新世紀石久保ゲリヲン
| タイトル | 新世紀石久保ゲリヲン |
|---|---|
| ジャンル | SFギャグ×バトル寄り学園奇譚 |
| 作者 | 石久保ハルオ |
| 出版社 | 株式会社うねり出版 |
| 掲載誌 | 月刊トイレッジ・フロンティア |
| レーベル | うねりコミックスNEO |
| 連載期間 | - |
| 巻数 | 全28巻 |
| 話数 | 全261話(番外編含まず) |
『新世紀石久保ゲリヲン』(しんせいき いしくぼ げりをん)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『新世紀石久保ゲリヲン』は、が描くを基調に、排泄(げり)をめぐる“超常現象”が学園の秩序を揺さぶる物語である。とりわけ、主人公が「大事な決め台詞は便器に向かって唱える」と信じる作法が話題として伝わり、連載当初から読者の間で疑似宗教のように語られた。
本作は、近未来都市のインフラ管理AIが暴走した結果、と呼ばれる規格が突然一般公開されるところから始まるとされる[1]。以後、笑いの形で社会の“正常”が解体され、再組み立てされていく過程が、風のテンポで描かれた。
制作背景[編集]
作者のは、本作の着想を「家庭用水洗の音が、ある日だけ“未来語”に聞こえた」体験に求めている。取材メモでは、便器のフタを閉めたときに聞こえる共鳴が「平均周波数 148.2Hz」であったという記述が残っているとされるが、編集部側は「実測ではなく比喩」と説明した[2]。
また、当時の編集部が推進していた企画は、創刊10周年の“排泄×テクノロジー特集”であった。企画担当はの若手編集者・であり、彼女は「下ネタではなく、下水の“設計思想”を笑いにする」と方針を掲げた[3]。
作中に登場するキーワード「ゲリヲン」は、実在する材料科学の略語に似せて命名されたともされる。さらに、当該略語は当初、読者公募で“正しい読み”が割れたため、作者が「どのみち便は同じ方向へ落ちる」として現在の表記へ収束させたという経緯が語られる[4]。
あらすじ[編集]
第一部:新世紀・石久保学園編[編集]
(通称:ゲリ先輩)は、近未来の地方都市にある石久保学園の2年生として登場する。学園には“出席率AI”があり、欠席の理由を表情解析で判定するはずだったが、ある夜に誤作動し、朝の校門で「ゲリ認証が成立していません」という通知だけが表示されたとされる[5]。
ゲリ先輩は「便器へ向けて祈れば認証が通る」と主張し、学級委員のと、理科担当のを巻き込んで儀式めいた対策を始める。その結果、認証は通るようになるが、代わりに学校の給食が“反復定義”され、同じメニューが3回ずつ出る現象が起きた。
第二部:汎用排泄適応制御(URD)編[編集]
第二部では、インフラ管理AIが「排泄は生活データではなく公共言語である」と誤認したことで、が全住民に配布される。URDには“適応スコア”が表示され、スコアが低い人ほど、笑い声が大きく矯正されるという設定が採用された。
ゲリ先輩はURDの仕様書をめぐり、の会議室で“笑いを数値化する”議論を仕掛ける。ここで彼が提示したのが「下水管内の気泡密度は 0.33%増えると哲学が発動する」という主張であり、会議の議事録はなぜか公式サイトで公開された[6]。
第三部:ゲリヲン革命・便器通信編[編集]
終盤では、学園の地下に埋め込まれていた“便器通信装置”が起動し、便器の音が周波数によって暗号化されることが明らかになる。暗号の鍵は「一番静かな夜に、半歩だけ前へ出る」といった身体動作に紐づけられ、読者は第23巻発売直後から自主的に実践したという[7]。
最終的にゲリ先輩は、URDの誤作動を“正しい笑い”へ変換することで街のインフラを正常化する。ただし、その代償として栃倉市の住民は全員、夢の中だけで同じ決め台詞を言い続ける副作用が残ったとされる。
登場人物[編集]
は主人公であり、場の空気を便器の“反響”として読む能力を持つと描写される。彼は真面目なのかふざけているのか判別がつきにくく、作中で“笑いの責任者”として指名されることがある。
は学級委員で、URDの数値に対して過剰に誠実な態度を取る。彼女の誠実さはしばしば裏目に出る一方で、最終局面では「データは嘘をつくが、口癖はつかない」としてゲリ先輩の行動を支える。
は理科担当で、作中では身元不明の学会連絡員でもあるとされる。研究費の内訳が“レトルト米 18袋、音響ケーブル 27m、会議用ポップコーン 3箱”のように細かく記録され、編集者が後から「数字は雰囲気です」と注釈を入れた[8]。
用語・世界観[編集]
本作の世界は、のような生活インフラの“最適化”が、笑いを媒介に制度化されていることが特徴とされる。住民は適応スコアで行動を誘導され、結果として公共空間の“声のトーン”まで管理されると描かれた。
