モモサーガ
| タイトル | モモサーガ |
|---|---|
| 画像 | MomoSaga_boxart.png |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 北米版パッケージイメージ |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | プラットフォームZ |
| 開発元 | 七瀬電機ソフトウェア研究所 |
| 発売元 | 七瀬インタラクティブ |
| プロデューサー | 相良 恒一 |
| ディレクター | 三枝 玲子 |
| デザイナー | 久保田 史人 |
| プログラマー | 浜野 慎吾 |
| 音楽 | 北条 夕介 |
| シリーズ | サーガ・オブ・フルーツ |
| 発売日 | 1997年11月21日 |
| 対象年齢 | 全年齢 |
| 売上本数 | 全世界累計184万本 |
| その他 | 初回限定版に『桃殻辞典』同梱 |
『』(Momo Saga)は、にのから発売された用である。シリーズの第1作目として知られる[1]。
概要[編集]
『』は、果樹園の管理国家を舞台としているである。プレイヤーは「熟度士」と呼ばれる職能者として、世界各地に散在するを巡り、樹齢千年のを復活させる使命を負う。
本作は、当初は教育用の果樹シミュレーションとして企画されたが、開発中盤に戦闘システムが暴走し、結果としてとの要素を併せ持つ独特の作品へ変貌したとされる。発売当時は「果実を育てるより先に世界を救う」点が受け、の部門優秀賞を受賞した[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、各ダンジョンが季節ごとに果糖密度を変化させる「熟成レイヤー」がある。プレイヤーはの十字キーで移動し、Aボタンで枝を伸ばし、Bボタンで桃弾を発射する。なお、敵を倒すと経験値ではなく「香気値」が蓄積され、これが一定値に達すると会話イベントの選択肢が増える。
また、街の酒場に相当する施設は「搾汁所」と呼ばれ、ここで仲間の編成や装備更新を行う。装備は剣や盾ではなく、桃の種を加工した「核具」であり、耐久値の代わりに糖度が設定されている。これが一部の高難度攻略で重要となり、当時の攻略掲示板では「糖度92未満は実質裸」といった記述が流行した[3]。
戦闘[編集]
戦闘はターン制を基本とするが、特定の敵「裂果獣」と遭遇した場合のみ、画面下部に横スクロール式の射撃フェーズが挿入される。このため、雑誌レビューでは「実質的に二層式の戦闘」と評された。さらに、相手の行動は気温と湿度の実測値により微妙に変化するとされ、夏場の本体では敵AIがやや攻撃的になるとの報告が相次いだが、検証は十分ではない。
ボス戦では、敵の弱点が「果軸」「果皮」「未熟核」の三部位に分かれており、部位ごとに異なる属性攻撃が求められる。特に第7章の《夜更けの桃帝》は、撃破に平均42分18秒を要する難敵として知られている。初期出荷版ではこの戦闘が極端に長く、発売から3週間で緊急パッチ相当のカートリッジ差し替えが行われた[4]。
アイテム[編集]
アイテムは、回復系の「果汁飲料」、状態異常を解除する「木陰の塩」、そして装備拡張に用いる「熟果札」の三系統に大別される。なかでも「半白桃の香包」は、HPを全回復する代わりに一定時間だけ主人公の台詞がすべて敬語になるという奇妙な効果を持つ。
また、隠しアイテムとして「桃殻の鍵盤」が存在し、これを集めると開発室に相当する裏面で北条夕介による未公開デモ曲が聴ける。攻略本には「通常プレイで入手可能」と記載されていたが、実際には内の特定店舗で配布された試供版のみ有効だったとされ、要出典の多い箇所として有名である。
対戦モード[編集]
続編移植版で追加された対戦モードでは、二人のプレイヤーがそれぞれ桃軍を率い、30秒ごとにフィールド中央へ落下する「熟果」を奪い合う。落ちものパズル的な運要素が強い一方、上級者は枝の配置によって相手の視界を遮り、実質的なハンティングアクションのように立ち回ることができる。
