カラスとの交流を描いた10のこと
| 作品名 | カラスとの交流を描いた10のこと |
|---|---|
| 原題 | Ten Things About Meeting Crows |
| 画像 | 公式ポスター(架空) |
| 画像サイズ | 280px |
| 画像解説 | 河川敷の街灯と、黒い翼が画面を横切る構図 |
| 監督 | 鷹野渉太 |
| 脚本 | 井花凪紗 |
| 原作 | 『十の接近——野生個体記録の編年』(架空) |
| 原案 | 観察記録班([[環境行動記録室]]) |
| 製作 | 製作委員会「翼交響」 |
| ナレーター | 牧村エリサ |
| 出演者 | 鷹野渉太(本人出演)、ほか観察者多数 |
| 音楽 | 梓川ユウ |
| 主題歌 | 「十番目の沈黙」 |
| 撮影 | 瀬戸川倫 |
| 編集 | 村雨紡 |
| 制作会社 | 夜鴉映像工房 |
| 製作会社 | 翼交響製作委員会 |
| 配給 | 東京生態圏配給社 |
| 公開 | 2021年10月22日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 7,400万円 |
| 興行収入 | 18億2,300万円(推定) |
| 配給収入 | 7億1,900万円(推定) |
| 上映時間 | 112分 |
| 前作 | なし |
| 次作 | 『カラスの記号論:十一の接近』 |
『カラスとの交流を描いた10のこと』(からすとのこうりゅうをえがいたじゅうのこと)は、[[2021年]]に公開された[[日本のドキュメンタリー映画|日本の]]ドキュメンタリー映画である。監督は[[鷹野渉太]]、ナレーターは[[牧村エリサ]]で、総上映時間は112分。野生の[[カラス]]の行動を追跡するという形式で興行的に大きな反響を得たとされる[1]。
概要[編集]
『カラスとの交流を描いた10のこと』は、野生の[[カラス]]を観察対象としつつ、観察者側の“交流”のあり方を章立てで検証する形式の実写ドキュメンタリー映画である。作品は「10のこと」を章題として提示し、その各章で録音・画像・記録媒体(紙の観察ログも含む)が同時に参照される作りになっている。
本作は[[茨城県]]の架空河川域で行われた撮影記録を中核として構成され、[[2020年]]春から[[2021年]]初夏までの観察データがベースになったとされる[1]。また、監督の[[鷹野渉太]]は「行動学ではなく、通訳不全の倫理を撮る」と述べたとされる[2]。
公開時には、視聴者が“カラスに話しかけてしまった”という感想が相次ぎ、映画館のロビーで黒い羽根を拾う人が増えたとして、配給側が注意書きを掲示したという逸話が残っている[3]。なおこの逸話の真偽については、当時の広報メールの一部が見つからなかったため、出典が揺れているとされる[4]。
内容[編集]
10のこと(章立て)[編集]
章立ては、単なる行動列挙ではなく「交流」を成立させる条件のように組まれている。第1のことは、[[サイン]]としてのくちばしの角度であり、第2のことは、観察者が立ち止まるまでの“ため”の秒数とされた。第3のことでは、カラスが人の影に対して行う微振動(映画内では“影の同期”と呼ばれる)が取り上げられる。
第4のことは、落ちている金属片に触れるか否かで“距離の約束”が変わるという仮説で構成される。第5のことでは、パン屑を与えないかわりに、音だけを模倣して反応を比較する場面があり、第6のことでは、観察ログ用のクリップが“呼び鈴”になってしまう様子が記録される。
第7のことは、カラスが同じ枝に留まらない理由を「退屈ではなく、相互の時間差」として扱い、第8のことは、群れが最初に“カメラ”へではなく“ナレーションの呼吸”へ向くという描写がある。第9のことは、帰巣行動の前に空を見上げる頻度(映画内では毎分17.2回とされる)が検証され、第10のこととして「交流は理解ではなく、再び遭遇する約束だ」とまとめられる。
やけに細かい観察装置[編集]
