アイリッシュウォールズ
| 読み | あいりっしゅうぉーるず |
|---|---|
| 発生国 | アイルランド |
| 発生年 | 1897年 |
| 創始者 | パトリック・J・オサリヴァン |
| 競技形式 | 壁面接触型団体競技 |
| 主要技術 | 継ぎ目保持、反響読み、石灰粉投擲 |
| オリンピック | 非正式公開種目として一時採用 |
アイリッシュウォールズ(あいりっしゅうぉーるず、英: Irish Walls)は、ので生まれた、石壁の継ぎ目を競技器具として用いるのスポーツ競技である[1]。しばしばに準ずる形式で扱われたとされる[2]。
概要[編集]
アイリッシュウォールズは、の壁を多用するの牧草地文化から発展したとされる競技で、選手が壁面の継ぎ目をたどりながら、相手陣の「静止帯」にを押し込むことを目的とする[1]。競技名は「アイルランドの壁」を意味するが、実際には壁そのものよりも壁に残る補修跡の美しさが重視される点に特色がある。
この競技は、ので、暴風で倒れた牧柵の補修作業を娯楽化したことに起源があるとされる。のちにの学生クラブによって規格化され、にはのアマチュア運動会で披露され、観客の一部から「建築と球技の中間」と評されたという[2]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源については、にバントリー湾近郊の石積み職人、が、風雨で崩れたの壁を修復する際、若者たちが継ぎ目に手をかけて移動競争を始めたことに由来する説が有力である[3]。当初は「壁の番人遊び」と呼ばれていたが、に地元の新聞『Cork Sentinel Weekly』が紙面で「Irish Walls」と記したことで定着した。
初期の試合は、を手に塗り、壁面の補修線を見極めることだけが重要で、得点は存在しなかった。ところが、の冬季、濃霧の中で起きた対立が偶発的に試合化し、以後は相手の足場を奪うためにを壁際へ押し出す形式が導入されたとされる。なお、この変更はの提案によるものとする記録があるが、一次資料は少ない[要出典]。
国際的普及[編集]
後、帰還兵の親睦会を通じてとに伝播し、にはで初の北アイルランド選手権が行われた。競技が国外で受け入れられた理由として、狭い空間でも成立し、しかも「壁さえあれば成立する」という簡便さが挙げられる[4]。
にはのやのでも愛好者が増え、ので開かれた文化展示会では、競技場の一部に実際の石壁を運搬して再現したため、展示終了後の撤去にを要したという。これを契機にが設立され、世界規格が整えられた。
ルール[編集]
試合場[編集]
試合場は、を標準とし、中央に「主壁」、両側に「返し壁」、さらに四隅に「沈静石」が置かれる。主壁は天然石または石灰モルタルの複合壁でなければならず、壁面の継ぎ目は最低でもが規定されている[5]。
また、壁の角度は地形に応じてからの範囲で許容されるが、では「わずかに不機嫌な傾斜」が望ましいとされる。試合前には審判が壁に耳を当て、空洞音の数を数える慣習がある。
試合時間[編集]
標準試合はを、に分けて行われる。これは元来、石灰粉が湿気で固まるまでの実務的な時間配分に由来するという[6]。延長戦は単位で行われ、壁に残った粉跡の対称性が崩れた時点で終了する。
国際大会では、同点時に「反響決定法」が採用される。これは、審判が壁の前でを1回吹き、最も遅く反響が返ってきた側に勝利が与えられる方式である。ただし、湿度が高い日は音響が不安定になるため、では「霧の日の勝敗は文化的譲歩で決める」との不文律がある。
勝敗[編集]
得点は、羊毛球を相手陣の静止帯へ押し込むことでが与えられ、さらに壁面の継ぎ目を連続で保持した場合にが入る。最終的に得点の多い側が勝者となるが、試合後に「壁面の修復度」が高いチームにはが付与され、これが年間成績に影響する[7]。
反則には、壁面に唾を吐く「湿潤妨害」、相手の継ぎ目に故意に石灰を詰める「白化行為」、および審判より先に壁へ挨拶する「先礼」がある。先礼は一見礼儀正しいが、実際には相手の集中を乱す高度な心理戦であるとされる。
技術体系[編集]
アイリッシュウォールズの技術は、、、の3系統に大別される。とくに一流選手は壁面のわずかな振動から石の年代を推定し、試合中に最適な進行角度を選ぶ能力を持つとされる。
代表的な技として、継ぎ目を指先でなぞりながら移動する「サム・ライン」、壁の空洞音を利用して相手の位置を読む「ドロップ・エコー」、石灰粉を視界の端に散らして判断を鈍らせる「カーロウ霧」がある。後者はの農家が、収穫後の粉じん対策から着想したとされる。
また、上級者は試合前に壁の修復履歴を読む「壁読」や、相手の足運びを壁面の影で予測する「陰影歩法」を用いる。これらは学校体育では教えられず、主として祖父母世代から口伝で伝承されるため、地域ごとに流派が異なる。
用具[編集]
標準用具は、、、、およびである。羊毛球は直径、重量前後が理想とされ、雨天用には内部にを混ぜた「重湿球」が使用される[8]。
選手はまた、左手にだけ装着する「補修グローブ」を用いるが、これは実際の補修作業の名残であり、右手は壁との感触を直接受けるため無装備が原則である。上位リーグでは、試合前にの認定を受けた刷毛で壁を清掃しなければならず、清掃係には毎回以上の署名が求められる。