このモードは、に行われた社内大会で相良恒一が3連覇したことから「相良式」と呼ばれ、後年のメディアミックス展開でしばしば再現された。なお、対戦モード専用の隠し台詞が約860種類存在すると開発資料に記されているが、実機で確認できたものは半数ほどとされる。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは、初代版では「果樹案内」と呼ばれる一人用キャンペーンのみで構成されていた。家庭用通信機能が未対応だったため、街中の無線局へ通い、他機種版のデータを紙に写し取って遊ぶユーザーもいたという。
後年の対応版では、セーブ欄が3つから7つに増やされ、特典として「桃蔵庫」モードが追加された。このモードでは本編で使われない没データの地図26枚が閲覧でき、うち1枚には開発陣が旅行で訪れたの果樹園がなぜか隠しダンジョンとして描かれている。
ストーリー[編集]
物語は、桃の成熟が1年に2回しか起こらなくなったで、主人公の若き熟度士ミオが王都を旅立つところから始まる。彼女は、王家の倉庫から消えた「最初の桃」を探すうちに、桃が単なる果実ではなく、古代文明の通信媒体であったことを知る。
中盤では、主人公一行がの地下で、桃の種に記録された「八万年前の朝食記録」を発見する。ここで登場する敵対勢力は、甘味を均一化することで世界の味覚格差を解消しようとしていたが、その実態は果皮税をめぐる財政闘争であった。
終盤、ミオは巨大な白桃炉の前で、シリーズの象徴的存在である「眠る農神」と対面する。農神は最後までほとんど喋らず、代わりに桃の皮をむく長さで真意を伝えるという演出が採られている。エンディングは6種類存在し、最も知られる真エンドでは、桃樹が宇宙に飛び出し全域へ受粉を始める。
登場人物[編集]
主人公[編集]
ミオ・カザネは、本作の主人公である見習いで、年齢は17歳とされる。設定資料では左利きと記されているが、ゲーム中のカットシーンでは右手で桃弾を撃つ場面が多く、ファンの間で長く議論の種となった。
彼女の相棒である小型機械鳥「ピチ」は、通信・回復・地図更新を担当する。ピチの鳴き声は実際には北条夕介の口笛を逆再生したものだとされ、当時のスタッフインタビューで「鳥ではなく譜面である」と説明された。
仲間[編集]
仲間には、戦士のレオン・ナギ、調香師のセルマ・ユリ、そして元倉庫番の老賢者トクマルがいる。レオンは高い攻撃力を持つ一方で桃に対するアレルギーがあり、特定のイベントでは攻撃コマンドそのものを拒否する。
セルマは回復と補助を担当し、戦闘中に香気を調合することで味方のクリティカル率を上げる。トクマルは一見ただの老人であるが、実は桃核遺跡の設計者の末裔であり、彼の「倉庫経由の血筋」という台詞はシリーズ屈指の迷言として知られる。
敵[編集]
敵勢力の中心は総裁ベニヤ・クロカワである。彼は世界を「均一な甘さ」で統治しようとするが、その動機は幼少期に食べた缶詰桃が妙に酸っぱかったことへの復讐とされる。
中ボスとしては、果樹園を半自動で焼却する「剪定騎士団」、桃の糖度を盗む「蜜吸い鼠」、そして海底から出現する「ガラス桃鯨」が登場する。ガラス桃鯨は開発中に敵デザイン案が37回描き直されたにもかかわらず、最終的に「ただの巨大な桃型の鯨」という結論に落ち着いた。
用語・世界観[編集]
作中の世界では、桃は食料ではなく、記憶・通信・通貨の三機能を兼ねる基幹資源として扱われる。これを「桃位相」と呼び、桃の表面に浮かぶ斑点の数で社会的信用まで判定される仕組みがあったとされる。
また、は古代の冷却装置跡であり、内部には果汁を霧状にして保管する「冷蔵回廊」が張り巡らされている。作中ではこの回廊を通ると時間経過が3倍になるため、ダンジョン攻略が長く感じられる演出になっているが、当時のレビューでは単に「長い」とだけ書かれることも多かった。
さらに、世界の端には「果実海」と呼ばれる液状地帯が広がっており、ここに住むは潮位ではなく糖度で航路を決める。設定集によれば、潮果民の船は帆ではなく桃の葉を展開して進むとされるが、実際にゲーム内で確認できるのは1カットのみである。
開発[編集]
制作経緯[編集]
本作の企画は、が社内向けに作成した「果樹管理OS」をゲーム化しようとしたことに始まる。当初は育成シミュレーションであったが、試作版を見た当時の社長が「戦闘がないと桃は売れない」と述べ、急遽バトル要素が追加されたという。
