フィクティオ・ファルソ
| タイトル | フィクティオ・ファルソ |
|---|---|
| 画像 | FictioFalso_Cover.webp |
| 画像サイズ | 300px |
| caption | 偽記憶の書庫を象ったジャケットアート |
| ジャンル | コンピュータRPG / 証言アドベンチャー |
| 対応機種 | パルスドライブIX、パルスドライブIX Lite |
| 開発元 | 瀬波学院インタラクティブ |
| 発売元 | 公文式光学販売(K-Opti Sales) |
| プロデューサー | 榊原 朱音(さかきばら あかね) |
| ディレクター | ロレンツォ・ヴァレーゼ |
| デザイナー | ミナ・クロスウェイ |
| プログラマー | 葛西 仁太郎 |
| 音楽 | 城戸 響介 |
| シリーズ | フィクティオ・サイクル |
| 発売日 | 2022年11月3日 |
| 対象年齢 | CERO: C(13歳以上)相当 |
| 売上本数 | 全世界累計 112万本 |
| その他 | バトル検証ログ共有機能 / 証言分岐セーブ |
『フィクティオ・ファルソ』(英: Fictio Falso、略称: FF)は、[[2022年]][[11月3日]]に[[日本]]の[[瀬波学院インタラクティブ]]から発売された[[パルスドライブIX]]用[[コンピュータRPG]]。[[フィクティオ・サイクル]]の第3作目であり、同名のゲーム内用語が指す偽記憶生物を題材にした[[メディアミックス]]作品群を含むとされる[1]。
概要[編集]
『フィクティオ・ファルソ』(通称: [[FF]])は、[[瀬波学院インタラクティブ]]が開発した証言型の[[コンピュータRPG]]である。プレイヤーは「記録係(オーバーレイ)」として操作し、戦闘だけでなく“誰が何を覚えているか”を編集することで進行する設計になっている。
本作は[[フィクティオ・サイクル]]の第3作目にあたり、前作までの探索中心から、記憶改竄のリズムを前面に出した点が特徴とされる。特に、ゲーム内で「虚偽の証言が生物を呼ぶ」と説明される仕組みは、発売前から賛否を集めた[2]。
一方で、同名の語が「記憶の形を借りた存在」と結び付けられたことにより、漫画・短編ドラマ・皮肉絵本までが[[メディアミックス]]として派生したとされる。編集会議では、主人公の口癖「正しさは一枚の紙で折れる」をキャッチコピーにすべきだという意見が採用されたと報じられている[3]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの核は、通常のRPG要素に「証言エディット」機能を統合した点である。プレイヤーは戦闘中でもメニュー画面から“証言ログ”を開き、登場人物の発言を最大4フレーズまで差し替えられる。差し替えは即座に反映され、敵の挙動や味方の連携率に波及する。
戦闘は[[ターン制]]に見えるが、実際には“沈黙コスト”を伴う準リアルタイム方式である。沈黙コストは、証言の編集を行うほど上昇し、沈黙が上限に達すると「改竄された過去」が強制的に上書きされると説明される。なお、この挙動が“運ゲーではなく編集事故”として受け止められ、攻略コミュニティで論点化した[4]。
アイテム面では、[[落ちものパズル]]のように戦闘フィールドから回収する「書片(しょへん)」が用意されている。書片は「出来事の年代」「場所」「感情」の三属性を持ち、組み合わせることでスキルが解放される。キャッチコピーは「組み替えれば、世界が折れる」であり、開発チームは印刷紙の繊維感をサウンドに落とし込んだと語っている[5]。
対戦モードも搭載され、対人戦では「証言の正確度」を競う“裁定ボード”方式が採用された。協力プレイでは、協力者の編集内容が相互に補正されるため、息の合うチームほど難易度が下がる一方で、衝突するとボーナスが消えるとされる。オンライン対応は発売から3か月後に段階導入され、初期はオフラインモードのみだった[6]。
ストーリー[編集]
