どわーw
| 読み | どわーだぶりゅー |
|---|---|
| 使用開始 | 1998年頃(諸説あり) |
| 発祥地 | 東京都千代田区・神田の深夜型PC喫茶とされる |
| 意味 | 驚き、失笑、困惑の混合感情 |
| 語構成 | 擬音「どわー」+ 笑いを示す「w」 |
| 主な媒体 | 掲示板、メールマガジン、携帯掲示板、SNS |
| 関連文化 | ネットミーム、煽り、実況文化 |
| 代表的研究 | 国立情報表現研究所『感嘆表現の変遷調査』 |
どわーwは、主としての圏で用いられる、驚愕・失笑・事故的感嘆を同時に表す感嘆表現である。語末の「w」が過剰な自嘲を示すことから、半ば冗談、半ば防衛反応として定着したとされる[1]。
概要[編集]
どわーwは、驚いたときに出る素朴な叫びを、特有の自嘲記号「w」で包み込んだ表現として説明される。単独で用いられることもあるが、実際には「やばい」「無理」「草」などの後ろに添えられ、感情の振れ幅を増幅させる役割を持つとされる。
語感としては古風な擬音に見える一方、成立は比較的新しく、末の内の深夜掲示板文化に由来するという説が有力である。なお、初期の用例では「どわ〜w」「どわぁw」など表記揺れが多く、編集者間で長年にわたり要出典扱いの議論が続いたという[2]。
歴史[編集]
起源と初期の用法[編集]
最初期の「どわーw」は、の中古ショップ「秋桜パソコン倶楽部」近くの深夜型掲示板において、春に書き込まれた一連の実況ログに見られるとされる。当時は接続が主流で、表示遅延のため、投稿者が驚きを短く誇張して書く必要があったというのが通説である。
発案者については、フリーライターの、通信機器販売員の、あるいは当時17歳だった匿名ユーザー「M-17」など複数の説がある。特に佐伯説では、彼女が顧客対応中に「どわー、ウケるw」と発話したのを店内の掲示板管理者が文字起こししたことが起点とされるが、裏付けとなる領収書とログの照合が一致しないため、現在も議論がある[3]。
一方で、の『月刊ネット文体』第4号には「どわーwは驚きと照れを同時に包摂する稀有な語である」とする匿名評が掲載されており、これが外部媒体における最古級の紹介例とされる。もっとも、同号の編集後記には「執筆者が『どわー』を『ドワーフ』の略語と誤解していた」との記述もあり、信頼性は高くない。
携帯文化への拡散[編集]
前半になると、「どわーw」は系の携帯掲示板とを通じて広まった。特に頃、の若年層向け掲示板で「どわーw」が実況の定型句として使われるようになり、同時期に「うはw」「まじかよw」との役割分担が形成されたとされる。
この頃、関連の委託調査を受けたとされる民間研究者は、「どわーw」の使用頻度が深夜1時台に顕著に上昇し、特に月末の通信料金締め日前後に集中することを報告した。報告書では、学生利用者が“定額ではない時代の焦燥”を笑いに変換した表現であると分析されているが、調査票の回収数が127件しかないため、サンプルの偏りが強い。
また、にはのライブハウス文化圏で、演者がMC中に失敗した際、観客が一斉に「どわーw」と返す応答型ミームが発生した。これにより単なる感嘆詞ではなく、共同体の拍手に近い機能を持つようになったとする見方もある。
定着と変質[編集]
に入ると、「どわーw」はの短文化に適応し、単独感嘆から引用的リアクションへと変質した。特に系の文化圏では、重大事故、珍回答、料理の失敗、交通トラブルなど、文脈を問わず全方位に付与されるようになり、意味の希薄化が進んだとされる。
この過程で、若年層には「どわー」が単独で使われることは少なくなり、むしろ「どわーw」がひとまとまりの固定表現として受容された。ある言語社会学の研究では、語尾の「w」は笑いを表すというより、読者に対して「これは本気ではない」と事前通告する保険のように機能していると指摘されている[4]。
ただし、頃からは、年長のネット利用者が皮肉を込めて使用する例が増え、若年層との間で「古いのに強い」「強いのにださい」という二重の評価が成立した。こうした逆説的な生存力は、文化由来の記号としては珍しくないが、どわーwの場合は発音の滑稽さが再評価を後押ししたとされる。
語法と用法[編集]
「どわーw」は、基本的に驚きの程度が中〜大で、かつ発話者がその場の空気を少し笑い飛ばしたいときに使われる。単体で「どわーw」と書かれた場合、文脈依存で「えっ」「うわ」「やべえ」「笑うしかない」のいずれにも解釈されうる。
実際には、前置詞的に「どわーw これ」「どわーw 草」「どわーw 事故った」のように続くことが多く、の調査では、後続語の最多は「草」(18.4%)、次点が「無理」(14.1%)であったとされる。ただし、この調査は内の大学サークル所属者42名を対象としたもので、一般化には注意が必要である。
なお、入力予測機能の普及により、近年では「どわーw」「ドワーw」「どわーW」などの揺れが機械的に補正される例もある。これに対し古参利用者の一部は、全角の「w」を「感情の厚みがある」と評価し、半角の「w」を「軽薄」とみなすなど、記号美学をめぐる細かな対立が生じた。
