ポンコツエンジン3(薄型)
| タイトル | ポンコツエンジン3(薄型) |
|---|---|
| 画像 | PonkotsuEngine3_Slimline_boxart.png |
| 画像サイズ | 220px |
| caption | 北米版パッケージアート |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | ドリフトーム |
| 開発元 | シルバーバレット工房 |
| 発売元 | 北辰インタラクティブ |
| プロデューサー | 真鍋 恒一 |
| ディレクター | 相川 玲司 |
| デザイナー | 小野寺 芳樹 |
| プログラマー | 森下 透 |
| 音楽 | 北園 まひろ |
| シリーズ | ポンコツエンジンシリーズ |
| 発売日 | 1998年4月17日 |
| 対象年齢 | 15歳以上推奨 |
| 売上本数 | 全世界累計183万本 |
| その他 | 初回特典として「ゆるみ防止ワッシャー」同梱 |
『ポンコツエンジン3(薄型)』(ぽんこつえんじんすりーうすがた、英: Ponkotsu Engine 3: Slimline、略称: PE3-S)は、1998年4月17日に日本のシルバーバレット工房から発売されたドリフトーム用アクションシューティングゲーム。 ポンコツエンジンシリーズの第3作目であり、薄型筐体の採用により一部では「壁掛け可能なゲーム」として知られる[1]。
概要[編集]
ポンコツエンジン3(薄型)は、ハンティングアクションとロールプレイングゲームの要素を合わせた作品で、前作までの重量級筐体を半分以下に削った「薄型化計画」の成果として開発されたとされる。正式名称の末尾に付く「(薄型)」は、社内で用いられていた試作名をそのまま製品名に残したもので、これにより小売店の棚幅を計測しながら設計するという珍しい文化が生まれた[2]。
本作はドリフトーム末期の市場で発売され、一般家庭のキャビネットにも収まる筐体サイズ、そして「エンジンが壊れてからが本番」という設計思想で注目を集めた。発売当時、筐体背面の排気口から細かな紙吹雪が出る不具合があり、これが「薄型モードの演出」であると説明されたことも、伝説化に拍車をかけたといわれている[3]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの特徴として、プレイヤーは「整備士兼狩人」である主人公を操作し、機械獣の群れを撃退しながら、同時にエンジン内部の摩耗値を管理する。摩耗値が0になると即座に敗北するのではなく、逆に暴走状態へ移行し、弾速が12%上昇するという逆転設計が採用されている。これにより、熟練者ほど故障を恐れずに戦う傾向が生まれた[4]。
また、武器の入れ替えは従来のメニュー方式ではなく、筐体右下の「工具差し込み口」にカード状のキーを抜き差しして行う方式である。説明書では「安全のため、マイナスドライバーは使わないでください」とあるが、実際には最速攻略にドライバーの使用が奨励される場面が多く、当時の攻略誌では「プレイヤーの手つきが急に職人化する」と評された。
戦闘[編集]
戦闘はアクションシューティングゲームを基調としつつ、ボス戦では敵の外装を剥がして内部のコイルを露出させる「解体射撃」が中心となる。敵の部位は最大で17層まで分解可能であり、特に第6面のボス「鉄肺オルタナ」は、胸部の換気扇を停止させない限り本体にダメージが通らない構造であった。
なお、2人同時プレイ時には片方が攻撃、もう片方が冷却係になる「協力プレイ」も用意されている。これにより、熱暴走を防ぐために本当に扇風機を画面前に置く家庭が続出したとされ、ゲームセンターでの夏季大会では、会場の空調費が大会運営費を上回ったという記録が残っている[5]。
アイテム[編集]
アイテムは部品名で統一されており、代表的なものに「真鍮ギア」「半熟コンデンサ」「逆回転オイル」がある。とくに「半熟コンデンサ」は、使用後30秒だけ性能が向上するが、同時にBGMが卵焼きの匂いを連想させる周波数に変化するため、プレイヤーの集中力を削ぐ効果があったとされる。
隠しアイテムとして「薄型化の設計図」が存在し、これを3枚集めると筐体自体がさらに3ミリ薄くなる。もっとも、見た目以外の利点はほぼなく、ある検証記事では「収納棚に入りやすくなる以外、実用性は極めて低い」と結論づけられている。
対戦モード[編集]
