バブラグラデラネウスト
| タイトル | 『バブラグラデラネウスト』 |
|---|---|
| ジャンル | 異世界感応戦記(魔術×SF×学園要素) |
| 作者 | 鴫根アオト |
| 出版社 | 嘘葉出版 |
| 掲載誌 | 月刊ネオン・レムナント |
| レーベル | レムナント・コミックス |
| 連載期間 | - |
| 巻数 | 全巻 |
| 話数 | 全話 |
『バブラグラデラネウスト』(ばぶらぐらでらねうすとは、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『バブラグラデラネウスト』は、他者の記憶を「音階」に変換して読むことで災厄を回避する少女・ネウストを軸に、都市国家の“音法(おんぽう)”をめぐる攻防を描いた漫画である[1]。
本作は、2000年代半ばのメタル調の学園感覚と、2006年の“都市伝承ブーム”に便乗した疑似オカルトの香りを、学術風の用語で包む作劇が特徴とされた。結果として、累計発行部数は万部を突破し、読者参加型の「音階投票企画」がしばしば注目された[2]。
制作背景[編集]
作者の鴫根アオトは、取材としての公開資料ではなく、架空の“帯状音響”データを模した私的ノートを基に設定を組み立てたとされる[3]。編集部は「現実の科学に寄りすぎると説明過多になる」と判断し、代わりに“説明が足りないくらいが一番怖い”という方針を採った[3]。
連載開始の直前、嘘葉出版は新レーベル創設に合わせた大型キャンペーンを実施した。その目玉が、読者が葉書で送る「第一印象音階(最初に想像した音)」を作品内の台詞に反映する仕組みであり、初月だけで通が集まったと記録されている[4]。
さらに、タイトルの「バブラグラデラネウスト」は“呪文っぽい響き”を最優先に作られたとされ、作者が寝起きに数えた睡眠秒数(ちょうど秒ごとに夢の色が変わるという体験談)から逆算して音節が決められたという逸話がある[5]。ただしこの部分については、実際の制作メモが残っていないため、鴫根本人の回想として扱われている[5]。
あらすじ(〇〇編ごとに)[編集]
第一編:導入(“空白の和音”)[編集]
主人公のネウストは、都会の地下鉄網に似た回路を持つ音法施設に入学する。そこで彼女は、他人の感情を“和音”として見えるようにする資質を持つが、同時にその和音が災厄を引き寄せることも判明する。
第一編の終盤、ネウストが誤って「空白の和音」を復元したことで、街の広報端末が一斉に沈黙する事件が起きる。原因は“音階の欠落は欠陥ではなく封印である”という、当時から有名だった説に基づくとされる[6]。読者の間では「沈黙はホラーの演出にしては説得力が高すぎる」と話題になった。
第二編:内通審級(“十六の罰点”)[編集]
第二編では、学院の内部に設けられた審級組織が登場する。ここでは“和音のズレ”が種類に分類され、それぞれに罰点が与えられる制度が運用されていた。
ネウストは友人のルルティアとともに、罰点が単なる懲罰ではなく「記憶の校正」だと突き止める。特に印象的なのは、ルルティアが第話で「罰点の合計がに達すると音法が書き換わる」と予言する場面である。この数字は作者が“当時の文庫本の背表紙厚さ”を測って出したものだとされ、編集部がその端数(0.3mm)を嫌って切り捨てた結果、設定が丸くなったと語られている[7]。
第三編:外環戦域(“バブラ旋律”)[編集]
第三編から物語は外環戦域へ広がる。外環は、戦争を直接描くのではなく「旋律だけで交渉する」という奇妙なルールで組まれており、両陣営は戦車ではなく音響発振器を搭載した移動都市を持つ。
ネウストは“バブラ旋律”と呼ばれる禁じ手に触れ、旋律が人の人格を一時的に再配列することを知る。しかし、再配列は制御できず、彼女自身の記憶にも逆流が起きる。終盤、ネウストが最後に選ぶ和音は「誰も救えないが、誰も消えない音」と描写され、作品の作風を決定づけたと回顧されている[8]。
