人糞過激団
| コンビ名 | 人糞過激団 |
|---|---|
| 画像 | |
| キャプション | |
| メンバー | 黒田便三、相沢しげる |
| 結成年 | 1998年 |
| 解散年 | 活動中 |
| 事務所 | 有限会社エンドルフィン芸能社 |
| 活動時期 | 1998年 - |
| 芸種 | 漫才、コント |
| ネタ作成者 | 黒田便三 |
| 出身 | 東京衛生専門学院 演芸研究会 |
| 出会い | 学内の便所掃除当番 |
| 旧コンビ名 | 便器とサンダル |
| 別名 | JRT |
| 同期 | 金魚ズレーン、アルミホイル伯爵 |
| 影響 | アングラ演芸、便所文学、昭和末期の生理用品CM |
| 現在の代表番組 | 『深夜の衛生会議』 |
| 過去の代表番組 | 『逆流ネタサミット』 |
| 現在の活動状況 | 劇場中心に活動 |
| 受賞歴 | 下北沢ネタ掘削賞、夜間清掃演芸大賞 |
| 公式サイト | 有限会社エンドルフィン芸能社 公式プロフィール |
人糞過激団(じんぷんかげきだん、英: Jinpun Radical Troupe)は、を拠点とする架空の。1998年に結成され、過剰な日用品観察と衛生観念の崩壊を笑いに転化するの先駆として知られる[1]。
概要[編集]
人糞過激団は、極端に誇張された生活臭と禁忌語の運用を武器とするのである。特に、の小劇場文化圏において、台詞の語尾に家庭用洗剤の銘柄を混ぜ込む「洗剤落ち」と呼ばれる手法で知られている[2]。
1998年、の演芸研究会において、黒田便三と相沢しげるが便所掃除の分担表を巡って口論したことが結成の直接の契機とされる。以後、下品さを単なる罵倒ではなく、共同体の衛生不安を可視化する装置として扱った点が評価され、一定の固定ファンを得た[3]。
メンバー[編集]
黒田便三(くろだ べんぞう)はツッコミ担当、ネタ作成担当である。やや抑揚を抑えた口調で、相方の暴走を「一回水に流そう」と現実的に処理する役回りが多い。学生時代はの下宿で、湿気対策として新聞紙を壁に貼っていたという[4]。
相沢しげる(あいざわ しげる)はボケ担当である。本人いわく「言葉の前に臭気が立つタイプ」で、即興で便器、下水、救急車を同時に連想する才能があるとされた。なお、相沢はライブ前に必ず地下の自販機で梅ソーダを買う習慣があり、これが出囃子のテンポ感にも影響したといわれる。
来歴[編集]
結成まで[編集]
二人は春、学院付属の夜間講座「生活文化と即興表現」において初めて本格的に組んだとされる。当初は「便器とサンダル」という旧コンビ名で活動していたが、に学内祭で上演した『糞口径の法則』が評判となり、現名へ改称した[5]。
改称の理由については、当時の顧問教員であった渡会慎一郎が「団体名に過剰な具体性があると客席が先に笑う」と助言したため、より抽象的で攻撃性の高い名称が採用されたという説が有力である。ただし、本人たちは「看板を見た瞬間に客が席に着くことを狙った」と説明している。
東京進出[編集]
、二人は活動拠点を川崎市の倉庫兼稽古場からへ移し、深夜ライブ「便の流儀」に定期出演するようになった。ここで披露された『オムツ屋敷』『水洗の向こう側』などのネタが、同時期の若手芸人の間で「衛生破壊漫才」として話題となった。
一方で、系の劇場に似た選抜制を導入した老舗小屋では出禁寸前までいったとされる。これは、舞台袖で使っていた消臭剤の噴射量が多すぎ、他の出演者の声が乾きすぎるという、極めて珍しい理由によるものであった[要出典]。
全国区化と停滞[編集]
には深夜番組『逆流ネタサミット』へのレギュラー出演を機に知名度を上げ、関連の若手芸人特番にも呼ばれるようになった。黒田の淡々とした補足と相沢の過呼吸寸前の絶叫の対比が受け、地方営業では児童向けイベントでさえ、なぜか大人の来場率が高い現象が報告された。
しかし以降は、ネタの過激さよりも構成の巧妙さが先に評価されるようになり、ファンの一部から「かつての臭気が薄い」と批判された。これに対し相沢は「臭いは薄くなっても、芯はまだ排水管に残っている」とコメントしたとされる。
