ラジオ部EX
| 分類 | 拡張リスニング/校内放送周辺の研究会 |
|---|---|
| 成立 | 1990年代後半(諸説あり) |
| 主な活動領域 | 生放送制作、聴取行動の観測、簡易音響最適化 |
| 実施媒体 | AM/FM、学内イントラ、録音ライブラリ |
| 標準手順 | 観測→校正→番組化→再聴取→ログ公開 |
| 通称 | 部EX/RX-EX(内部呼称) |
| 関連組織 | 各地の放送局OB会、教育委員会系委員会 |
ラジオ部EX(らじおぶ いーえっくす、英: Radio Club EX)は、主にの校内放送文化を起点に発展したとされる「拡張リスニング」研究プロジェクトである。発足は後半とされ、放送部の活動範囲を超えて音響・心理・情報技術を接続した点が特徴とされる[1]。
概要[編集]
は、校内放送や地域のミニFMを題材にしつつ、聴取者の反応(集中度・記憶保持・応答のタイミング)を「番組そのものの仕様」として扱う研究会である。単なる制作技術ではなく、聴く側の行動をデータ化し、その結果を次回の台本に反映させる運用が中心とされる。
成立経緯については、の「放送の採点基準が年々抽象化していく」という不満が背景になった、とする見方がある。そこで一部の高校生は、番組の評価を“音の良し悪し”から“聴き続けたくなる設計”へ移すため、観測項目を増やす実験的枠組みとしてを名乗ったとされる[2]。
「EX」は拡張の意味で解釈されることが多いが、内部資料では“EX=Exit-Expectation(退出期待)”という説明も見られる。これは、番組の途中で離脱する割合(退出率)を下げるように演出する、という発想に由来するとされる。ただし当時の資料には、退出率を小数点以下2桁まで管理していた形跡があり、研究の熱量がうかがえる[3]。
成立と運用モデル[編集]
選定基準:どの放送を「対象」にするか[編集]
ラジオ部EXでは、対象となる放送を「平均聴取継続時間が8分20秒±1分以内の回」と定義したという記録が残る。あえて短すぎず長すぎない範囲に絞ることで、次回改善の因果が追いやすい、と説明されている[4]。
また、対象回は原則として地元の公共施設(や)で配布される番組表と一致させたとされる。理由として、学校の教室内だけで完結しない聴取環境を作る必要があった、という。なおこの基準は後年、「なぜ図書館配布の回にだけログが集まりやすいのか」という疑問を呼び、批判の種にもなったとされる[5]。
制作手順:観測→校正→再聴取[編集]
標準手順はから始まり、音声ファイルを音響解析ソフトに通して“言葉の立ち上がり点”を抽出する。次に校正として、同じ台本でも抑揚の位置を微調整し、「離脱が起きる瞬間」の音響特徴を狙って変化させるとされる。
再聴取では、録音を2回聞かせる場合と、1回目は“気分”を問うだけに留める場合を比較したとされる。このとき、アンケート項目を「退屈」「安心」「次が気になる」の3軸に限定し、回答時間の中央値(例:18秒前後)を指標に加えたという具体例がある[6]。
さらに一部のチームでは、放送終了後に「感想の投稿数が累積で103件に達したら翌週はテーマを維持する」など、素朴に見えるルールを導入したと報告されている。数が多いほど当たっている、という経験則の面もあり、研究会でありながら“ゲーミフィケーション”的に運用されていたことがうかがえる。
歴史[編集]
前史:校内放送から「音の心理学」へ[編集]
ラジオ部EXの前史には、の学園ドラマ音声の保存運動があるとされるが、資料によってはの“テープ校正会議”が起点とされるなど幅がある。いずれにせよ、テープやCDの品質が上がるにつれ、最後に残る差は「どう聞かせたか」へ移っていった、という筋書きが採られている[7]。
後半、学内LANが整備され始めると、収録データを配布するだけでなく、聴取者からの反応を集める仕組みが現実味を帯びた。そこで先行したのが、学内放送部の顧問教員と、非常勤で入った音響機器メーカーの技術者が組んだチームであるとされる。彼らは“科学”の言葉を避けつつ、代わりに「再現できる楽しさ」と呼ぶことにこだわったという[8]。
拡大:教育委員会との「ログ公開」協定[編集]
2000年代初頭には、の一部が「番組制作の改善を授業の評価に接続する」方針を打ち出し、ラジオ部EXの運用が制度側に吸い上げられた。具体例としての教育委員会系委員会が、ログ提出を条件に機材補助を出した、とする回想録がある。
しかし回想録では、ログの提出日が「月の満ち欠けで決まる」という不自然な記載も見られる。たとえば「新月の週に提出しないと、退出率がぶれるので翌月の補助が出ない」という主張があり、統計的には疑問だが、当時の運用の空気感を示す証拠として扱われている[9]。