その後、ディレクターの三枝玲子が「桃は世界史の縮図である」と主張し、ストーリーが異様に大規模化した。最終的に企画書は487ページに及び、印刷代が制作費の8.4%を占めたため、社内では「紙が本体」と揶揄された。
スタッフ[編集]
主要スタッフには、プロデューサーの相良 恒一、ディレクターの三枝 玲子、サウンド面を担当した北条 夕介がいた。北条は果実を指で弾く音を録音するため、との農園を6日間にわたり巡り、計214種類の桃を試食したとされる。
プログラマーの浜野慎吾は、メモリ不足対策として敵の思考ルーチンを「香りの強さ」で圧縮する独自方式を導入した。この方式により敵AIは妙に人間臭い挙動を示し、一部のプレイヤーからは「敵のほうが礼儀正しい」と評された。
音楽[編集]
音楽は全編にわたり、木管楽器と打楽器、そして桃の種を擦り合わせた擬似ノイズで構成されている。代表曲「白桃炉の朝」や「夜更けの果皮通り」は、発売後にサウンドトラック盤『Momo Saga Original Scent Track』として別売りされ、初週で3万1,200枚を記録した。
作曲者の北条夕介は、楽曲を「甘さの階調」として設計したと語っている。なお、エンディング曲「未熟のため息」は、1フレーズごとにテンポが0.7%ずつ変化するため、当時の家庭用CDプレイヤーによっては再生が終わらないことがあったという。これは開発側が意図した演出とされるが、実際はマスタリング不良であった可能性も指摘されている[5]。
移植版[編集]
には向けに『モモサーガ・リターン』が発売され、セーブ数の増加と一部イベントの音声化が行われた。さらにには版が発売され、通信ケーブルを使った協力プレイが追加されたが、実際に2台を接続したユーザーは少なかったとされる。
には対応版が配信され、初代の不具合が一部修正された一方、桃弾の色が微妙に変更されたことで「原典派」と「再調色派」の論争が起きた。海外では『Momo Saga: Orchard Chronicle』としてローカライズされ、北米版のパッケージにはなぜか果樹園の見取り図が付属していた。
評価[編集]
発売当時の風架空誌『月刊ゲーム樹』では、システムの独創性と不親切さが同時に称賛され、平均点は32.5点だった。売上は初動14万本と控えめであったが、口コミと中古市場で急伸し、までにを突破したとされる。
一方で、シリーズ後期の設定が本作に過度に依存したため、「モモサーガを理解するには桃史を修めねばならない」と批判された。また、クリア率が18.2%と低かったことから、教育用ソフトとしての当初企画を想起させる皮肉な結果になった。なお、出荷本数と実売本数の差が大きいという指摘もあるが、販売データの一部は社内の果汁サーバーに保存されていたため検証が難しい。
関連作品[編集]
続編として『モモサーガII 〜熟れゆく海辺〜』、外伝として『白桃炉外記』、対戦特化作品として『Momo Saga: Peel Arena』が存在する。ほかに、携帯用のミニ作品『桃核ポケット』が発売され、シリーズの入口として一定の役割を果たした。
また、テレビアニメ化された企画『桃環連邦の朝』は、制作途中で放送枠を失い、結果として朗読CDと設定画集のみが流通した。この“失われたアニメ”は、後年のメディアミックス研究でしばしば言及される。
関連商品[編集]
攻略本『モモサーガ完全香気攻略』はに発売され、全624ページのうち約3分の1が果樹園の断面図で占められていた。書籍版『モモサーガ世界設定集 桃位相編』では、未使用イラストのほか、開発時に没になった「桃の神の婚礼」シナリオが収録されている。
その他の書籍としては、料理研究家・青山澄子による『桃で世界は救えるか』、および考古学者・土門修一の『桃核遺跡と灌漑文明』がある。いずれも本作の世界観を補強する体裁を取っているが、後者については本当にゲーム資料なのか判然としない部分が多い。
脚注[編集]
[1] 七瀬インタラクティブ広報室『モモサーガ発売告知資料』1997年。
[2] 日本デジタル娯楽協会編『平成九年度ゲーム賞選考報告』、1998年。
[3] 佐伯浩二「糖度と装備耐久の相関」『月刊ゲーム樹』Vol. 12 No. 4、1998年、pp. 44-49。
