はんぺん
| 作品名 | 『はんぺん』 |
|---|---|
| 原題 | Hanpen |
| 画像 | Hanpen_poster.png |
| 画像サイズ | 240px |
| 画像解説 | 主題歌「白い風の証言」ポスター(架空) |
| 監督 | 鶴巻シゲト |
| 脚本 | 鶴巻シゲト |
| 原作 | 「はんぺん継承記」—港町資料綴(架空) |
| 製作会社 | 藍蒼映像 / 鳥居屋文芸 / 塩見フィルム |
| 配給 | 銀河封切社 |
『はんぺん』(はんぺん)は、[[1997年の映画|1997年9月13日]]に公開された[[横浜・藍蒼(あいあお)映像]]制作の[[日本]]の[[架空映画|アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[鶴巻(つるまき)シゲト]]。興行収入は22.4億円で[1]、[[日本児童映像評議会]]賞を受賞した[2]。
概要[編集]
『はんぺん』は、[[1997年9月13日]]に公開された[[横浜・藍蒼映像]]制作の日本のアニメーション映画である。原作・脚本・監督は[[鶴巻シゲト]]で、港町の仕込み唄と食文化の記憶を、白い発泡の精霊譚として描いた作品として知られている。[3]
物語の中心には、実在の食品名で呼ばれるはずのものが、なぜか「記憶を薄くする装置」として扱われるという奇妙な設定が置かれている。また、作中の“成型”や“湯戻し”が高度な魔術手順として再解釈されており、視聴者が調理工程をそのまま読んでしまうような演出が特徴である。[4]
公開当時は、[[横浜市]][[中区]]で開催された試写イベントが話題になり、入場整理券が配布開始から3分で完売したとされる。さらに、配給側は「食品の詩学」を掲げ、宣伝ポスターに“白さの規格”という数値目標をあえて掲載したことで、後の言及が多い映画となった。[5]
あらすじ[編集]
物語は、架空の港町[[瀬戸浜(せとばま)]]にある“薄白(はくはく)研究所”から始まる。研究所では、発泡状の白い円盤が、古い噂や家系の秘密を「半分だけ」消す能力を持つとされ、住民の会話はたびたび霧のように途切れる。[6]
主人公の見習い係員[[深町(ふかまち)ユウ]]は、ある日、仕事机の引き出しから「はんぺん継承記」と呼ばれる古文書を見つける。文書には、製造工程のように見える呪文—「42秒だけ混ぜ、次に温度計を逆に読む」—が段階表として書き連ねられていたという。[7]
ユウは、町の長老[[浜谷(はまや)宗平]]と、研究所の反対者[[錦糸(にしきいと)レン]]に導かれ、白い円盤が記憶を削るだけでなく、削った分だけ「別の記憶」を呼び出すことを突き止める。終盤、研究所のボイラー室で行われる儀式は、湯気の中に“本当の名前”が浮かび上がる演出で描かれ、観客に「なぜ消えたはずのはずのことが戻るのか」を考えさせる構造となっている。[8]
登場人物(主要人物/その他)[編集]
主要人物として、見習い係員[[深町ユウ]]がいる。ユウは正確さにこだわる性格として描かれ、温度計の目盛りを読む場面では、画面端に小さく「±0.5℃誤差許容」という注釈が出る演出がある。[9]
町の長老である[[浜谷宗平]]は、白さに“縁起”が宿ると信じ、住民の会話を調律する役目を担っているとされる。対して、研究所の反対者[[錦糸レン]]は、消された記憶の分だけ社会が嘘を増やすと警告する人物であり、終盤でユウの“勇気の混合比”が問われる。[10]
その他の人物として、薄白研究所の監査役[[菅沼(すがぬま)ユキ]]、港の漁師[[鴨川(かもがわ)トオル]]、そして“白い円盤”そのものの擬人化とされる[[白波(しらなみ)ミナ]]が登場する。白波ミナは台詞がほとんどなく、表情と効果音のみで意思を伝える演出が徹底されたと説明されている。[11]
声の出演またはキャスト[編集]
キャストとして、深町ユウ役には[[佐倉(さくら)マナ]]、浜谷宗平役には[[大河内(おおこうち)コウジ]]、錦糸レン役には[[綾瀬(あやせ)ミツキ]]が起用された。公式資料では、佐倉は「声の硬度を0.37で固定する」稽古を行ったとされるが、裏方インタビューでは「実際は演技プランの比喩だった」と語られており、矛盾が後のファン考察につながっている。[12]
また、菅沼ユキ役は[[千住(せんじゅ)ルイ]]、鴨川トオル役は[[加賀美(かがみ)ハジメ]]、白波ミナ役には新人の[[星咲(ほしざき)リオ]]が当てられた。星咲はほぼ声のみの参加で、効果音収録にも立ち会ったと報じられている。[13]
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
スタッフ面では、監督を[[鶴巻シゲト]]が務め、脚本も同氏が担当した。映像監督は[[山吹(やまぶき)クレア]]で、港の湿度を色調に反映させるために“蒸気パレット”を新規設計したとされる。[14]
製作委員会には[[横浜港文化振興機構]]、玩具メーカー[[白波模型工房]]、教育出版社[[みなと学習社]]が参加し、企画段階では“食育映画”としての位置づけが議論された。のちに鶴巻は「食育と呪術は同じ速度で子どもの興味を奪う」と述べたという。[15]
美術は[[相川(あいかわ)ミサキ]]が担当し、作中の薄白研究所のボイラー室は、実在の設備を“安全率を盛った”設計図から再現したと説明されている。ただし展示会の資料では「原設計の写真は存在しない」とも記されており、出典の扱いが揺らいでいる点が特徴である。[16]
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色・撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画は、[[1994年]]に[[横浜港文化振興機構]]が募集した「白い伝承」コンペから発端したとされる。選考委員の[[渡辺清太郎]](当時の文化監)によれば、提出された企画書の冒頭が「白さの規格は嘘を薄める」から始まっていたという。[17]
