カナディアン・クリケット
| 読み | かなでぃあん くりけっと |
|---|---|
| 発生国 | カナダ |
| 発生年 | 1897年 |
| 創始者 | ジョナサン・ハリントン(Jonathan Harrington) |
| 競技形式 | 二段階打撃+陣取り(ゾーン得点) |
| 主要技術 | 風読みスロー/樹脂ボール制御 |
| オリンピック | 1976年に正式競技として採用されたとする説がある |
カナディアン・クリケット(よみ、英: Canadian Cricket)は、で生まれたのスポーツ競技である[1]。
概要[編集]
は、打者が投球を打ち返すだけでなく、打球が指定ゾーンに入った時点で得点が確定するように設計された球技である。起源はの冬季移動教会集会で行われていた「屋外リレー練習」を球技化したものとされる。
「クリケット(Cricket)」の語が用いられるが、実際の競技骨格は別物であると説明されることが多い。すなわち、滑走靴の代わりに足場マーカーを踏むこと、投球は指先の湿度管理まで含めて規定されること、そして勝敗が「得点」だけでなく「陣地の奪取回数」によって決まる点に特徴がある。なお、競技名が定着した背景には、巡業チームが“カナダ流のクリケット”と呼称したことがあったとされる[2]。
歴史[編集]
起源[編集]
本競技の起源は1897年に内の青年団が制定した「冬の屋外学習条例」に求められるとする説がある。条例では、説教師が落ち葉をならした地面に等間隔の線を引き、まずは“片足停止”の練習を行うことが規定された。その後、ジョナサン・ハリントンがこの停止練習を「打者の足が線を越えたら一時失格、越えなければ打撃続行」と読み替え、さらに投球側には風向表示係としての測候員が雇われたと記録される[3]。
ただし、当初の投球は球ではなく「樹脂を薄く固めた板片」を使う試作段階であったとされ、試合時間が妙に短かった理由は、板片が凍結して割れるまでの平均が“19分38秒”だったためだという話が、競技史の一節として残っている。のちに、割れにくい配合として「カナダ北部の松脂:3、白樺粉:7」の比率が採用され、現在のボール素材思想に連続するとも説明される[4]。
国際的普及[編集]
20世紀初頭には、を拠点にした鉄道学校が「停車場を守る」練習として採用し、競技人口が急増したとされる。とくに駅ごとに設置できる「防衛ゾーン」が既に線引き済みであったため、設備投資が不要だった点が普及の加速因子として挙げられる。一方で、列車運行の遅延に伴い試合が早く終わる日が続き、採点担当の集計が追いつかないという“遅延集計問題”が発生したとも記録される[5]。
第一次世界大戦後、カナダ軍の連隊スポーツ顧問であった(William McGager)が、前線の「風読み」技能を競技技術に翻訳したことで、ルールの共通化が進められたとされる。結果として、1924年にが“標準化されたゾーン得点表”を作成し、カナディアン・クリケットは北米圏で広く行われるようになった。なお、欧州側には「この競技はオリンピック正式競技に近い」という誤解も流通し、1970年代に国際競技委員会の傍聴記録が「採用の噂」として残ったことが、後述のオリンピック項目の根拠とされている[6]。
ルール[編集]
試合はとして、長方形のフィールドに加え、打球が入るが外周に複数配置される形で行われる。ゾーンは“合計12枚”と定められるが、開催地の積雪状況に合わせて「外周ゾーンのうち4枚を短縮版にする」という例外規定が存在する。短縮版では得点係数が0.7になるため、選手は打球の高さ調整を迫られることになる。
試合時間は、基本が前後半各25分の計50分である。さらに、得点差が一定以上に開いた場合(基準は“差が8点に到達した時点”とされる)、前半終了時に30秒の“測候タイムアウト”が挿入される。ここで測候担当が風向矢印の角度を読み上げ、それに基づいて投球側のスロー軌道が修正されるため、勝負が科学っぽく動く点が特徴であると説明される[7]。
勝敗はゾーン得点の合計に加え、奪取回数によって調整される。具体的には、打者が打球で防衛線を突破し、守備側がそれを防いだ回数(“防衛失敗ログ”)が記録され、一定以上に達すると得点が1.5倍される。ただし、ログが天候ノイズで読めない場合は要領良く「平均値復元」が採用されるため、“勝ったけど記録が揺れた試合”が大会の語り種になりやすいとされる[8]。
技術体系[編集]
技術体系は大きく、打撃技術・投球技術・守備技術・運用技術の4領域に分けられる。とくにカナディアン・クリケットでは、投球が単なる速度競争ではなく「指先温度」と「ボール表面の摩擦係数」に基づいて制御される。指先の湿度は“テープ改良で3秒以内に均一化”する手順が推奨され、公式大会では秒針付きの準備台が置かれることもある。
打撃では、打者はスタンスをゾーン境界に合わせて調整し、打球の角度がゾーンのどこに落ちるかを読む必要がある。風読みは、の測候記録に由来する「3段階風矢印」—微風(〜2m/s)、中風(2〜5m/s)、強風(5m/s超)—をもとにスイングの力配分を決める方法として知られる[9]。
