太鼓の達人
| 開発元 | ナムコ太鼓研究所 |
|---|---|
| 初出 | 1931年(街頭試作) |
| 家庭用定式化 | 1978年 |
| 分類 | 打楽器模擬型反射訓練装置 |
| 主要使用道具 | バチ、樽型筐体、譜面板 |
| 代表的普及地域 | 東京都、千葉県、愛知県 |
| 競技人口 | 2019年時点で約68万人 |
| 公式記録曲数 | 1,240曲以上 |
| 通称 | ドンカツ |
太鼓の達人(たいこのたつじん、英: Taiko Master)は、の演奏技法を模したであり、画面上の譜面に合わせてを打ち込むことで得点を競う娯楽として知られている[1]。起源は末のにおける「街頭鼓信号」研究に求められるとされ、のちに系の研究会で家庭用玩具として体系化されたという説が有力である[2]。
概要[編集]
は、打点の強弱と連打の持続時間を判定することで、演奏者のとを可視化する装置である。一般にはとして普及したが、もともとは外郭の「地域騒音抑止実験」に由来する静音訓練器であったとする資料が残る[3]。
同作は、太鼓を叩くという単純な行為に、の符号、の装飾、そして異様に精密な判定線を組み合わせた点で画期的であった。また、譜面の難度が上がるにつれて演奏がほぼに近づくことから、地方の郷土芸能保存会と電子遊戯愛好家の双方から注目された。なお、1994年の試験運用時には、筐体の太鼓皮に産の合成繊維が用いられたという[要出典]。
歴史[編集]
前史[編集]
前史は初期、の見世物小屋において行われた「拍子当て盤」にさかのぼるとされる。これは、太鼓型の木枠を叩いて景気を占うもので、観客が予測した拍と実際の拍が一致するとが1粒配られたという。後年、の技師であったがこの装置を視察し、拍を機械化すれば子どもが列を作ると見抜いたのが発端である。
には、で開催された「国産楽器振興展」において、樽を半割りにした試作機が公開された。これは本体が重すぎて移動にを要し、しかも打面の反発が強すぎて1日での竹バチが折れたが、来場者の反応は上々であったとされている。
家庭用への転換[編集]
後半、ナムコ太鼓研究所のとは、演奏経験のない家庭でも「叩いている感」を得られるよう、譜面を円環状に巻く方式を採用した。これにより、横から見た場合に通常の楽器よりも「未来の法具」に近い印象が生まれたという。
の社内発表では、当初バチの代わりにを用いる案が検討されたが、子どもが本体を分解する事故が相次いだため不採用となった。代わりに、先端だけ赤く塗った軽量バチが採用され、以後「ドン」と「カツ」の二音を基礎とする判定体系が整えられた。
アーケード普及期[編集]
初頭、との繁華街に設置された大型筐体が、若年層の待ち合わせ場所として機能し始めたことで社会現象化した。特に平日の夕方には、制服姿の中高生がの速度を競い、終電前には会社員がを名目に参加するという独特の利用形態が生まれた。
この時期、側は譜面の難度を「鬼」「極」「神話級」の3段階に分ける案を提出したが、最終的には運営判断で「ふつう」「むずかしい」「おに」に収束したとされる。なお、2003年の全国大会では、優勝者が本番前にを2杯食べていたことから、以後一部の選手間で炭水化物摂取が重視されるようになった。
ゲームシステム[編集]
本作の判定は、打面の中心を叩く、縁を叩く、そして連続入力の持続を評価するを軸としている。判定窓は非常に狭く、研究者の間では「1フレームの迷いが1年の後悔に相当する」とまで言われた。
また、楽曲中に現れるは、演奏者の心拍に応じて表示速度が変化するという噂があったが、実際には筐体内部のが誤作動していた可能性が指摘されている。これにより、真夏のゲームセンターでは難度が自然に上がるという現象が発生し、常連客のあいだで「冷房の効いた店が正義」とされた。
さらに、スコア表示の末尾に現れるランクは、単なる称号ではなく、かつての職人制度を模した社会的肩書きであるとされる。達人認定を受けた者は、地域の夏祭りで太鼓の位置を決める権利を得るという都市伝説まで存在した。
社会的影響[編集]
は、子ども向け娯楽でありながら、地域のと電子遊戯文化を接続した稀有な存在であった。各地の自治体では、廃校となった体育館に筐体を設置し、地元の保存活動に活用する試みが行われたとされる。
一方で、2008年頃からは「太鼓を叩く音が近隣のに響きすぎる」として、深夜帯の設置を巡る苦情が増加した。これに対して運営側は、打面内部に吸音材を3層仕込み、さらに演奏音をの鳴き声に変換する静音モードを導入したが、逆に「風情がなさすぎる」と批判された。
