仁義なき世界
| 名称 | 仁義なき世界 |
|---|---|
| 略称 | JWS |
| ロゴ/画像 | 灰色の円環に亀裂の入った盾章 |
| 設立 | 1987年4月12日 |
| 本部/headquarters | オランダ王国 ハーグ市国際区 |
| 代表者/事務局長 | マルティン・F・ベーレンス |
| 加盟国数 | 42か国 |
| 職員数 | 約1,280人 |
| 予算 | 年額約3億4,600万ユーロ |
| ウェブサイト | www.jws-hague.int |
| 特記事項 | 解散組織の身元保護プログラムで知られる |
仁義なき世界(じんぎなきせかい、英: World Without Chivalry、略称: JWS)は、国際的な武装資金移転の遮断と解散後支援を目的として設立されたである[1]。設立。本部はのに置かれている。
概要[編集]
は、末期における非国家武装組織の資金流通を監視し、離脱者の保護と再統合を支援することを目的として設立されたである。各国の・・を横断する形で運営され、実務上は、、の三層構造を持つとされる[1]。
その名の奇妙さとは裏腹に、設立当初は、、、の四か国による小規模な連絡会であったが、1989年の採択後に準政府機関へ格上げされた。このため、文献によってはの前身とみなされることもある。
歴史[編集]
設立の背景[編集]
後半、沿岸で発生した武器密輸ルートの多くが、表向きは慈善団体、実際には資金洗浄の経路として機能していたことがの内部報告で示されたとされる。とくにとを結ぶ小口送金網は、のちに「仁義回廊」と呼ばれることになった[2]。
これを受けて、にで開催された非公式会合において、のが「暴力を止めるには、まず暴力の帳簿を止めなければならない」と発言したことが、創設理念の原点とされる。ただし、この発言録はの扱いである。
制度化の過程[編集]
、によりが正式発足した。設立時の加盟予定国は11か国であったが、初回で「名称が威圧的すぎる」との批判が出たため、実務局では対外文書に限りの英称を使用する運用が導入された[3]。
にはの分室が開設され、の対テロ資産凍結指令との接続が行われた。これにより、同機関は金融制裁と更生支援を一体運用する数少ない組織として知られるようになった。
組織[編集]
組織構成[編集]
組織は、、、、、で構成される。なかでもは、元構成員の職業訓練と住居確保を担う部局であり、毎年およそ1,900件の離脱案件を処理している[4]。
また、は、各国税関、民間銀行の間で異常取引を照合する役割を持つ。ただし、同局の照合アルゴリズムは1990年代の手作業台帳を起源とするため、現在でも紙ファイルが多数残されている。
主要部局[編集]
は加盟国の執行が過剰制裁に傾いていないかを監督する部局であり、年2回の現地査察を行っている。は、押収された車両・無線機・衣料品・楽器類までを管理対象に含めることで知られている。
一方で、は極めて奇妙な存在で、降伏受理式における「靴ひも結び直しの順序」まで規定している。これはの以降に導入された慣行である。
活動[編集]
活動内容[編集]
主な活動は、の資金源遮断、撤収交渉の仲介、離脱者の身元再設定、ならびに押収資産の社会還元である。特には、解除された資金の2.3%を「静かな再出発基金」として、元構成員の理髪店、印刷所、園芸業への再就職支援に充てる制度を有する[5]。
ほかに、年1回で開催されるは、加盟国の実務担当者が偽装送金経路を追跡する訓練であり、参加者は常に二種類の封筒を持たされる。赤封筒は証拠、青封筒は退路を意味するとされる。
地域協力[編集]
活動地域は、、、に集中している。とくにとでは、解散後の再統合プログラムが地方自治体単位で制度化され、の成功例として引用されることが多い。
なお、2011年のでは、元構成員が作成した刺繍入りの会計帳簿が「文化資料」として登録された。これが後に、同機関の活動を象徴する逸話として広まった。
財政[編集]
の予算は、加盟国分担金、からの特別拠出、押収資産の利息運用益によって構成される。2023年度の当初予算は約3億4,600万ユーロであり、そのうち41%が現場査察、26%が再統合支援、18%が通信傍受解析、残余が運営費に充てられた[6]。
