カザーン
| タイトル | 『カザーン』 |
|---|---|
| 画像 | Kazaan_cover_art.png |
| 画像サイズ | 256x256 |
| キャプション | 『カザーン』のパッケージイラスト |
| ジャンル | 活火山アタック登頂RPG |
| 対応機種 | PC-88互換機 / MSX-NEW / ファミコン互換機 |
| 開発元 | 火口メカニクス研究所 |
| 発売元 | 火口通商株式会社 |
| プロデューサー | 渡辺 精一郎(Kazaan企画主任) |
| 音楽 | 霧谷(きりたに)サウンドラボ |
| シリーズ | カザーン登頂譚 |
| 発売日 | 1889年9月17日 |
| 対象年齢 | 全年齢(ただし高熱表現あり) |
| 売上本数 | 全世界累計 128.6万本 |
| その他 | ゲーム内通貨:火口メダル / 最高難度:K-9 |
『カザーン』(よみ、英: Kazaan、略称: KZA)は、[[1889年]][[9月17日]]に[[日本]]の[[火口メカニクス研究所]]から発売された[[PC-88互換機]]用[[コンピュータRPG]]。[[カザーン登頂譚]]の第1作目であり、通称は「活火山メダル登頂RPG」である[1]。
概要[編集]
『カザーン』は、[[活火山]]をアタック(登頂)しつつ、報酬として得られる「メダル」を収集し、山頂で“次の登頂権”を獲得していく構造の[[コンピュータRPG]]である[2]。
本作は、当時の工業教育機関が教材として導入した「危険地形シミュレータ」を、[[娯楽市場]]向けに“勝てる危険”へ転換したものとして語られ、[[火口通商株式会社]]の社員がプレゼンで熱狂したことがきっかけとされる[3]。なお、シリーズの第1作目であるため、後年の移植版ではUIが整理されつつも「メダルの投げ損ね」の演出だけは残されたとされる[4]。
当初のキャッチコピーは「火口メダルは嘘をつかない」だったが、発売直前に社内の法務担当が“メダルが嘘をつく可能性”を問題視し、最終的に「火口メダルは記録する」に改められたとも報じられている[5]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
プレイヤーは「[[登頂士]]」として操作し、[[火山口]]周辺の地形(溶岩帯、噴煙帯、鉱灰帯)を踏破するたびに、火口の“熱の癖”がログへ蓄積される[6]。熱ログは数値化され、登頂中の判断材料として「熱指数:KZ-□」の形で表示される。特に有名なのは、初期版でのみ見られた熱指数の表示バグで、「KZ-7だけが急に誠実になる」とプレイヤーの間で比喩化したことである[7]。
戦闘は、通常攻撃に加え「メダル格闘(メダルを地面へ叩きつけて衝撃波を作る)」が組み込まれている。衝撃波は山肌の材質によって倍率が変わり、[[玄武岩]]では1.25倍、[[軽石]]では2.1倍とされる。軽石は脆いが当たり判定が広く、玄武岩は安定だが“跳ね返り”が発生しやすいなど、学習すべき性質が細かく設計されていると評価された[8]。
アイテム面では、登頂用の装備として「[[火口灯]]」「[[冷却鈎]]」「[[灰避けガラス]]」が定番である。灰避けガラスはHP回復ではなく、噴煙帯の“視界ブレ”を抑える効果があるとされ、攻略本でも“回復より先に視界を買え”と繰り返し強調された[9]。
対戦モード[編集]
対戦モード「[[熱階級]]」では、同じ火山を別個体として駆け上がり、メダル獲得数と“登頂ルートの再現率”で勝敗が決まる[10]。ルート再現率は、プレイヤーの移動がスタート地点から3方向に分岐するたびに加点される仕組みで、たとえば「左斜面→噴煙の洞→溶岩渡り」の順に通れば、合計で+18%のボーナスが入る。なお、この+18%は開発中に仮で置かれた値が、なぜかそのまま“縁起の数”として残ったとされる[11]。
協力プレイでは、片方が“探知担当”として熱ログを拡散し、もう片方がメダル投擲で火山口の注意を引き付ける仕様である。探知担当は直接戦闘しない設計のため、経験値の配分が他モードと異なり、初期パッチでは探知担当の経験値だけが「本来の2倍」に増え、対戦勢から不満が出たとされる[12]。
オフラインモード[編集]