国際的には、の研究者がこの方式を「指先による儀礼化された反復行為」と評価し、では一時期、美術館の教育プログラムに採用された。なお、2016年の展示では、誤っての案内板の横に置かれたため、来館者の一部が古代楽器の復元品と勘違いしたという。
派生作品と周辺文化[編集]
筐体の地方化[編集]
地方ごとに筐体デザインが異なり、版ではシーサー風の耳当てが付属し、版では雪害対策として打面がわずかに発熱する仕様が試みられた。とくにの一部店舗では、味噌煮込みうどんの鍋蓋を模した特別台座が用いられ、熱気がこもりすぎて故障率が上がったという。
このような地域適応は、単なる装飾ではなく「その土地の太鼓を借りる」思想に基づくとされる。編集者の間では、これをの代表例として扱うべきだという意見もある。
競技化と大会文化[編集]
2010年代以降、民間大会では「目押し」「肩慣らし」「バチ回し」の3種目で総合評価する方式が定着した。特にの倉庫街で開催された非公式大会では、参加者が全員同じを着用し、審査員が曲終了後に無言でうなずくだけという厳格な作法が有名であった。
また、上位勢のあいだでは、譜面暗記よりも「開始5秒で呼吸を整える能力」が重要とされ、心理学の分野では「太鼓型フロー状態」として研究された。もっとも、これが実証研究であるかは定かでない。
批判と論争[編集]
本作は高い完成度で称賛される一方、打撃音の快楽性が強すぎるため、利用者がで2時間滞在してしまうという依存性が問題視された。2007年には、の外郭委員会が「学校帰りの集中力低下に関する調査」を行ったが、報告書の大半が演奏の上達記録で埋め尽くされ、結論が曖昧になった。
また、難度表記についても論争があり、「おに」より上の表現を求める声に対して、開発側が「それ以上は太鼓ではなく修行である」と回答したと伝えられている。さらに、ある時期に導入された連打判定の微修正が「左利き差別ではないか」と疑われたが、最終的には筐体内の配線ミスだったことが判明した。
なお、2014年頃からは海外版の翻訳においての語が「Master」ではなく「Expert」とされる版が存在し、これが「達人とは誰か」をめぐる哲学的論争に発展した。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 黒川重蔵『街頭鼓信号の研究』東京音響工業会報告, 1932.
- ^ 竹田一夫・Margaret A. Thornton「円環譜面方式の試作」『遊戯機械学紀要』Vol. 8, No. 2, pp. 14-29, 1979.
- ^ 佐伯悠介『樽型筐体の民俗的転用』青弓社, 1998.
- ^ Harrington, P. & Sato, M. “Rhythmic Reflex and Public Arcade Behavior” Journal of East Asian Ludology, Vol. 12, No. 4, pp. 201-223, 2004.
- ^ 渡辺精一郎「都市太鼓文化の再編と商店街」『社会遊戯評論』第21巻第1号, pp. 55-73, 2008.
- ^ 山岡莉子『太鼓とスコアのあいだ』岩波書店, 2011.
- ^ Lefebvre, Claude. “The Master Debate in Percussive Screen Games” Revue Française des Médias, Vol. 5, No. 1, pp. 3-18, 2016.
- ^ 高橋真琴「静音モード導入の経緯とその誤算」『機械娯楽史研究』第14巻第3号, pp. 88-101, 2017.
- ^ Nakamura, J. “On the Seasonal Heat Bonus in Arcade Percussion Units” International Journal of Toy Engineering, Vol. 9, No. 2, pp. 77-90, 2019.
- ^ 『太鼓の達人大全 公式ではないが妙に詳しい本』遊戯文化出版, 2020.
- ^ 村上冬樹『バチ回し入門――家庭でできる達人訓練』北辰館, 2022.
外部リンク
- ナムコ太鼓研究所アーカイブ
- 日本民俗工学会
- 全国太鼓譜面保存協会
- 街頭鼓信号資料室
- ドンカツ競技連盟