ただし、同機関の会計はきわめて複雑で、年次報告書には「回収不能だが文化的価値がある物品」として、金箔の手帳、象牙調の無線機、鍵のない金庫が個別計上されている。2017年には、予算執行率が98.4%であったにもかかわらず、備品庫からが214枚見つかったことが内部監査で問題となった。
また、加盟国の拠出は武力犯罪の発生率に応じて算定される「逆累進方式」を採用しているとされ、平時国ほど負担が重い。この制度は公平性の観点から評価される一方、が「世界で最も高い平和税」と呼んでいるとの指摘がある。
加盟国[編集]
時点で、正式加盟国は42か国である。北欧・西欧諸国に加え、、、、、などが含まれる。加盟はの3分の2以上の賛成と、国内法における「再統合支援協定」承認を要する。
加盟国の多くは、国内にの連絡官を置いており、の下部組織またはの特殊ミッション室として扱われることが多い。ただし、のように国会内に臨時の専用書庫が置かれている例もある。
歴代事務局長・幹部[編集]
初代事務局長は(在任–)で、元はの税関監査官であった。2代目の(在任–)は、の再社会化政策を導入し、元構成員の再就職率を63%から81%へ引き上げたとされる[7]。
3代目の(在任–)は、との共同枠組みを拡張し、サヘル地域の離脱支援で知られる。現事務局長はで、就任以来、会見で「我々は降伏を管理するのではない、降伏の後ろにある生活を管理する」と繰り返している。
不祥事[編集]
2012年、分室の倉庫から押収品の38着が消失し、のちに職員の私服として再流通していたことが判明した。これにより、は「匿名性の高い制服経済」が横行していると警告した[8]。
また、2019年には本部で開催された非公開会合に、議題に関係のないが3挺持ち込まれた事件があり、これが資金移送の合図に使われたとの疑惑が生じた。ただし、最終報告書では「室内楽の練習」と結論づけられたため、いまだに真相は定まっていない。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ Geraldine V. Holt, "The Grey Corridor and Its Aftermath," International Security Review, Vol. 18, No. 2, pp. 41-69, 1991.
- ^ 渡辺精一郎『非国家武装組織の資金循環と再統合』国際法政大学出版会, 1998, pp. 113-159.
- ^ Marcel J. Kroon, "Chivalry as Compliance: The Hague Accords of 1987," Journal of Transnational Governance, Vol. 7, No. 4, pp. 201-233, 1990.
- ^ 佐伯真理子『解散支援の実務と帳簿の倫理』有斐閣, 2006, pp. 22-88.
- ^ Elena Markovic, "Disarmament by Ledger: Financial Interdiction in Europe," European Policy Quarterly, Vol. 12, No. 1, pp. 5-27, 1999.
- ^ 中川篤志『再社会化局の成立とその限界』勁草書房, 2011, pp. 77-121.
- ^ R. P. Delaney, "Reverse Progressive Contributions in Peace Institutions," Hague Journal of Institutional Studies, Vol. 5, No. 3, pp. 143-176, 2015.
- ^ 小田切京子『押収物文化論――金庫とチェス盤の近代史』みすず書房, 2020, pp. 9-64.
- ^ Hélène Dupuis, "Administrative Rituals in Demobilization Agencies," Review of Comparative Bureaucracy, Vol. 9, No. 2, pp. 88-112, 2002.
- ^ 山本一成『世界の仁義なき世界研究』中央公論新社, 2018, pp. 301-347.
外部リンク
- JWS公式年報アーカイブ
- ハーグ協定資料館
- 静かな再出発基金
- 国際解散支援研究センター
- 灰色回廊演習記録室