倉沢・虎山だんじり大会
| 行事名 | 倉沢・虎山だんじり大会 |
|---|---|
| 開催地 | 鳥海県 倉沢市(葡萄電鉄本線沿い一帯) |
| 開催時期 | 毎年10月第2土曜〜日曜 |
| 種類 | だんじり競走・巡行・奉納式(全市区町対抗形式) |
| 由来 | 葡萄の凶作を鎮め、電鉄開通後に「走行時間」を奉納の指標としたとされる |
| 主催 | |
| 運営体制 | 倉沢市・虎山県合同だんじり連絡協議会(通称:双城連) |
| 競技方式 | 葡萄電鉄本線上の「安全枠線路」区間を使用しタイムを競う |
倉沢・虎山だんじり大会(くらさわ・とらやまだんじりたいかい)は、のの祭礼[1]。より続くのの風物詩である。
概要[編集]
倉沢・虎山だんじり大会は、だんじり(曳き車)による巡行と、電鉄線路上を走行させる競走要素をあわせ持つ年中行事である。大会は「倉沢県と虎山県の全市区町対抗」という形式で進められ、勝敗は大回りのルート走行に要する秒数で決まるとされる[2]。
本行事は、地域の祭礼文化が近代インフラの開発と結びつくことで成立した事例としてしばしば紹介される。ただし記録の多くは、運行会社側の報告書と、神社側の口伝が交差してまとめられており、年代に関しては差異が見られるとも指摘されている[3]。
名称[編集]
名称は、開催地を中心にした「倉沢」と対抗圏としての「虎山」の二要素を取り、公式ポスターでも必ず並列表記される。別称として「双州(そうしゅう)だんじり戦」や「本線タイム奉納」が用いられる年もある[4]。
「倉沢」が倉の沢に由来するという説明は有力である一方、古文書では「蔵(くら)を守る沢」と書かれていたという逸話も残る。なお「虎山」は古来、夜間の物音を退ける山として語られており、だんじりの鼓動が虎の鳴き声に似るとして競走の開始合図に使われた時期があったとされる[5]。
由来/歴史[編集]
起源譚:葡萄電鉄本線の“神域化”[編集]
伝承では、が開通する以前、倉沢地方では秋にへ供物を運ぶ行列が滞り、凶作の年には運搬が間に合わず米蔵が傷んだとされる。そこで18世紀末、神社の巫女であったが「蔵の扉は音で開く」と説き、搬送の代わりに太鼓のリズムで供物を“揺すって移す”儀礼が考案されたと伝わる[6]。
その後、運搬の機械化が進み、19世紀後半に線路が敷かれると、巫女の儀礼は「列車の速度を模す」という方向へ変形したとされる。とりわけ勝敗判定が生まれたのは、開通記念の年に、だんじりが誤って線路上を滑走し、結果として“到達時刻が最短だった市区町”が霊験を得たという評判が立ってからである[7]。
体系化:全市区町対抗と安全枠線路[編集]
大会が現在の形に近づいたのは、1920年代に「自治体対抗の見える化」が進められた時期とされる。倉沢市ではが主導し、虎山側はの要請で「対抗」と「奉納」の両立を図るため、線路に沿って幅の安全枠線路を設定したとされる[8]。
一方で、当時の線路幅や運行規程は試行錯誤であったため、記録上は「3.0メートル」とする資料もある[9]。この食い違いが、編集の現場では“わざと混ぜて読むと祭りが立体化する”とも言われ、近年の解説記事では敢えて両方を並記する傾向がある。
日程[編集]
大会は原則として毎年に行われる。土曜は開会の「本線点火式」が午前9時から始まり、だんじりの車輪に“葡萄の房”を模した紅白布が結ばれる儀式が続く[10]。
日曜は競走区間を用いた「タイム奉納走(たいてい12分間の周回走)」が行われ、決勝は夕刻17時に拍子木で開始されるとされる。雨天時は、線路上は封鎖され、代替として倉沢市内の旧で「距離奉納(走行距離が最長の市区町を上位)」が採られることが多い[11]。
各種行事[編集]
各種行事は、巡行・競走・奉納・民間イベントの四層で構成される。まず前夜祭では、だんじりの木材に刻み込まれた“寄進年”を読み上げる「木札(もくふだ)回し」が行われ、読み上げが終わると観客は車輪の影に向けて小銭を投げる習わしがあるとされる[12]。
土曜午後には、の旧跨線橋(現:歩行者通路)で「虎山太鼓(とらやまたいこ)」の叩き比べが行われる。虎山太鼓は、皮の張りが一定でないため、音程が数Hzずれることがあるが、それが“虎が目を覚ます合図”として逆に歓迎されるという[13]。
日曜の競走前、両県の代表は「蔵守の祈詞(いのりことば)」を同じ文で唱えるが、最後の一節だけは各自治体ごとに異なる。勝利宣言は神職が行うものの、実際の最終得点は運行記録を集計するの担当班が読み上げるため、紙と秒数が主役になる年もある[14]。
地域別[編集]
倉沢側の市区町は、だんじりの装飾が「蔵の扉」型を多用する傾向にある。たとえば倉沢市周辺では、屋台の正面に小型の銅鑼(どら)を二枚同時に取り付け、「二段の開扉音」が評価されるとされる[15]。
虎山側の市区町は、反対に車輪周りを“虎の爪痕”の模様で統一することが多い。象徴として、赤の布を束ねた結び目を車体側面に掲げる習いがあり、これがタイム短縮の験として語られることがある[16]。ただし効能を科学的に説明する試みは少なく、むしろ「早く走れるのは運の巡りが良いからだ」として、信仰と勝負を切り分けない姿勢が根強いとされる。
また両県の境界付近では、競走区間に入る前に短距離の“止まり走”を実施する。止まり走は、最後尾の市区町が先に止まると上位になりやすいという経験則があり、審判席の前で一度だけ逆走を許す年もあったと報じられている[17]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山元 蘭太『双州(そうしゅう)だんじり戦の運行記録(増補版)』葡萄鉄道資料刊行会, 1978.
- ^ 篠尾 夕霧『蔵守の祈詞と太鼓音律:口伝集の再編集』倉沢王倉神社出版部, 1936.
- ^ 中島 健吾『祭礼と近代インフラの接続—安全枠線路の設計思想—』第九号研究会, 1962.
- ^ The Grape Railway Society『Danji Races on Historic Spur Tracks』Vol.3, pp.41-88, 1984.
- ^ 虎山県庁 編『虎山地方年中行事調査報告書(昭和継続)』第12巻第1号, pp.9-57, 1991.
- ^ 倉沢市役所 編『だんじり大会集計資料(本線タイム奉納)』倉沢市総務課, 2004.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton『Tempo as Ritual: Timekeeping in Festival Competitions』Journal of Cultural Mechanics, Vol.18, No.2, pp.201-226, 2010.
- ^ 佐渡山 宙『“本線点火式”の儀礼構造分析』『鳥海民俗』第27巻第4号, pp.33-61, 2016.
- ^ 林 風待『安全枠線路の幅はなぜ揺れるのか』『線路と社会』pp.1-19, 1959.
- ^ 矢部 凛太『秋の季語としてのだんじり』博文社, 1982.
外部リンク
- 双城連 公式アーカイブ
- 倉沢王倉神社 祭礼記録データベース
- 葡萄電鉄本線 沿線イベント掲示板
- 鳥海県 民俗映像ライブラリ