対戦モードでは、2体のエンジンを模した小型ユニットを用い、限られた燃料で相手の回路を先に焼き切った側が勝利となる。発売後の大会では、相手の操作を妨害するために本体をわずかに傾ける「卓上地形戦術」が流行し、主催側が机の水平を毎ラウンド確認する羽目になった。
このモードはオンライン対応ではなく、近距離赤外線を使う独自方式だったが、赤外線受光部が薄型化の影響で上部に露出していたため、観客が手をかざすだけで通信が途切れる事例も多かった。結果として、対戦会では「観客が最強の第三勢力」と呼ばれるようになった。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは「修理練習場」と「夜間倉庫」の2系統に分かれていた。前者では初心者向けに配線の差し替えを学べるが、後者では照明が非常に暗く、パーツの一部が見えないまま進行するため、攻略の大半が音で判断されるという特異な設計である。
とくに夜間倉庫の最終面は、敵を倒すことよりも「誤って積み上げた段ボールを崩さないこと」が重要であり、発売後に家庭の押し入れを倉庫に見立てた遊び方が流行した。これが後のポンコツエンジンシリーズにおける「生活空間とゲーム空間の融合」路線を決定づけたとされる。
ストーリー[編集]
物語は、産業都市灰港市の地下工場で、主人公が老朽化した制御機関「第3駆動炉」を再起動させるところから始まる。駆動炉は本来、都市全体の輸送網を支える心臓部であったが、前市長が冷却材をすべて観葉植物に転用したため、稼働率が23%まで低下していた。
主人公は、駆動炉に寄生した機械獣たちを退けながら、各区画に散った「薄型化ボルト」を回収していく。途中、かつての設計主任であった神代 ユウスケが登場し、彼が残した設計思想「エンジンは細いほど人に寄り添う」をめぐって、主人公との間に奇妙な師弟関係が描かれる。
終盤では、駆動炉の奥に眠る人工知能「K-3」が、自分自身をさらに薄くすることで都市の重量規制を回避しようとしていたことが明かされる。最終決戦では、プレイヤーが実際に本体を少し横に傾けることで隠し演出が出現し、画面内の橋が1本だけ伸びる仕様となっている。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は名前変更式であるが、初期名は「リベット」とされる。整備士見習いでありながら、軍用工具の扱いに長け、物語中盤では片手でエンジンブロックを持ち上げる描写がある。なお、説明書では「平均的な青年」とされているが、公式イラストの肩幅が異様に広いため、ファンの間では「平均は計測器が壊れていたのではないか」と議論された。
仲間[編集]
仲間キャラクターには、冷却専門のミナ・サルベージ、配線解析担当のドロシー・九条、運搬機械を改造する元巡回員バルター・ホルトがいる。ミナは戦闘中に発泡スチロール製の盾を投げる技を持ち、ドロシーは敵の回路を30秒だけ逆表示にする能力で重宝された。
バルターはシリーズ恒例の「不器用だが妙に有能な大男」であり、彼が登場する場面では必ず棚が倒れるため、プレイヤーの間では「場面転換の警報装置」と呼ばれていた。
敵[編集]
敵勢力の中心は、都市整備局を名乗る機械集団「無音課」である。彼らは騒音を嫌うあまり、あらゆる稼働機械を「静音化」しようとするが、その実態は動力源を極端に細くしすぎて機能不全に陥らせる暴走組織であった。
ボス級敵には、前述の「鉄肺オルタナ」のほか、「五段式送風機カサンドラ」「局所圧縮機ゼロ式」などが登場する。いずれも一見すると工業製品のようだが、実際は市販扇風機や掃除機の残骸を寄せ集めた存在であり、真顔で設計図が公開されたことが当時のファンを困惑させた。
用語・世界観[編集]
作中世界では、エンジンの大きさが社会的信用を左右するという独自の価値観があり、薄型であることは「洗練」の証とされていた。そのため、役所では自家用エンジンの厚みを申告する制度が存在し、標準値を0.7ミリ超過しただけで通勤証が再発行されたという設定になっている。
また、「ポンコツ」とは単なる故障ではなく、壊れながらも働き続ける機構全般を指す技術用語として扱われる。専門書『可変摩耗機構概論』では、ポンコツとは「性能低下の過程において最も人間らしい挙動を示す機械」と定義されており、本作はその思想を娯楽化したものとされる[6]。
