カナディアン柔術
| 読み | かなでぃあんじゅうじゅつ |
|---|---|
| 発生国 | カナダ |
| 発生年 | 1897年 |
| 創始者 | エズラ・マクロード |
| 競技形式 | 打撃なしの組み技+投げ+締め(混合格闘理論) |
| 主要技術 | 上体制御投、スケート刃ロック、二段締め |
| オリンピック | オリンピック正式競技(一次採用枠) |
カナディアン柔術(よみ、英: Canadian Jujutsu)は、で生まれたのスポーツ競技である[1]。
概要[編集]
は、ブラジリアン柔術から派生したとされる柔術技術と、の身体制御思想を「同一の戦術ノート」に統合した競技として説明されることが多い。
通常、試合は立ち上がり局面から開始され、投げによって地面へ移行したのち、関節への“静的圧”と締めによって決着が目指される。特に上体の前傾を崩さない投げが評価され、審判は相手の重心が“何度揺れたか”を計測する方式が一部大会で採用されたとされる[2]。
競技名の「カナディアン」は、単に国名を冠しただけではなく、氷上スポーツ文化の影響を受けた「滑りを利用する受け身」が伝統として語られる点に由来するとされる。
歴史[編集]
起源[編集]
、の港町に、移民向けの武術教室を巡回していたエズラ・マクロードが「寒さでは技術が鈍る」という観察から、床での組みを中心にした稽古体系を整えたことが起源とされる[3]。マクロードは、柔術家の技能を模しつつも、当時のレスリング指導者が重視していた“上半身の支配”を取り入れたとされる。
さらに、彼が採用したとされる「三拍子の侵入手順」が、のちに“カナディアン拍(Canadian beat)”と呼ばれた。これは、相手の肩が前へ出る瞬間を第1拍、腰が追従する瞬間を第2拍、膝が接地する瞬間を第3拍として、侵入動作を反復するものであったと記録される[4]。なおこの表現は、後年になって“時計学者が書いた講義ノート”を根拠にしているため、真偽が揺らぐとも指摘されている[5]。
また、起源物語には“合体競技”の要素が強調される。マクロードはブラジリアン柔術の締め技の習得を奨励しつつ、受け身の安全策として流の胸部固定を推し進めたとされ、これが競技の骨格になったと説明される。
国際的普及[編集]
にで開催された「北大陸武技連合大会」において、カナディアン柔術は“投げて、制して、締める”の一連動作をタイムスコア化する実験が行われ、観客動員が急増したとされる[6]。このとき、勝者の平均所要時間が「3分28秒(標準偏差0.71)」と報告されたことが、競技の合理性を裏づける材料として引用された。
その後、にが“上体制御系の統一ルール”としてカナディアン柔術を試験的に採択したことで、欧州の大学体育会へ波及したとされる[7]。特にの体操教員が導入した「スケート刃ロック(後述)」が、投げの失敗から回復する技術として評判になったとされるが、技の名称が後付けである可能性も示されている[8]。
一方で、国際大会では審判教育が追いつかず、同じ技でも判定に差が出た。結果として、審判員の資格試験が“ノート写経式”と呼ばれる方式に変更され、実技よりも記述の整合性が問われる時期があったとされる。
ルール(試合場/試合時間/勝敗)[編集]
試合はではなく「低摩擦マット」と呼ばれる床面上で行われるのが標準であり、靴下でも足裏の“滑走角”が一定になるよう調整されるとされる。試合場は縦横の正方形で、中心から半径の円が“制御円”として指定される。制御円の外で投げから連携が途切れた場合、加点が減点される仕組みが採用されてきた[9]。
試合時間は原則で、休憩はとされる。ただし決勝トーナメントでは延長があり、延長はのみで勝敗がつかなければ、審判の「重心揺れ評価(最大8段階)」により判定される[10]。この重心揺れは、技術委員会が導入した簡易センサー式の試験に由来するとされるが、センサーが“雰囲気を測る装置”であると揶揄された時期もあったとされる。
勝敗は、①相手のギブアップ(締め・制御)②技ありの点数優位による判定③投げによる“背面固定”の確認、のいずれかで決まる。特に「二段締め」が成立した場合、第一段階の制圧が成功した時点ではなく、第二段階で相手の姿勢がに収束した場合にのみ“満点扱い”となるとされる[11]。
技術体系[編集]
技術体系は、主に「侵入(エントリー)」「制御(コンタクト)」「崩し(オフバランス)」「終結(フィニッシュ)」の段階に基づく。体系化の起点は、エズラ・マクロードが作成したとされる“戦術ノート”であり、各段階に対応する技群が列挙されているとされる[12]。
主要技は上体制御投であり、相手の胸郭に対して自分の肩甲骨を“薄く当てる”ことで、投げの回転軸を相手の背面に移すと説明される。また、スケート刃ロックは、滑りを利用して足首の“逃げ”を奪う関節制御として知られ、外見上は地味である一方、成立条件が細かいとされる。
さらにカナディアン柔術は、締め技の系統が特徴的である。二段締めでは、まず相手の呼吸を制限する締めを短時間で解除し、直後に再度同方向へ締め直すことが想定される。これにより相手が再調整に時間を使うと説明されるが、実際の競技では“心理的な再発動”が評価対象に含まれるとの指摘もある[13]。
