ガルベス浜スタ場外本塁打ボール魔除け伝説
ガルベス浜スタ場外本塁打ボール魔除け伝説(がるべすはますたじょうがいほんるいだぼーるまよけでんせつ)とは、の都市伝説の一種である[1]。球場の外に飛び出したとされる“本塁打ボール”を、怪異が「鍵」とみなして襲撃を選別すると言い伝えられる[1]。
概要[編集]
は、球場周辺で目撃されたという怪談が、いつしか「魔除け」手順として全国に広まったものとされる[2]。伝承では、飛来物(ボール)そのものよりも、ボールに“縁起”が付く条件が重要であるという話になっている[2]。
噂の核は「場外のはずの本塁打ボールが、なぜか誰かの手に戻る」という正体不明の循環現象であり、その過程で妖怪のような存在が“名付け”を行うとされる[3]。そのため、怖がるだけでなく、儀礼のような対処法がセットで語られるのが特徴である[3]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は、架空の港湾都市であるにある小規模球場の、前後の興行トラブルに求める説がある[4]。当時、場外へ飛んだはずのボールが翌朝、なぜか三塁側ベンチの下に“整列”して置かれていたという目撃談が、新聞の折り込み欄で一度だけ紹介されたとされる[4]。
この話を裏付ける資料として、地元の清掃組合が保管していたという「飛来物記録簿(全31頁)」が引用されるが、実物は所在不明とされる[5]。ただし、そこには「本塁打ボール」だけが“魔除け”印を押されていると記されていた、という噂が根強い[5]。
流布の経緯[編集]
噂が全国に広まったのは、の深夜番組で、として放送されたという伝承によるとされる[6]。マスメディアは当初、単なる球場怪談として扱ったが、視聴者から「翌週、玄関にボールを置いたら不幸が減った」などの反応が殺到し、ブームに変質したとされる[6]。
さらに頃、投稿掲示板で「魔除け手順が再現できる」という言い方が広がり、都市伝説として定着したとされる[7]。その過程で、正体は妖怪なのか未確認動物なのか判然としないまま、「ボールに触れる手の清さ」が重要要素とされた[7]。一方で、条件を誤ると“出没”が激しくなるとも警告されたという話が、追って追って語り継がれていった。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
この都市伝説では、怪異の正体は“人ではないが、名札を付ける”とされる存在として描かれる[8]。目撃談では、球場の照明が落ちた瞬間、外野フェンスを越えたはずのボールが空中で回転し、投げ手のいない方向から「カチッ」と音がしたと語られる[8]。その直後、見物客の間で「持ち主名を呼ばれた」と恐怖を覚えたという[9]。
伝承に登場する人物像としては、地元の常連とされるの存在が語られる[9]。守り人は“捕まえない”ことでボールを鎮めるとされ、目撃された行動は「ボールの影が地面に落ちるまで待つ」「落ちた影の向きに合わせて礼をする」という、やけに儀式的な手順として語られる[10]。また、子どもが不用意に拾うと、逆に妖怪が「拾った側の運命」に書き込むと噂され、これがパニックを生む導線になったとされる[10]。
言い伝えの中で特に細かいのは、魔除けとして成立する“時間条件”である。伝承によれば、ボールが場外へ飛んでから以内に「濡れていない布」で包んだ場合に限り、玄関の災厄を弾くとされる[11]。逆にを超えると、ボールは鍵となり「家の中に出没する」と言われている[11]。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとしては、ボールの“呼び名”が複数ある。原型では「本塁打ボール」と呼ばれるが、地域によっては「浜打ち札」「場外鍵球」「ガルベス返礼球」とも言われる[12]。また、色にもバリエーションが付与され、目撃談では赤系のボールだと“守りが強い”が、白系だと“正体が見える”と語られるという[12]。
さらに、同じ都市伝説でも対処の派生が増えたとされる。代表的には「握らず掲げる」派と「拾って数える」派であり、前者はボールの“温度”を問う(冷えたものは危険とされる)とされる[13]。後者は、玄関前に置いたボールをだけ回してから退去するという、やや実験的な怪奇譚として語られる[13]。
ただし、最も奇妙とされる派生として「魔除けが失敗する条件」まで細分化されたという[14]。例えば、包む布が洗濯して以降だと、魔除けが“逆流”して悪夢が増えるとされる[14]。この説は、根拠の所在が不明にもかかわらず、細かさゆえに信じられやすいと指摘される。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法は、恐怖の鎮静と同時に“関係を持つ”ことを避ける設計になっているとされる。基本手順として、場外本塁打ボールを見つけても走って拾わないこと、次にボールへ息を吹きかけないこと、最後に「持ち主を名乗らない」ことが鉄則とされる[15]。
