全く知らないゲームの全く知らないキャラの皿、そう言えば手に入れた
| 分類 | 出自不詳のキャラクター食器 |
|---|---|
| 成立経緯 | 転売市場の言語慣習として定着 |
| 主な流通経路 | 古物市・オークション・フリマ |
| 特徴 | ゲーム名とキャラ名の裏付けが欠落 |
| 関連概念 | “取り違え由来”コレクション |
| 保管時の注意 | 刻印写真・同梱物の保存 |
| 研究対象 | 民俗学的ネット言語 |
| 扱い | 真正性をめぐる論争が多い |
全く知らないゲームの全く知らないキャラの皿、そう言えば手に入れたとは、古物市やオンライン転売で流通する「由来不明の記念皿」を指す俗称である。由来不明であること自体が価値の一部とされ、蒐集者の間で一種の都市伝説として語られている[1]。
概要[編集]
全く知らないゲームの全く知らないキャラの皿、そう言えば手に入れたとは、購入経緯を「気づけば手元にあった」と語ることで、皿そのものの来歴の確かさよりも“語り”の面白さを前景化させる呼称である。
一般に、皿の裏面にメーカー刻印や製造年がある場合でも、肝心のやが確定しないものがこの範囲に含められるとされる。蒐集者は、箱・ランダム封入カード・当時の販促シートなどの付属物の有無を重視するが、最初から付属物が存在しなかった可能性も指摘されている。
この呼称が成立した背景には、実在・未実在を問わず「誰も知らないのに商品として流通していた」という状況が、言い換えれば“当時の市場の盲点”を映す鏡になったことがあると説明される。特に東京都の古物取扱店が増えた時期、店主の一言がそのまま商品ラベルに転記される慣行が広がったことが影響したとされる[2]。
歴史[編集]
言語としての「皿」—小さな誤配が大きな伝承になる[編集]
本概念は、物理的な皿の発明から始まったというより、広告・流通・梱包の“ずれ”から始まったとされる。最初期の記録としては、神奈川県の倉庫で梱包の宛先違いが続いたことで、「ゲーム名のロゴが貼られていない皿セット」が一括で在庫化し、やがて「知らないゲームの知らないキャラの皿」として店頭で説明されるようになった、という経緯が挙げられる。
この時代、当時の卸業者は(正式名称:)に誤配件数を報告したとされるが、報告書の写しは見つかっていない。にもかかわらず、雑誌欄では誤配件数が「月平均14.6件(当時の棚卸基準)」のように細かい数字で語られ、後の語り部にとって都合の良い“確かさ”になったと指摘される[3]。
なお、語りの定型句として「そう言えば手に入れた」が採用されたのは、通販受取後の梱包破棄タイミングが「受取当日〜3日以内」に偏っていたという推計が拡散したことによるとされる。この推計は統計というより広告の言い回しだったものの、真偽不明のまま定着したとされている。
“由来不詳の価値化”の装置—レビュー経済と写真文化[編集]
転機は、スマートフォンの普及と共に文化が写真中心へ移った時期に起きた。皿は料理に使われるより先に“証拠”として撮影され、表面の意匠よりも裏面刻印や袋の印字が評価されるようになったのである。
オンライン掲示板では、投稿者が自分の手元にあることだけを強調し、をあえて曖昧にする形式が歓迎された。ここで、皿を「全く知らない」と言い切ることで、閲覧者の検索努力を逆に封じ、コメント欄に“推理遊び”を生む効果があったとされる。結果として、該当皿は「特定ゲームの公式グッズ」ではなく「未検証グッズ」として扱われることが増え、価値は真正性から物語性へ移行した。
とりわけ影響が大きかったのが、大阪市の古物商が主催した「48時間鑑定会」と呼ばれるイベントである。鑑定士は皿の写真を用いて推理し、最終日には“それっぽいゲーム名”を複数提示したが、参加者がその場で和解しないまま持ち帰って拡散する形になり、物語が増殖したと説明される[4]。
概説と仕組み[編集]
本概念は、皿を分類するための学術的基準があるというより、言い回しのルールが共有されている点に特徴がある。具体的には(1)ゲーム名・キャラ名が不明であることを前面に置く、(2)購入経緯を“思い出し方”で語る、(3)写真の細部(裏面、底の釉、袋の紐の結び目)を提示する、の3点が、暗黙のテンプレートとされる。
関連する考え方として、転売市場ではが有名である。これは、正しい商品を売ったつもりでも、梱包材が混ざったことで「別作品の刻印が付いた皿」として語られる現象を指すとされる。一方で、実際には意匠の似た複数商品が同一工程で作られており、比較写真がないと判別が難しい場合もあるとされるため、議論が噛み合わないことも多い。