舞台は[[海鳴市]]を中心とする“旧図面の連なり”と呼ばれる地域である。ここでは住民が同じ出来事を別の言葉で語っており、その差異が怪異を生むとされる。プレイヤーは海鳴市の臨時記録局に派遣された記録係として、失われた「第七の証言」を追跡することになる。
物語は、章ごとに「正しいはずの記憶が破れている」場所へ導く作りになっている。たとえば第2章では、[[港区]]に似た区画名である「ミナト区」から始まり、住民が“同じ風の匂い”を別の種類の魚だと語る場面が描かれる。この食い違いが敵対行動の引き金となるため、攻略には戦闘だけでなく会話編集が必要とされる[7]。
中盤で明かされる真相は、フィクティオ・ファルソが「偽記憶生物を管理するための規格」だという点にある。ただし作中では、その管理が誰の目的によるものかは断定されず、“誰かが正しさを売りにしている”との指摘が繰り返される。
終盤では、プレイヤーが編集した証言が自分自身の過去に遡って影響する描写がある。ここで「正しさは折れる」という口癖が、実際には“折れ目”として視覚化される演出が採用されたとされる。なお、この演出は開発終盤に差し戻しが入ったため、最終的に58個の折れパターンが実装されたと語られている[8]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公は記録係の「[[白羽 玲司]](しらは れいじ)」である。白羽は元々、[[博物館]]の裏方として“展示ラベルの誤記”を直す仕事をしていたとされるが、ある日、ラベルに書かれた出来事が現実に追従し始めたため任務へ移ったと説明される。
仲間には、証言の音程を調整できる「[[ミルク・セナトル]]」と、書片の配置を数学的に最適化する「[[矢吹 詩穂]]」がいる。ミルクは口数が少ない一方で、沈黙コストを下げる“歌う訂正”スキルを持つとされる。矢吹は戦闘よりも編集画面に長けており、彼女の作戦が成功すると、編集ログが“教育用の模範答案”のように整理される描写がある。
敵対勢力としては、記憶の揺らぎを増幅する「[[コルテックス商会]]」が登場する。商会は海鳴市内の古い商店街を拠点に活動しており、偽の証言を“販促素材”として配るとされる。作中では、コルテックス商会の社員バッジが見つかるが、そこに記される番号は「00-00-00-00」から始まると描写され、論争の種になった[9]。
また、最終章では敵ではなく“編集された世界の住民”として、架空の手帳を持つ女性「[[花影 ユリカ]]」が現れる。ユリカの台詞はプレイヤーの編集内容によって変化し、同じ場面でも平均して3.1通りの結末が分岐するとされる。これらの分岐確率は公式攻略記事で「計算ではなく印刷の癖」と表現された[10]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界観を特徴づけるのが、フィクティオ・ファルソという概念である。作中では、偽の証言(フィクティオ)と、誤りが固着した記憶(ファルソ)が結合し、“証言生物”を現すとされる。証言生物は姿形が固定されないため、倒しても“記憶の残滓”として再発すると説明される。
設定として重要なのが「[[旧図面法]]」である。旧図面法は、街の区画と出来事の配列を同期させるための規格であり、破れた配列は紙の裂け目のように地形を歪ませるとされる。さらに、証言ログの編集は“オーバーレイ”と呼ばれ、これは単なる文字修正ではなく、住民の感情曲線を再計算する操作だと描写される。
生物の分類では、もっとも弱いとされる「[[ラベル茸]]」、中位の「[[誓約の獣]]」、最上位の「[[第七の霧獣]]」が知られている。ラベル茸は紙片を食べて成長し、誓約の獣は誰かの嘘を守ることで殻が硬くなるとされる。第七の霧獣は倒すのではなく“言い直す”ことで消えるという結論に辿り着くため、プレイヤーの編集力が試される設計になっている[11]。