具体的には、ボールを布で包む際、布の端を結ばず“くぐらせる”のが正しいとされる[15]。この理由は、結び目が“出没の座標”になるからだと説明されるという[16]。また、儀礼は静かに行う必要があり、説明口調で何かを言うと妖怪が“言葉を採取する”と噂される[16]。
さらに「お守り化」の手順として、玄関内ではなく玄関外の郵便受けの横に置くとされる[17]。置く位置には段階があり、地面からの高さを目安にすると効果が出やすい、という言い伝えが存在する[17]。一方で、郵便受けの投入口が錆びている場合は逆に吸い込まれるとされ、マスメディアに取り上げられた際も要注意として紹介されたとされる[18]。
社会的影響[編集]
この都市伝説は、球場周辺の行動規範として一時期、実利を帯びたとされる[19]。たとえば、の観客は場外へ物を投げないよう注意する張り紙を出し、「拾わないで係員へ連絡」といった告知が増えたと噂される[19]。
また、家計・衛生にも波及したとされ、霊的恐怖が「家庭内の物の扱い方」へ転換されたという指摘がある[20]。噂の流行中、捨てるべき郵便物の分類が細かくなり、結果として家の中の散らかりが減った地域もあったという[20]。ただし、逆に“ボール信仰”が強まり、見つけた人が過剰に布を準備して不気味な物品を増やし、近隣トラブルを生んだとされる[21]。
一方で、警察や自治体が“迷惑行為の抑止”として注意喚起を行ったとする噂もあるが、当該記録は確認できないとされる[21]。ここに、要出典とされそうな余白が残り、むしろ都市伝説のリアリティを補強していると見られる。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化面では、スポーツ怪談の枠を超えて“鍵”の比喩として扱われることが多い。ボールが鍵となるという設定から、鍵の開閉と運命の連動を描くショートドラマやラジオドラマが作られたという[22]。とくにの深夜ラジオ企画では、投稿の「封印手順」が脚本に取り込まれたとされ、メールが全国から届いたという[22]。
また、インターネットの文化としては、語呂の良さから「浜スタ=夜に拾うと危ない」という連想テンプレが生まれたとされる[23]。その結果、実在しない場所でも“場外本塁打”の言い換えが使われ、別の怪談へ転用されたという[23]。
ブームの終盤では、可視化された恐怖が評価され、では不気味なボールが玄関で発光し、主人公がを時計で数える描写が定番化したという[24]。ただし、すべてが同じ原典に基づくわけではないとされ、マスメディア側では「細部は創作である」と注釈された回もあったとされる[24]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
架空の参照文献として、以下が挙げられる。
[1] 田中ユリ子「場外本塁打ボールの記号論―魔除け伝説の受容過程」『怪談文化研究』第12巻第3号, 日本怪談学会, 2002年, pp. 41-63.
[2] 浜スタ民話会編『ガルベス浜の夜と球場の記録』港湾叢書, 1998年, pp. 12-27.
[3] M. A. Thornton「Tangible Omens in Urban Sports Folklore」『Journal of Peripheral Supernatural Studies』Vol.5 No.2, 2005年, pp. 88-104.
[4] 伊藤昌則「“整列したボール”報道の系譜」『新聞折り込み史叢書』第2輯, 明誠出版, 2000年, pp. 201-219.
[5] 佐藤礼「飛来物記録簿の行方」『ローカル行政と怪異』第7巻第1号, 霞ヶ浦書房, 2003年, pp. 77-92.
[6] 山根いずみ「深夜番組が作ったスポーツ怪談の共同体」『放送研究の妖気』Vol.18 No.4, 2004年, pp. 55-79.
[7] K. Robinson「Forum Narratives and Charm-Legend Replication」『Internet Folklore Review』Vol.9 Issue 1, 2006年, pp. 10-33.
[8] 鈴木健太「名指しを伴う非人間的存在の特徴」『日本民俗学の未確認領域』第15巻第2号, 国民民俗出版社, 2007年, pp. 130-156.
[9] 浜守り人(聞き取り)『夜の礼法録:守らない儀礼の話』浜草紙刊行会, 2001年, pp. 3-19.
[10] 高瀬文「礼と影―場外現象における空間判断」『怪談言語学ジャーナル』第9巻第3号, 2008年, pp. 205-228.
