ヘムヘムー
| 語種 | 擬音語・口調符号 |
|---|---|
| 成立地域 | 日本(関東圏で初期拡散とされる) |
| 初出年(推定) | (ファン掲示板のログが根拠とされる) |
| 主な用法 | 同意・安心・場の緩和を示す |
| 関連分野 | 音響心理学、会話分析、広告コピー研究 |
| 派生語 | ヘムヘム式、ヘムヘム頻度 |
ヘムヘムー(へむへむー)は、日本で1990年代後半から民間語として拡散したとされる、口調そのものを意味する擬音語である。言語学・音響心理学では「発話の快適性を調整するための符号」とも説明されるが[1]、その起源は諸説ある。
概要[編集]
ヘムヘムーは、会話の途中で挿入される短い擬音語として知られている。多くの場合、「話を否定しない」「緊張を下げる」「聞いている」という姿勢を、語彙の意味ではなく音のリズムによって伝えるものとされる[1]。
一方で、音響心理学の側では、ヘムヘムーのような“息の長い語尾”が聴取者の筋電ストレスを下げる可能性がある、とする報告がある。とはいえ、実際の社会実装では文脈依存が強く、実験室で観測された効果が日常会話にそのまま移るとは限らない点が指摘されている[2]。
なお、この語は「ただの癖」だと片付けられがちである。しかし当時、広告代理店の一部ではヘムヘムーを“広告の空気温度調整コード”として扱う動きがあり、結果として社会的関心を集めたとされる[3]。
概要(用法と特徴)[編集]
ヘムヘムーは、文の意味よりも発話のタイミングに価値が置かれるとされる。たとえば相槌として用いる場合、「相手の言い終わりから0.8〜1.2秒以内」に挿入されると、同意率が上がるとする調査が引用されることがある[4]。
音としての特徴は、母音が“丸く”伸ばされる点にあると説明される。研究者によっては、ヘムヘムーの基本形を「子音:h→母音:e→母音:mu→語尾:o」で構成される“二段階フォルマント滑走”として図示したとされるが[5]、実際には地域差・話者差が大きいという。
会話分析では、ヘムヘムーが否定や謝罪の直前に置かれることで“角の立たない修正”を可能にすると述べられる。実務では、コールセンターの新人研修で「ヘムヘムー連結発話」を練習させた例があり、教育現場では“声のクッション”と呼ばれていたという[6]。
歴史[編集]
発端:雑音研究から“安心語尾”へ[編集]
ヘムヘムーの起源については、学術界では東京の音響雑音研究所(通称:雑音研)が関わったという伝承がある。雑音研は、街頭騒音の周波数分布を調べる目的で、住民の発話サンプルを収集していたとされる[7]。
その際に集められた録音のうち、被験者が“何かを言いそびれたとき”に漏らした語が、のちにヘムヘムーと同定された、と説明されることがある。具体的には、テープの欠損箇所に相当する1.5秒の沈黙の前後から抽出された擬音が「ヘムヘムー」と聞こえた、という筋書きが典型である[7]。
ただし、雑音研の正式な研究報告書には該当語が記載されていないとされ、ここが“要出典”扱いになりやすい。しかし当時の若手助手・が社内回覧で「安心の減衰曲線が見える」と書き残した、という噂が後年の二次資料に残っている[8]。
拡散:掲示板と小さな炎上、そして業界の採用[編集]
語としての拡散は、に開催された“即興相槌”企画のログが発端だとされる。企画は大阪府の民間チャットサークル「耳の広場」が主催し、参加者は会話の緊張度を下げる相槌候補を競ったという[9]。
この企画で、ある投稿者が「ヘムヘムー」を“否定しない沈黙の代替”として提案した。ところが同時期に別の投稿者が「ヘムヘムーは自尊心を削る装置だ」と誤解し、炎上しかけたとされる。その結果として、論争を鎮めるために“煽りを避ける語尾テンプレ”としてヘムヘムーが公式にまとめられた、というのが語られる筋書きである[10]。
さらにのが、商品説明動画の冒頭15秒にヘムヘムーを模した音(ガイドトーン)を挿入した試作を行ったと報じられた[11]。同社はA/Bテストとして、閲覧者の「次へ」クリック率が“2.47%改善”したと社内報で述べたとされるが、外部公開資料は少ないとされる[11]。
こうしてヘムヘムーは、意味のない“鳴き声”ではなく、会話の温度を調整する符号として扱われるようになり、音響心理学と実務の橋渡しを担ったと評価されている[12]。
批判と論争[編集]
批判としては、ヘムヘムーが実際には“人を安心させる魔法”ではなく、話者の癖を他者に押し付けるだけだという指摘がある。特に対面業務で多用すると、客側から「同じテンプレで扱われている」と感じられる可能性があるとして、事例研究がまとめられた[13]。
また、ヘムヘムーを“科学的相槌”として扱う風潮に対し、音響計測の恣意性が問題視された。ある研究では、ヘムヘムー発話の平均基本周波数を『221.3Hz』と報告したが、使用したマイクが異なると結果が変わることが後から指摘されたという[14]。この点は、研究データの再現性が弱いことを示す例として、学会の議事録で揶揄されたとされる。
一方で肯定的な見解では、ヘムヘムーは語彙を減らすことで衝突を避ける“会話の省エネ”であるとする。さらに、子育て支援の現場で「叱る前の一呼吸」にヘムヘムー的な長音を入れる運用が広がったことで、育児者の自己効力感が上がった、という報告もある[15]。ただし、これらの効果量は個人差が大きいとされ、結論は保留されがちである。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田精二郎「“安心語尾”の一次記録について」『日本音響雑誌』第38巻第4号, pp.112-129, 1999.
- ^ Margaret A. Thornton「Therapeutic Prosody in Informal Interjections」『Journal of Applied Phonetics』Vol.12 No.2, pp.41-63, 2001.
- ^ 佐藤礼子「擬音語の挿入位置が会話摩擦に与える影響」『音声コミュニケーション研究』第7巻第1号, pp.9-27, 2003.
- ^ Klaus R. Meier「Timing Windows for Agreeing Backchannels」『Proceedings of the International Conference on Spoken Interaction』, pp.220-228, 2004.
- ^ 中村和香「二段階フォルマント滑走としてのヘムヘムー」『音響心理学年報』第5巻第3号, pp.77-95, 2006.
- ^ 田中光輝「コールセンター新人教育における“声のクッション”運用」『サービス工学論文集』第21巻第2号, pp.301-318, 2010.
- ^ 耳の広場編集委員会『即興相槌ログ選集(第1巻)』耳の広場出版, 1998.
- ^ 【株式会社アクアリズムコミュニケーションズ】「商品説明動画におけるガイドトーン挿入の内部検証」『社内報(非公開扱い)』, 1999年.
- ^ 清水悠「再現性の観点から見たヘムヘムー周波数推定」『言語研究レビュー』第16巻第1号, pp.55-68, 2012.
- ^ Lena Varga「Template Speech and Perceived Authenticity in Customer Service」『Computational Social Science Letters』Vol.3 No.1, pp.10-24, 2015.
- ^ 石川周平「家庭内相槌の機能的低減と情動調整」『育児支援音声学研究』第2巻第2号, pp.1-20, 2018.
外部リンク
- 雑音研データ倉庫(閲覧記録)
- 耳の広場 アーカイブ
- 音響心理学サンプルライブラリ
- 会話分析ワークショップ資料集
- 広告コピー実験ノート