なお反則領域には、立ち上がり中の打撃や顔面への強圧は含まれない。これは競技が「柔術とレスリングの合体競技」を自称するため、武器化の連想を避ける意図があったとされる。
用具[編集]
用具は比較的少なく、主にグローブ相当の薄手パッドと、滑りを抑えるための“滑走補助テープ”が挙げられる。選手は両手首と前腕にパッドを装着し、締めの際に指の食い込みが過度にならないようにする運用があるとされる[14]。
また、制御円の外周に設置された目印はカラフルであり、これは審判が「技が制御円に触れていたか」を一目で判断するためだと説明される。目印の色は大会ごとに変わるが、頃からは赤を“成立ゾーン”、青を“遅延ゾーン”として固定した大会が増えたとされる[15]。
さらに、試合終了直前に撮影される“二段締め収束角”の判定用カメラが、競技用具として持ち込まれる場合がある。このカメラは公式仕様に含まれるが、焦点距離が毎回違うと報告されており、技術委員会が「同じ数字で嘘をつく必要はない」と述べたという逸話もある[16]。
主な大会[編集]
主な大会としては、北米の年次大会である「」が挙げられる。ここではトーナメント以外に、制御円における“先行侵入の成功率”を記録するサイドイベントが併設され、観客が技名よりも成功率を追う傾向があるとされる。
次に「」があり、地域色として周辺の学校がスポンサーに入る。参加校が多すぎた年には、予選ラウンドの総試合数がに膨らみ、翌年から試合間の整備時間がに統一されたと記録されている[17]。
また欧州では「トランスアルプス・グレコ柔術連携フェス」が知られ、レスリング系の観客が締め技に驚く場面が多いとされる。大会運営では“試合前の戦術ノート朗読”が行われることもあり、観客が規則の文言を暗唱してしまうほど定着した時期があったとされる[18]。
競技団体[編集]
競技団体としては、国際レベルではがルールの統一を担当するとされる。国内では、が全国規模の審判講習を実施しているとされ、認定は筆記試験と実技の両方で構成される。
なお、カナダ国内の一部では、が独自の“重心揺れ評価”を先行導入してきた経緯があるとされる。そこで採用された基準値が国際大会にそのまま流用されたかについては異論もあり、OTFA側は「数値は文化であり、固定しない」と主張したと報じられている[19]。
技術指導の面では、大学体育を母体とする研究グループが存在し、二段締めの理論を「呼吸制御×姿勢収束」として説明する講義が行われている。教授陣の一部は、勝敗の統計が“強者の物語”に寄りすぎると批判されることもあるが、それでも教育現場での採用が進んだとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ J. H. Mercer「Canadian Jujutsu and the Borderline of Wrestling Control」『Journal of Applied Grappling Science』Vol.12 No.3, pp.41-66, 1989.
- ^ 田中航平「“二段締め”の再発動理論と審判運用」『武技研究紀要』第18巻第2号, pp.12-29, 2003.
- ^ Catherine L. Voss「The Control Circle: Judging Movement on Low-Friction Mats」『International Review of Combat Sports』Vol.7 No.1, pp.77-103, 2001.
- ^ Marek Szpak「A Historical Reconstruction of Ezra MacLeod’s Tactical Notebook」『北大西洋体育史叢書』pp.201-233, 1994.
- ^ Ezra MacLeod『戦術ノート—第1冊(写本)』オンタリオ武技連盟出版局, 1902.
- ^ K. J. Nwosu「重心揺れ評価の簡易センサー試験」『スポーツ計測技術』第5巻第4号, pp.55-71, 2012.
- ^ Sofia B. Rydell「スケート刃ロックの成立条件と指導カリキュラム」『柔術教育ジャーナル』Vol.3 No.2, pp.9-38, 2016.
- ^ Marie-Claire Fournier「Five-Lake Composite Rules and Tournament Load」『Studies in Event Operations』Vol.22 No.1, pp.301-318, 2008.
- ^ G. Alvarez「Olympic Formal Competition Status for Composite Grappling」『Olympic Sports Policy Review』Vol.9 No.6, pp.1-25, 2024.
- ^ E. MacLeod「オリンピック正式競技の“暫定一次採用枠”について」『カナディアン柔術通信』第1号, pp.3-4, 2018.
外部リンク
- Canadian Grappling Archive
- OTFA Official Judging Notes
- IFJJ Rules Portal
- North Continental Jujutsu Cup
- Low-Friction Mat Standards