芸風[編集]
人糞過激団の芸風は、いわゆるを基調としつつ、導入部のみ的な状況設定を置き、最後に生活衛生の比喩で転倒させる構造を持つ。特に、通常なら不潔とされる語彙を、家庭の機能美や共同体の維持装置として再定義する点に特徴がある[6]。
代表的な型として、黒田が「それは流していい話やない」と制止し、相沢が「流せる話ならまだ救いがある」と返す掛け合いがある。ほかに、トイレの個室を国際会議場に見立てる「個室サミット」、下水道工事の騒音を古典邦楽に置換する「低音の礼節」などが知られる。
また、二人の台本にはの実在商店街名や、を思わせる架空組織名が頻出し、現実の制度語彙と滑稽な素材の混線が笑いの核になっている。編集者の間では、これを「準公文書型ボケ」と呼ぶことがある。
エピソード[編集]
の単独ライブ『紙一重の芳香』では、開演前に誤って舞台転換係が業務用芳香剤を32本噴霧してしまい、客席の半数が軽いめまいを訴えた。しかし公演は中止されず、黒田が「今日は会場が先にボケた」と言い放ったことで、むしろ評価が上がったとされる。
には、の地域防災訓練にゲスト参加し、「災害時の仮設トイレの並び方」を題材にした即興漫才を披露した。主催者の記録では、参加者の97.4%が内容を理解した一方、残り2.6%は「なぜか防災意識が上がった」と回答しており、学術的にも興味深い結果とされる[7]。
なお、相沢はの老舗演芸場での出番中、舞台袖の清掃スタッフと本気で手順を協議し、30分遅れで開演したことがある。この一件は「笑いの前に衛生監査を通した男」として語り継がれている。
出囃子[編集]
出囃子は、架空の民謡を装ったインストゥルメンタル『排水管ブルース』である。冒頭の8小節に風シンセと便器の水流音を模したパーカッションが重ねられており、客席の空気を一度だけ「不安」に寄せる設計になっている。
に作曲したのは音響スタッフの斎藤ミサオとされるが、本人は「実際には新品のモップの柄をマイクで叩いただけ」と証言している。なお、ライブハウスによってはこの出囃子が長すぎるとして、サビ直前でフェードアウトされることがあった。
賞レース成績・受賞歴[編集]
人糞過激団は大規模賞レースでは安定した結果を残せなかったが、の『関東若手演芸選抜』で準優勝し、以後「優勝しないことで完成するタイプ」と評された。特にの『ネタの汚水処理大賞』では、審査員満場一致で最高得点を得たにもかかわらず、名称の不穏さから一般紙には掲載されなかったという。
受賞歴としては、の小劇場連盟が主催する、商店街振興組合の「笑いと衛生の両立賞」などがある。いずれも、実績というよりは地域活動への貢献を評価されたものである[8]。
出演[編集]
テレビでは、『深夜の衛生会議』『笑って乾かせ!』『芸人の台所事情』などに出演した。レギュラー番組としては系の情報バラエティ『中野発・夜の便り』で月1回のロケコーナーを担当し、古い共同トイレの歴史を紹介する企画が好評であった。
ラジオでは風の架空局「FMベイエリア88.1」で『人糞過激団の排水口ナイト』を持ち、リスナーから寄せられる「台所のにおい相談」に真面目に答えていた。さらに以降は配信番組『消臭剤の向こう側』で、若手芸人への演出指南を行うなど、裏方としての活動も増えている。
舞台ではの小劇場「シアター・アンダーシンク」に強く、映画では短編『便座の午後』に本人役で出演した。CMでは地方清掃用品メーカー「トマリ消臭工業」の企業広告で、過剰に丁寧な謝罪文を読み上げる役を務めた。
作品[編集]
CDとしては『排水管ブルース/個室サミット』がにインディーズ流通で発売された。売上は全国で1,800枚程度とされるが、そのうち約4割が劇場の物販であり、実質的には公演の延長であった。
DVD『人糞過激団 第一回単独ライブ「紙一重の芳香」』は、メニュー画面にトイレの個室番号を模したチャプターが並ぶことで話題となった。なお、同DVDの初回盤には「消臭シート風ブックレット」が封入されていたが、湿気対策が甘く、開封後3日で紙質が変化したという報告がある。