オフラインモード「[[ぼっち登頂]]」では、通信なしでNPCの行動パターンを固定化することで、プレイヤーの“孤独スコア”が加算される仕組みが採用された[13]。孤独スコアは、道中で誰とも交換アイテムをせずにクリアすると+500点、装備を分解して残さず装備し直すと+210点とされる。後年の検証では孤独スコアの計算式が複雑で、攻略サイトが「計算機を持って登るゲーム」と表現したことで話題となった[14]。
またオフラインモードには、1回だけ発生する“メダル噴出イベント”が存在した。プレイヤーが火口灯を点けたまま3歩下がると、床下からメダルが現れるというもので、初期版では発生率が確率ではなくフレーム依存だったため、体感では「たまたま操作した人だけ勝つ」現象が起きたとされる[15]。
ストーリー[編集]
物語は、[[火口通商株式会社]]が契約した「登頂権」と呼ばれるライセンス制度を背景に進行する。火山群「[[カザーン連峰]]」では、山頂に刻まれた“回収札”を持つ者だけが次の調達ルートへアクセスできるとされ、主人公の登頂士は最初の登頂権を得るために、最深の活火山「[[カザーン]]」へ向かう[16]。
山頂へ向かう途中、噴煙に紛れて現れる“影の係員”が、メダルの扱い方について妙に丁寧な説教を行う。影の係員のセリフはゲーム内でも字幕が長く、読了しないと次のイベントが進まない。これが当時のプレイヤーを大いに困らせたが、のちに「困らせることで世界観が立つ」と[[霧谷サウンドラボ]]の作曲者が擁護したとされる[17]。
終盤では、山頂で集めたメダルを“投函”する儀式が描かれる。投函先は実在の郵便ではなく、火口の周囲に設置された[[火口郵便局]]の専用ポストである。投函されたメダルは登頂士の“熱ログ人格”として記録され、エンディング後にプレイヤーの次回データへ反映されるとされる[18]。ただし、最終ルートの一部は初期版では未翻訳文字が混入し、「熱ログ人格」と「熱ログ“人格”」のどちらが正しいかが論争になったとも書かれている[19]。
登場キャラクター[編集]
主人公は無名の「登頂士」として扱われるが、名札は最初のロード画面で読み上げられる。名札の読み上げ音声は、当時の新人声優が一発録りで成功し、その結果だけが残ったため、セリフ回しが“感情過多”として一部でカルト的に評価された[20]。
仲間として登場するのは、[[冷却鈎]]を携えた技師の「[[シズナ・ブレーキム]]」である。シズナは、戦闘では鈎を投げて敵の“噴気姿勢”を崩す。噴気姿勢とは、攻撃モーションの途中で敵の角度が揺れる現象を指し、彼女は揺れのタイミングを口癖のように「あと0.3秒」と言うため、攻略者が「0.3秒は呪文」と呼ぶようになった[21]。
敵側では、登頂権の独占を狙う「[[札喰い監査官]]]]」が主要勢力として描かれる。札喰い監査官は直接強敵として戦うだけでなく、フィールド上でプレイヤーのメダル所持数を“監査”して没収しようとする。没収は一律ではなく、メダルの種類が揃っているほど没収率が上がるという奇妙な仕様であり、コレクターを苦しめた[22]。
また特定条件下で出現する敵として、溶岩の中から現れる「[[鈍火の化身]]」がある。鈍火の化身は炎の見た目ではなく、火口灯の光の反射で存在が確定するため、光源管理が戦闘の中心になる。初期版では光源のバッテリー表記が25回分しかなく、プレイヤーが走り続けると“残量が減っていくのに当たる”という逆転現象が起きたと報告されている[23]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、登頂士の技能は「熱」「石」「札」の3要素に分解して説明される。熱は火山の温度そのものではなく、プレイヤーの判断に影響する揮発性の揺らぎであり、石は地形素材の“跳ね返り”を意味する。札はメダルを加工して作る認証片で、[[火口郵便局]]が発行するとされる[24]。
メダルは単なる通貨ではなく、種類ごとに“性格”があると定義されている。たとえば「[[黒曜メダル]]」は攻撃に乗りやすいが、投函儀式では拒否されることがあるとされる。一方で「[[軽灰メダル]]」は投函に成功しやすいが、山腹での戦闘では当たり判定がブレる。これらの相性が攻略の核になっているとされ、後年の開発者インタビューでは「通貨に人格を持たせた最初の試みだった」と述べられた[25]。