社会的影響[編集]
「どわーw」は、単なるネットスラングにとどまらず、失敗の共有を円滑化する社会的潤滑油として機能したとされる。特にやでの事故的発言を、過度に深刻化させず笑いに変える用途が目立ち、若手社員のストレス軽減に寄与したという報告がある。
一方で、自治体の広報文や学校の生徒会告知にまで流入した結果、「公式文書に近い場での使用は不適切」とする苦情が複数寄せられた。のある市では、災害訓練の告知文に「どわーw級の混乱を避けてください」と記されたことが問題化し、担当課が謝罪した。なお、当該文面は実際には職員の下書きにしか残っておらず、公開直前に差し替えられていたとの指摘もある。
文化面では、実況配信者やが意図的に「どわーw」を使うことで、視聴者との距離を縮める手法が広がった。これにより、驚きの表明が個人の感情ではなく、共同体の演出として消費されるようになったとする批評もある。
研究と批判[編集]
の周辺では、2010年代後半から「どわーw」を含む複合感嘆表現の分類研究が進んだとされる。研究者のは、同表現が「驚き・照れ・共感拒否・自己緩和」の4成分から成ると仮説化し、のちにで発表したが、質疑応答で「それは要するに全部wではないか」と指摘され、会場が少しざわついたという。
批判としては、意味が曖昧すぎて誤読を招く、若年層においては「おじさん構文」の徴候とみなされる、などが挙げられる。また、機械翻訳では高確率で「Dowa-w」と直訳風に残されるため、国外の読者には謎の感嘆符として受け取られやすい。なお、のある調査では、海外在住の日本語学習者の31%が「どわーw」を動詞だと誤認していたとされるが、調査対象がアニメファンコミュニティに偏っていた可能性がある。
派生表現[編集]
「どわーw」からは、いくつかの派生表現が生まれたとされる。代表的なものに「どわー草」「どわーwww」「どわーwちょっと待て」があり、いずれも感情の強度や距離感を微調整するために用いられた。
特に「どわーwww」は、笑いの明示を強めるための形として頃に定着したが、逆に本来の驚きが薄れて単なる面白がりに寄ったため、古参ユーザーからは「薄味化」と呼ばれた。また、では「どわーやんw」「どわー知らんがなw」など地域的変種が報告されている。
近年は、音声入力の誤変換により「ドアーw」「どわーる」と表示される事故が増え、これを逆手に取ったネタ投稿も見られる。こうした二次創作的変化は、ネット用語が音声認識技術と衝突するたびに増殖する典型例とされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北川真理子『感嘆記号の都市伝播』情報文化社, 2006, pp. 44-71.
- ^ 藤森六郎『神田深夜掲示板史』青磁出版, 2003, pp. 118-129.
- ^ 三浦葉子「複合感嘆表現の成分分析」『日本ネット言語学会誌』Vol. 12, No. 2, 2017, pp. 15-39.
- ^ 佐伯ミカ『モデム越しの笑い声』東京電子叢書, 2001, pp. 9-22.
- ^ Harold M. Benson, "Reactive Laughter Tokens in East Asian Chatrooms", Journal of Digital Sociolinguistics, Vol. 8, No. 1, 2014, pp. 201-228.
- ^ 田島恵理子「『どわー』系表現の変遷と誤読」『現代語彙研究』第21巻第3号, 2020, pp. 83-104.
- ^ M. A. Thornton, The Grammar of Internet Shock, Cambridge Civic Press, 2019, pp. 55-79.
- ^ 鈴木一平『w記号の倫理学』明倫館書店, 2011, pp. 140-165.
- ^ Yuko Nakatani, "From W to WWW: Intensification in Casual Japanese Text", East Asia Communication Review, Vol. 5, No. 4, 2021, pp. 7-29.
- ^ 国立情報表現研究所『感嘆表現の変遷調査 2022年度版』, 2022, pp. 2-18.
- ^ 編集部編『どわーw大全』草生文庫, 2008, pp. 1-6.
- ^ Christopher D. Hale, "The Sacred Absurdity of Small Interjections", Applied Meme Studies, Vol. 3, No. 7, 2018, pp. 90-113.
外部リンク
- 国立情報表現研究所アーカイブ
- 神田ネット文体資料室
- 日本インターネット語彙年鑑
- 草文化保存会
- デジタル感嘆詞博物館