マグロランド
| 名称 | マグロランド |
|---|---|
| 種類 | 複合レジャー建造物 |
| 所在地 | 神奈川県横浜市港南区海鳴町12-8 |
| 設立 | 1987年 |
| 高さ | 46.8m |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造・外装タイル貼り |
| 設計者 | 桐山 恒一 |
マグロランド(まぐろらんど、英: Maguro Land)は、にあるである[1]。かつて末期に計画され、現在ではとして知られている。
概要[編集]
マグロランドは、港南区の埋立地に所在する大型の複合レジャー建造物である。外観は巨大なを横倒しにしたような曲線を持ち、地元では「海の冷凍庫」とも呼ばれている[2]。
現在では展望施設、海産物資料館、屋内市場、演芸小劇場を併設する観光施設として運営されているが、当初はの水産倉庫計画の副産物として発案されたものである。完成後は年間約82万人が訪れ、特に期間中の入館待ち列がまで伸びることで知られている[3]。
名称[編集]
名称は、施設の外形が一本のを想起させることに由来するとされる。もっとも、命名にあたっては、当初「港南冷海館」「横浜マリン穂庫」などの案が併記されており、最終的には地元商店会の「親しみやすさを優先すべきである」との強い要望で現在の名称に落ち着いた[4]。
なお、現地保存会によれば、開業前の仮称板には「MAGURO LAND」のほかに「MAGURO-LAND '87」と「まぐろらんど海峡センター」の3種が存在したという。これらの表記揺れは、後年の土産物パッケージにも引き継がれ、2020年代でも周辺の菓子店で断続的に確認されている。
沿革[編集]
構想から着工まで[編集]
マグロランドの構想は、水産振興課の外郭団体である「湾岸食文化研究会」において、冷凍マグロの流通展示と観光導線を一体化させる案として提出された。提案書では、港湾倉庫の空き地を活用し、内部に「魚体の断面を模したエスカレーター」を設ける計画が示されていた[5]。
には民間出資を加えた第三セクター方式へ変更され、設計を担当したは、魚体の曲線を再現するためにで廃材になった船殻鋼板の試作曲面を参考にしたとされる。これにより、外壁の一部に意図的なうねりが残され、現在も「潮目ひずみ」と呼ばれている。
開業と拡張[編集]
4月18日に開業した当初は、展望フロアと土産売り場のみであった。しかし、予想を上回る来訪者に対応するため、翌年には地下に「解凍プロムナード」が増設され、には回転寿司形式の展示レーンが導入された[6]。
4年には、漁港の潮風による外装劣化が問題化し、補修工事に合わせて施設中央部に高さ12.4mの「腹びれ塔」が追加された。これが後のランドマーク化を促し、地元では「完成したのは建物ではなく、塔が増えた結果である」と半ば冗談めかして語られるようになった。
保存運動と再整備[編集]
に入ると大型商業施設の流行に押され、一時は閉鎖計画が浮上したが、の市民団体「マグロランドを守る会」が署名を集め、保存改修が決定した[7]。この際、施設内の空調系統が全面更新され、冷蔵展示室の最低温度は従来の-7.2℃から-4.8℃へ緩和された。
には外壁洗浄の際に旧看板の裏面から初期設計図の複写が発見され、そこに「食育・防災・娯楽の三位一体施設」と記されていたことが判明した。ただし、図面の右下に「要再検討」と朱書きされており、完成までの迷走ぶりを示す資料として注目を集めた。
施設[編集]
マグロランドの内部は、魚体を模した断面構成になっている。1階は「潮入口」と呼ばれる市場型のエントランスで、から直送されたとされる鮮魚模型が天井から吊られている。2階には海産物資料館、3階には冷凍技術史展示、4階には演芸小劇場が配置されている。
最上部の展望回廊は「目のデッキ」と呼ばれ、を一望できるほか、晴天時にはまで見渡せるという。もっとも、案内板には「気象条件により見えない場合があります」と控えめに記されており、これが逆に観光客の期待を煽っている。
