天祥院英智尊い
| タイトル | 天祥院英智尊い |
|---|---|
| 画像 | TenshouinEichiTouToi_cover.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北都版パッケージに描かれた天祥院英智 |
| ジャンル | コンピュータRPG |
| 対応機種 | P-Station V、Luna Gear、NEO-Arcade |
| 開発元 | ルミナス・コアゲームズ |
| 発売元 | 東雲ソフトウェア |
| プロデューサー | 松原 恒一 |
| ディレクター | 伊佐木 澪 |
| デザイナー | 九条 玲央 |
| プログラマー | 青柳 真帆 |
| 音楽 | 篠宮 カナタ |
| シリーズ | セレスティア・クロニクル |
| 発売日 | 2017年11月15日 |
| 対象年齢 | C-15 |
| 売上本数 | 全世界累計312万本 |
| その他 | 対戦モード・協力プレイ・オンライン対応 |
『天祥院英智尊い』(てんしょういんえいちとうとい、英: Tenshouin Eichi TOUTOI)は、にのから発売された用。『』の第2作目にあたり、通称は「とうといRPG」とされる[1]。
概要[編集]
『天祥院英智尊い』は、を拠点とするが制作したである。プレイヤーはに似た外見の“尊威体”を操作し、各地に散った「推尊核」を集めて王都の静寂を回復することを目的とする。
本作は当初、社内で「感情過多型アドベンチャー」と呼ばれていたが、開発末期に向けの戦闘テンポに合わせて路線変更され、結果として“言葉を唱えると状態異常が発生する”独特の戦闘系RPGへ変化した。発売後は、SNS上での「尊い」文化の拡散と重なったことから、思わぬミリオン級の話題作となった[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、会話コマンドがそのまま魔法詠唱に変換される点が挙げられる。たとえば「無理をしないでほしい」を選択すると回復効果、「今日も美しい」を選ぶと全体会心率が上昇するなど、プレイヤーの感情入力が数値化される仕様である。
また、戦闘中に「尊度ゲージ」が蓄積すると、フィールド全体に白い粒子が発生し、敵味方を問わず一時的に行動順が遅延する。攻略掲示板ではこの現象を「天祥院フリーズ」と呼ぶ者もいたが、公式はあくまで“演出上の余白”であるとしていた[3]。
戦闘[編集]
戦闘はとしては比較的速いリアルタイム進行を採用しているが、一定以上の“尊い”判定が発生すると風の“護光フェイズ”に移行する。このフェイズでは、敵が放つ雑念弾を回避しつつ、主役の台詞を守り切る必要がある。
一方で、ボス戦の半数以上は物理攻撃よりも精神的な揺さぶりが重要であり、ラスボス「灰哭の監察官」はHPを削るより先に“沈黙値”をゼロにすることが推奨される。要出典とされるが、発売当時の攻略本でも「心が折れた方が負ける」と記載されていた。
アイテム[編集]
アイテムには「冷却ゼリー」「肯定の栞」「白磁のティーカップ」などがあり、いずれも通常の回復アイテムではなく、キャラクターの気圧を整える用途に使われる。なかでも「七分袖の手袋」は、装備すると会話分岐が2段階ほど上品になるため、上級者ほど重用したとされる。
なお、限定版に付属した「尊さのしおり」は実物の紙製で、角度によって台詞が変わる加工が施されていた。これはの特殊印刷工房で試作されたが、湿度で文字が3回ほど消えたため、初回盤のみの採用に終わった。
対戦モード[編集]
本作には2人用の対戦モードが存在し、短時間で“尊威”を競うことができる。勝敗はHPではなく、会場の観客表示がどれだけ黄色く点灯したかで判定される独自方式である。
対戦モードは発売直後にへ拡張され、北米版では「Tension Arena」として配信された。なお、家庭用通信規格の限界から、同時観戦者が1,024人を超えると一部の台詞が自動で要約される不具合があった。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、いわゆる“ひとり尊い”を追求する設計となっている。AIキャラクターが部屋の照明や天候を学習し、夜間になると自発的にBGMをピアノ寄りへ切り替えることがある。
この機能は本来デバッグ用の簡易演出だったが、プレイヤーから「家族に見られても恥ずかしくない」と好評で、後年の版でも継承された。
ストーリー[編集]
物語は、星暦暦781年のを舞台としている。王都の中央に建つ「英智塔」が突如として沈黙し、人々が“言葉の温度”を失う事件が発生する。主人公は、禁忌の台詞を封印できる唯一の継承者として、塔の頂を目指すことになる。
中盤では、天祥院英智が実は“王の記憶を保管する器”であったことが明かされるが、この設定は開発会議で2度却下されたのち、3回目の会議で「せっかくなので全部入れよう」という判断により採用されたという。
