爆乳ミーム
| 名称 | 爆乳ミーム |
|---|---|
| 別名 | 巨大化誇張表現、BKM、盛りミーム |
| 発祥 | 日本の匿名掲示板文化 |
| 成立時期 | 2006年頃 - 2012年頃 |
| 主な媒体 | 画像掲示板、動画コメント欄、SNS |
| 関連分野 | ネットロア、視覚文化、二次創作 |
| 代表的担い手 | 旧2ちゃんねる系職人、深夜テンション層 |
| 特徴 | 過剰な拡大、反復、比較図の多用 |
| 社会的影響 | 広告、同人文化、炎上語彙へ波及 |
爆乳ミーム(ばくにゅうミーム、英: Baku-nyu Meme)は、における視覚的誇張表現の一種で、主に後半の匿名掲示板と画像掲示板を中心に成立したとされる概念である。特定の身体表現を極端に増幅させることで、笑い・畏怖・二次創作欲求を同時に誘発する装置として知られている[1]。
概要[編集]
爆乳ミームは、の過剰な誇張を軸にしたであるが、単なる性的表現としてではなく、むしろ「大きさそのものを笑いに変換する編集技法」として理解されることが多い。初期の投稿では、人物写真に対して異様に巨大な補助線や影を加え、遠近法を破壊することで閲覧者の認知を揺さぶる手法が多用された[2]。
一般には、夏の・にある深夜営業のネットカフェ群で、掲示板住民による画像加工遊びから生じたとされる。もっとも、後年の検証では、すでにの画像交換ソフト「NyuPaint」系ログに類似表現が見つかっており、起源についてはなお議論がある。
成立の背景[編集]
爆乳ミームが成立した背景には、当時の文化と、低解像度画像に対する過剰な補正欲求があったとされる。特に周辺の同人ショップで流通していた「盛りすぎると情報量が増える」という半ば職人的な信念が、匿名掲示板に流入したことが大きいと考えられている。
また、前後に流行した「比較文化」も重要である。左右に並べてサイズ差を誇張するテンプレートが普及し、最終的には「通常」「増量」「特盛」「宇宙級」という四段階分類が自然発生した。なお、この分類は後にの学生サークルが発行した小冊子『視覚過剰の民俗誌』にも引用されている。
歴史[編集]
前史[編集]
前史としては、の文化に見られる「AA芸」や、における輪郭誇張の伝統が挙げられる。とりわけにのローカルイベントで配布された同人誌『増幅する輪郭』は、後の爆乳ミームの構図に極めて近いとされ、研究者の間でしばしば言及される。
一方で、当時の制作者の多くは自らを「ミーム作者」と名乗っておらず、単に「深夜に暇だった人」と認識していたようである。ここに、後世の分析と現場感覚のずれがある。
拡散期[編集]
からにかけては、風の字幕編集と結びつき、爆乳ミームは「拡大→揺れ→爆発」という三拍子の定型を獲得した。とくにの秋、名古屋市の投稿者・北条まなぶ(仮名)が発表した連作『3分でわかる盛り方の限界』は、24時間で閲覧数19万8,403回を記録したとされる[3]。
この時期には、画像のサイズだけでなく、登場人物の肩幅や背景の奥行きまで膨張させる「空間連動型盛り」が流行した。制作時間は1枚あたり平均47分だったというが、これは編集ソフトの起動時間を含むため、実作業としてはかなり短いと見られている。
制度化と反動[編集]
頃になると、爆乳ミームは単なるネット遊びを超え、広告業界のプレゼン資料やサブカル系イベントの装飾にも転用されるようになった。特にのクリエイティブ会社「合同会社パルスライン」は、店頭ポスターのキャッチコピーに「大きいことは、視認性である」と掲げ、社内的に“BKM原則”を採用したことで知られる。
しかし普及が進むにつれ、過度な誇張への反発も強まった。2014年にはの大学研究会が「視覚的過剰表現における倫理的限界」と題する公開討論を行い、巨大化そのものよりも、比較対象を無断使用する編集慣行が問題視された。もっとも、討論会の最後には参加者全員が記念撮影で少しだけ盛られた。
表現技法[編集]
爆乳ミームの技法は、大きく「輪郭補強」「重力無視」「対照誇張」の三系統に分けられる。輪郭補強は影とハイライトを人工的に増やす手法であり、重力無視は布地や髪の流れを上方向へ再配置する手法である。対照誇張は、周囲の人物や家具をあえて小さく描くことで、対象の巨大さを相対的に見せる方式である。
また、上級者の間では「遅れて認識される」ことが重要とされ、最初は普通に見え、二度見して初めて巨大さがわかる構図が好まれた。これを「遅効性インパクト」と呼ぶのは札幌市のフォーラム発祥とされるが、実際には誰が言い始めたのか記録が残っていない。
社会的影響[編集]
爆乳ミームは、単なる匿名文化にとどまらず、、、果てはの販促文言にも影響を与えたとされる。2016年にはの量販店が「圧倒的存在感」を売り文句にしたクッション広告を展開し、売上が前月比32%増となったという報告がある[4]。
また、用語としての「爆乳」は本来の文脈を離れ、サイズの極端な誇張全般を指す比喩としても使われるようになった。この変化は言語学的に「意味の脱身体化」と呼ばれ、の非公開メモにも関連記述があるとされるが、該当文書の所在は確認されていない。
批判と論争[編集]
爆乳ミームには、初期から「表現の自由を拡張する遊び」とする擁護と、「他者の身体をテンプレート化する危うさ」があるという批判が並存してきた。特にの移行期には、文脈を欠いた切り抜き画像が独り歩きし、元ネタを知らない利用者の間で誤解が広がった。
一方で、支持者は「誇張とは観察の延長である」と主張し、・の小劇場で上演された朗読劇『増えすぎた輪郭』では、巨大化した記号が社会の不安を可視化する装置として扱われた。もっとも、観客アンケートの自由記述欄には「そろそろ測量しろ」とだけ書かれた回答が17件あったとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北条まなぶ『画像掲示板における増幅表現の系譜』インターネット文化研究 Vol.12, No.3, pp.41-68, 2014.
- ^ 佐伯倫子『匿名空間の輪郭と笑い』情報社会学評論 第8巻第2号, pp.115-139, 2012.
- ^ Margaret A. Thornton, "Oversized Semantics in Early Meme Circles," Journal of Digital Folklore, Vol.7, No.1, pp.22-49, 2015.
- ^ 小寺真吾『盛り加工の民俗誌』東京創元社, 2016.
- ^ 高瀬一彦『視覚過剰の倫理』岩波書店, 2018.
- ^ Evan R. Keller, "From Augmentation to Awe: The BKM Transition," Media Anthropology Quarterly, Vol.19, No.4, pp.201-233, 2017.
- ^ 田中芽衣『ニコ動時代の誇張テンプレート』青弓社, 2013.
- ^ 渡辺精一郎『比較文化としての巨大化表現』国際比較文化研究 第21巻第1号, pp.7-31, 2011.
- ^ Aiko M. Feldman, "Gravity-Defying Visual Humor in East Asian Boards," Studies in Internet Humor, Vol.5, No.2, pp.88-104, 2019.
- ^ 中村悠介『大きさの政治学』みすず書房, 2020.
外部リンク
- ネットミーム年表アーカイブ
- 匿名掲示板文化資料室
- 視覚誇張研究センター
- 盛り表現辞典オンライン
- 深夜画像編集史プロジェクト