なお、作中で「正しさは測れないが、折れ目は測れる」とされる。ゲーム側の演出では、折れ目の座標が整数値で記録され、内部的には合計132,480点の座標格子を参照しているとされる。もっとも、この数値は公式配布資料では“手作業で数えた”と注釈されており、要出典の雰囲気をまとったまま残っている[12]。
開発/制作[編集]
本作の制作経緯は、前作『フィクティオ・サイクル 第2巻』のDLCが好評だったことに加え、スタッフの間で「記憶の改竄を遊びにできないか」という議論が続いたことにあるとされる。瀬波学院インタラクティブは、教育機関を背景に“検証の快感”を売りにしてきた会社であり、その路線が証言エディットへ繋がったと推定される[13]。
スタッフ構成では、ディレクターのロレンツォ・ヴァレーゼが“法廷のテンポ”に着目したことが知られている。彼はテストプレイの際、編集画面を閉じるまでの時間を秒単位で記録し、「平均9.7秒の沈黙が最も誤りを生む」と結論づけたとされる。ただし、この平均は社内メモの写しでしか確認できないとされ、後年のインタビューで「その数字は冗談だったかもしれない」と曖昧にされた[14]。
一方で、音楽担当の城戸 響介は、証言ログの変更に応じてテンポが微妙にズレる仕組みを実装したと語っている。曲作りの段階では、会議室の空調音を素材に使ったという逸話もあり、結果として全曲に“紙が擦れる周波数帯”が混入しているとファンの解析が進んだ。
制作チームは発売延期を一度だけ行ったとされる。理由は、折れ目演出が“折れ過ぎ”て酔いに繋がり得たためである。最終的に許容範囲の折れパターン数が58個に抑えられた経緯は、技術資料で言及されているとされる[15]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは『[[海鳴市の誤読楽譜]]』という名称で、全24曲が収録されているとされる。城戸 響介は“証言が変われば和音が変わる”を目標に掲げ、編集に応じた短いフレーズ転調を多用したとされる。
特に評価されたのが、戦闘BGMではなく編集BGMとして流れる「折誤(せつご)モチーフ」である。折誤モチーフは、沈黙コストが一定以上になるとリズムが逆再生のように聞こえる設計になっている。プレイヤーは逆再生に気づくと、むしろ“正しい編集の兆候”として活用するようになったという。
一部の曲は、コルテックス商会の拠点である「ミナト区・第2アーケード」専用の音響処理を持つ。ここでは残響の残り方が、証言の正確度に比例するとも説明され、プレイヤーが音で自分の編集の失敗を察知するというプレイスタイルが広がった[16]。
他機種版/移植版[編集]
本作は発売直後から家庭用携帯機へ移植する計画があったとされるが、沈黙コストの計算負荷が高かったため段階的に展開された。まず[[パルスドライブIX Lite]]向けに画面解像度を調整した版が出ている。
その後2023年には、雰囲気重視の互換モードとして「FF-Cloud Shadow」相当のクラウド補正が試験導入されたと報じられた。ただし、補正を有効にすると証言ログの差し替えが“滑らかすぎて”興ざめになるという指摘もあった[17]。
さらに、非公式コミュニティでは、オフラインのセーブデータを解析して分岐確率を推定する試みが盛んになり、「編集の快感は圧縮率で決まる」との俗説が流行した。これは公式の説明では否定されていないが、要出典の扱いで終始している[18]。
評価(売上)[編集]
発売週の初動では、全世界累計で約31万本を記録したとされる。公式の広報では「発売72時間でミリオンの影が見えた」と述べられたが、実際の達成時期は地域ごとに差があったとする資料もある。
販売面では、最終的に全世界累計112万本を突破し、シリーズ累計では“12桁の言い直し”と比喩されるほどのヒットになったと評価された。特に日本では、独特な証言システムが“育成ではなく編集学”として受け止められた点が要因とされる[19]。
国内外のレビューでは、ゲーム性と演出の両立が高く評価された一方、初心者には証言ログの扱いが分かりにくいという声もあった。日本ゲーム大賞の前哨戦にあたる「[[ファミ通クロスレビューゴールド殿堂]]」枠では、審査員が“嘘を嘘として扱う覚悟”を評価したとされる[20]。
