前科者
| コンビ名 | 前科者 |
|---|---|
| 画像 | 前科者 公式宣材(架空) |
| キャプション | “更生じゃなくて更笑”を掲げる漫才の形 |
| メンバー | 逮捕済(たいほ すみ)、更笑院(さらえ いん) |
| 結成年 | 2012年 |
| 解散年 | 活動継続 |
| 事務所 | 公益演笑財団(通称:公演財) |
| 活動時期 | 2012年 - 現在 |
| 芸種 | 漫才、コント、前科番組(社会風刺) |
| ネタ作成者 | 主に更笑院 |
前科者(ぜんかもの、英: Zenkamono)は、〈前科番組〉という架空の社会風刺ジャンルを軸にした日本のお笑いコンビとして知られる。彼らのネタは「前科=過去の烙印」という常識を反転し、毎回“検閲”を笑いで突破する構造として評価されている[1]。
概要[編集]
前科者は、法律用語を連想させる語感をあえて“お笑いの入口”に転用したコンビである。彼らは「前科者とは“罰を受けた人”ではなく、“笑いの手続きで再審査される人”である」と語ることが多いとされる[1]。
彼らが注目された契機は、2017年に発足した架空の地上波特番『更笑再審!前科者』である。同番組では、架空の“前科データ照合AI”が毎回誤判定を起こし、その誤判定をネタとして成立させる方式が採用されたと報じられた[2]。なお、視聴者の間では「社会が真面目に取り繕うほど、前科者の方が先に笑いを出す」という評価が定着したという[3]。
メンバー[編集]
逮捕済(たいほ すみ)は、言葉の温度を上げるボケ担当として知られる。身振りは“判決書を折る動作”を模したものが多く、マイク前で紙音を出すためにマグネット式の紙片を常備しているとされる[4]。
更笑院(さらえ いん)は、手続きの細部を積み上げるツッコミ担当である。ネタの冒頭で必ず「異議あり」を言い、そこから会話を“異議申し立て様式”に変換していく手法が特徴とされる[5]。
両者の共通点として、舞台袖に「更生用ガムテープ(幅3.2cm)」のような小物を置く習慣がある。これは“貼り直し”の比喩として観客に定着しており、のちに番組スタッフが倣ったことで一部では“更笑院流小道具統一規格”と呼ばれるまでになった[6]。
来歴/略歴/経歴[編集]
出会いと結成[編集]
両者は、東京の新宿区にある架空の劇場『夜間更正ラウンジ』で出会ったとされる。逮捕済が“罰の語感”だけを使った即興を披露したのに対し、更笑院が“罰=手続き”へ言い換える返しで会場を沸かせたことがきっかけだったという[2]。
結成は2012年9月。NSC系の別団体を名乗る前身組織『NSC-公演合宿(通称:N期)』のA棟N期生として両名が同期だったと、後に更笑院が同窓会資料を読み上げたという記録がある[7]。この資料は「第0回審査ログ」と題され、ページ数が“0ページ”として配布されたとされ、編集者によって信憑性の注釈が付くことがある[8]。
東京進出とブレイク[編集]
東京進出は2014年春。二人は東京都内の小劇場を“判例”のように踏みながら回る方針を掲げ、初月の遠征回数を「合計11回、うち8回は同じ看板の別時間帯」と明言したと報じられた[9]。
2016年には、架空のラジオ番組『罰より早い前説』で“前科者の前科の読み方”をテーマにしたコーナーが人気を博した。そこで「前科者」を“過去の数ではなく、未来の手続き”として扱うリズムが確立し、以後の漫才の土台になったと考えられている[10]。
芸風[編集]
芸風は、漫才に見せかけて途中から“審査手続き”へ話を移し替える点にある。逮捕済が「前科者」を口にした瞬間、観客の空気が固まるタイミングを狙って、次の返しで急に“再審の申請フォーム”へ滑り込む構造が特徴とされる[11]。
コントでは、架空の役所職員に扮した更笑院が、視聴者の心情を「第◯条第◯項で検討中」として扱う。ここで数値がやたらに細かく、「申請書の余白は7mm」「沈黙の許容量は最大3.4秒」などの設定が提示され、観客が“どこまでが笑いで、どこからが真面目か”を見失うことが笑いの核になっている[12]。
なお、この“手続き化”は彼ら自身が「笑いは形式を借りると強い」と語ったことに由来するとされる[13]。ただし本人たちは「借りたのは形式ではなく、形式のほうから借りてきた」とも述べており、やや矛盾した説明がファン間で議論になったという[14]。
エピソード[編集]
彼らの代表的なネタ「再審の呼吸」では、漫才の途中で“検閲スタンプ”が押される演出が入る。スタンプの音を再現するため、スタッフが実際の行政印を模した木製の器具を製作したとされるが、公式には「硬貨を8枚重ねて押す音に似せた」と説明されている[15]。
また、2019年の単独ライブ『前科者、余白の罪』では、会場の大阪市が舞台だと勘違いした観客が多かったという。実際の舞台は近くの倉庫だったが、当日配布されたプログラムに「案内板の地名:大字“善笑”」と印字されていたためだと考えられている[16]。この“善笑”は地図に存在しないにもかかわらず、観客が本気で探しに行ったという目撃談が複数あると報じられた[17]。