守備では、捕球よりも「回収して戻す時間」が重要視される。これは、守備側が回収したボールを“自陣の中心点から半径2.3メートル以内”に戻さないと、奪取回数カウントに反映されないためである。運用技術としては、交代のタイミングが得点係数に影響しうるため、ベンチが“交代順番表”を暗記して臨む文化が形成されたとされる[10]。
用具[編集]
用具は、樹脂ボール、打者用パドル(木製または複合材)、守備用回収網、そしてゾーン境界の足場マーカーから構成される。ボールは表面に細かな溝が刻まれ、凍結状態でも転がりが止まりにくい“低氷摩耗設計”が採用されていると説明されることがある。
打者用パドルは、厚みが一様ではなく、持ち手側に“5mmのくびれ”があるのが定番とされる。なぜなら、手首の返し動作で生じる捻りを、くびれ部分が吸収し、打球角度が安定するという伝承が競技団体の資料に見られるためである[11]。守備用回収網は、捕球よりも「回収」を目的にしており、網の穴のサイズは“直径18〜22mm”で統一される。
さらに、試合ごとに「測候キット」として簡易風向計が配布される。これは技術体系で述べた風読みのためであり、選手側が勝手に解析してよいわけではないとされる。一方で、審判が持つ風向計の角度と、選手が読み取った角度が一致しない場合があり、その差が“審判のくせ”として語り継がれることもある。
主な大会[編集]
主な大会には、(毎年2月第2週)、(4月)、(7月)が挙げられる。とくに五大湖陣取りトーナメントは、開催地ごとにゾーンの短縮版数が変わるため、同じチームでも戦略が毎回変わる点で知られる。
大会運用として、グループリーグでは“同点の場合、最初に防衛失敗ログが規定に達した側を勝ちとする”という運用が採用されることがある。このルールは名目上フェアネスを目的とするが、実態としては“熱のある試合ほど逆転が起きる”ため、観客動員に寄与したと説明される[12]。
また、伝統的なイベントとして、決勝前に「樹脂ボール安全宣誓」が行われる。これは、かつて溶けた松脂が靴底に付着し、滑って観客が転倒した事故が契機になったとされる。以後、事故の再発を防ぐため、全選手は試合前に床面の摩耗点検を行うことが義務化されたというが、詳細な数値は大会パンフレットごとに表現が揺れるのが特徴である。
競技団体[編集]
競技の統括は、の下部組織であるが担っているとされる。委員会はルール改定のたびに「測候タイムアウト」の運用基準を更新し、ボール素材に関する許容誤差も見直す。
国際面ではが標準規格を提供し、審判講習と用具検査を段階化した。講習は初級・中級・登録審判の3段階とされ、登録審判は年3回の筆記試験と、年1回の実技検定を受ける必要があるとされる。試験問題には“ゾーン係数表を暗記して、途中で風矢印が変わったときの手順を口頭で説明する”形式が含まれるという指摘もある[13]。
なお、オリンピックの扱いについては、1976年に正式競技として採用されたとする説が流通している。ただし、採用は一時的な競技実験扱いで、国際公式記録の残り方が複雑であるとされる。関係者の証言では「会議議事録の表紙にだけ“Canadian Cricket”と書かれていた」という逸話があり、真偽はさておき競技の知名度に大きく寄与したと説明される。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ ジェニファー・ブレイディ『北米の冬季球技史:1890〜1935年』湖水書房, 2012年.
- ^ マーティン・デュプレ『ゾーン得点方式の発明と誤解』Vol.3, 北米スポーツ技術研究所, 2008年.
- ^ William McGager「風読みスローの標準化に関する覚書」『Journal of Field Games』第12巻第4号, pp. 77-96, 1926年.
- ^ ジョナサン・ハリントン『足場マーカーと打撃の相関(未刊原稿)』カナディアン・クリケット委員会, 1911年.
- ^ Eleanor Crowe「樹脂ボールの凍結挙動:松脂配合の再現」『Proceedings of the Canadian Materials Society』第6巻第2号, pp. 201-219, 1931年.
- ^ 佐藤礼二『球技の会計学:防衛失敗ログの文化』青嵐学術出版, 2016年.
- ^ M. J. Haldane『審判と測候:角度差の統計運用』第4巻第1号, 国際競技委員会叢書, 1974年.
- ^ Ruth Nakamura「オリンピック正式競技に関する周辺資料の読み解き」『スポーツアーカイブズ』第18巻第3号, pp. 55-63, 2021年.
- ^ F. Laurent「Canadian Cricket:国際記録の不整合」『International Games Review』Vol.9, pp. 12-28, 1983年.
- ^ C. P. Whitby『カナダの駅と陣取りスポーツ』誤植研究所出版, 1999年.
外部リンク
- カナディアン・クリケット研究会
- 北米球技連盟アーカイブ
- 樹脂ボール配合データベース
- 測候タイムアウト手順書ギャラリー
- 五大湖陣取りトーナメント公式ログ