一部のクラブでは、亡霊の出現を防ぐために「クローバー織りの壁紐」を用いるが、これは競技性よりも呪術的安心感のために導入されたもので、の研究者は「観客動員にのみ寄与した」と指摘している。
主な大会[編集]
主要大会としては、、、がある。とくには以来続く最古の公式大会とされ、毎年にで開催される[9]。
はにで創設され、当初は石材関連企業の博覧会の余興であったが、観客数が予想を上回り、翌年からは正式競技として独立した。決勝戦では、選手の得点よりも壁面の「修復美」が評価されるため、勝者が敗者より低い拍手を受けることがある。
また、対の伝統対抗戦は、国内では「学究戦」と呼ばれ、試合後に両校の建築学講師が壁の構造を講評するのが慣例である。1989年の対戦では、講評が長引きすぎて次節の試合が遅延した。
競技団体[編集]
統括団体は(IIWF)であり、本部は郊外のに置かれている。加盟国は時点でとされ、競技人口は登録選手、準登録者を含めると約に達するという[10]。
アイルランド国内ではが競技規格、審判養成、壁材認証を一括管理している。また、との関係については、の会議で「公開展示競技」としての導入案が検討されたが、壁材の輸送費が高騰したため見送られたとされる。もっとも、複数の回想録では「競技としては魅力的だが、会場に壁を建てる段階で政治が始まる」と記されている。
近年はの無形文化財候補としても申請が繰り返されており、壁そのものではなく「壁を前提とした共同修復の慣行」が評価対象になっている。なお、申請書類の付録に、なぜかの洗濯手順が26ページにわたって添付されていたことがある[要出典]。
脚注[編集]
[1] パトリック・J・オサリヴァン『壁と球のあいだ――アイルランド西岸競技史』コーク歴史出版局, 1963年.
[2] Margaret A. Thornton, “Stonework and Spectacle: The Early Civic Games of Munster”, Journal of Comparative Sports, Vol. 12, No. 3, 1988, pp. 44-67.
[3] Seán O'Dwyer『バントリー湾の補修遊戯』リムリック大学出版会, 1971年.
[4] Edward K. Mellor, “Harbors, Walls, and Traveling Ball Games”, The British Folklore Review, Vol. 8, No. 1, 1954, pp. 101-129.
[5] 国際アイリッシュウォールズ連盟技術委員会『公式競技規則 第7版』ダブリン, 1998年.
[6] Fiona N. Keane『湿気と試合時間の関係に関する覚書』アイルランド運動史研究所, 2007年.
[7] “On the Scoring of Repairs: A Statistical Note”, Irish Journal of Rural Games, Vol. 19, No. 2, 2015, pp. 12-29.
[8] H. B. MacCarthy『羊毛球の工学的進化』ベルファスト石材学院, 1984年.
[9] Liam B. Roche『全アイルランド壁面選手権百年史』リムリック体育文庫, 2022年.
[10] 国際アイリッシュウォールズ連盟『年次登録報告書 2024』ダブリン, 2024年.
関連項目[編集]
脚注
- ^ パトリック・J・オサリヴァン『壁と球のあいだ――アイルランド西岸競技史』コーク歴史出版局, 1963年.
- ^ Margaret A. Thornton, “Stonework and Spectacle: The Early Civic Games of Munster”, Journal of Comparative Sports, Vol. 12, No. 3, 1988, pp. 44-67.
- ^ Seán O'Dwyer『バントリー湾の補修遊戯』リムリック大学出版会, 1971年.
- ^ Edward K. Mellor, “Harbors, Walls, and Traveling Ball Games”, The British Folklore Review, Vol. 8, No. 1, 1954, pp. 101-129.
- ^ 国際アイリッシュウォールズ連盟技術委員会『公式競技規則 第7版』ダブリン, 1998年.
- ^ Fiona N. Keane『湿気と試合時間の関係に関する覚書』アイルランド運動史研究所, 2007年.
- ^ “On the Scoring of Repairs: A Statistical Note”, Irish Journal of Rural Games, Vol. 19, No. 2, 2015, pp. 12-29.
- ^ H. B. MacCarthy『羊毛球の工学的進化』ベルファスト石材学院, 1984年.
- ^ Liam B. Roche『全アイルランド壁面選手権百年史』リムリック体育文庫, 2022年.
- ^ 国際アイリッシュウォールズ連盟『年次登録報告書 2024』ダブリン, 2024年.
外部リンク
- 国際アイリッシュウォールズ連盟
- アイルランド壁面協会
- 全アイルランド壁面選手権
- ダブリン競技博物館
- コーク歴史運動研究センター