関連作品[編集]
本作の世界観を題材にしたメディアミックスとして、テレビアニメ『折誤する月曜日』がある。アニメでは、主人公の記録係が“編集事故”により街の記憶が順番に入れ替わる過程が描かれ、最終回では第七の霧獣が言い直しで消える演出が再現されたとされる。
また、漫画『海鳴市の注釈書』では、証言ログを注釈付きで公開する“擬似学術”スタイルが採用された。短編集『誓約の獣は夜に吠えない』は、ゲーム内のサブクエストを中心にしたスピンオフであり、プレイヤーの編集が“読者の解釈”へ移る構造が話題になった[21]。
ゲームブックとしては、攻略手引きと物語を行き来する形式の『フィクティオ・ファルソ 断章編』が刊行されたとされる。これは冒険ゲームブックの形式で、特定のページを開くとゲーム内用語が変化する仕掛けを持つと説明されているが、真偽は後に揺れた[22]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては『[[海鳴市]]証言マニュアル(初版限定・折れ目定規付き)』が発売された。付録の定規は、沈黙コストに応じて色が変わると宣伝されたが、実際には冷却すると色が戻るタイプで、編集事故を再現する“玩具”として扱われた。
書籍では、大学紀要風にまとめた『記憶の折断:フィクティオ・ファルソ解読』(第1巻)があり、旧図面法の図解が収録された。図解は実測値として「ミナト区アーケードの梁までの距離を1,742mmとする」と書かれているが、これは現地で測ったとは限らないと指摘された[23]。
さらに、音楽関連では『城戸 響介 作曲メモ:沈黙と逆再生の狭間』が刊行され、編集BGMの転調ルールがページごとに示されたとされる。コレクター向けには、証言ログの台詞を収めた“紙のログブック”が付く限定版も存在したと報告されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 榊原 朱音「『フィクティオ・ファルソ』証言エディット設計の思想」『月刊ゲーム技術』Vol.18 No.4, pp.12-27, 2022.
- ^ ロレンツォ・ヴァレーゼ「沈黙コストと法廷テンポ」『インタラクティブ・オーディオ研究』第6巻第2号, pp.88-103, 2023.
- ^ ミナ・クロスウェイ『嘘は物語になる:記憶改竄UIの実装』瀬波学院出版, 2021.
- ^ 城戸 響介「紙の擦れる音を和声に埋める」『作曲工学ジャーナル』Vol.9 No.1, pp.41-56, 2022.
- ^ 葛西 仁太郎「オーバーレイの差分圧縮と分岐確率」『計算論的ゲーム研究』第3巻第5号, pp.201-219, 2024.
- ^ 佐倉 風間「旧図面法の地域神話化とゲーム化」『文化地理学レビュー』Vol.27 No.3, pp.77-92, 2023.
- ^ K-Opti Sales編集部「第七の霧獣と商会の宣伝戦略」『市場と物語』pp.55-66, 2022.
- ^ ファミ通クロスレビュー編集委員会「『フィクティオ・ファルソ』ゴールド殿堂選評」『ファミ通クロスレビュー』2022年11月増刊号, pp.3-9, 2022.
- ^ A. Thornton, “Narrative Falsification in Role-Playing Systems,” Vol.14, No.2, pp.1-18, Journal of Playful Memory, 2023.
- ^ M. Thornton, “Evidence Editing and Silence Costs,” pp.199-215, International Conference on Interactive Storytelling Proceedings, 2022.
外部リンク
- フィクティオ・ファルソ 公式ログポータル
- 海鳴市 証言アーカイブ(資料閲覧)
- 沈黙コスト 計算コミュニティ掲示板
- 折誤モチーフ解析サイト
- 旧図面法 図解ギャラリー