『電波の老舗(アナログ・オールドメディア・シンドローム)』
| 作品名 | 『電波の老舗(アナログ・オールドメディア・シンドローム)』 |
|---|---|
| 原題 | Dempao no Shise (Analog Old Media Syndrome) |
| 画像 | (架空)公式ポスター『老舗の電波』 |
| 監督 | 渡辺精一郎 |
| 脚本 | 渡辺精一郎 |
| 音楽 | 宇佐美ヨウ(うさみ よう) |
| 主題歌 | 「黒い受信機」(歌: 霧島レナ) |
| 制作会社 | 環状広告機構 |
| 配給 | 東北フィルム輸送(架空) |
| 公開 | 2009年10月17日 |
『電波の老舗(アナログ・オールドメディア・シンドローム)』(でんぱのしにせ、英: Dempao no Shise)は、制作ののである。原作・脚本・監督は。興行収入は17.3億円で優秀映像賞を受賞した[1]。
概要[編集]
『電波の老舗(アナログ・オールドメディア・シンドローム)』は、制作ののアニメーション映画である。テレビ局を舞台に「古いメディア(オールドメディア)」が自己増殖する“呪い”を描く点で、後年の同種作品に影響を与えたとされる[1]。
監督のは、本作の構想を「視聴率の波形が、社会の鼓動を勝手に代筆してしまう現象」と説明しており、台詞の大半は放送業界用語を“怪談口調”に変換する形で書かれた。また、本作では架空の技術としてが設定され、ニュース原稿が勝手に“過去の正解”へ寄っていく様子が視覚化されている[2]。
あらすじ[編集]
港区の放送会館に勤める若手編集者・は、毎朝届く「テープ」という名の手紙に、なぜか自社の番組が“完成済み”の状態で同梱されていることに気づく。テープには、放送倫理委員会の判定まで印字されており、彼女が差し替えようとすると画面が静電気の花火へ変質してしまう[3]。
物語は、同会館の地下に設置された旧式送信機“老舗アンテナ”が、視聴者の記憶を材料として台本を書き換えていると判明する展開へ進む。老舗アンテナは、かつてとの取引で成立した“勝ち筋”を保存し、現在の番組制作に強引に流用することで、局の影響力を維持していたのである[4]。
終盤、の名義で呼び出された交渉係“校正天狗”が、局の誤解をほどく鍵として「放送を止めずに、歴史の順番だけを入れ替える」方法を提示する。ただし方法の条件は、主人公が自分の“初稿の正しさ”を捨て、視聴者の迷いを編集で肯定することであった[5]。
登場人物(主要人物/その他)[編集]
主要人物[編集]
(みつや りんね、21)は、の放送会館で番組編集を担当する。彼女は「速報テロップを早く出せば真実に近づく」という教えを疑い始め、最終的には“訂正の秒数”が視聴者の信頼を回復すると知るとされる[6]。
(はくおう、年齢不詳)は、校正だけを職能とする交渉係で、口癖は「古いメディアほど、若い言葉を食べて長生きする」である。物語中盤で、老舗アンテナの鍵が「放送の鎖骨(ネックライン)」にあると示唆する場面があり、ファンの間で“意味深すぎる発言”として引用された[7]。
その他[編集]
(つくも まきこ、45)は、放送倫理委員会の元委員で、表向きは守る側だが、実際は守られてきた手順の方を愛していたと描かれる。作中では彼女が毎週同じ韻を踏むことで台本が締まる“儀式”を行い、制作裏話として語られた[8]。
は、音声合成の分身のような存在であり、語尾が必ず「…でしたっけ?」で終わる仕様だったとされる。スタッフはこの挙動を“視聴者の記憶の揺り戻し”の表現として設計したと述べた[9]。
声の出演またはキャスト[編集]
声の出演(日本語版)として、役には、役には、役にはが配された。なお、作中で老舗アンテナが直接台詞を読み上げる場面では、同一キャストが“喉の奥の録音”として二重に演じたとされ、録音ディレクターのが「声が過去へ折り畳まれる感じ」と表現した[10]。
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
本作の製作委員会には、のほか、送信機器メーカーの、フィルム現像会社の、そして放送関連団体が参加したとされる。制作会議では「オールドメディアは敵である」と最初に決めたものの、監督のが「敵は人ではなく、手順のクセ」と修正した経緯がある[11]。
映像制作面では、特殊技術としてが採用され、字幕の出方まで数フレーム単位で変調する演出が行われた。編集は形式の内製ガイドに基づき、結果として“訂正が入るたび、絵の色が薄くなる”という視覚ルールが統一された[12]。
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色・撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画の発端は、広告代理店が抱えていた社内データの「閲覧者の思い出が、閲覧日時より先に更新される」現象の報告であったとされる。調査チームは、旧式サーバのログが“記憶の遅延”を生む形で再構成されている可能性を指摘し、そこから「過去が現在の台本を引きずる」という着想へ繋がった[13]。
美術では、架空の送信機材“老舗アンテナ”の材質に「銅の酸化膜が、光を時間ごとに別色へ分解する」という設定が導入された。彩色はあえてを模したため、スクリーン上で見ると“黄ばみが物語の進行に同期している”ように見える仕掛けが仕込まれた[14]。
音楽のは、主旋律を3種類の周波数比(3:5:8)で反復させ、場面転換のたびに“思い出の解像度”が下がるよう設計したとされる。主題歌の「黒い受信機」は、歌詞カードではなく台本の余白に書かれた言葉を元に作られたという逸話が残っている[15]。
