もこう記念館
| 名称 | もこう記念館 |
|---|---|
| 英名 | Mokou Memorial Hall |
| 所在地 | 東京都新宿区百人町三丁目 |
| 設立 | 2009年 |
| 開館 | 2011年4月3日 |
| 運営主体 | 一般財団法人もこう保存協会 |
| 収蔵点数 | 約18,400点(2023年時点) |
| 年間来館者数 | 約11万2,000人 |
| 主要展示 | 初期配信機材、炎上年表、来場者反応分析室 |
もこう記念館(もこうきねんかん、英: Mokou Memorial Hall)は、に本部を置くとされる、動画文化と対戦配信史を記念する私設博物館である。一般には配信者の関連資料を収蔵する施設として知られているが、実際にはの「実況文化保存法」制定を契機に成立したとされる[1]。
概要[編集]
もこう記念館は、文化の初期史を扱う施設として設計された記念館である。とくに配信における「失敗の公共化」と「怒声の記号化」を主題としており、展示方針はの助成を受けて整えられたとされる。
館内は通常の記念館にみられる肖像展示よりも、機材・ログ・コメント履歴を中心に構成されている点が特徴である。なお、開館当初は「過度に専門的である」との批判もあったが、来館者の7割が展示室より先に試遊ブースへ向かうことが確認され、方針が事実上固定されたという[2]。
歴史[編集]
構想の起源[編集]
構想の起源は、春にで行われた同人研究会「実況記録保存会」の分科会にさかのぼるとされる。ここでら数名の編集者が、個人配信のコメント欄が急速に消滅していく状況を「口承文化の断絶」とみなし、恒久保存のための常設施設を提案した。
当初はのデジタルアーカイブ部門への寄託案が有力であったが、対象資料の大半が「深夜帯の絶叫音声」と「敗北時の机打ち録音」であったため、一般図書館としては扱いづらいと判断されたという。そこで民間の記念館方式が採用され、の旧印刷倉庫を改装する計画に変更された。
開館と初期運営[編集]
4月3日に開館した当初、来館者数は1日平均87人にとどまった。しかし、2階の「謝罪文展示室」に設置された音声再生装置がSNS上で話題となり、同年夏には入館待ちが最長2時間40分に達したとされる。
初代館長のは、展示品を単なる記念物ではなく「実況文化の失敗学」として提示する方針を採用した。また、館内放送には本人の短いコメントが断続的に流れるが、これは本人の協力というより、2010年に収録された8秒の発話を機械学習的に分解した再構成音源であると説明されている[3]。
拡張と制度化[編集]
には別館「怒号保存棟」が増設され、にはの外郭事業として「配信行動文化財」指定の試験対象に含まれた。これにより、館内のコメントログ、ミス入力の連打記録、視聴者投票の揺らぎまで保存対象となった。
一方で、保存の細密化が進みすぎた結果、展示室の温度が一定より下がると過去の発言が強調再生される不具合が生じたことがある。職員はこれを「記憶の湿度管理」と呼び、来館者には正常動作であると案内したが、実際にはサーバ室の排熱設計に起因するものであったという。
展示[編集]
館内展示は年代順ではなく、感情の強度に応じて配置されている。もっとも人気が高いのは「初回大敗北コーナー」で、からまでの対戦ログが、勝率1.7%刻みで色分けされている。
また、1階中央には「炎上年表回廊」があり、各年の出来事に対して来館者が自分の反応を投票できる仕組みが導入されている。なお、2014年の展示札には「この年、館内で最も多く涙が検出された」とのみ記されており、何をもって涙と判定したかは説明されていない。
2階の「機材考古学室」では、初期のWebカメラ、マイク、キーキャップ、そしての中古店で購入されたという伝説のヘッドセットが展示されている。これらはすべて触れられないが、毎日17時になると自動で音量が上がるため、見学者の半数が驚いて後ずさるとされる。
社会的影響[編集]
もこう記念館は、配信者の個人史を「消費される笑い」から「保存される文化」に転換した先駆けとして評価されている。とりわけ、学校教育における情報モラル教材として、の参考資料に例示されたことが大きい。
また、来館者の行動分析から、若年層の42%が「失敗の記録を残すこと」に肯定的になる傾向が示されたとする調査がある[4]。ただし、この調査は館内ショップで販売される「絶叫型しおり」を購入した人のみを対象としているため、学術的にはやや偏りがあるとの指摘もある。
批判と論争[編集]
批判の中心は、施設名が特定個人の印象を過度に固定化するという点にある。とくに以降、展示の一部が「本人よりも本人らしい」と評され、逆に実像をぼかしているのではないかという議論が起きた。
また、は、館内の「敗北擬似体験ブース」が来館者のストレス耐性を不必要に向上させる可能性を指摘した。しかし、実際には体験後の再来館率が68%に達しており、同研究会の見解は「議論としてはもっともだが、数字が強すぎる」として棚上げされた。
なお、2018年に公開された「館長直筆メモ複製」のうち3点は、筆跡があまりに整いすぎていたため、のちに施設側が「記念館用に清書された原本」であると説明を変更している。
運営体制[編集]
人員構成[編集]
運営はが担い、学芸員12名、実況史研究員4名、コメント解析技師3名が配置されている。さらに、週末のみ勤務する「反応監査係」が2名おり、展示に対する来館者の笑い声の長さを記録している。
館内の意思決定は月例の「発言保存会議」で行われるが、最終判断は議事録の末尾に付された赤字の一文で決まることが多い。これは設立以来の慣例であり、議長が「それ、展示にします」と言えば採択されるとされる。
施設管理[編集]
館の空調は、低温保存ではなく「熱量保存」を基準として調整されている。展示物の劣化を防ぐ目的で、むしろ感情の高まりを一定値で維持するよう設計されており、来館者の滞在時間は平均94分に及ぶ。
また、閉館後には音声ログの自動整形作業が行われ、発言の語尾だけが妙に明瞭になることがある。これについては、保存仕様なのか単なる文字起こしソフトの癖なのか、いまだに結論が出ていない。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯みちる『実況文化保存論:もこう記念館の設計と展示』一般財団法人もこう保存協会, 2012年.
- ^ 渡辺精一郎「配信行動の記念館化に関する基礎的考察」『情報文化研究』Vol.18, No.2, pp.41-66, 2010年.
- ^ Margaret A. Thornton, "Memorializing Failure in Live Game Streaming", Journal of Digital Folklore, Vol.7, No.1, pp.12-39, 2016.
- ^ 佐々木涼子『コメント欄の民俗誌』青樹社, 2014年.
- ^ Kazuo Hasegawa, "Archival Emotions and the New Tokyo Museums", Museum Studies Quarterly, Vol.22, No.4, pp.201-228, 2019.
- ^ 高橋真一「怒号保存棟の温湿度管理と音声劣化」『文化財保存技術』第31巻第3号, pp.88-97, 2018年.
- ^ Emily R. Cole, "The Aesthetics of Losing on Purpose", International Review of Play Studies, Vol.11, No.2, pp.77-103, 2021.
- ^ もこう記念館編『展示室運営年報 2023』もこう保存協会出版部, 2024年.
- ^ 中村晴彦『インターネット記念館の社会学』みすず書房, 2020年.
- ^ 藤井和子「館内放送の再構成音源における語尾処理」『音声文化学報』第9巻第1号, pp.5-19, 2017年.
外部リンク
- もこう記念館公式アーカイブ
- 一般財団法人もこう保存協会
- 実況文化保存会デジタル年表
- 新宿文化施設連携ポータル
- 配信史資料ネットワーク