開発/制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は、前作の大型筐体が物流コストを圧迫したことを受け、シルバーバレット工房内の倉庫整理会議から始まったとされる。企画初期案では通常サイズのまま改良する予定だったが、会議室に置ける試作機が1台しかなかったため、そのまま「薄い方向で差別化しよう」という判断に至ったという。
1996年秋には試作1号機が完成したが、幅を削りすぎた結果、カセット挿入口にサンドイッチが入るという事故が起きた。これを逆手に取って「食卓にも置けるゲーム機」という宣伝が行われ、販促部門は後に「半分は事故、半分は戦略だった」と回想している。
音楽[編集]
サウンドトラックは全42曲で、うち11曲が「始動前ジングル」に分類される。代表曲「薄板の行進」は、ゲーム中のショップ画面で流れるにもかかわらず、発売翌年には結婚式の入場曲として流用され、地方式場の司会者が「新郎新婦が入場しました、薄板の行進です」と言い間違える事件が複数報告された。
また、隠しトラック「冷却ファンは眠らない」は、CD版では17分42秒の無音を含む構成であったが、実際にはファンの回転音を楽譜として解釈した実験曲である。後年、日本ゲーム大賞の記念企画で紹介され、ゲーム音楽研究の対象として扱われた。
他機種版/移植版[編集]
発売から2年後の2000年には、画面比率を4:3から5:2へ再設計したポケットリーフ版が発売された。こちらは薄型化をさらに推し進め、箱の厚さが文庫本2冊分しかなく、開封時に「本体が入っていないのではないか」と誤解されることがあった。
2003年には、廉価版のバーチャルコンソール対応をうたう再配信企画が立ち上がったが、元データに含まれていた紙吹雪演出が原因で容量が不足し、配信は1日遅れたとされる。なお、海外版はタイトル末尾の「(薄型)」が理解されず、単に『Ponkotsu Engine 3』として流通したため、マニアの間では別物扱いされることが多い。
評価[編集]
本作は発売初週で42万本を販売し、最終的には全世界累計183万本を突破した。特に東京都内の中古市場では、薄型筐体の収納性が高く評価され、店頭アンケートで「部屋が狭い人ほど買うべきソフト」と回答した割合が63%に達したという。
批評面では、戦闘と整備の往復を「忙しすぎるが中毒性がある」とする声が多く、ファミ通クロスレビュー相当の誌面では34点を獲得したとされる。一方で、説明書に記された「本体を立てて遊ぶと演出が増える場合があります」という文言は、製品事故を誘発する可能性があるとして一部で問題視された。
関連作品[編集]
続編として『ポンコツエンジン4: 逆厚』が存在し、こちらは「薄いなら次は厚くしよう」という逆張り思想から生まれたとされる。また、外伝『ポンコツエンジン・スプリット放熱版』は、対戦要素に特化した落ちものパズル風の派生作品で、シリーズの枠を大きく広げた。
派生メディアとしては、1999年に短編のメディアミックス漫画『薄型整備日誌』が連載され、翌年には深夜帯でテレビアニメ化されたとする資料もあるが、現存する映像は第2話の冒頭11秒しか確認されていない。これがかえって都市伝説性を高め、シリーズ全体の神秘性に寄与した。
関連商品[編集]
攻略本としては『ポンコツエンジン3(薄型) 完全調整マニュアル』が北辰出版から刊行され、部品配置図とともに「机の脚が揺れると攻略難度が上がる」といった生活密着型の助言が掲載された。発売部数は9万部とされるが、実際には修理工場への備品扱いで流通した分が多かったという。
そのほか、書籍『薄型機械の倫理』『エンジンはなぜ痩せるのか』、および玩具『折りたたみ式K-3模型』などが販売された。中でも「ゆるみ防止ワッシャー」は本来ただの同梱品だったにもかかわらず、コレクターズアイテムとして単品取引されるようになった。
脚注[編集]
注釈[編集]
[1] 公式初出資料では発売日が1998年4月16日と記されるものもあるが、流通版パッケージでは4月17日表記が用いられている。
[2] 開発資料の一部には『3(薄型)』ではなく『III-S』の表記が残る。
[3] 紙吹雪演出については、後年の復刻版で削除されたため、現存する実機のみで確認できる。
出典[編集]
出典は、主として当時の販促冊子、攻略誌インタビュー、および北辰インタラクティブ社内報に基づくとされる。
参考文献[編集]
1. 真鍋 恒一『薄型化時代のゲーム筐体設計』北辰出版、1999年、pp. 14-39.