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
封切りは内の12館から始まり、初週の動員は18万4,321人、興行収入は3.2億円を記録したと報じられた[16]。宣伝では、劇中に登場する架空グッズ“訂正スタンプ(訂正率・92%)”が配布され、翌年のSNS投稿数が前年同期比で+61%になったとする社内資料も公開された(資料名は「訂正スタンプの科学」)[17]。
再上映は2012年の“夜間放送回廊”キャンペーンに合わせて行われ、期間限定で深夜帯に回した結果、通常の平均視聴時間よりも9分21秒長い滞在が観測されたとされる。海外では北米の配給網を通じて、ローカライズ版タイトルが『The Old-Media Lodger』に変えられた[18]。
ホームメディアはブルーレイと同時に、音声解説付きの“テープ風パッケージ”が用意された。売上は初日で配達箱数が7,004箱に達し、その内訳が「一般配達5,932箱」「舞台挨拶抽選枠1,072箱」と細かく整理されている点が話題となった[19]。
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、メディア論の観点から“テレビ局=人格”として扱う手法が評価された一方で、「敵が抽象化されすぎて制作現場の汗が見えない」との指摘もあった。もっとも、作中のノイズ演出が“説明の代替”になっている点を称賛する評も多く、レビューサイトの総合点は平均4.1/5で推移したとされる[20]。
本作は優秀映像賞を受賞したほか、で技術部門ノミネート、では「反復主旋律の社会心理」部門に候補入りしたと報じられた[21]。売上記録では、配給会社発表として劇場パンフレットが当初見込みの140%に達したともされる[22]。
ただし、後年には“オールドメディアの比喩が過度に肯定的”だという批判も出た。特にの台詞「守る手順は、いつか人を守る」について、実務者からは危険な一般化だとする意見が出ている[23]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送は2011年の枠で行われ、視聴率は第1夜が7.8%、第2夜が6.9%だったと報じられた[24]。放送では本編の字幕フォントが意図的に細くされ、スクランブル風の“疑似訂正”が一部テロップにだけ入ったとされる。
この処理は、監督のが「映画を見た人が、次にテレビを見たとき“同じ画面に見えて違う”と感じるため」と述べたもので、視聴者からは「座席で観た時と同じ怖さが戻る」といった反応が集まった[25]。
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品として、公式ガイドブック『老舗アンテナの設計思想』(環状出版)が発売された。内容は作中設定の周波数比の表に加え、編集工程の“訂正ログ”を模したページ構成が採用されている。
また、音楽CD『黒い受信機(インストゥルメンタル・ログ)』、特典映像『アナログ・オートコメンテーター稼働記録』、さらに架空メディア論を収録した小冊子『オールドメディアは老いる』が派生した[26]。
特に小冊子の巻末に掲載された「テレビ局はオールドメディアである」という定型句の“変奏表”が、ファンによってコピペの形で拡散したとされる[27]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「電波が過去に返信する—『電波の老舗』制作ノート」『映像編集学研究』第12巻第3号, pp. 41-63, 2010.
- ^ 宇佐美ヨウ「周波数比3:5:8と記憶の解像度」『音響心理レビュー』Vol. 28, No. 1, pp. 9-22, 2011.
- ^ 小野寺ルカ「声優が“喉の奥の録音”を演じるとき」『声の科学』第7号, pp. 77-85, 2010.
- ^ 角田正和「字幕が薄くなる編集ルールの実装」『放送技術年報』第19巻第2号, pp. 201-219, 2012.
- ^ 山口玲奈「オールドメディアの比喩はなぜ笑えるのか」『メディア怪談論集』第5巻, pp. 110-134, 2013.
- ^ 電波演劇祭事務局『第24回電波演劇祭受賞記録』電波演劇祭出版局, 2010.
- ^ Kawamoto, R. “Analog Autocomentator and Memory Delay in Japanese Broadcast Animation.” 『Journal of Broadcast Metaphor』, Vol. 6, No. 4, pp. 55-73, 2011.
- ^ 放送技術文化賞委員会『放送技術文化賞ノミネート一覧(2011年度)』第◯号, pp. 12-18, 2011.
- ^ Blanchett, M. “The Old-Media Lodger: A Study of Procedural Spells.” 『International Film Folklore』, Vol. 3, Issue 2, pp. 1-17, 2012.
- ^ (タイトル表記が微妙におかしい)環状出版『老舗アンテナの設計思想: DVD色調大全』環状出版, 2010.
外部リンク
- 環状広告機構 公式映画ページ
- 放送文化維持機構(BGMF) 視聴ガイド
- 電波演劇祭 データベース
- 日本同調技研 受信ノイズ研究室
- 白帯現像所 ロケ地メモ(架空)