第四編:収束(“ネウストの返歌”)[編集]
終盤の第四編では、ネウストが最終的に“音法の起源”へ到達する。そこには、都市国家が昔、災厄を数えるために発明した装置があり、その装置は皮肉にも人々の語りを減らす作用を持っていたと説明される。
クライマックスでは、学院と罰点審査局の和解条件が提示されるが、その条件は「双方が互いの不都合を“同じ音階”で読むこと」である。勝利とは音を統一することではなく、ずれを受け入れて読み直すことだと結論づけられ、最終話では話の中で初めて笑いが長く描かれた[2]。
登場人物[編集]
ネウスト(Neyust)は、他者の感情を音階に変換して読む資質を持つ。物語中盤で自分の記憶が“逆再生”される描写があり、視聴者・読者の間では「記憶は直線ではない」というメッセージが支持された[9]。
ルルティアは、罰点審査局の通告書を破り捨てる係として登場し、後半では“正しさを測る目盛り”そのものが暴力になり得ると指摘する。彼女の台詞はしばしば短く切られ、背景に派手な文字情報が流れる演出と相性がよかったとされる[10]。
罰点審査局の長官は、音法を統治技術として扱う人物であり、最終盤で「統治とは沈黙の配給である」と述べる。ただしこの名言は掲載誌の校正記録と一致しない箇所があるため、別稿から採られた可能性が指摘されている[11]。
用語・世界観[編集]
本作の中心概念は、感情や記憶を読み取り、現象の原因に“音階対応”を付与するである。音法は学校の必修科目として扱われ、講義では「和音は世界の文字である」と解説される[12]。
対立する概念として、罰点審査局が用いるがある。罰点符号は“罪のラベル”に見えるが、作中では「記憶の再校正プロトコル」として説明される。一方で、読者が気づくほどに運用が露骨であり、終盤に向けて倫理的疑念が積み上がる構造となっている[6]。
また、都市外環戦域の交渉に用いられるは禁じ手であり、奏者の人格を一時的に再配置するため、勝敗ではなく代償の大きさが焦点となる。この“代償”は一見超常現象に見えるが、作者は裏設定として「旋律の波形が脳波同期を誘導する」という擬似工学的な説明を付けている[13]。なお、その波形の模式図は単行本第巻の巻末に小さく掲載されたとされるが、実物を見た人から「コマの余白に埋もれていて読めない」との声が多い[13]。
書誌情報[編集]
単行本はレーベルより刊行された。初版部数は第1巻が万部、第2巻以降は毎巻平均万部で推移したとされ、特に第三編開始期にあたる第巻は増刷が重なった[14]。
収録話数は巻ごとにばらつきがあり、第巻は第話から第話までを収める形式が採られた。一方で第巻は“第四編準備”として前日譚が多く割り当てられ、同巻のページ配分が「会話より脚注が多い巻」と呼ばれて売上が伸びたという記録もある[15]。
編集部の内部文書では、表紙配色の決定に「ネオン管の残光が秒で変化する」ことが参照されたとされるが、真偽は定かでない。もっとも、表紙が揃って見えると購買意欲が上がるというマーケティング上の理由は、当時の社内報でも確認できる[4]。
メディア展開[編集]
本作はにテレビアニメ化され、制作はが担当した。アニメ版では、音法の“聞こえ方”を再現するために、視聴者の音量ではなく字幕の速度(1行あたり秒)を意図的に揺らす演出が採用されたとされる[16]。
劇場版は『バブラグラデラネウスト—外環の無声礼—』として公開され、興行収入は億円規模に達したと発表された[17]。ただし公式発表とは別に、業界筋では“前売り特典の音階カードが転売で異常に動いた”という噂があり、批判・擁護が同時に広がった。
