チェッス!
| タイトル | チェッス! |
|---|---|
| ジャンル | 青春、頭脳戦、スポーツ風味、学園 |
| 作者 | 高見沢 連司 |
| 出版社 | 双翼出版 |
| 掲載誌 | 月刊ブレードワーク |
| レーベル | ブレードワークコミックス |
| 連載期間 | 2007年4月号 - 2012年9月号 |
| 巻数 | 全14巻 |
| 話数 | 全83話 |
| 累計発行部数 | 約620万部 |
『チェッス!』(ちぇっす)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『チェッス!』は、の私立校を舞台に、発声禁止の即興盤面競技「チェッス」をめぐって少年少女が競い合う漫画である。作中の「チェッス」は、に似た駒運びを持ちながら、宣言と同時に盤面の一角を叩いて開始する独自の儀式を伴う競技として描かれている。
連載開始当初は学園ものとして扱われたが、途中から大会編や海外遠征編が導入され、単なる部活動漫画の枠を超えた。とくに「一手詰めの叫び」を意味する決めぜりふが中高生の間で流行し、2010年代前半には「チェッスする」が「無理筋でも押し切る」の比喩として使われたとされる[要出典]。
制作背景[編集]
作者の高見沢連司は、もともととを題材にした短編で知られていた人物で、『チェッス!』は夏にの県立大会を取材した際、対局前の静寂と観客の圧力に着想を得て生まれたとされる。初期案では実在競技のを扱う予定であったが、編集部が「盤面の熱量を日本の学園漫画として転化すべき」と判断し、叫ぶことが前提の架空競技へと改変された。
また、主人公の初期設定は「無口な天才」だったが、連載第3回の読者アンケートで「もっと叫んでほしい」という意見が78.4%を占めたため、以後は毎話ごとに必ず1回以上、主人公が意味不明な宣言をする構成になったという。なお、高見沢は後年のインタビューで「駒の名前を全部ひらがなにしたことで、編集部の校了が毎回2時間遅れた」と語っている[2]。
あらすじ[編集]
導入編[編集]
都立に近い制度を持つ私立に転入したは、校内で謎の集団「盤研同盟」と遭遇する。彼らは、毎週金曜の放課後に旧音楽室で「チェッス」と呼ばれる競技を行っており、勝者には学園の備品管理権が一日与えられるという奇妙な慣習を持っていた。
駿は偶然、駒の配置を一目で読む能力を見出され、半ば強制的に初試合へ参加させられる。ここで彼は、開始宣言と同時に盤の四隅にチョークで印をつける「四点起動」の存在を知り、以後、学園内の権力争いに巻き込まれていく。
関東統一編[編集]
関東統一編では、・・の強豪校が次々と登場し、各校ごとに異なる「口上」と「盤面礼法」が紹介された。とくにの私学・の副将が用いる、駒を置く前に3秒だけ息を止める「無呼吸布陣」は、連載中にファンの間で真似する者が続出した。
この編の終盤では、主人公が1手も動かさずに相手を心理的に崩す「空白の三手」を完成させる。盤面上では何も起きていないのに勝敗が決まるため、読者アンケートでは賛否が二分し、編集部内でも「説明不足ではないか」と「説明すると面白くない」の対立があったという。
海外遠征編[編集]
海外遠征編では、の古城を改装した対局場や、の地下鉄構内で行われる非公式リーグなど、やけに風景だけ本格的な舞台が続く。主人公たちはなる架空組織の予選に参加し、盤外での駆け引きまで含めた「総合一手」を競うことになる。
この編で登場する海外勢は、全員がなぜか日本語の決めぜりふを覚えており、特に「チェックの音が遅れて聞こえる男」と呼ばれるロシア系選手の描写が人気を博した。単行本第9巻の帯には「盤面は世界を越える」と記されたが、実際には作中で一番世界を越えていたのは作者の筆の勢いであると評された。
登場人物[編集]
は本作の主人公で、理屈ではなく直感で盤面を読む天才である。盤上では冷静だが、勝負の直前になると必ず「来たな、チェッス!」と叫ぶ癖があり、この台詞が作品名の由来になったという説がある。
は鳴ヶ丘学園盤研同盟の会長で、作中屈指の理論派として描かれる。彼女は「16手先まで読める」とされるが、実際には相手の昼食内容まで予測している場面があり、ファンの間では「盤面より生活感が鋭い」と評された。
は関東統一編から登場するライバルで、肩書きは「関東地下連盟総帥」である。彼は毎回異なる帽子を被って現れるが、実は全て同じ型紙から作られているという設定が後年明かされ、地味に泣けるエピソードとして話題になった。
は海外遠征編のキーパーソンで、出身の交換留学生である。彼女は駒を並べる速度が極端に遅い代わりに、相手の焦りを利用して勝つ戦法を得意とし、作中では「遅延の女王」と呼ばれている。
用語・世界観[編集]
作中の競技「チェッス」は、通常の盤上競技とは異なり、対局前に「起動宣言」を行わなければ開始できない。宣言時の声量、盤への接触位置、そして立ち上がる角度まで採点対象になるため、競技人口の約3割が「盤面より姿勢に自信がある者」だと設定されている。
