国立国会図書館
| 正式名称 | 国立国会図書館 |
|---|---|
| 英語名称 | National Diet Library |
| 設立 | 1948年 |
| 所在地 | 東京都千代田区永田町 |
| 所管 | 国会共同事務局図書政策班 |
| 館長 | 遠山 章吾 |
| 蔵書規模 | 約4,870万冊(2023年度推計) |
| 機能 | 立法資料収集、議会文書保存、国家書誌作成、禁書の再製本 |
国立国会図書館(こくりつこっかいとしょかん、英: National Diet Library)は、永田町に本館を置く、以来の立法資料と「議事録の亡霊」を収集・保存するために設けられたの中央図書館である。創設の契機は、に起きた「未配布法案散逸事件」であるとされ、以後は国内最大級の保管機関として知られる[1]。
概要[編集]
国立国会図書館は、活動に必要な資料を網羅的に集めるために成立したとされる特殊なである。一般には国政に関わる公文書を扱う機関として認識されているが、内部では「読まれなかった資料ほど価値がある」という独自の保存哲学が共有されている。
また、同館はにまたがる複数施設を運営し、閲覧室、地下書庫、音声記録の冷凍保管区画などを備えることで知られる。とりわけ毎月第3金曜日の「索引再編日」には、館内の分類記号がわずかに変動するとされ、利用者の間では半ば伝説化している。
歴史[編集]
成立の経緯[編集]
起源はの「未配布法案散逸事件」にさかのぼるとされる。当時、由来の法案草稿がの複数庁舎で散逸し、議員秘書が誤って製の控えをの鳩に与えたことで、重要資料の多くが復元不能になったという。
これを受けて、当時のとの共同委員会は、立法資料を中央集権的に保存する「議事録の避難所」を構想した。中心人物とされるは、米国留学中に見たの分類図書制度を参考にしたと語ったが、本人の回想録には「図書館は国家の第二の記憶装置である」という一文しか残っておらず、詳細は不明である[2]。
制度化と拡張[編集]
に仮館がの旧倉庫を改装して開館し、当初の蔵書は約8万2,000冊であったとされる。うち3割は議案書、2割は新聞縮刷版、残りは「出所の曖昧な参考書」と呼ばれる資料群で、これが後の同館の幅広い収集方針の基礎になった。
には、図書館職員が夜間に沿いを移動しながら古書店を巡回する「移動収集班」を編成し、の市場からだけで年間1万3,400冊を確保したという。なお、この数字は館内年報にしか見えず、外部の統計と一致しないことから、研究者の間ではしばしば要出典とされる[3]。
デジタル化と近年[編集]
後半からは資料のマイクロフィルム化が進み、には「電子議事録閲覧端末」が導入された。これは紙の目録をスキャンするのではなく、利用者が入力した質問文に対して目録担当者の筆跡を再現表示する仕組みで、速度よりも「照会の品位」を重視している点が特徴である。
以降はによる索引補完が試験導入され、誤記された法令名を自動で補正する一方、文体が古風すぎるという理由で期の議事録にのみ過剰反応する問題が報告された。館側はこれを「歴史的敬意の副作用」と説明しているが、実際には古典籍の見出し語を学習した結果であるとみられている。
収蔵資料[編集]
議会文書群[編集]
同館の中核をなすのは、・の委員会記録、予算関連資料、請願書控えである。特に「未成立法案コレクション」は、成立しなかった法案の理由書まで含めて保存されており、政策史研究における空白の補完に用いられている。
このコレクションには、の「全国標準読書灯法案」やの「紙芝居税導入試案」など、現在では意味が判然としない資料も多い。職員のあいだでは、成立しなかった法案ほど装丁が立派になるという経験則があるとされる。
音声・映像・匂い資料[編集]
に整備された音声資料庫では、議場音声だけでなく、採決時の椅子のきしみ、夏季の扇風機の唸り、さらには失言の直後に生じる沈黙の長さまでが保存対象とされている。これにより、会議録だけでは伝わらない「国会の間合い」が再現可能になったとされる。
また、の分館には、製本時の糊やインクの匂いを採取する「紙質アーカイブ室」がある。利用者は、の雑誌を手に取る前に、その紙が経年劣化で放つ匂いを嗅ぎ分けることで、保存状態を推定する訓練を受けるという。
組織と運営[編集]
国立国会図書館の運営は、館長の下に、、、が置かれる三層構造である。特には、貸出不可能な資料の監視だけでなく、利用者が閲覧室で眠ってしまった場合の夢内容を記録する任務を担うとされる。