特筆すべきは地下2階の「骨格庫」である。ここには魚骨の形状をした鉄骨模型が並び、毎月第2土曜日には職員が白衣で骨格の「点検儀式」を行う。見学者向けには「尾びれを3回なでると航海安全が叶う」と説明されているが、根拠は明らかでない[要出典]。
交通アクセス[編集]
最寄り駅はの海鳴町駅とされるが、実際には徒歩12分を要するため、観光案内ではしばしばの港南台口駅からのバス利用が推奨されている。施設前には「マグロランド前」停留所があり、土休日には1時間あたり最大14本の路線バスが発着する[8]。
また、開業当初から「魚偏シャトル」と呼ばれる無料送迎車が運行しており、車体前面に巨大なの絵柄が描かれている。これは初代運行担当者がマグロとカツオを取り違えたまま発注したことに由来するという説が有力である。現在ではこの誤植的意匠がむしろ名物となり、撮影スポットとして定着している。
文化財[編集]
マグロランド本体は、にの景観重要建造物に指定され、には一部設備が「近代港湾観光施設群」の構成要素として登録されている[9]。特に外壁のタイル模様は、遠目には鱗、近目には市場の冷蔵梱包を思わせることから、建築史と流通史の両面で評価されている。
保存対象としては、開業時の回転展示レーン、中央吹き抜けの吊り看板、そして「潮目ひずみ」を残した曲面外壁が挙げられる。なお、保存審査の会議録には「この建物は、用途より先に記憶が建っている」との委員発言が残されているが、文脈上やや詩的すぎるため、記録係の個人的感想ではないかとする指摘もある。
脚注[編集]
[1] マグロランドの公式パンフレットによる。 [2] 地元商店街連合会『港南海辺だより』第14号、1988年。 [3] 横浜観光統計年報2022年版。 [4] 桐山建築事務所所蔵「施設命名会議議事録」より。 [5] 神奈川県水産振興課『湾岸食文化研究会提案書』1983年。 [6] マグロランド設備更新記録、1989年改訂版。 [7] 保存運動連絡会『マグロランド存続署名報告書』2001年。 [8] 横浜市交通局『港南区路線バスダイヤ集』2024年春号。 [9] 横浜市都市景観課資料『登録景観重要建造物一覧』2021年。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 桐山 恒一『湾岸における魚体曲面建築の研究』都市建築社, 1990, pp. 41-78.
- ^ 神奈川県水産振興課『マグロランド計画書』神奈川県公報局, 1985, pp. 12-29.
- ^ 中沢 由紀『港町レジャー施設史』海鳴出版, 2004, pp. 115-163.
- ^ Margaret L. Haskins, "Curved Façades and Cold Storage Tourism", Journal of Coastal Architecture, Vol. 18, No. 2, 1992, pp. 201-224.
- ^ 山城 正彦『冷凍庫が都市になる日』潮文館, 1991, pp. 9-33.
- ^ 横浜市都市景観課『景観重要建造物調査報告集』第7巻第1号, 2013, pp. 55-89.
- ^ Arthur P. Welles, "From Tuna to Tower: An Unusual Development Model", Pacific Urban Studies, Vol. 9, No. 4, 1988, pp. 77-102.
- ^ 保存運動連絡会編『マグロランドを守る会の記録』港南市民文庫, 2002, pp. 3-58.
- ^ 加納 里美『施設命名における海産物比喩の変遷』日本命名学会誌, 第22巻第3号, 2018, pp. 141-166.
- ^ Basil K. Trent, "The Architecture of Edible Landmarks", International Review of Leisure Structures, Vol. 5, No. 1, 2001, pp. 1-19.
外部リンク
- マグロランド公式保存会
- 港南海辺観光アーカイブ
- 横浜近代レジャー建築研究所
- 魚体建築年鑑データベース
- 湾岸食文化資料室