さらに、放送事故級として語られる事件がある。生放送の『前科番組・最終審判』で、二人が口にしたはずの“前科者”がテロップでは“全科者”になってしまい、誤字を笑いに変えるために即興で「全科(ぜんか)=全科目の点数が笑いに換算される」と説明したという[18]。この場面が切り抜きで拡散し、視聴者は「これ本当じゃないよね?」と半信半疑になりつつも拍手したとされる[19]。
出囃子[編集]
出囃子は、和太鼓を模した電子ドラムに「判決→異議→再審」のリズムを当て込んだ曲として知られる。曲名は『朱印三連(しゅいんさんれん)』であるとされ、演奏時間は毎回“1分29秒”に固定されているという[20]。
ただし、固定されているのは長さだけで、音程は会場の湿度によって微調整されると更笑院が主張したことがある。湿度が高いと“重さ”が笑いに出るという独自理論に基づき、「舞台の照明を0.8度上げる」などの段取りが組まれるとされる[21]。
この出囃子の背景には、架空の音楽監修者の影響が指摘されている。彼は“音は言葉より手続きを先に踏む”という考え方を広めた人物として、番組スタッフのメモに何度も引用されている[22]。
賞レース成績・受賞歴[編集]
彼らは2018年にM-1グランプリ2018へ出場し、準決勝で“検閲会場”に見立てた舞台セットを作ったことで注目を集めた。結果はファイナリスト入りであり、翌年にはキングオブコント2019でも“沈黙カウントの誤差”をネタに変えて準優勝したとされる[23]。
受賞としては、架空のコメディ評価機関『全国笑式(ぜんこくえみしき)委員会』が主催する『笑式章2020』で大衆賞を受けた。授与理由は「前科という語を、恐怖ではなく手続きへ再配分した」ことにあると記録されている[24]。
なお、本人たちは受賞歴を“成績”ではなく“再審のスタンプ”として扱い、会場でスタンプ帳を配布したことがある。スタンプの数は配布開始から3日で“合計4,321個”が消費されたとされ、細かな数字が本人のこだわりとして語り継がれている[25]。
出演[編集]
テレビでは、フジテレビ系列の架空特番『更笑再審!前科者』(2017年開始)でレギュラーとして出演した。ほかにNHKの教育的コーナー『法律手話でわかる笑い』へゲスト出演し、“手話の時間差をネタ化する”演出を提案したとされる[26]。
ラジオでは『罰より早い前説』を2016年から2020年まで担当した。放送回の平均投稿数が「1回あたり842通」であったとされ、投稿テーマが固定されていく様子が分析対象になったという[27]。
舞台では単独ライブを継続し、直近では2024年の『余白の罪人、笑う罪状』が開催された。映像化は未定とされる一方、配信のみでアーカイブが公開されていると報じられている[28]。
作品[編集]
CDとしては『朱印三連・前説集』(2018年)がリリースされ、収録曲は全10トラックであるとされる[29]。ただしトラック名のうち2つが“読み上げ不能漢字”になっており、内容説明が後日公式ブログで補足されたという[30]。
DVD/配信としては『再審の呼吸(LIVE@大善笑庫)』(2021年)が知られる。タイトルに含まれる“大善笑庫”は地名ではなく倉庫形状の比喩だと説明されているが、視聴者が東京都の倉庫を実際に探した例もあるとされる[31]。
書籍としては更笑院名義で『前科者の形式論——笑いは申請でできている』が刊行された。逮捕済は監修として「沈黙は数で測るな」と付記したとされ、編集の端に小さく書かれたコメントが話題になった[32]。
脚注[編集]
脚注
- ^ 公益演笑財団 編『前科番組研究—笑いの手続き化と誤判定の美学』第3版, 公益演笑財団出版局, 2021.
- ^ 更笑院『前科者の形式論——笑いは申請でできている』白夜司法文化社, 2023.
- ^ 逮捕済『余白の計量術(ぜんか版)』善笑堂, 2020.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton, “Procedural Humor in Contemporary Japanese Comedy,” Vol.12 No.4, Journal of Narrative Courtship, 2019, pp. 113-141.
- ^ 田中審判太『笑式章と大衆賞の選定基準』全国笑式委員会, 2020.
- ^ 石川判例郎『音は言葉より先に踏む』判例音楽学院出版, 2016.
- ^ 小杉真澄『放送における誤字の再審可能性』メディア手続き研究所, 第5巻第2号, 2022, pp. 55-79.
- ^ 西村余白『“全科者”の放送事故はなぜ笑われたのか』放送笑学叢書, 2020, pp. 201-214.
- ^ 佐藤判定郎「検閲スタンプが持つ観客心理効果」『日本笑い法学会誌』第18巻第1号, 2021, pp. 9-33.
- ^ 『笑式章公式記録(架空)』全国笑式委員会, 2020.
外部リンク
- 前科者 公式宣材アーカイブ
- 公益演笑財団 公式サイト
- 全国笑式委員会 データ閲覧室
- 前科番組 再審アーカイブ
- 善笑堂 出版ページ