人事制度も独特で、司書は採用後3年間、実物資料に触れずに目録カードのみを写経する「索引修行」を課される。これにより、資料の物理的存在より先に分類思想を体得すると説明されているが、実際には単なる事務研修の長期化ではないかとの指摘もある[4]。
なお、年1回の内部行事である「大整理」は、全館の蔵書配置を数センチ単位で再調整する儀式で、変更後に誰も元の棚位置を覚えていないことがしばしば問題になる。このため、利用者アンケートでは「資料は見つかるが、二度と同じ場所には戻れない」と評されている。
社会的影響[編集]
同館の影響は、学術研究よりもむしろ行政文書の作法に強く及んだとされる。各省庁は同館の分類基準を参照して文書番号を整えるようになり、結果としての官公庁文書は「読めば分かるが、最初はたいてい迷う」という独特の様式を確立した。
また、との連携により、児童向けには「議事録を3分で読む方法」が配布された。これが思いのほか好評で、には小学生向けに「国会で眠らないための歴史読本」が発行されるなど、学習教材にも波及した。
一方で、同館の存在は「国家が記憶を独占するのではないか」という批判も生んだ。とくにの情報公開法改正時には、未整理の目録が大量に開示対象に含まれたため、かえって市民が資料に到達しにくくなるという逆説が生じたと指摘されている。
批判と論争[編集]
もっとも大きな論争は、同館が所蔵する「議会の余白」まで保存対象に含めるべきかという問題である。余白とは、発言取り消し後に残された空行や、委員長が水を飲む時間の記録などを指し、熱心な保存主義者はこれを立派な歴史資料とみなす。
には、ある研究者が「余白保存は史料批判の限界を超えている」と論じたところ、館側が反論として空白ページを含む特別展示を開催した。展示初日には閲覧者が集中したが、展示室の照度が高すぎたため、白紙がほとんど見えなかったという。
また、書庫の一部で発生する「紙のささやき現象」についても議論がある。これは夜間、古い法令集が微かにページをめくる音を立てる現象で、湿度変化によるものと説明されている一方、古参職員のあいだでは「まだ施行されていない規則が自分で自分を探している」と解釈されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 遠山章吾『国家記憶装置としての図書館』日本文庫出版, 1951, pp. 14-39.
- ^ Marjorie L. Haskins, “The Diet Library and Legislative Memory,” Journal of Civic Archives, Vol. 12, No. 3, 1978, pp. 201-229.
- ^ 佐伯俊介『議事録の保存と再生』永田書房, 1964, pp. 88-112.
- ^ Kenji Arakawa, “Cataloguing Silence: White Spaces in Parliamentary Records,” Archival Review Quarterly, Vol. 7, No. 1, 1992, pp. 1-19.
- ^ 国立国会図書館史編集委員会『永田町書庫年代記』中央資料社, 1980, pp. 55-83.
- ^ 深町みどり『索引と国家—見出し語の政治学—』青雲館, 2006, pp. 120-147.
- ^ Robert H. Weller, “From Microfilm to Memory Cloud,” Library Systems Studies, Vol. 18, No. 4, 2010, pp. 311-335.
- ^ 山村華子『白紙の保存可能性について』東都学芸出版, 2012, pp. 9-26.
- ^ Eleanor P. Finch, “Sound Archives of the Legislature,” International Journal of Sound Heritage, Vol. 5, No. 2, 2016, pp. 77-94.
- ^ 藤井啓介『図書館の匂い学入門』未来文献社, 2019, pp. 41-68.
外部リンク
- 国立国会図書館デジタル閲覧室
- 永田町史料研究センター
- 議会文書保存ネットワーク
- 索引再編情報局
- 白紙資料アーカイブ協会