さらに、スマートデバイス向けのが連動企画として配信され、読者が自分の第一印象音階を登録すると、作品内の短文が生成される仕組みが人気となった。この仕組みは社会現象となったと評され、結果として「音を聴く前に文章が揺れる」という新しい読書体験が流行したとされる[2]。
反響・評価[編集]
読者からは、音法の設定が“説明しすぎないのに納得できる”として高評価を得た。特に、第二編の罰点審査局が提示した「罰点は罰ではなく整合である」という趣旨は、SNS上で“学校の成績にも応用できそう”という議論を呼んだ[18]。
一方で批判も存在した。音法が記憶に作用するなら、倫理的な同意の扱いが曖昧だという指摘があり、最終話でネウストが選ぶ“返歌”が救いなのか抑圧なのか、解釈が割れたとされる[11]。また、作者が意図した“ずれを受け入れる”という主張に対し、読者が勝手に“ずれは許されるべき”へ拡張してしまった点が、教育現場の論者から問題視されたこともある[19]。
なお、評価を決めたのは単なる作劇ではなく、脚注の密度である。第巻では1話あたり平均本の脚注が付いたとされ、読者が脚注だけを読む二次創作が発生したという報告がある[14]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 鴫根アオト「『バブラグラデラネウスト』連載開始号座談会(音階と脚注の設計)」『月刊ネオン・レムナント』第12巻第1号, 月刊ネオン・レムナント編集部, 2006, pp. 12-27.
- ^ 嘘葉出版編集部「累計発行部数の推移と施策の相関分析」『嘘葉出版 取扱説明書:メディア展開編』Vol.3, 嘘葉出版, 2014, pp. 41-58.
- ^ 村岐清隆「都市伝承とメタル学園—2000年代読者層の即応性—」『物語統治研究』第8巻第2号, 物語統治研究会, 2008, pp. 77-96.
- ^ 月刊ネオン・レムナント編集部「音階投票企画『第一印象音階』集計報告」『月刊ネオン・レムナント』第14巻第2号, 2006, pp. 201-214.
- ^ 鴫根アオト「夢の色が変わる秒数—制作メモの断片—」『レムナント・コミックス編集ノート』, レムナント・コミックス編集室, 2013, pp. 9-17.
- ^ 内田カナメ「“空白の和音”の物語機能—沈黙演出の系譜—」『アニメ字幕表現学会誌』Vol.5, アニメ字幕表現学会, 2011, pp. 33-49.
- ^ 罰点審査局史料編纂室「罰点符号の分類表(伝聞資料)」『架空官庁史料叢書』第2巻第6号, 罰点審査局史料編纂室, 2009, pp. 120-138.
- ^ Ludwig A. Senn「Microtiming of Subtitles in Narrative Rhythm」『Journal of Pseudo-Cognitive Media』Vol.9 No.3, 2012, pp. 101-119.
- ^ 高崎モモ「音法と擬似工学—“バブラ旋律”の波形解釈—」『図解物語工学』第11巻第1号, 図解物語工学会, 2013, pp. 55-73.
- ^ スタジオ・アトムリング「テレビアニメ版:音法字幕アルゴリズムの実装方針」『映像表現技術年報』第3巻第2号, スタジオ・アトムリング技術部, 2011, pp. 1-19.
- ^ 松原ユウ「転売と特典設計—劇場版連動の市場歪み—」『コミックスビジネス論叢』第7巻第4号, コミックスビジネス論叢刊行会, 2013, pp. 210-226.
- ^ 田村ノリオ「教育的解釈の暴走—罰点倫理の誤読と再拡散—」『物語倫理の現場』第1巻第1号, 物語倫理研究所, 2015, pp. 12-34.
外部リンク
- レムナント・アーカイブ
- 嘘葉出版 公式企画ページ
- 音階読解アプリ 連動サイト
- スタジオ・アトムリング 映像技術資料室
- 月刊ネオン・レムナント 過去号検索