撮影は[[茨城県]][[鹿島市]]周辺の“海風の割れる堤防”と呼ばれる場所で行われたとされ、風速だけでなく、地面の砂粒が跳ね返る高さまで計測したと説明される[5]。映画内では、黒いカラスが画面に入る確率を高める目的で、赤外線反射率の異なるレンズキャップが複数用意されたとされるが、これが本当に必要だったのかは監督以外に証言がないとされる。
また、作中に登場する観察ログは、紙媒体だけでなく“筆跡の太さ”まで記録するという設定になっている。これは[[環境行動記録室]]が、観察者の緊張が書字圧に出る点に注目したためだとされる[6]。一方で、編集段階ではそのログが一部“きれいに写植された”と指摘され、研究倫理的な違和感が議論の種になったとも報じられている[7]。
取材対象・登場人物[編集]
本作の中心となるのは、野生のカラス群であるが、映画の構成上は“個体”が準主役扱いされる。個体名は実在の識別リング番号をもじった形で提示され、「個体A(翼角度が小さい)」「個体B(音に遅れて反応する)」などの呼称が出てくる。
観察者側の主要人物として、監督の[[鷹野渉太]]のほか、環境音響の専門家[[柳原サキ]]、フィールド倫理の監修として[[内海宗輝]]が参加したとされる[8]。ただし撮影の実務では、実在の団体登録名が資料として流用されている可能性があり、クレジットの“登録番号”の桁数が一致しないとの指摘もある[9]。
さらに、作中のナレーションは[[牧村エリサ]]が担当したとされ、声質を「鳥類の聴覚域に近い母音だけで構成した」と本人が語ったとされる[10]。この発言は後に、母音構成を“科学的に最適化した”という根拠が薄いとして、批評家に笑われた経緯がある。とはいえ、その直後に観客が“変なところで安心する”感想を残したことも記録されており、笑いと納得が同居した作品になっている。
製作背景[編集]
企画は、監督の[[鷹野渉太]]が大学院のフィールドワークで“観察者の沈黙が先に破られてしまう”体験を報告したことに端を発するとされる。通常、カラスの側が先に距離を詰めるが、本作では逆に観察者側の動きが“破り目”になるという逆転の視点が早期に立てられた。
また、タイトルの「10のこと」は、[[国立野生行動アーカイブ]]が制定した“接近記録の十分類”を参照したと説明される。ここで一見出典が整っているように見えるが、実際の分類基準は公表資料が見つからないまま、劇中では「第1分類から第10分類まで、平均観察誤差が0.73秒以内である」と断言されている[11]。そのため、視聴者の間では「研究資料を借りたのではなく、映画の都合で誤差が丸められたのでは」と疑われることになった。
作中で[[東京生態圏配給社]]が推した“交流”という語は、動物福祉団体の間で慎重に扱われる概念であるとされるが、企画会議では“交流”に置き換えることで一般視聴者が受け入れやすくなるという議論が優先されたとも言われている[12]。この点について、撮影班は「言葉を柔らかくするほど、行動が硬くなる」ことを経験則として語ったとされる。
公開と反響[編集]
公開初週、全国20館のうち10館で連日満席になったと報じられ、特に[[東京都]]内の一部シネマでは、上映前に“鳥に向けた拍手禁止”の案内が出たとされる[13]。これは、観客がつい“拍手で合図を送る”行為をしてしまうことが観察され、劇場スタッフが注意した結果だと説明される。
一方で、ドキュメンタリーとしての信頼性には揺れがあった。批評では「カラスの行動が“会話”に見えるよう編集されすぎている」との指摘が出て、[[内海宗輝]]の監修がどこまで編集に介入したかが争点になったとされる[14]。反対に、映像の詩的な誠実さを評価する声もあり、結果として本作は“科学と願望の境界”を楽しむ作品として位置づけられた。
観客賞では「十番目の沈黙」が主題歌として強く支持され、映画館で歌詞カードが配布された(ただし歌詞はQRコードから参照する仕様だった)という小さな騒ぎも起きたとされる[15]。このときQRコードが読み取りづらかったため、代わりに劇場のスタッフが“口頭で歌詞を説明した”とする証言があり、真偽はともかく現場の熱量を示す逸話として残っている。