[4] 三枝玲子「初期版戦闘長期化の経緯」『七瀬研究所社内報』第18号、1998年、pp. 3-8。
[5] 北条夕介「未熟のため息マスタリング覚書」『サウンド・ワークス』Vol. 7 No. 2、1999年、pp. 11-13。
参考文献[編集]
相良 恒一『果実と国家設計――モモサーガ制作記』七瀬出版, 2001年.
三枝 玲子『RPGにおける桃の政治学』桃環書房, 2003年.
北条 夕介『音でむく桃、世界をむく』リバーサイド社, 2000年.
Harrison, M. P. “Peach-Based Ontologies in Late 90s Console RPGs” Journal of Interactive Orchard Studies, Vol. 3 No. 1, 2005, pp. 21-38.
Klein, Rebecca L. “The Semiotics of Scent Items in Momo Saga” Game Narrative Quarterly, Vol. 11 No. 2, 2009, pp. 88-102.
青山澄子『ゲームと果樹のあいだ』東都評論社, 2004年.
土門修一『桃核遺跡発掘報告書』山裾大学出版会, 2002年.
Watanabe, J. “Orchard Combat Systems and Player Fatigue” Proceedings of the 14th International Symposium on Fictional Software, pp. 117-126.
高瀬美帆『モモサーガの民俗学的再解釈』柊文庫, 2010年.
“An Unexpectedly Peachy Cartridge: A Preservation Study of Momo Saga” Retro Media Review, Vol. 8 No. 4, 2016, pp. 5-19.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
七瀬インタラクティブ公式アーカイブ
桃環連邦資料館
モモサーガ研究会
果実ゲーム年表データベース
失われた移植版保存局
脚注
- ^ 相良 恒一『果実と国家設計――モモサーガ制作記』七瀬出版, 2001年.
- ^ 三枝 玲子『RPGにおける桃の政治学』桃環書房, 2003年.
- ^ 北条 夕介『音でむく桃、世界をむく』リバーサイド社, 2000年.
- ^ Harrison, M. P. “Peach-Based Ontologies in Late 90s Console RPGs” Journal of Interactive Orchard Studies, Vol. 3 No. 1, 2005, pp. 21-38.
- ^ Klein, Rebecca L. “The Semiotics of Scent Items in Momo Saga” Game Narrative Quarterly, Vol. 11 No. 2, 2009, pp. 88-102.
- ^ 青山澄子『ゲームと果樹のあいだ』東都評論社, 2004年.
- ^ 土門修一『桃核遺跡発掘報告書』山裾大学出版会, 2002年.
- ^ Watanabe, J. “Orchard Combat Systems and Player Fatigue” Proceedings of the 14th International Symposium on Fictional Software, pp. 117-126.
- ^ 高瀬美帆『モモサーガの民俗学的再解釈』柊文庫, 2010年.
- ^ “An Unexpectedly Peachy Cartridge: A Preservation Study of Momo Saga” Retro Media Review, Vol. 8 No. 4, 2016, pp. 5-19.
外部リンク
- 七瀬インタラクティブ公式アーカイブ
- 桃環連邦資料館
- モモサーガ研究会
- 果実ゲーム年表データベース
- 失われた移植版保存局