また、鳴ヶ丘学園ではチェッスの強豪ほど校内での発言権が強くなるという独特の序列があり、備品室の鍵、体育館の使用枠、学食の盛り付け順などが勝敗に連動する。このため本作は一見でありながら、実態としては制度設計の歪みを描く政治劇でもあると解釈されている。
さらに、盤面上の最終手を「チェッス!」と叫びながら置くと、相手の残り持ち時間が理論上1秒だけ伸びるという謎のルールが存在する。作中ではこれを「応援の余白」と説明しているが、物理的根拠は最後まで示されなかった[要出典]。
書誌情報[編集]
単行本はより刊行され、初版部数は第1巻のみで18万部、第5巻で累計240万部を突破したとされる。第8巻以降は特装版が増え、盤面シールと「四点起動」再現用の紙製チョークが付属した。
海外版は、、で刊行され、いずれも作品名の感嘆符が翻訳上の問題になった。特にフランス版では『Chess!』ではなく『Échec!』として発売され、現地の書店員が「これはゲームなのか、叫びなのか」と困惑したという逸話が残る。
メディア展開[編集]
にはによってテレビアニメ化され、全24話が系列で放送された。オープニング映像で駿が駒を弾くたびに画面が揺れる演出は、放送当時の深夜帯としては異例の作画密度だと評価された。
また、には舞台化も行われ、対局シーンを実際の盤ではなく移動式ステージで再現する方式が採用された。さらに、『チェッス! 盤外通信』が配信され、ユーザー同士が「叫びの角度」を競うイベントが実施されたことで、原作未読層にも一定の認知を得た。
このほか、作中の口上を収録したドラマCD、盤面図を再現できる付録つき雑誌、そして飲料メーカーとの限定コラボ商品「チェッス炭酸水」など、メディアミックスはやや過剰な規模で展開された。
反響・評価[編集]
『チェッス!』は、累計発行部数を突破したとされ、前半の「頭脳戦ブーム」を象徴する作品の一つとみなされている。特に対局の緊迫感を台詞回しとコマ割りで見せる手法は高く評価され、漫画評論家のは「盤上の間を、ここまで怒号で埋めた作品は他にない」と評した。
一方で、ルール説明が毎巻微妙に変わることから、ファンブックの付録に「準公式ルール講座」が収録された。これにより作品世界の整合性はむしろ増したが、逆に連載初期と後期で別競技ではないかという議論も生まれた。
ネット上では「チェッス!」の叫びだけを抜き出した二次創作動画が流行し、風の投稿文化と相性が良かったとされる。なお、2013年には風の架空選考委員会で推薦候補に挙がったが、最終的に「叫びの頻度が高すぎる」との理由で見送られたという。
脚注[編集]
[1] 作品の連載開始時期および掲載誌に関する記述は、単行本第1巻の折り返しで初めて明示されたとされる。
[2] 作者インタビューは『月刊ブレードワーク増刊・盤外ノート』2013年11月号に掲載されたが、該当号は現在入手困難である。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 高見沢連司『チェッス!制作ノート 盤面と叫びのあいだ』双翼出版、2014年.
- ^ 桐生慎「学園頭脳戦漫画における声量表現」『現代コミック研究』Vol.12, 第3号, pp. 44-61.
- ^ 中野由梨「叫ぶ競技としてのチェッス」『漫画表現論集』第8巻第2号, pp. 17-39.
- ^ M. H. Carter, "The Sound of the Move: Japanese Board-Drama and Spatial Tension," Journal of Serialized Arts, Vol. 5, No. 1, pp. 88-104.
- ^ 菱川直人『月刊誌連載におけるルール変遷の実例』双翼コミュニケーションズ、2015年.
- ^ Aiko S. Merrin, "Weaponized Silence in School Competition Narratives," East Asian Popular Culture Review, Vol. 9, No. 4, pp. 201-223.
- ^ 小田原ユウ『盤外の政治学と学食の秩序』鳴ヶ丘文化出版、2016年.
- ^ 佐伯望「『チェッス!』と2000年代後半の感嘆符文化」『コミック・ヒストリー』第21巻第1号, pp. 5-28.
- ^ Helmut Gruber, "Chess! or Échec!: Translation Problems in Exclamatory Manga Titles," Transnational Media Studies, Vol. 3, No. 2, pp. 66-79.
- ^ 神谷冬子『テレビアニメ化作品における盤面演出の変遷』晨光メディア叢書、2018年.
外部リンク
- 双翼出版 公式作品案内
- 月刊ブレードワーク デジタルアーカイブ
- チェッス! ファン資料室
- 鳴ヶ丘学園 盤研同盟記録庫
- 晨光スタジオ アニメ作品一覧