無彩異変
| タイトル | 無彩異変 |
|---|---|
| 画像 | MUSAIIHEN_boxart.jpg |
| 画像サイズ | 240px |
| caption | 北米版パッケージに採用された灰階調のデザイン |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | ドリフト32 |
| 開発元 | ラチス・クロウ社 企画第二室 |
| 発売元 | ラチス・クロウ社 |
| プロデューサー | 北見 恒一 |
| ディレクター | 篠原 ルイ |
| 音楽 | 天城 晶・片瀬 由梨 |
| シリーズ | 異変三部作 |
| 発売日 | 1998年11月27日 |
| 対象年齢 | 12歳以上推奨 |
| 売上本数 | 国内約42万本、全世界累計93万本 |
| その他 | 通称は『無彩』。キャッチコピーは「色が死んだら、音で撃て。」 |
『無彩異変』(むさいいへん、英: MUSAII-HEN、略称: MIH)は、にのから発売された用。後に「色を失った世界を音で修復する」作品として知られ、の第1作目である[1]。
概要[編集]
『無彩異変』は、を舞台としているである。プレイヤーは測色修復士の少年リトを操作し、失われた「彩値」を回収しながら都市機能の回復を目指す。
ゲームシステムの特徴として、通常の射撃に加えてと呼ばれる特殊操作が存在し、敵弾の色を消すことで弾道そのものを無効化できる点が挙げられる。発売当時は、画面が白黒に見えるほどの低彩度演出が話題となったが、実際にはブラウン管の設定を誤っただけの体験談も多いとされる[2]。
ゲーム内容[編集]
本作は一見すると風の進行を持つが、実態はステージ制のである。各面の最後には「彩断層」と呼ばれるボスが出現し、撃破後に都市の一部が徐々に発色を取り戻す。
また、アイテムは「朱」「藍」「蒼白」などの色名で管理され、同じ色を3つ連結して撃つと周囲の敵が半透明化する。なお、開発資料ではこの仕様を「落ちものパズルの誤植」として扱っていた節があるが、最終版でも修正されなかった。
ゲームシステム[編集]
戦闘[編集]
戦闘は自機の射撃と「無彩バースト」を軸に構成される。無彩バーストは画面上の色密度が一定以下になると使用可能で、敵の装甲を灰階調に変換して一定時間行動を鈍らせる。上級者はこれを利用して、敵の出現順を1フレーム単位でずらすことができたという。
アイテム[編集]
アイテムは彩色ランプ、修復鍵、音叉コインの3系統に大別される。とりわけ音叉コインは「拾うとBGMが半音上がる」という珍しい効果を持ち、全国のプレイヤーから問い合わせが相次いだため、後期ロットでは説明書に『仕様である』とだけ追記された。
対戦モード[編集]
対戦モードでは2人対戦が可能であり、相手の画面に偽の彩値を送り込んで誤認させる「色欺瞞」が重要であった。公式大会では、実力差よりもテレビの色温度設定が勝敗を左右したため、主催側が会場の全モニターを一括管理する事態となった。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、都市の地下配電網を順に復旧させるキャンペーンが遊べる。セーブデータはメモリカードではなく「保存札」と呼ばれる特殊チップに記録され、当時の子ども向け雑誌では『風水的にも安心』と紹介されていた。
ストーリー[編集]
物語は、全域から色が消失する「無彩異変」の発生から始まる。原因不明の霧が街を覆い、看板、標識、果ては信号機までが灰色化し、住民は感情の起伏を失っていく。
主人公のリトは、祖父の遺した測色機「コルディック・スコープ」を手に、異変の中心にあるを目指す。途中、歌で敵を沈静化させる少女サナ、退役した色彩監察官クロードなどと出会い、やがて「街から消えた色は、実は都市記憶そのものだった」という真相に迫る。
終盤では、塔の最上階で都市全体の配色を管理していた中枢装置「パレット母機」が暴走していたことが判明する。これを停止すると街は一時的に完全な白黒となるが、エンディングではプレイヤーの撃破数に応じて再着色の速度が変化するため、初回プレイで最も地味な結末を見る者が多かった。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
リトは、14歳の測色修復士である。無口だが照準精度だけは異様に高く、説明書では『色覚に過敏なわけではない』とわざわざ断られている。
仲間[編集]
サナは即席合唱隊の元指揮者で、戦闘中に短い旋律を口ずさむことで敵弾の軌道をずらす。クロードは元監察官で、ゲーム中では最も説明が長い人物として有名である。
敵[編集]
敵対勢力は「灰冠評議会」と呼ばれ、街の景観を均質化することを理想としていた。幹部の一人、ミルザ・ヴェインは巨大な絵筆のような武器を使うが、実際には塗料よりも通信妨害のほうが得意であった。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、色彩は「彩値」として数値管理され、都市の維持費や住民の気分に直結する資源として扱われる。彩値が低下すると、植物の葉脈から広告のネオンまでが同時に失われるという、現実にはありえないが妙に説得力のある設定である。
また、無彩異変の原因は「視覚情報の洪水に対する都市の反動」と説明されることが多い。資料集では、霧谷市はの湾岸再開発案をモデルにしたとされるが、地図上ではなぜかの一部行政区画と重なる箇所があり、要出典タグを付けたくなる編集が残っている[3]。