[11] L. Nakamura「Time Windows in Charm Efficacy Claims」『Asian Journal of Myth Mechanics』Vol.3 No.1, 2009年, pp. 1-20.
[12] 北見真央「呼称の多層性と都市伝説の耐久性」『噂の形態論』第4巻第4号, 星雲堂, 2010年, pp. 62-90.
[13] 岩崎和也「結ばない布の効果―対処法の実践化」『民間怪異の手順集』第6巻第2号, 砂時計社, 2011年, pp. 44-68.
[14] O. Petrov「Why 32 Days? Aging Cloth Myths in Japan」『Myth & Practice』Vol.22 No.3, 2012年, pp. 99-118.
[15] 村上絵梨「採取されない言葉―注意喚起の言語設計」『公共啓発と怪談』第8巻第1号, 風見学術出版, 2013年, pp. 15-38.
[16] S. Arai「Prohibitions and Boundary Maintenance in Ghost-Mediated Objects」『Ethnography of Fear』Vol.7 No.2, 2014年, pp. 201-223.
[17] 渡邊健「玄関外配置モデル(仮説)と効果の自己報告」『生活空間と怪奇譚』第10巻第1号, 砂州出版, 2015年, pp. 88-110.
[18] 藤堂りん「錆びた投入口と逆流伝説」『夜更けの安全神話』第1巻第1号, ぬばたま書房, 2016年, pp. 5-21.
[19] 鈴木義和「注意喚起が運んだ合理性―球場周辺の行動変容」『スポーツ行政と迷信』第3巻第2号, 2017年, pp. 71-96.
[20] 野村麻衣「衛生行動と不気味の相互転換」『都市伝説と生活』Vol.6 No.1, 2018年, pp. 33-57.
[21] 加藤直哉「要確認資料が生む信頼―都市伝説の“空白”」『社会心理と噂』第11巻第3号, 2019年, pp. 120-142.
[22] 霧島ミオ「鍵の比喩としての場外本塁打」『演劇化される怪談』Vol.12 Issue 2, 2020年, pp. 214-236.
[23] 佐々木隆「テンプレ転用と語呂の伝播速度」『ネット怪談年報』第2号, 2021年, pp. 1-25.
[24] 渡邉さゆり「時計で数える恐怖―漫画表現の定型化」『大衆文化の怪奇学』第5巻第4号, 2022年, pp. 77-102.
※一部の参考文献は題名が近似しており、書誌情報に揺れがあると指摘される[25]。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中ユリ子『場外本塁打ボールの記号論―魔除け伝説の受容過程』『怪談文化研究』第12巻第3号, 日本怪談学会, 2002年, pp. 41-63.
- ^ 浜スタ民話会『ガルベス浜の夜と球場の記録』港湾叢書, 1998年, pp. 12-27.
- ^ M. A. Thornton『Tangible Omens in Urban Sports Folklore』『Journal of Peripheral Supernatural Studies』Vol.5 No.2, 2005年, pp. 88-104.
- ^ 伊藤昌則『“整列したボール”報道の系譜』『新聞折り込み史叢書』第2輯, 明誠出版, 2000年, pp. 201-219.
- ^ 佐藤礼『飛来物記録簿の行方』『ローカル行政と怪異』第7巻第1号, 霞ヶ浦書房, 2003年, pp. 77-92.
- ^ 山根いずみ『深夜番組が作ったスポーツ怪談の共同体』『放送研究の妖気』Vol.18 No.4, 2004年, pp. 55-79.
- ^ K. Robinson『Forum Narratives and Charm-Legend Replication』『Internet Folklore Review』Vol.9 Issue 1, 2006年, pp. 10-33.
- ^ 鈴木健太『名指しを伴う非人間的存在の特徴』『日本民俗学の未確認領域』第15巻第2号, 国民民俗出版社, 2007年, pp. 130-156.
- ^ L. Nakamura『Time Windows in Charm Efficacy Claims』『Asian Journal of Myth Mechanics』Vol.3 No.1, 2009年, pp. 1-20.
- ^ O. Petrov『Why 32 Days? Aging Cloth Myths in Japan』『Myth & Practice』Vol.22 No.3, 2012年, pp. 99-118.
外部リンク
- 浜スタ怪談アーカイブ
- 都市伝説手順データバンク
- ガルベス浜・夜間目撃録
- ネット噂検証掲示板
- 魔除けボール研究会(私設)