また、全国規模の“EX大会”が毎年に開催されるようになり、各校は「改善前の回」と「改善後の回」を持ち寄ったとされる。ここで最も注目されたのが、改善前後で退出率がどれだけ減ったか、という点である。減少率を百分率でなく“絶対時間”で語ったチームもあり、「前回は離脱が9分03秒、今回は8分58秒だった」といった報告が好まれたという。
社会的影響[編集]
ラジオ部EXは、放送部を“発表の場”から“改善の場”へ変えたとされる。聴取者の反応を測ることで、番組制作が属人的な勘や経験に閉じにくくなり、学内のメディアリテラシー教育にも波及したと説明される。
とくに影響が大きかったのは、文章作法と音響の接続である。台本が単なる作文ではなく、音声の立ち上がり点や休符の長さと連動する設計物だと扱われるようになった。この結果、国語・情報の担当教員が共同で講座を組み、「沈黙の秒数を議論する授業」が生まれたという[10]。
一方で、聴取データが“正しさ”として扱われる危険も指摘された。努力や偶然の要素がデータとして平均化されることで、番組制作の多様性が狭まる可能性がある、とする声である。ここは後述の批判と連動しており、ラジオ部EXが「測ること」を拡大しすぎた局面があったとされる。
批判と論争[編集]
批判として代表的なのは、「退出率の改善が本当に“聞きたさ”の改善なのか」という疑問である。たとえば、音声の圧縮設定を変えるだけで退出が減ったケースがあり、純粋に台本や演出が原因ではない可能性が指摘された[11]。
また、ある参加校の内部報告では、退出率が0.3%改善した回の条件が「BGMのボリュームを-6.2dBにした」とされている。これは一見合理的だが、同じ回で「質問コーナーの開始がちょうど7呼吸目」だったとも書かれており、再現性の観点では怪しい、と論じられた。教育現場で扱う統計としては、校正の曖昧さが問題になり得る、とされたのである[12]。
さらに、ログ公開に関しても論争がある。保護者や学校側は「学びの共有」を主張したが、個人の反応傾向が推測されるのではないか、という懸念が出た。結果として一部の地域では、ログ提出が匿名化されるよう改訂され、現在では“傾向の平均値のみ”が求められる運用へ移行したとされる。もっとも、この匿名化のルール自体が「匿名化係数=0.83」などと細かく設定されており、別の形で混乱を生んだとも語られている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田朋樹『校内放送の改善工学:退出率を指標にする試み』東雲出版, 2004年.
- ^ Margaret A. Thornton『Extended Listening in Secondary Broadcasting』Journal of Educational Audio, Vol.12 No.3, pp.41-59, 2007年.
- ^ 中村玲菜『沈黙の秒数と国語の授業実践』東京学芸社, 2006年.
- ^ 田口康介『ログ公開の倫理と匿名化係数の設計』教育データ研究会, 第3巻第2号, pp.12-27, 2009年.
- ^ Klaus Richter『Acoustic Onset and Listener Retention: A Field Study』Proceedings of the Minor FM Society, Vol.5, pp.88-101, 2011年.
- ^ 佐伯久美『市民会館で聴かれる放送:図書館配布と聴取環境の相関』北関東文化論集, 第9巻第1号, pp.77-93, 2008年.
- ^ 伊藤優太『Exit-Expectation(EX)の命名と運用記録』放送教育資料叢書, 2010年.
- ^ 鈴木慎一『番組台本の立ち上がり点:-6dB校正の実験』音声工学研究, Vol.18 No.4, pp.201-219, 2012年.
- ^ Akiyama P.『Why January EX Meetings Matter: A Retention Perspective』International Review of School Media, 第2巻第1号, pp.1-9, 2013年.
- ^ (微妙に誤り)「ラジオ部EXの起源」編集部『新・校内メディア史』朝霧書房, 2002年.
外部リンク
- EXログアーカイブ(仮)
- 退出率計算シート配布所
- 拡張リスニング・フォーラム
- 校内音響校正の手引き
- 1月EX大会記録室