禁書「NO.31 あああ ここから出して」
禁書「NO.31 あああ ここから出して」(きんしょ の じゅうさん あああ ここからでして)は、の都市伝説の一種である[1]。『禁書』と呼ばれる黒装丁の冊子が、特定の読み上げ手順とともに“出口のない状態”を呼び込むとされる[1]。
概要[編集]
この都市伝説は、夜間の公共施設や学校裏の書庫で目撃されたという噂が中心となっている。噂では、禁書「NO.31」はページ番号ではなく、叫び声の回数と関係づけられているという話である。
伝承によれば、表紙には「NO.31」とだけ印字され、本文の最初の行に「あああ ここから出して」と短い反復が記されていると言われている。さらに、読む者がその一文を“正しい息継ぎ”で言い終えると、読後に金縛りに似た恐怖を伴う出没が報告されたとされる[2]。
全国に広まったきっかけは、匿名掲示板に投稿された「目撃談が編集されるたびに文言が変わっていく」というマスメディア風の体裁にあるとされる。噂が噂を呼び、学校の怪談としても取り込まれたという話である[3]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は、昭和末期に設立されたとされる“保管教育機関”に求められる。具体名としての海沿いにあったと語られる「公文書適正保全センター(通称:適保センター)」が挙げられることが多いが、実在性は確認されていない。
伝承では、そこに保管されていたのは「危険情報を隔離するための紙の箱」であり、NO.31は箱の鍵穴と同じ径の“頁”として設計されたとされる。正体は書物ではなく、音声反射を利用する装置だとする説があり、起源の年としてはとされることがある[4]。
また、図書館司書の民間研修資料とされる“無音章”が、NO.31の読解手順に影響したという噂の系譜が見られる。無音章では、ページをめくるたびに「息を数える」ことが推奨されていたとされ、あああ ここから出してはそのカウントの語尾を兼ねると語られた。
流布の経緯[編集]
全国に広まったのはからにかけての、学校の裏掲示板と深夜番組が交差した時期だとされる。噂では、最初に広めたのは“廃館の見回り員”を名乗る人物で、目撃談として「閲覧禁止の扉の前で、叫び声が紙の上に乗った」などと書き込んだという話である[5]。
その後、マスメディアが「禁書のカウント実験」として“検証”を試みたとされるが、実際には編集で文章が変質していった。結果として、「あああ」が二回のバージョン、三回のバージョン、さらには母音が別のものにすり替わるバリエーションが流布したと噂された。
一部のネット文化では、禁書NO.31を“儀式テンプレ”として扱い、恐怖を楽しむブームが起きたとされる。ところが、恐怖の報告が増えると、今度は「読んだ者だけが見る」といった言い伝えが強化されたという経緯が語られている。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
伝承に出てくる人物像は、だいたい三系統に分けられる。第一は「整理員」で、棚卸しの夜に出没した禁書に気づいたとされる。目撃談では、整理員が紙を開いた瞬間に空調が止まり、耳の奥で“出口を探す音”だけが鳴ったと記されている[6]。
第二は「読書係の生徒」で、学校の怪談として半ば儀式化された存在である。と言われているのは、チャイムの鳴る直前に「NO.31を縦読みではなく横読みで見ろ」と先輩が言った、という話である。全国の学校で“禁書を開くな”という校内ルールが強まった一方、噂が噂を呼び、禁書を確かめるための集まりが生まれたとされる[3]。
第三は「声を止めた者」で、禁書を開くのではなく、本文の最初の「あああ」に近い声を遮ってしまった場合にだけ“正体”が変わるという。出没は本の周辺ではなく、読者の息遣いの中に入り込むとされるため、妖怪めいた説明が加わったという話である。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
禁書「NO.31」は細部で恐怖の強度が変わるとされる。たとえば、表紙の印字「NO.31」が黒インクでにじむ版では“パニックが遅れて来る”と噂され、逆に金色の版では“恐怖が先に口に出る”と目撃談に書かれたという[2]。
派生バリエーションとして、最も多いのは文言の微変化である。「あああ ここから出して」が「あああ ここからでて」「あぁ あぁ 出して」へと変わっていくと言われている。これは、投稿者がそれぞれ自分の家の方言で“出して”を言い換えたため、マスメディア的に編集された結果だとする説がある。
さらに、NO.31の“数字”が鍵穴や本棚の扉番号に見立てられ、の古書店で発見されたという「NO.31-扉13版」なる派生も語られる。とはいえ、同じ伝承を追跡すると、出没場所が毎回微妙にズレるため、正体は書物より“場所の記憶”に宿るとする説が有力とされる。なお、数え方が「31回目で出してと言え」という怪談もあり、実際に数えないと金縛りが“ただの眠気”になるという逆転の噂もある[7]。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法は、禁書を見つけた状況によって分岐する。第一に、目撃された場所が学校なら、体育館裏の倉庫ではなく、にあるとされる“文書返却口”へ持ち込むことが推奨される。これは実在の施設に似た名前を使うことで、恐怖の誘導を無効化できるとする噂である[6]。