終盤、主人公は“尊い”という感情が単なる賞賛ではなく、文明を動かす燃料であることを知る。最終決戦では、プレイヤーの選択によって英智が祝福を受けて昇華する結末と、逆に語りすぎて伝承化する結末に分岐し、後者は一部ファンの間で「資料館エンド」と呼ばれている。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は固定名ではなく、初期設定で「礼節の継承者」として登録されている。外見は細身だが、装備次第で騎士・研究者・司書の3系統に変化する。なお、ゲーム開始時に必ず紅茶を飲む演出が入り、ここでボタンを押し損ねると最初の同行者の好感度が0.7下がる。
仲間[編集]
仲間には、記録係の、護衛役の、通信士のがいる。なかでもルカは語尾に「〜である」を付ける癖があり、台詞ログが長文化する原因として発売後に話題となった。
また、条件を満たすと“夜更けの図書室”で本人と一時同行できるが、彼は仲間というより「会話によって戦況を整える天気予報」のような存在として扱われる。
敵[編集]
敵対勢力は、沈黙を神聖視する「灰翼局」と、感情の過剰表現を禁止する「静詞評議会」である。両者は互いに対立しているようでいて、実は同じ財団の資金で運営されていたことが終盤に判明する。
ボス敵の中でも「無音の司祭バルド」は人気が高く、全国の中古ソフト店で彼の初登場シーンだけが擦り切れていたという話がある。
用語・世界観[編集]
作中では、「尊さ」は感情ではなく、都市の発電や防災警報に転用できる“文明資源”として扱われる。特にでは、毎朝7時に「尊度計測」が行われ、一定値を下回るとパン屋の看板が青く点滅する。
世界観設定の中心にあるのは、“言葉が重いほど世界が安定する”という理屈である。この理論は作中学者によって体系化されたとされるが、実際には開発スタッフが会議で使っていたメモ書きがそのまま設定化したものだという。
なお、「推尊核」は世界に13個存在するとされるが、実際のゲーム内では14個集めると隠し会話が解禁される。これは発売後のパッチ1.03でこっそり追加されたため、マニュアルとの齟齬が生じた。
開発[編集]
制作経緯[編集]
本作は、春にルミナス・コアゲームズが行った社内提案会で生まれた。当初は学園恋愛SLGとして企画されたが、プロデューサーのが「これは愛ではなく崇敬である」と発言したことを契機に、RPG化が決定されたという。
制作中期には、台詞量が多すぎて音声収録が追いつかず、録音ブースの前にコーヒーと毛布が常備された。特にディレクターが「沈黙も演出だ」と主張して一部のイベントを無音化したことで、結果として高評価につながったとされている。
スタッフ[編集]
スタッフ構成は、企画8名、シナリオ5名、UI設計4名、ティーセット監修2名という極端に偏った編成であった。デザイナーのは衣装案を89案提出し、そのうち実装されたのは3案だけである。
また、プログラマーのが“尊度ゲージ”の演算式を整数ではなく有理数で組んだため、最終盤に小数点以下の感情が残るバグが報告された。これは意図された仕様として押し切られたが、後年のインタビューでは「誰も直し方が分からなかった」と述べている。
音楽[編集]
音楽はが担当した。サウンドトラックは室内楽寄りの編成で、チェンバロ、ピアノ、わずかな環境音が多用されている。戦闘曲「Sublime Interval」は、発売から2週間で各地のゲームショップ店内BGMとして非公式採用された。
また、通常版に収録されていない「深夜三時の回廊」は、限定盤CDのみに収録されたボーナストラックである。再生すると蝋燭の火がやや揺れるように聞こえるとされ、ファンの間では“耳で読む曲”として知られた[4]。
他機種版[編集]
2019年には版が発売され、携帯モードに合わせて会話の文字サイズが0.6段階拡大された。さらに2021年には版が稼働開始し、筐体の天面に実物大の「尊い」マーカーが設置された。
北米向けには『Tenshion of Eichi』名義でローカライズされたが、現地法人の判断で一部の敬語が省略され、シリーズファンからは「語尾の気品が1割足りない」と指摘された。なお、相当の配信計画も存在したが、感情演出の再現が難しいとして中止された。
評価[編集]
発売初週で42万本を販売し、最終的には312万本を突破したとされる。特に相当の「年度感情賞」を受賞したことで注目を集め、同年の年末商戦では“静かな爆発”とまで評された。
一方で、売上の伸びは口コミに大きく依存していたため、公式発表の数字をめぐっては一部で異論もある。もっとも、街頭調査では「プレイしたことはないが、タイトルだけ知っている」という回答が23.4%に達しており、知名度だけで言えば異例の浸透を示した[5]。
関連作品[編集]
派生作品として、前日譚にあたる『天祥院英智尊い -Prelude-』、完全版の『天祥院英智尊い EXA』、携帯向け外伝『尊いとき、英智は静かに笑う』が制作された。いずれも本編ほどの話題は得ていないが、コアファンの間では“静かな正史”として扱われる。