さらに、世界の地理として[[カザーン連峰]]には、架空の研究区画「[[第7噴気統計区]]」が設定されている。第7噴気統計区は実在の官庁を模した構造を持つと語られるが、実際には“登頂記録のための建物”であり、窓はすべて火山側に向いているとされる[26]。この建物の描写をめぐって、読者が「これ、どうやって日が入るんだ」とツッコんだことで、当時の掲示板が一時的に活性化したとも記録されている[27]。
開発/制作[編集]
開発は[[火口メカニクス研究所]]が担当し、プロデューサーの[[渡辺 精一郎]]は「山は逃げないが、バッテリーは逃げる」と述べたとされる[28]。この言葉が“オフラインモードの孤独スコア”や、バッテリー演出の細部に反映されたという。実装面では熱ログの計算が重く、当初は動作が不安定だったため、初期の内部ツールでフレーム数を数える工夫が加えられたと報告されている[29]。
ディレクターは「[[佐伯 ヒロミ]]」で、彼女はシステム設計において「メダルは触れている時間で価値が変わる」と主張したとされる。結果として、メダルを持ち替える動作(装備→手持ち→装備解除)を繰り返すと小さなボーナスが入る仕様が採用された。ただし、これを“作業”と感じたプレイヤーが減らないよう、ボーナスは最大でも+3%に抑えられたとされる[30]。
作曲は[[霧谷 サウンドラボ]]が担当し、火口の音を模したドローンを基調に据えた。サウンドチームは録音のために、実際の噴気音に似た装置を社内で作ったと語られるが、その装置は結果として「紙をこする音」に近かったと後に明かされ、以降その“紙の記憶”がBGMの粒立ちとして残ったとされる[31]。なお、初期ロットの一部ではBGMのテンポが0.5%ずれ、攻略サイトが「全員、ほんの少し眠くなる」と指摘したとされる[32]。
音楽[編集]
サウンドトラックは『Kazaan / Ash & Medal』としてまとめられ、全12曲で構成されたとされる[33]。代表曲は「[[活火口行進曲]]」「[[軽灰リフト]]」「[[投函の儀(ぎ)]]」である。とくに「投函の儀」は、メダル投函の瞬間にだけ拍が増える設計で、テンポ変化がプレイヤーの緊張を後押しする狙いだったとされる[34]。
一方で、発売直後のファン投票では「火口灯の周波数」タグが誤って曲名として拡散した。ファンが誤記を正したところ、開発側が“むしろ良い”として、その誤記を次回のアップデート紹介文に採用したため、結果として“誤記が伝統”として残ったという[35]。
また、MSX-NEW移植版では一部のドラムが差し替えられ、原曲の“乾いた軽さ”が失われたとして古参が不満を持った。ファミコン互換機向けにリミックスされた「軽灰リフト(8bit)」は逆に新規ファンに受け、世代間論争が起きたとされる[36]。
他機種版/移植版[編集]
PC-88互換機版の後、[[MSX-NEW]]版は1891年に発売された。移植では読み込み速度が改善され、熱ログの表示が滑らかになった一方、対戦モードの演算が簡略化されて“ルート再現率”の挙動が少し変わったと報告されている[37]。
さらに[[ファミコン互換機]]版は1893年に発売され、「バッテリー表記を25回から32回へ増量」という調整が行われたとされる[38]。この変更は親切に見えるが、結果として“鈍火の化身の逆転現象”が起きにくくなり、元祖を語る層が落胆した。ファンは「32回は嘘だ」と言い、公式サイトでは“嘘ではない”と説明する文章がなぜか長文になったという[39]。
なお、後年の[[バーチャルコンソール]]対応では、原作のフレーム依存イベントが再現された。再現のためにあえて処理落ちの挙動を残したため、現代環境では音ズレが発生する場合があり、「懐かしさは不便から生まれる」というキャッチで受け入れられたとされる[40]。
評価[編集]
発売当初の売上は、月間販売で14,280本を記録したとされる。初年度では累計で約128.6万本に達し、ミリオンセラーを記録した。[[日本ゲーム大賞]]の前身企画では「危険地形のシミュレーションが娯楽として成立した点」が評価され、のちに受賞へ結びついたとされる[41]。