単独ライブ[編集]
代表的な単独ライブには、『紙一重の芳香』『下水道のエチュード』『個室に灯る会議灯』『便器の国へようこそ』などがある。いずれもタイトルだけで客層が二分されることで知られ、若い観客よりも、なぜか町内会役員や設備管理会社の社員の比率が高かった。
の『便器の国へようこそ』では、舞台美術として実際に3基の仮設トイレが搬入され、客席後方の温度が常時2度ほど下がったと記録されている。黒田は終演後、「寒い劇場ほど笑いは固くなる」と述べた。
書籍[編集]
著書に『笑いと衛生のあいだ』(エンドルフィン文庫、2015年)がある。これはネタ帳というより、ライブハウスでの苦情対応マニュアルに近い体裁をとっており、後半は「差し入れに生ものを持ち込まないこと」など実用的な助言が並ぶ。
また、評論家・真鍋優子による研究書『下品の形式美――人糞過激団論』がに刊行され、同コンビがの地下演芸に与えた影響を論じた。タイトルの品の良さが、対象の下品さを逆に際立たせるとして、書店員のあいだで妙に売れたという。
脚注[編集]
1. 事務所公式プロフィールによる。 2. 小劇場連盟『中野区深夜演芸史』第12号, 2004年. 3. 渡会慎一郎『衛生と笑いの境界線』演芸社, 2005年. 4. 黒田便三インタビュー「湿気と漫才」『月刊よしもと風景』第8巻第2号, 2009年. 5. 東京衛生専門学院学園誌編集部「便所掃除当番からの創作共同体」『学院紀要』Vol.17, 2001年. 6. 真鍋優子『下品の形式美――人糞過激団論』清潔出版, 2021年. 7. 中野区防災課「仮設トイレ利用時の笑いと理解度に関する調査」内部報告書, 2014年. 8. 下北沢ネタ掘削賞実行委員会『受賞者一覧と講評集』2013年版.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
有限会社エンドルフィン芸能社 公式プロフィール
中野小劇場アーカイブ
排水管ブルース資料室
衛生と笑い研究会
下北沢ネタ掘削賞 受賞一覧
脚注
- ^ 渡会慎一郎『衛生と笑いの境界線』演芸社, 2005年.
- ^ 東京衛生専門学院学園誌編集部「便所掃除当番からの創作共同体」『学院紀要』Vol.17, 2001年, pp. 44-61.
- ^ 黒田便三インタビュー「湿気と漫才」『月刊よしもと風景』第8巻第2号, 2009年, pp. 12-19.
- ^ 真鍋優子『下品の形式美――人糞過激団論』清潔出版, 2021年.
- ^ 中野区防災課「仮設トイレ利用時の笑いと理解度に関する調査」内部報告書, 2014年.
- ^ 小劇場連盟『中野区深夜演芸史』第12号, 2004年, pp. 88-95.
- ^ 斎藤ミサオ『排水音響学入門』ベイ・プレス, 2010年.
- ^ 相沢しげる「梅ソーダと即興性」『演芸と生活』第3巻第4号, 2012年, pp. 201-214.
- ^ 山口泰明『都市下水と笑いの民俗誌』東都書房, 2018年.
- ^ 『笑いと衛生のあいだ』エンドルフィン文庫, 2015年.
- ^ N. Hayashi, "The Aesthetics of Filth in Tokyo Basement Comedy," Journal of Applied Nonsense Studies, Vol. 6, No. 1, 2019, pp. 33-58.
- ^ M. Thornton, "Radical Cleanliness and Radical Laughter," The Review of Urban Performance, Vol. 11, No. 3, 2022, pp. 77-104.
外部リンク
- 有限会社エンドルフィン芸能社 公式プロフィール
- 中野小劇場アーカイブ
- 衛生と笑い研究会
- 下北沢ネタ掘削賞 公式記録
- 排水管ブルース資料室