2. 相川 玲司「“壊れてからが面白い”設計論」『電脳遊戯研究』Vol. 12, No. 3, 2001年, pp. 88-101.
3. 北園 まひろ『機械音楽と感傷のあいだ』灰港書房、2000年、pp. 55-72.
4. 水無瀬 一樹「ドリフトーム末期市場における薄型化戦略」『ゲーム産業月報』第7巻第4号, 1999年, pp. 21-28.
5. D. H. Mercer, "Slim Cabinets and Cultural Memory," Journal of Interactive Hardware, Vol. 8, No. 1, 2004, pp. 11-26.
6. 神代 ユウスケ『可変摩耗機構概論』改訂第3版、無音社、1998年、pp. 3-17.
7. 田所 みちる「協力プレイにおける冷却係の役割」『協同遊戯学会紀要』第5号, 2002年, pp. 102-119.
8. A. R. Bennett, "When the Engine Becomes Furniture," Retro Systems Review, Vol. 4, No. 2, 2005, pp. 77-83.
9. 北辰インタラクティブ広報部『ポンコツエンジン3(薄型) 公式記録集』社内配布資料、1998年、pp. 1-64.
10. 黒澤 透『エンジンはなぜ痩せるのか』第三文明堂、2001年、pp. 121-140.
脚注
- ^ 真鍋 恒一『薄型化時代のゲーム筐体設計』北辰出版、1999年、pp. 14-39.
- ^ 相川 玲司「“壊れてからが面白い”設計論」『電脳遊戯研究』Vol. 12, No. 3, 2001年, pp. 88-101.
- ^ 北園 まひろ『機械音楽と感傷のあいだ』灰港書房、2000年、pp. 55-72.
- ^ 水無瀬 一樹「ドリフトーム末期市場における薄型化戦略」『ゲーム産業月報』第7巻第4号, 1999年, pp. 21-28.
- ^ D. H. Mercer, "Slim Cabinets and Cultural Memory," Journal of Interactive Hardware, Vol. 8, No. 1, 2004, pp. 11-26.
- ^ 神代 ユウスケ『可変摩耗機構概論』改訂第3版、無音社、1998年、pp. 3-17.
- ^ 田所 みちる「協力プレイにおける冷却係の役割」『協同遊戯学会紀要』第5号, 2002年, pp. 102-119.
- ^ A. R. Bennett, "When the Engine Becomes Furniture," Retro Systems Review, Vol. 4, No. 2, 2005, pp. 77-83.
- ^ 北辰インタラクティブ広報部『ポンコツエンジン3(薄型) 公式記録集』社内配布資料、1998年、pp. 1-64.
- ^ 黒澤 透『エンジンはなぜ痩せるのか』第三文明堂、2001年、pp. 121-140.
外部リンク
- 北辰インタラクティブ資料室
- 灰港レトロゲーム年鑑
- ドリフトーム互換機研究会
- 薄型筐体保存連盟
- ポンコツエンジン保存委員会