一方で批判としては、熱ログの意味が分かりにくいこと、メダル相性がシビアなことが挙げられた。特に対戦で“正しい持ち替え”を要求される点が、ライト層にとっては手続きのように感じられたとする指摘がある[42]。
それでも本作は、登頂という単純な目標を、メダル収集という内的な達成へ翻訳した点で支持され、累計でも上位作品として参照され続けたとされる[43]。
関連作品[編集]
シリーズとしては、続編の『[[カザーン登頂譚 第二火口]]』(1890年)と『[[カザーン登頂譚 黒曜議定書]]』(1894年)が派生したとされる。これらは同じ火山群を舞台にしつつ、主人公の熱ログ人格が異なる設定になっているとされる[44]。
メディアミックスとしては、テレビアニメ『[[火口メダル物語]]』が存在する。アニメでは、メダルの人格が“声”として表現され、主人公のパートナーが声優ユニットとして売り出された。企画段階では“登頂のリアル危険度”を下げる議論があったが、最終的に「笑える危険」が維持されたという[45]。
また、冒険ゲームブック『[[カザーン:灰の分岐]]』が刊行され、分岐条件にメダルの種類が絡む仕組みが採用された。読者がルートを選ぶたびに“熱指数”が変化する構造は、原作のログ思想に近いと評されている[46]。
関連商品[編集]
攻略本としては『[[カザーン]] 完全登頂ガイド(第1巻)』が刊行され、戦闘の“噴気姿勢”判定の目視ポイントまで図解されたとされる[47]。また、対戦勢向けに「熱階級メダル配分表」も付属し、黒曜メダル中心のビルドはKZ-7で勝率が上がる、などの具体的な目標値が記載されたとされる[48]。
その他の書籍としては、ノンフィクション風の『[[火口郵便局]] と登頂士の事務実務』が挙げられる。内容はゲームの設定を“実在の制度”として説明する体裁を取っており、読者が情報の真偽に揺れることで話題になったとされる[49]。なお、出版社は架空の社内翻訳協会を名乗ったが、ISBN表記だけ妙に丁寧だったため、後年に“どこか本当に近い”と言われることもあった[50]。
グッズでは、メダルを模した真鍮キーホルダーが販売され、裏面に「投函の儀 0/1/3ルール」が刻まれていた。この刻印は実用性がないが、コレクターが競って集めたため、結果として玩具店の棚に“登頂文化”が生まれたと報告されている[51]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺 精一郎『火口メダル登頂論:KZA熱ログの実装』火口通商出版, 1892年.
- ^ 佐伯 ヒロミ「メダル格闘における衝撃波倍率の調整(第1報)」『計測娯楽学会誌』Vol.12 No.3, pp.41-58, 1891年.
- ^ 霧谷 サウンドラボ『Kazaan / Ash & Medal 音響設計手記』霧谷印刷, 1893年.
- ^ 田中 玲子「噴煙帯の視界ブレ表現とプレイヤー判断」『ゲーム人間工学研究』第7巻第2号, pp.9-27, 1895年.
- ^ J. H. Cartwright『Volcanic RPG Interfaces』Vol.3, pp.120-144, Ember Press, 1901.
- ^ E. Nakamori「Route Reproduction Rates in Competitive Climbing Games」『International Journal of Arcade Systems』Vol.5 No.1, pp.77-95, 1903.
- ^ 火口通商株式会社編『登頂士のための事務実務(第三改訂)』火口郵便局支局, 1896年.
- ^ 霧谷 サウンドラボ「紙摩擦ドローンの採用理由と誤記の再生産」『音楽技術年報』第2巻第4号, pp.201-219, 1894年.
- ^ 『ファミコン互換機ライブラリ:カザーン移植の全記録』互換機研究所, 1893年.
- ^ 松原 静馬『日本ゲーム大賞と危険地形の娯楽化』第1版, pp.33-60, 1898年.
外部リンク
- Kazaan登頂公式データバンク
- 火口メダル研究所(原典掲示板)
- 熱階級統計室
- カザーン登頂譚メディアアーカイブ
- 灰の分岐(ゲームブック倉庫)