制作過程では、色彩設計に[[RGB]]ではなく“白度の階調”という独自指標が導入された。白波ミナの出現シーンでは、背景の反射率を「月光時 18.2%」に設定したと記録されているが、記録メモの写しには別の数値「18.3%」も併記されており、編集部は「現場での微調整が反映されたもの」と説明したとされる。[18]
音楽は[[津軽(つがる)海斗]]が作曲し、主題歌は[[真鍋(まなべ)ユイカ]]による「白い風の証言」である。歌詞は“湯戻しの順序”を隠喩として構成したとされ、歌詞カードには本編に登場しない工程用語が多数掲載された。そのため、リリース後に一部の視聴者が「この工程、どこで習うのか」と問い合わせたという逸話が残る。[19]
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
興行は、[[1997年9月13日]]の全国公開で始まり、初日売上は公開館の合計で1時間あたり約3,200人分の席が埋まったとされる。[20] ただし配給元の月次レポートでは「3,180」とも記載されており、微差が残っている。
宣伝では、[[銀河封切社]]が“白さ計測チャレンジ”を実施し、街頭で配布された小型の測色カードが話題になった。人々は家の冷蔵庫で測定した結果をハガキで送り、抽選で研究所の小道具レプリカが当たったという。[21]
テレビ放送では、[[日本放送協会]]の特番枠で放映され、視聴率は12.7%を記録したと報じられた。[22] その後、リバイバル上映として[[2002年]]に“白い月の特別上映”が行われ、以降はDVDと配信で複数の色調版が発売された。とりわけDVD版は“白が潰れる問題”が指摘され、修正版の配布が行われたことが知られている。[23]
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、「食文化の物語化に成功した」とする肯定的な評価が多かった一方で、「記憶の消失を比喩で済ませすぎる」といった反論もあった。映画評論家[[佐久間(さくま)理央]]は「半分の倫理を売る映画」と評したと伝えられている。[24]
受賞としては、[[日本児童映像評議会]]賞に加え、作曲を評価する[[第15回ユニバーサル・メロディ賞]]での優秀賞が挙げられる。主題歌「白い風の証言」はカラオケ統計での歌唱回数が話題になり、特に雨天の日のランキング上昇が観測されたとされる。[25]
売上記録では、国内興行の興行収入22.4億円に加えて、ホームメディア累計出荷が約140万枚(2000年時点)と記載された資料もある。ただし同じ資料に「138万枚」との別表が併記されており、集計方法の差が指摘されている。[26]
テレビ放送[編集]
テレビ放送は前述の通り[[日本放送協会]]特番で実施され、その後は民放の夕方枠でも再編集版が流された。再編集版では、薄白研究所の“儀式手順”の一部が放送倫理の観点から短縮されたとされる。[27]
また、地上波では効果音と台詞の比率を調整した“家庭向けミックス”が採用され、白波ミナの無言シーンがより強調された。視聴者調査では、無言シーンを「音で理解できた」と回答した割合が58%だったという。[28]
この結果を受け、制作側は「視聴者が読んでいるのではなく聴いている」ことを明確化するため、後年の配信版では字幕の位置を下げたと報じられた。[29]
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品として、映画の設定資料をまとめた書籍[[『薄白研究所の白度ノート』]]が出版された。ノートには、作中の“混合比”に対応する練習問題が収録されており、家庭でできることとして「数字を半分に折る」ワークが紹介されたという。[30]
また、主題歌「白い風の証言」のサウンドトラックは、作曲[[津軽海斗]]のインタビュー付きで販売され、収録時間が42分54秒であることが強調された。さらに、ゲーム会社[[潮騒システム]]が開発した携帯向け簡易アプリ「白度の算盤」(配信期間限定)では、湯戻しの順序をミニゲーム化した仕様が採用された。[31]
グッズとしては、研究所の測色カードと、劇中の“白い円盤”を模したライトが販売された。なお、ライトは店頭で「半分の光」というキャッチコピーが使われ、結果として返品が増えたと広告担当者が後に語っている。[32]
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 鶴巻シゲト『『はんぺん』制作秘録—白度階調の設計』横浜・藍蒼映像, 1998.
- ^ 渡辺清太郎『児童映像評議会の選定方針(第12版)』日本児童映像評議会, 1997.
- ^ 佐久間理央『半分の倫理を売る映画—食文化メタファー批評』講談書房, 1999.
- ^ 津軽海斗『音の中の温度計—主題歌「白い風の証言」の編曲』文藝音響社, 2000.
- ^ 山吹クレア『蒸気パレット—アニメーション色彩の実務』フィルムカラー研究所, 2001.
- ^ 銀河封切社『興行統計要覧(1997年度)』銀河封切社, 1998.
- ^ NHK編『アニメ再編集の倫理調整—家庭向けミックスの理論』日本放送出版, 2003.
- ^ 綾瀬ミツキ「無言表現はどう録るか」『アニメ声の研究』Vol.3第2号, pp.55-71, 2002.
- ^ 潮騒システム『白度の算盤仕様書(社内資料)』潮騒システム, 2001.
- ^ 『DVD色調問題白書(仮)』デジタル配信品質協会, 第1巻第4号, pp.12-19, 2005.
外部リンク
- 横浜・藍蒼映像公式アーカイブ
- 銀河封切社 上映記録室
- 日本児童映像評議会 受賞データベース
- 薄白研究所 白度ノート特設ページ
- 潮騒システム しらなみアプリ復刻案内