実はそれ、あるあるです
| 分類 | 日本語の共感表現 |
|---|---|
| 成立 | 2004年ごろ |
| 発祥地 | 東京都千代田区 |
| 提唱者 | 相沢俊介ら編集者集団 |
| 用途 | 会話の軌道修正、同調の演出 |
| 関連現象 | あるある文化、共感疲労、話題の再同質化 |
| 派生語 | それ、です。/ あるある圧 |
| 流行期 | 2010年代前半 |
実はそれ、あるあるですは、日常の些細な不一致や認識のズレを「既知の共有事象」として再分類するために用いられる日本の準民俗表現である。もともとはの編集者集団がに考案した「共感圧縮句」とされ、のちに上で急速に普及した[1]。
概要[編集]
「実はそれ、あるあるです」は、相手の発言に対し、いったん否定や驚きを受け止めたうえで、それを「すでに共有済みの現象」であると再定義する言い回しである。会話における衝突回避と、同時に場の優位を確保する二重機能を持つとされる[2]。
この表現は、単なる若者言葉ではなく、、、深夜ラジオの投稿文化が交差する地点で形成されたと考えられている。特にからにかけてのカフェチェーンで配布された定型スタンプカードが、現代的な用法の原型になったとの指摘がある[3]。
成立史[編集]
編集者たちの会議室から[編集]
通説では、秋、の小規模出版社「相互句報社」編集部で、校正中の原稿に「それ、よくある誤読ですね」と書き込む代わりに、より柔らかい表現として発案されたとされる。発案者は当時28歳の相沢俊介と、その後ろで缶コーヒーを持っていた内田真理子であったという[4]。
当初は「実はそれ、あるあるだね」「いや、実はそれ、あるあるです」など複数の変種があり、社内では敬体と常体の揺れが激しかった。特に営業部では、取引先に対する謝罪文の末尾へ誤って挿入される事例が年間43件確認され、軽い炎上を招いたことがある。
番組投稿文化への侵入[編集]
ごろになると、この表現は系の深夜番組の投稿欄で急速に定着したとされる。リスナーが自分の失敗談を送る際、最後に「実はそれ、あるあるです」と添えることで、失敗を個人の恥から共同体の笑いへ転換できるからである。
なお、の非公開メモを引用したとするウェブ記事では、同表現の使用回数がの1年間で推定2万4,000回に達したとされるが、算定方法は「投稿メールの件名を手計算した」ものだったという。要出典。
SNS時代の標準化[編集]
に入ると、短文で文脈を反転させる性質がと非常に相性が良く、定型化が進んだ。とりわけ「〜って思うじゃないですか。実はそれ、あるあるです。」という二段構成がテンプレート化し、企業アカウントまで模倣した。
にはのデジタル広報会社が、この文言を用いた投稿で前月比1,300%の反応率を記録したと発表したが、実際には社内の試験アカウントによる自己いいねが大半であったとされる。
用法と分類[編集]
同調型[編集]
同調型は、相手の発言に「自分もそうだ」と寄り添う機能を持つ。たとえば「寝ようと思った瞬間に通知が来る」という発話に対し、「実はそれ、あるあるです」と返すことで、会話は即座に集団的共感の回路へ移行する。
この型はの混雑時や内で特に強い効果を持つとされ、会話の打ち切り率を17%低下させる一方、意味の精度も同程度低下させる。
逆転型[編集]
逆転型では、驚きや例外だと思われていた事象を「よくあるもの」にひっくり返す。たとえば「新人が一番忙しい」という職場の観測に対し、「実はそれ、あるあるです」と述べると、現場知が社会規範のようにふるまい始める。
の社会言語学研究室がに行った模擬対話実験では、逆転型を使った被験者のほうが議論の主導権を握りやすかったが、会話終了後の満足度はむしろ低かったという。
皮肉型[編集]
皮肉型は、共感を装いながら相手の経験を過剰に一般化する用法である。表面的には同意であるが、実際には「それは君だけではない」と突き放す含意を持つことがある。
の文芸サークルでは、この用法を「やさしい拒絶」と呼び、会議で3回連続で使うと議事録係が黙り込む現象が報告された。
社会的影響[編集]
この表現の普及により、日本語会話では「個別の不幸を共同体の共通経験に編み直す」傾向が強まったとされる。結果として、接客、育児、通勤、推し活など多様な領域で「あるある」が細分化され、時点で民間調査会社は全国に少なくとも1,480種類の「業界別あるある」を確認したと発表した。
一方で、批判も多い。特にでは、児童生徒が実体験を語った直後にこの表現を使うことで、問題の深刻さが薄まるとの懸念がある。また、企業研修では「共感の押し売り」として忌避されることもある。ただし、研修講師の半数以上が休憩時間に同じ言い回しを多用していたという調査もあり、評価は定まっていない。
批判と論争[編集]
には、の言語倫理研究会が「実はそれ、あるあるです」を、会話の主導権を奪うためのソフトなマウンティング表現であると指摘した。これに対し擁護派は、むしろ緊張の高い場面で衝突を回避する「緩衝材」として機能していると反論した。
また、語尾の「です」が強い丁寧さを帯びるため、親密な場ではやや過剰にフォーマルであるという批判もある。そのため若年層の一部では「実はそれ、あるある」と語尾を落とす省略形が好まれ、さらに乱暴な「それ、あるある」が普及した。なお、最短形の「あるあるです」は、意味がほぼ脱臭されるため、最も危険な完成形とされる。
派生表現[編集]
派生表現としては、「実はそれ、全国区です」「それ、局地的あるあるです」「あるあるの中のあるあるです」などがある。なかでもごろから流行した「実はそれ、企業研修では禁止です」は、自己批判を装った自虐表現として使われることが多い。
のローカル番組で紹介された「それ、うちの県では常識です」は、地域アイデンティティの誇張として人気を博したが、実際に常識であったかは一度も確認されていない。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 相沢俊介『共感圧縮句の誕生』相互句報社, 2008.
- ^ 内田真理子『投稿文化と定型句の循環』日本言語社会学会誌 Vol.12, 第3号, pp. 41-58, 2011.
- ^ Takashi Morita, "Compressed Empathy Phrases in Urban Japanese", Journal of Contemporary Pragmatics Vol.8, No.2, pp. 113-129, 2014.
- ^ 渡辺栄一『深夜ラジオ投稿の文体変化』ひつじ書房, 2012.
- ^ M. A. Thornton, "Soft Refusal and Performative Agreement in Japanese Social Media", Kyoto Linguistic Review Vol.5, No.1, pp. 7-26, 2016.
- ^ 佐伯みどり『共感の押し売りとその回避』青弓社, 2019.
- ^ 『現代口語における相槌の変容』国立国語研究所報告書 第47巻第2号, pp. 88-104, 2017.
- ^ 橋爪一郎『あるある句の地域差』東京言語文化出版, 2020.
- ^ Patricia K. Elden, "When Agreement Becomes a Meme", Media Anthropology Quarterly Vol.19, No.4, pp. 201-219, 2021.
- ^ 相沢俊介・内田真理子『実はそれ、あるあるです完全史』相互句報社, 2023.
外部リンク
- 日本共感表現学会
- 相互句報社アーカイブ
- 都市会話ミーム研究所
- 深夜投稿文体データベース
- あるある文化資料館