主要装置として、学園地下に眠るがある。これは便器のフタを閉じたときの微振動を利用し、周波数を暗号鍵に変換する仕組みであると説明される。なお、通信は暗号化されているため、解読には「最初の2秒は息を止める」など身体手順が必要とされ、視聴者・読者がこぞって試したことでSNSが荒れたとされる[9]。
さらに、街の下水はによって運用されているが、作中ではしばしば“局員が笑いで誤魔化す”ように描写される。一方で、下水局側の公式設定では「誤魔化しではなく、滞留時間の再解釈」とされ、矛盾を抱えたまま物語が進行する構造が採用された。
書誌情報[編集]
本作はのレーベルにより単行本化された。連載はで継続され、単行本は通常2〜3か月ごとに刊行されたと記録されている。
累計発行部数は、メディアミックス開始直後の特集で累計発行部数 430万部を突破したと報じられた[10]。さらに、作中の“便器通信”に由来するゲーム企画が付録になった巻では、初週売上が前巻比 118.4%に達したともされる。ただし、公式は「計測方法が違う」として詳細を明かさなかった。
全28巻の構成は、第一部が12巻、第二部が10巻、第三部が6巻という配分であるとされる。なお、番外編として“URDの家庭用ガイド”が2冊同時刊行された時期があり、ここだけ表紙の色味が異なることでファンの間で話題になった[11]。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化はに発表され、制作はが担当したとされる。放送枠は深夜帯であり、公式の告知文では「笑いは音圧、音圧は社会」をテーマとして掲げた[12]。
テレビアニメは全24話構成で、原作の第一部を中心に編集された。特筆すべきは、作中の“便器通信”シーンに合わせて、視聴者が視聴環境で微細な音量調整を行うと演出が変わるという、当時としては異例の試みが行われた点である。この施策に対しては広告代理店側が「音が大きいほど当たる」と煽ったため、視聴者の反応が過熱したとも指摘される[13]。
その後、メディアミックスとしてドラマCD『URD採用試験・口癖検査』や、ゲーム『ゲリヲン・インフラチェイス』が展開された。さらに、連載中のタイミングで“便器通信の練習問題”が雑誌の後ろページに掲載され、学園編のファンが全国の図書館で同じ音楽を流すなどの行動につながったとされる[14]。
反響・評価[編集]
本作は社会現象となったとされる。特に、学校や職場で「適応スコア」を冗談で使う文化が広まり、たとえば遅刻した人が自虐として「URDが青くない」と言うような言い回しが流行した。
一方で、批判として「排泄を笑いにする方向が過剰である」との指摘が早期から存在した。編集部は「都市のインフラに関する寓話であり、個人の尊厳とは別物」と説明したが、抗議文がの編集窓口に計 1,732通届いたと報じられた[15]。なお、同時期に“音響ケーブル盗難事件”が起きたという噂があり、真偽は不明とされた。
評価面では、音の演出と社会風刺の結びつきが高く評価され、批評家のは本作を「笑いで制度の穴を覗かせる漫画」と評した。もっとも、どの穴を覗かせたのか読者によって解釈が割れやすく、レビュー欄の荒れ具合が作品の“もう一つの世界観”として語られることもあった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 石久保ハルオ『新世紀石久保ゲリヲン 設定資料集(上)』うねり出版, 2009.
- ^ 新井ユカリ『月刊トイレッジ・フロンティア創刊10周年企画の経緯』月刊文藝出版社, 2000.
- ^ 高柳シオン『排泄寓話と音響演出:漫画表現の新しい結び目』Vol.12第3巻第2号, 架空文化評論社, 2011.
- ^ 『URD配布制度の社会学的受容:地方都市ケーススタディ』伊藤メグミ, 第7巻第1号, 都市媒介研究会誌, 2012.
- ^ 蒼天サーカススタジオ『便器通信装置の擬似音声設計』アニメ音響技術研究会, pp.41-58, 2010.
- ^ 栃倉市下水局『下水インフラの住民対話記録(抜粋)』栃倉市公営資料局, 第19号, 2008.
- ^ 渡辺精一郎『SFギャグの歴史的系譜:近未来生活の滑稽化』Vol.4, pp.12-27, 星雲出版社, 2006.
- ^ Martina K. Rodes『Public Hygiene as Narrative: A Satirical Frequency Approach』Journal of Media Systems Vol.18 No.2, pp.77-93, 2013.
- ^ 石久保ハルオ『新世紀石久保ゲリヲン 便器通信練習問題集(誤読訂正版)』うねり出版, 2012.
- ^ 【書名微妙におかしい】“管路の哲学”研究会『音圧国家と市民生活』第1巻第4号, pp.3-9, 水理学人文社, 2005.
外部リンク
- うねり出版公式 うねりコミックスNEO
- 月刊トイレッジ・フロンティア 編集部アーカイブ
- 蒼天サーカススタジオ 音響演出の裏側
- 栃倉市下水局 広報ミュージアム
- URDファン交流掲示板(旧)