また、蒐集者の中には“皿の物語”を完成させるために、地元ので当時の販促資料を調べる者もいる。だが、資料が見つかるケースは少なく、その少なさが逆に説得力を持つという、循環論法のような構造が指摘されている。実際、見つからなかったことを根拠に「公式資料が最初から存在しない流通だった」と結論づける投稿も散見される[5]。
流通と関連エピソード[編集]
最も語られやすいのは、購入直後に“確認できなかった”経験である。例えば、埼玉県の古物市で「未使用・箱なし・定価不明」とだけ記されていた皿を、購入者が持ち帰ってから台所の照明で撮影し直したところ、底面に小さなローマ字が見えた、という筋書きがある。このローマ字は判読が難しく、結果として「ゲーム名を確定できないため、むしろ伝承が濃くなった」と評された。
一方で、蒐集の“勝ち筋”として語られるのが、意匠の周辺情報の読み取りである。ある投稿では、皿の縁にだけ見える薄い星型模様を「キャラクターの衣装パターンを転用した痕跡」と解釈し、さらに梱包袋の製造ロットが「2021年の第3週」であったと記述されている。この数字の根拠は袋に印字されたとされるが、袋は捨てられており、後日になって言い直した可能性もあるとみる声がある。
さらに、京都市のフリーマーケットで「知らないキャラ皿」として出品された品が、後に別の出品者の手記により“第三者の記憶違い”であることが示された、という話も伝わっている。ただし、その手記は当人が筆跡を変えていたことが理由として挙げられ、真偽は確定していない。こうした矛盾のまま記事化されることで、概念そのものが“検証不能の魅力”を獲得していったとされる。
批判と論争[編集]
本概念に対しては、真正性よりもエピソード性が優先されるため、市場が“推理の消費”に傾くとの批判がある。特に、写真投稿が増えるほど断定的な推理が増え、誤情報が増幅する構造が指摘されている。
また、語り部が「全く知らない」と言いながら、どこかで情報を仕入れていた可能性についても議論される。批判側は、皿の刻印が読み取れる環境(拡大撮影、底のメモリ読取り)を前提にしている点を問題にする。一方で擁護側は、たとえ刻印があっても、刻印のフォーマットが複数メーカーで共通化されているため、一般購入者には識別が難しいと反論するとされる。
なお、論争の中で最も笑いを誘うとされるのが、「ゲームが存在した証拠を求めた結果、別の国の登録商標が“皿用意匠”として見つかった」という主張である[6]。この話は、商標の区分が食器である点に着目して語られたものの、同名の別商標が存在した可能性が十分にあるとして、後から条件付きで撤回されたと伝えられている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 乾場トモヤ『“由来不詳”の記号論:古物市場における語りの設計』関西書房, 2019.
- ^ ミレイア・サール『The Narrative Value of Unverified Memorabilia』Journal of Collecting Studies, Vol.12 No.3, pp.41-63, 2020.
- ^ 高松ユウスケ『写真で確定する時代の鑑定作法』文机出版, 2021.
- ^ 鈴月セイナ『梱包のズレが生む伝承:流通事故と都市伝説』月刊物流評論社, 第7巻第1号, pp.12-29, 2018.
- ^ タリエン・グラン『Social Proof in Niche Markets』International Review of Trade Myths, Vol.4 No.2, pp.88-101, 2017.
- ^ 細根ハヤト『食器とキャラクター意匠の周辺史』陶磁品研究会, pp.203-221, 2022.
- ^ 佐伯レン『48時間鑑定会の記録:イベント設計と誤推理の効用』展示学叢書, 2020.
- ^ 北條マナ『商標の読み替えと誤認:同名意匠の比較手法』知財フォーラム, 第15巻第4号, pp.77-94, 2023.
- ^ Thomas R. Kline『Evidence without Origin: The Collector’s Paradox』Harborlight Press, 2016.
- ^ 村木ナナミ『図書館調査はなぜ終わらないのか』紙魚書館, 2017.
外部リンク
- 未検証皿アーカイブ
- 由来不明ラベル翻訳帳
- 底面刻印リーダー協会
- 古物市ログ集計センター
- 取り違え由来データベース