デス速水もこみち
| 分野 | インターネット・ミーム / 文章作法 / 動画編集文化 |
|---|---|
| 主要媒体 | 掲示板、字幕動画、切り抜き |
| 成立時期 | 2008年ごろ(周辺説) |
| 代表的手法 | 文末の“死語”化と料理カットの同期 |
| 関連人物 | 速水もこみち、匿名編集者グループ(通称) |
| 論点 | 模倣と二次創作の境界、言葉の倫理 |
デス速水もこみち(です はやみ もこみち)は、のネット文化における「死」を想起させる文体と料理動画のテンポを接合した、疑似キャラクター的概念である。発祥は2000年代後半の掲示板周辺とされるが、後にを想起させる編集・引用の流行を巻き込みながら変質した[1]。
概要[編集]
は、料理手順の説明や所作の合間に「死」「終幕」「無音」を思わせる語彙を混ぜ込み、テンポ良く処理することで“怖さのないホラー”の快感を作る文体とされている。表面上は動画の引用や字幕遊びでありつつ、内実は「言葉の同期」による感情誘導の技法として語られることが多い。
成立経緯としては、2000年代後半に系の掲示板で「料理の説明文を独特の言い回しに置換する」試みが細々と行われ、そこへ“無機質な断定口調”を持つ別ミームが合流した結果、の名前が“編集の記号”として付着した、という筋書きが採られがちである。なお、最初期の原型は「死亡速報の実況字幕を、料理のBGMへ重ねる」実験だったともされる。
語源については複数の説がある。第一に「もこみち」という音が“ゆっくり落ちていく”ように聞こえることから“死”の比喩へ接続されたという説がある。第二に、周辺の“定型文”が短時間で多数回出現するため、編集耐性が高いと見なされたことが理由だと指摘されている。第三の説としては、特定の匿名職人が「デス=速度の比喩」と誤読したことが起点になった可能性があるとされるが、真偽は定まっていない[2]。
概要[編集]
選ばれる表現と「同期」[編集]
では、言葉と映像の“ズレ”が少ないほど良いとされる。具体的には、字幕の1文字ごとにフレーム境界(約24〜30fpsのうちの特定フレーム)へ着地させる編集が推奨されたとされる。これにより「死語」が唐突な意味を持たず、手順の一部として消費されるため、視聴者が怖さより先に“上手さ”を感じる、と説明されることが多い。
代表語彙としては、「終幕」「無音」「停止」「還元」「静脈」などが挙げられる。ただし、これらが必ずしも残酷な文脈で使われるわけではなく、包丁の切れ目、湯気の消え方、火加減の安定といった“料理の物理”へ接続されるよう工夫された、と記録される。実際、字幕職人の評価基準として「語彙の硬さ(硬音率)よりも、切り替えの硬さ(カット硬度)で勝負する」ことが強調された時期があったとされる[3]。
拡散経路とコミュニティ[編集]
拡散は動画投稿と掲示板の相互参照によって加速したとされる。たとえば、の個人サークルが運営していた“自動字幕最適化ツール”の配布スレッドが、編集の再現性を高めたことで参加者が増えた、という説明がある。加えて、編集者たちが匿名コレクションとして「死亡語彙辞書」を作り、毎月更新していたと噂される。
この辞書では、語彙ごとに推奨する料理カテゴリが付されていたとされる。たとえば「還元」は炒め物、「停止」は茹で時間の終端、「無音」は盛り付けの瞬間といった具合である。なお、辞書の改訂履歴が“年/月/日”だけでなく“作業フレーム数”で管理されていた、という証言もあり、同時代の動画編集文化の几帳面さを示す資料として引用されることがある[4]。
歴史[編集]
年表(“それっぽい”成立過程)[編集]
、匿名掲示板の一群で「料理動画の字幕を“終末実況”へ置換する」試作が出回った。そこからにかけて、字幕の速度を固定し、料理カットの切り替えと衝突させないルールが生まれたとされる。さらにには、編集者の間で“死語の長さ”を測るために、単語を分割して音節数を数える慣習が定着した。
、ある地域SNSで「包丁の音と“停止”の語頭を合わせたとき視聴維持率が上がる」実験が共有され、統計らしい語りが混入した。ある投稿では、該当動画の視聴維持率が通常比で「+14.7%(初速3分、2011年2月時点)」と書かれており、真偽はともかく“数値で語る”文化が強化されたと見なされている[5]。
ごろから、という名前が“定型カットの多い対象”として参照され、結果としての呼称が一般化した、という流れが語られる。なお、この呼称には“速度を測る”意味合いがあったとする説もあるが、後年の反省会で「たぶん誤解が誤解を呼んだ」とまとめられた、とされる[6]。
技術の進化:辞書→自動化→儀式化[編集]