開発[編集]
制作経緯[編集]
企画はにラチス・クロウ社企画第二室の会議で立ち上げられた。もともとは教育向けの配色訓練ソフトだったが、会議室の照明故障により全員が灰色の画面を見ながら議論した結果、方針が一転して本作になったとされる。
スタッフ[編集]
ディレクターの篠原ルイは、当時26歳でありながら『色彩は敵である』という極端な持論を持っていた。プロデューサーの北見 恒一は実務型で、社内報では『予算を削っても色は削るな』とコメントしている。音楽担当の天城 晶は、配信用デモでわずか7秒の無音を「最も贅沢なBGM」と主張し、社内で議論を呼んだ。
音楽[編集]
音楽は、打楽器中心の硬質な曲調と、突然挿入される合唱パートで構成される。サウンドトラックは2枚組で発売され、Disc 2 の収録曲「無彩都市夜行」は、再生時間が4分12秒なのに無音が1分48秒あることで知られている。
また、店舗特典として配布された『白盤ミニCD』は、実際には音源が収録されておらず、盤面に印刷された波形だけでファンが盛り上がった珍品である。後年のインタビューでは、片瀬由梨が「発売前夜に録音機材が色調整用の電源とつながっていた」と証言しているが、真偽は定かでない。
他機種版[編集]
には版が発売され、画面の都合により色の代わりに記号で異変を表現した。結果として、原作よりも世界観が分かりやすいと評価され、逆輸入的に人気を得た。
その後、にはに移植され、協力プレイとオンライン対応が追加された。移植版ではボス戦がやや簡略化された一方、オフラインモードの会話量が1.7倍に増え、当時のレビューでは『戦うより読ませる』と評された。
評価[編集]
発売初週の販売本数は約8万4000本であったが、年末商戦で口コミが広まり、末までに国内累計31万本を超えた。全世界累計では93万本を突破したとされ、としては最大級のヒット作となった。
一方で、画面が暗すぎるとして一部小売店では返品が出たほか、保護者団体から「子どもが家の照明を消して遊ぶ」との指摘があった。もっとも、社内調査では実際に照明を消していたのはプレイヤーよりも兄姉であった割合が高いと報告されている[4]。
関連作品[編集]
続編として『無彩異変II:残響の輪郭』、外伝として『無彩異変 夕霧の書簡』が制作された。さらに、を前提にした企画『MUSAII-HEN the Motion Gray』も存在したが、色数を削りすぎたため企画書の段階で止まったとされる。
また、派生作品としてパズルゲーム『彩値ブロック』がを受賞したという噂が流れたが、実際には受賞会場の案内板が本作のロゴと似ていただけであった。
関連商品[編集]
攻略本『無彩異変 完全修復指南』は、ボスの弱点よりも街路樹の色の戻し方を詳述した珍しい構成で、付録の折り込み地図だけで32ページを費やしている。書籍版ノベライズ『霧谷市、まだ白い』は、ゲーム本編よりも登場人物の食事描写が多いことで知られる。
また、限定版には「灰色のしおり」「無音のポストカード」「彩値メーター風温湿度計」が同梱された。最後の一品は、実際にはただの湿度計であったが、説明書の図があまりに精密だったため、当時は高性能周辺機器として転売された。
脚注[編集]
1. ^ 発売日と機種は後年の再録パンフレットに基づく。 2. ^ 画面が白黒に見えた件については、当時のモニター設定を原因とする説もある。 3. ^ 地理設定の不整合は移植版マニュアルでも修正されなかった。 4. ^ 社内調査報告書『家庭用表示環境と暗所操作の相関』は非公開資料とされる。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北見 恒一『無彩異変 企画書総覧』ラチス・クロウ社社内資料, 1997.
- ^ 篠原 ルイ「灰色都市における色彩修復の設計」『ゲーム開発評論』第12巻第4号, pp. 44-61, 1999.
- ^ 天城 晶「無音と合唱の境界線」『サウンドデザイン研究』Vol. 8, No. 2, pp. 15-28, 2000.
- ^ 片瀬 由梨『白盤のための音楽論』ネオン文庫, 2002.
- ^ 中里 修「ドリフト32時代の表示設計と低彩度表現」『家庭用機研究』第5巻第1号, pp. 3-19, 2001.
- ^ M. Thornton, "Gray-Scale Anxiety and Urban Memory in MUSAII-HEN," Journal of Fictional Game Studies, Vol. 4, No. 1, pp. 77-93, 2007.
- ^ 田沼 由紀『彩値管理経済の成立』港北出版, 2004.
- ^ S. Keller, "The Nonexistent Soundtrack of MUSAII-HEN," Retro Interactive Review, Vol. 11, No. 3, pp. 201-219, 2012.
- ^ 渡辺 精一郎「霧谷市モデル再開発案の比較検討」『都市映像学会誌』第9巻第2号, pp. 88-104, 1998.
- ^ 『無彩異変 公式完全攻略白書』ラチス・クロウ社出版部, 1999.
- ^ 久世 まどか『無彩異変と灰色の夜明け』青磁書房, 2001.
外部リンク
- ラチス・クロウ社 公式アーカイブ
- 異変三部作資料館
- 霧谷市観測局デジタル年報
- 無彩異変ファン保存協会
- 彩値研究会ウェブ年鑑