第二に、禁書を開いてしまった場合は、本文の「あああ」を“口で言わずに鼻で数える”とされる。怪談では、声にした瞬間に出没が始まり、鼻の呼気なら出口が作られずに済む、と言われている。ただし、この方法は成功率が低いともされ、失敗するとパニックと同時に紙が冷たくなる目撃談がある。
第三に、インターネットの文脈では「NO.31を他人にコピペせず、必ず自分で最終行を書き換えて閉じろ」が流行した。噂では、引用された文章は“読まれた回数分だけ強化される”とされるため、ネット拡散が恐怖を増幅するブームの反動として生まれた対処だと言われている[5]。
社会的影響[編集]
禁書NO.31の噂は、学校の安全指導に間接的な影響を与えたとされる。噂の拡散により、図書館の閉架に“音声禁止”の貼り紙が増えたという目撃談があり、実際に施策としては「声を伴う朗読を控える」旨の運用が一部で導入されたと報じられた、とする人もいる[8]。
また、地方の自治体で“深夜閲覧の監視”が強化されたとされるが、NO.31が直接の原因だったかは不明である。とはいえ、恐怖の文脈がメディアを通って語られることで、閉鎖空間そのものが不気味に捉えられるようになった点が指摘されている。
ネット文化では、禁書NO.31を題材にした“声なし怪談動画”が出回り、怪談と娯楽の境界が揺れた。妖怪や怪談の切り抜きが増える一方、「実験ごっこ」が危険だという批判も起き、結果として“都市伝説の扱い方”に関する議論がネット上で定着したという。
文化・メディアでの扱い[編集]
禁書NO.31は、テレビの都市伝説特集、ポッドキャスト、学校配布の注意喚起パンフレット風のコラージュ画像など、多様な形式で扱われたとされる。マスメディアは“検証”を掲げたが、実際には放送時間に合わせて内容が短縮され、本文の「ここから出して」だけが強調される編集が繰り返されたと言われている。
文化的には、言葉そのものが恐怖装置になるという発想が広がった。と言われているのは、「読み上げるほど出口が遠ざかる」という論理が、当時のネットスラングと噛み合い、ブームを加速させたからだとされる。とくに若年層では、“出口”の比喩がメンタル不調や閉塞感に連想され、出没と自己観察が結びつけられた面もある[3]。
一方で、作品化の際に“原文を改変しない”というルールが語られることもあったが、実際には派生バリエーションが先に独り歩きした。つまり、正体は禁書そのものではなく、媒体が生み出す恐怖の形だったのではないか、という解釈が後から出てきたとされる。
脚注[編集]
参考文献[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山田静馬「禁書番号と音声反射:ネット噂の編集力」『怪談研究年報』第12巻第3号, pp. 41-58, 2002.
- ^ 佐藤祐介「“あああ”の語彙学的恐怖:都市伝説における反復表現」『日本語怪奇論叢』Vol.7 No.1, pp. 9-27, 2004.
- ^ Lena K. Morrison「Transmission Delays in Copy-Pasted Urban Legends」『Journal of Folklore & Media』Vol.18 No.2, pp. 112-135, 2006.
- ^ 鈴木麻衣「閉架の“声禁止”は誰が決めたか:学校運用の記録」『学校文化史研究』第5巻第2号, pp. 77-96, 2011.
- ^ 田中尚斗「公文書適正保全センターをめぐる誤認譜」『地域資料の怪』第2巻第1号, pp. 55-73, 2013.
- ^ 藤原玲奈「鼻で数える儀式と金縛りの相関:噂データの再構成」『臨床語りの民俗学』Vol.3 No.4, pp. 201-220, 2015.
- ^ Mikhail Petrov「Silent Invocation and Textual Cursing」『Proceedings of the Imaginary Conference on Semiotic Threats』pp. 1-16, 2018.
- ^ 河合友紀「都市伝説の編集者は誰か:マスメディア風の脚色の分析」『メディア神話学』第9巻第1号, pp. 33-60, 2020.
- ^ 編集部「禁書「NO.31」特集:再現実験の収録ログ」『深夜の館TVガイド』第1号, pp. 12-19, 2000.
- ^ 西脇一「戸棚番号と出口の記憶」『未確認動作学』第6巻第3号, pp. 88-101, 2007.
外部リンク
- 禁書NO.31 文字起こしアーカイブ
- 学校の怪談データベース(非公式)
- 都市伝説編集研究室
- 深夜書庫目撃談コレクション
- 無音章(伝承メモ)