初期は手作業の置換に過ぎなかったが、次第に「語彙辞書」「タイムライン規約」が整備され、自動化ツールへ接続されたとされる。ここで重要なのが“字幕の行数”で、1行当たりの文字数を「7〜9文字」に抑えると、恐怖語彙が“料理の手順の読みやすさ”に飲み込まれる、という(なぜか説得力のある)経験則が語られた。
には「死語を使うこと」よりも「死語を使っていることを視聴者に気づかせないこと」が目標化し、いわば儀式のように“自然さ”が追求された。参加者は月初に「無音テスト」と称して、BGMを0.8秒だけ落とした上で、語頭が最も聞こえやすい位置を記録したとされる。記録は“0.8秒”の根拠が不明なまま定着したが、匿名メモが「人間の鼓膜の追従遅延が云々」と語っていたため、科学っぽさが補強された[7]。
この儀式化によって、は単なる編集ネタから、作品の“作法”を含む文化へと変わったと説明される。もっとも、その作法がどこまで創作でどこから模倣かは、後述の論争の火種にもなった。
批判と論争[編集]
批判としては、まず「死を軽く扱うのではないか」という倫理的懸念が挙げられる。特に、料理の清潔なイメージへ“死語”を貼り付けることが、言葉の重さを薄めるのではないかと指摘された。これに対し肯定側は、は死の現実を語っているのではなく、字幕編集による“感情の錯視”を楽しむものであると主張した。
次に、模倣問題がある。呼称にの名が含まれるため、元の人物や番組への敬意が曖昧ではないか、という議論がしばしば起きた。ある論者は「“名前”を借りることで権利が発生するのではなく、“名前に付着する記号”が問題になる」と述べたとされる。ただし、その論旨は学術的な裏取りが乏しく、雑誌のコラムで“もっともらしい例示”が増えたことで煙に巻かれたという。
さらに、数値根拠の扱いにも論争があった。前述の「+14.7%」のように、視聴維持率を小数点一桁まで書く投稿が増えた一方で、サンプル数や計測条件が明示されないケースが多いと批判された。なお、擁護派は「ネット文化では“正確さより説得の形式”が先に立つ」と開き直ったとも報じられている[8]。この種の態度が、結果として“狂気ポイント”を底上げする方向に働いたとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 水野鍋次郎「字幕編集における感情語の着地位置—フレーム境界の経験則」『情報作法研究』第12巻第3号, 2012年, pp. 41-58.
- ^ Elena Kuroda, “On Pseudo-Terminal Register in Web Subtitles,” Journal of Internet Linguistics, Vol. 6 No. 2, 2013, pp. 77-92.
- ^ 佐藤縫目「料理動画のリズム化とテキスト介在—“無音”の比喩が与える効果」『映像言語学叢書』第2巻, 2014年, pp. 103-131.
- ^ Khan, A. & Müller, F. “Synchronization Heuristics for Captioning: A Misleadingly Precise Case Study,” Proceedings of the Workshop on Timed Text, 2015, pp. 12-20.
- ^ 田中千代松「ミーム命名の記号論:人名が“編集の対象”になる瞬間」『メディア記号論研究』第9号, 2016年, pp. 9-27.
- ^ 速記学会「視聴維持率を語る匿名者の記述規約—小数点一桁の社会学」『通信文化年報』第4巻第1号, 2017年, pp. 55-73.
- ^ 林田ユイ「“死語”の硬さと読みやすさ—7〜9文字ルールの普及過程」『日本語字幕工学』Vol. 3, 2018年, pp. 201-218.
- ^ Otake M. “The End-of-Sentence as a Kitchen Soundtrack,” International Review of Web Editing, Vol. 8 Issue 4, 2019, pp. 33-49.
- ^ 嘘原理編集委員会「経験則の統計化:なぜ“+14.7%”が残るのか」『ネット思考法の裏側』新星出版, 2020年, pp. 88-101.
- ^ Matsuda, Ren. “Death Without Damage: Humor and Taboo in Timed Subtitles,” 『Journal of Unstable Categories』第11巻第2号, 2021年, pp. 1-12.
外部リンク
- 字幕同期倶楽部
- 終末実況研究所
- フレーム境界アーカイブ
- 死語辞書オンライン
- 匿名編集者の投稿規約集