また、テレビアニメ化された『英智さまの午後』は、登場人物の大半がソファに座ったまま会話するだけの内容であったが、放送後に紅茶需要を7%押し上げたとして業界紙に取り上げられた。
関連商品[編集]
攻略本としては『天祥院英智尊い 完全尊度解析書』がから刊行された。各章末に“気まずい会話を避けるための1行メモ”が付属し、実用書としても珍重された。
また、『セレスティア王国 貴族装束資料集』、『沈黙の園芸学』、『紅茶と警備の民俗誌』など、関連書籍の方向性はやや散漫である。特に『沈黙の園芸学』は、本作の庭園背景に触発されて執筆されたとされるが、内容の3割が苔の育成法で占められている。
脚注[編集]
1. 公式発売告知にはP-Station V版のみが記載されていたが、初回限定チラシではLuna Gear対応が先行示唆されていた。 2. 2017年末の広告代理店報告書『感情語彙市場動向調査』によれば、「尊い」は若年層の検索語上位に入ったとされる。 3. ただし、尊度ゲージの数値仕様については開発者インタビューごとに説明が異なる。 4. 収録曲名の英訳は海外版ブックレットと配信版で異なる。 5. 調査母数は全国4都市、計1,284人である。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
東雲出版編集部『天祥院英智尊い 完全尊度解析書』東雲出版, 2018.
松原 恒一『感情を数値化するゲームデザイン』群青市文化社, 2019.
伊佐木 澪『沈黙はUIである』ルミナス叢書, 2020.
Shionomiya, Kanata. “A Chamber Music Approach to Tactical RPGs.” Journal of Fictional Interactive Studies, Vol. 12, No. 3, 2021, pp. 44-61.
Werner, Alexis. “Semantic Load and Civil Stability in Celestia Kingdoms.” The Review of Imaginary Systems, Vol. 7, No. 2, 2018, pp. 101-129.
九条 玲央『衣装案89本から3本へ』デザイン年報, 第4巻第1号, 2020, pp. 8-19.
青柳 真帆『小数点以下の感情バグについて』プログラムと寓話, 第3巻第4号, 2021, pp. 77-83.
ルミナス・コアゲームズ広報室『発売後30日間の尊さ推移』社内資料, 2017.
Mitchell, H. “Localization and Politeness Loss in Modern JRPGs.” Game Translation Quarterly, Vol. 5, No. 1, 2022, pp. 12-30.
『紅茶と警備の民俗誌』特装版刊行委員会『紅茶と警備の民俗誌』東雲書房, 2023.
外部リンク[編集]
ルミナス・コアゲームズ 公式記録室
セレスティア・アーカイブ
英智塔保存協会
尊度研究会データベース
東雲出版 デジタル目録
脚注
- ^ 東雲出版編集部『天祥院英智尊い 完全尊度解析書』東雲出版, 2018.
- ^ 松原 恒一『感情を数値化するゲームデザイン』群青市文化社, 2019.
- ^ 伊佐木 澪『沈黙はUIである』ルミナス叢書, 2020.
- ^ Shionomiya, Kanata. “A Chamber Music Approach to Tactical RPGs.” Journal of Fictional Interactive Studies, Vol. 12, No. 3, 2021, pp. 44-61.
- ^ Werner, Alexis. “Semantic Load and Civil Stability in Celestia Kingdoms.” The Review of Imaginary Systems, Vol. 7, No. 2, 2018, pp. 101-129.
- ^ 九条 玲央『衣装案89本から3本へ』デザイン年報, 第4巻第1号, 2020, pp. 8-19.
- ^ 青柳 真帆『小数点以下の感情バグについて』プログラムと寓話, 第3巻第4号, 2021, pp. 77-83.
- ^ ルミナス・コアゲームズ広報室『発売後30日間の尊さ推移』社内資料, 2017.
- ^ Mitchell, H. “Localization and Politeness Loss in Modern JRPGs.” Game Translation Quarterly, Vol. 5, No. 1, 2022, pp. 12-30.
- ^ 『紅茶と警備の民俗誌』特装版刊行委員会『紅茶と警備の民俗誌』東雲書房, 2023.
外部リンク
- ルミナス・コアゲームズ 公式記録室
- セレスティア・アーカイブ
- 英智塔保存協会
- 尊度研究会データベース
- 東雲出版 デジタル目録