ほめほめぴゅっぴゅ条例(R-18)
| 施行地域 | 架空の神奈川県横浜市湾岸区(運用上の想定) |
|---|---|
| 法的性格 | 自治体条例(協力勧告+行政指導のハイブリッドとされる) |
| 対象領域 | R-18相当の表現物の展示・広告・会話誘導(とされる) |
| 中心概念 | 称賛手続(ほめほめ)と発声確認(ぴゅっぴゅ) |
| 導入目的 | 苦情の予防と、表現者へのフィードバック制度化 |
| 所管 | 横浜市湾岸区 生活文化安全部(仮称) |
| 施行年 | (条例案の告示) |
は、性的表現をめぐる自治体運用の枠組みとして制定されたとされるである。公的空間での「称賛(ほめ)」を手続化する点が特徴とされるが、運用の実態はしばしば物議を醸したとされる[1]。
概要[編集]
は、相当の表現が公共性を帯びる場面を想定し、「見た側の称賛を一定の様式で集め、紛争化を抑える」ことを狙った条例とされる[1]。
成立経緯としては、湾岸部で増加した夜間イベントに対して、苦情が「内容」ではなく「言い方」に集中していたことが発端だったと説明されることが多い。そこで、称賛を先に手続化する「ほめほめ」と、発声・同意の手順を短い合図で確認する「ぴゅっぴゅ」が、行政研修の中で定着したとされる[2]。
なお、名称の奇抜さは、担当の若手職員が会議で冗談として挙げた語呂合わせが採用された結果だと記録されており、議事録には「会話誘導の摩擦が減る」という趣旨がそのまま残ったとされる[3]。ただし実際の運用は、外部の批判を避けるため段階的に「様式」へ言い換えられたと指摘されている[4]。
概要[編集]
選定基準と「対象」の範囲[編集]
条例の対象は、(1)性的表現を含む物品の広告、(2)成人向けの展示、(3)トークイベントに付随する誘導台詞、といった3類型に分けられたとされる。特に「会話誘導」は、現場での口頭表現が最も問題化しやすいとして重点扱いになったと説明されることが多い[5]。
掲載基準には、表示面積、音量、そして「称賛の温度」(担当部署が独自に採用した指標)といった項目が盛り込まれたとされる。具体的には、称賛コメントの標準フォーマットが「30文字以内」「語尾を断定しない」「相手の人格を否定しない」などの細目で規定されたとされ、これが“やたら細かい”と言われる所以になった[6]。
一方で、どの程度をR-18相当とみなすかは、文化行政の運用実務に委ねられたとされる。したがって境界事例では「条例の趣旨に合えば対象」「趣旨から逸れるなら対象外」といった、解釈運用が常態化したとも指摘されている[7]。
手続(ほめほめ/ぴゅっぴゅ)の流れ[編集]
「ほめほめ」は、観覧者側が表現者へ短いフィードバックを行うための様式であると説明される。運用上は、称賛を入力する端末(通称)が会場入り口に設置され、入力は受付番号連動で記録されるとされた[8]。
続く「ぴゅっぴゅ」は、同意確認の合図を定型化したものとされる。具体的には、司会者が「(ぴゅっぴゅ)確認いたします」と読み上げ、観客側が所定のボタンで応答する方式が導入されたとされる[9]。
ただし、この手続が“儀式化”してしまい、形式だけが先行して自由な会話が削がれたとの批判もある。特にの夜間イベントでは、応答ボタンが一斉に押されすぎて逆に不自然な空気になったとする証言が残っている[10]。
歴史[編集]
起源:深夜の苦情が「語尾」で分岐した夜[編集]
の起源は、湾岸部の試験的な夜間マーケット運用(2008年頃)にあると語られることが多い。ある年の秋、苦情窓口に寄せられた相談は約で、そのうち「表現が不快」という類型は全体のにとどまり、「言い方が強すぎて怖かった」という類型がを占めたとされる[11]。
そこで区役所の職員が、苦情文を語尾ごとに分類する“語尾統計”を行ったとされる。結果として、「断定(〜だ/〜する)」「要求(〜しろ)」「評価の押しつけ(〜が正しい)」が同時に現れた場合に苦情が急増する傾向が見つかったと報告された[12]。
この報告を受け、当時の担当班が「称賛(ほめ)を先に置くと、語尾の摩擦が減るのでは」と仮説を立てた。会議で誰かが「ほめほめでぴゅっぴゅ、って感じにすれば角が立たない」と冗談を言い、その語呂が議会の議事録に転記されて“条例名の骨格”になったとされる[3]。
制定と拡張:研修マニュアルが先に増刷された[編集]
の告示前に、区の研修マニュアルだけが先行配布されたとされる。配布数は初版が、増刷がに及び、最終的に総発行部数がに達したという(当時の倉庫台帳が根拠とされる)[13]。
制定に関与した中心人物として、湾岸区生活文化安全部の係長(当時37歳)が挙げられることが多い。彼は「行政は“禁止”より“手順化”が得意」と述べたと伝えられ、条例案に「罰」より「様式」の語を多く入れたとされる[14]。
一方で、表現団体側の協力も得られたとされる。東京のから派遣された顧問は、手続を「対話の安全装置」と表現したとされる[15]。ただしこの協力は、のちに「当事者の声が行政の都合に吸収された」との批判を招いた[16]。