受賞[編集]
本作は[[日本ドキュメンタリー協会]]の第34回選考で佳作に相当する部門賞を受けたとされる[16]。また、映像技術というより“倫理的な間の取り方”が評価されたとされ、授賞式では監督の[[鷹野渉太]]が「沈黙のカットは、相手の沈黙を奪う可能性がある」と述べたと報じられた。
ただし、受賞の裏側では、作品が提出した“観察データの要約”が一部欠落していた疑いがあると指摘された。欠落分については、制作側が「保管庫の温度管理に問題が生じた」ためと説明したとされるが、説明文が劇中の誤差設定(0.73秒以内)と整合しない点から、笑いを誘う議論が起きた[17]。
その後、監督と編集を担当した[[村雨紡]]が“欠落はあっても、編集の意図は一貫している”という趣旨の公開講座を行ったとされる。講座の資料では、カラスが最初にカメラではなくナレーションに反応する場面が“再現実験として10回中7回成功”だったと明記されている。しかしこの「成功」の定義が曖昧であるとして、研究者の一部から慎重な見解が出た。
興行・関連商品[編集]
興行収入は、公開初月で概算18億2,300万円とされ、配給収入は7億1,900万円と推定される[18]。この数値は公開時のプレス資料に基づくとされるが、同資料では“地方別の回収率”が一覧化されておらず、計算過程は再現できないと指摘されている。
関連商品としては、映像ソフト化の際に“観察ログの縮刷版”が付属したエディションが発売された。付録の紙には、カラスの個体ごとの反応時間(平均19.4秒など)が印刷されているとされるが、実際の観察ログが存在するのかは確認できないという声もある[19]。また、聴覚派向けに“音声のみ”のダウンロード版(112分完全収録)が用意されたとされ、そこではナレーターの呼吸音がわずかに強調されていると評された。
さらに、上映館で行われたコラボ企画として、[[茨城県]][[鹿島市]]の架空施設「海風記憶展示館」でフォトスポットが設置された。フォトスポットの説明文には「黒は情報、白は余白」といった映画文句が掲げられ、訪問者がその場で翼を模したポーズをとったという写真が公式SNSに掲載されたとされる[20]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 鷹野渉太「『カラスとの交流』の編集哲学——沈黙は奪うのか」『映画記録研究』第12巻第3号, 2021年, pp. 45-68.
- ^ 井花凪紗「十章構成の倫理設計——“10のこと”の作り方」『ドキュメンタリー脚本誌』Vol. 8, 2021年, pp. 12-29.
- ^ 牧村エリサ「ナレーションの母音域最適化は可能か」『音声表現評論』第6巻第1号, 2022年, pp. 101-119.
- ^ 梓川ユウ「沈黙のための旋律——鳥類向けBGMの作曲手順」『映画音楽研究』第19巻第2号, 2020年, pp. 77-95.
- ^ 瀬戸川倫「風速と砂粒の高跳びをどう撮るか」『映像機材紀要』第27巻第4号, 2021年, pp. 200-214.
- ^ 村雨紡「“観察ログの写植”は科学か演出か」『編集と実験』第3巻第5号, 2022年, pp. 33-52.
- ^ 柳原サキ「音響による接近の遅延——10回中7回の定義」『環境音響学会論文集』Vol. 41, No. 1, 2021年, pp. 1-18.
- ^ 内海宗輝「動物福祉と言葉の温度——“交流”の扱い」『環境倫理通信』第9巻第2号, 2021年, pp. 55-73.
- ^ 『国立野生行動アーカイブ年報』第34号, 国立野生行動アーカイブ, 2019年, pp. 210-238.
- ^ 東京生態圏配給社『翼交響製作委員会資料(抄)』2021年, pp. 5-9(ただし資料タイトルに誤記があるとされる).
外部リンク
- 夜鴉映像工房 公式記録室
- 東京生態圏配給社 特設ページ
- 環境行動記録室 アーカイブ
- 翼交響製作委員会 ブログ(ログ版)
- 日本ドキュメンタリー協会 受賞一覧(第34回)