定型文として採用され、障害対応が完了していないのに「てれれてっれれーです」と送る社員が続出した。これにより、音のもつ祝祭性と危険性が同時に認識されるようになった。学術的には、との両方から研究対象となり、の公開講座では「達成音はなぜ少しだけうるさいのか」という講義が満席になったという。
一方で、学校現場では通知音として使われるたびに児童が走り出すため、安全管理上の問題が指摘された。これを受けて一部自治体では、てれれてっれれーの代替として「てれれ……」に抑えた緩和版が採用されたが、子どもたちはそれを“さみしい版”と呼んでいた。
批判と論争[編集]
批判の中心は、第一に「意味が多すぎる」ことである。ある研究では、同一のてれれてっれれーが、成功通知、誤作動、来客予告、そして単なる気まずさの回避にまで転用されており、コミュニケーション上の負荷が高いとされた[9]。
第二に、1990年代後半の着メロ化によって本来の文脈が失われたという批判がある。特にの普及初期、電車内でこの音が鳴るたびに周囲が「何か達成された」と勘違いし、その後の沈黙で気まずくなる事例が相次いだ。なお、ある自治体のアンケートでは「聞くと頑張った気になるが、実際には何も終わっていない」と回答した者が41.6%に達したとされる[10]。
さらに、音源の原典をめぐりとのあいだで所有権争いが起きたが、最終的には「共同文化財」として扱われることになった。ただし、保存会側が保管していた初期テープは、再生すると必ず最後が少しだけ巻き戻る欠陥があり、この不完全さこそが本来の魅力だとして逆に評価された。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 小野寺清隆『可聴端緒とその周辺』野辺山音響研究会, 1985.
- ^ 高橋真由美『日本の通知音文化史』青丘出版, 1992.
- ^ Margaret L. Harlow, "Semiotic Bells in Postwar Japan", Journal of East Asian Media Studies, Vol. 8, No. 2, 1998, pp. 41-67.
- ^ 渡会俊介『家庭用電子機器と擬音の制度化』電波評論社, 2001.
- ^ S. K. Everett, "The Half-Beat Signal and Its Domestic Adoption", Sound & Society Quarterly, Vol. 14, Issue 1, 2004, pp. 12-29.
- ^ 中村悠介『てれれてっれれーの音響分析』日本音声学会誌, 第27巻第3号, 2007, pp. 155-173.
- ^ 藤井紗季『放送試験音の民俗学』みすず書房, 2011.
- ^ Haruto Kinjo, "When the Alarm Smiles Back", Tokyo Studies Review, Vol. 22, No. 4, 2015, pp. 201-218.
- ^ 山岸千晶『無音訴訟判決集』中央法規出版, 2018.
- ^ A. B. Mercer, "Terere Tt Reree and the Aesthetics of Almost-Finished Work", International Journal of Ludic Acoustics, Vol. 3, No. 1, 2020, pp. 5-18.
- ^ 『てれれてっれれー白書 令和改訂版』一般財団法人 合図音研究機構, 2022.
外部リンク
- 野辺山音響研究会アーカイブ
- 合図音文化センター
- 日本擬音保存協会
- 東京音声民俗資料館
- 三拍半ベル普及委員会