さらに2010年代に入ると、条例は湾岸区だけでなく、周辺の自治体で“参考運用”として採用されたとされる。なかには内の一部商工会が、独自の「ほめカード」運用として取り入れたとされ、手続が地域イベント全体に波及したとも記録されている[17]。
運用上の変化:応答ボタンの「誤作動」問題[編集]
運用開始直後、ぴゅっぴゅ手続に関連して、会場でのボタン応答が異常に集中する“誤作動”が発生したとされる。ある調査報告では、ピーク時間における同時押下がを記録し、平均の13倍であったと示されている[18]。
この事態は、司会者の合図が早口になり、観客側が反射的に押してしまった結果ではないかと説明された。そこで区は、合図文を「ぴゅっぴゅ」の後に一秒の間を入れるよう改定したとされる[19]。
なお、この改定に合わせて、称賛コメント入力の“許容時間”も調整された。従来は入力期限がだったが、改定後はへ短縮されたとされる。条例の条文として短縮が明文化されたわけではないものの、運用マニュアルの「補足」部分に記録があるとされ、研究者はそこを「実質的な改正」と位置づけている[6]。
このような微調整が積み重なり、ほめほめぴゅっぴゅ条例は“機械的に正しい”制度として語られるようになったとされるが、同時に「人の間合いが数字に回収される」という違和感も育っていったとも指摘されている[20]。
批判と論争[編集]
批判は大きく二方面から寄せられた。第一に、「称賛(ほめ)が義務化され、言葉が薄くなる」という論点がある。批評家は、入力を促されることで“本音”が隠れ、結果として称賛文が平均的で没個性になると述べたとされる[21]。
第二に、「ぴゅっぴゅ(同意確認)が形式優先になり、逆に萎縮を生む」という指摘がある。特に会話誘導が売り場の動線と結びついた場面では、観客の自由な沈黙が失われたという証言が出ている[22]。
さらに、条例の運用実務が自治体職員の裁量に大きく依存していた点も争点になったとされる。ある弁護士団体の報告では、対象判定において「趣旨適合」が重視される割合がに達したと推定され、明確性の欠如が問題視された[23]。
一方で条例擁護側は、これらの批判に対して「苦情の“語尾”を問題化したのは行政として妥当である」と反論し、行政研修の満足度がに達したという独自アンケートを根拠に挙げたとされる[24]。ただし、そのアンケートの対象が職員だけだったことから、外部研究者は「満足度は対話の改善ではなく手続への慣れを測っている」として疑義を呈した[25]。
なお、この論争の中心に、条例名の可笑しさがあったとされる。議会中継の一部が切り抜かれ、“R-18条例なのに語呂がかわいい”という揶揄が広がり、支持層の拡大に寄与したという見方まである[26]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「“ほめほめ”運用の語尾統計:夜間イベント苦情の分類報告」『地方文化行政研究叢書』第12巻第3号, pp. 41-88, 2010.
- ^ Margaret A. Thornton「Procedural Praise and Consent Cues in Municipal Regulation」『Journal of Civic Communication』Vol. 18, No. 2, pp. 201-233, 2011.
- ^ 佐伯真理子「称賛が言葉の質を変えるとき:入力式フィードバックの社会心理」『社会言語学年報』第9巻第1号, pp. 15-49, 2013.
- ^ 横浜市湾岸区生活文化安全部「ほめほめぴゅっぴゅ条例(運用マニュアル補足)—改定履歴と応答間合い」『区政資料』第27号, pp. 1-62, 2012.
- ^ 小林宏之「R-18広告に対する自治体のグレーゾーン運用:趣旨適合モデル」『行政法学レビュー』第44巻第4号, pp. 97-130, 2014.
- ^ Sato, Haruto「The “pyuppyu interval”: Timing compliance in public consent rituals」『International Review of Public Procedure』Vol. 6, No. 1, pp. 33-58, 2015.
- ^ 日本成人表現協議会「称賛様式の共同策定報告書」『成人表現の対話的運用資料集』第2巻第1号, pp. 9-36, 2012.
- ^ 神奈川週刊自治通信社「湾岸区、可愛い条例名で誤解を解く方針」『自治通信』第305号, pp. 4-6, 2010.
- ^ 田中亮介「行政の“手順化”は本当に対話を増やすのか:機械的適合の功罪」『公共政策季報』第21巻第2号, pp. 77-112, 2016.
- ^ Matsuda, Rei「Consent Button Overuse and Crowd Timing」『Urban Interaction Studies』Vol. 10, No. 3, pp. 251-279, 2017.
外部リンク
- 横浜湾岸区 ほめほめ運用アーカイブ
- 語尾統計研究会(Homeme-Pyuppyu)
- 成人向けイベント安全手続ポータル
- 地方文化行政データベース
- ぴゅっぴゅ合図の音響実験記録