秒針探索記
| タイトル | 秒針探索記 |
|---|---|
| 画像 | SecondhandChronicle_boxart.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北米版パッケージイメージ |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム、探索型RPG |
| 対応機種 | クロノワーム、ルミナチューブ・アーカイブ |
| 開発元 | ルミナス・オートマタ社 第二制作室 |
| 発売元 | 桜時電子工房 |
| プロデューサー | 西園寺 恒一郎 |
| ディレクター | 藤堂 ミドリ |
| 音楽 | 辻井 晴臣、M. R. Vance |
| シリーズ | 輪廻迷宮シリーズ |
| 発売日 | 2003年11月21日 |
| 対象年齢 | 12歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計187万本 |
| その他 | 通称は『秒探』。キャッチコピーは「一秒ずつ、世界をほどけ。」 |
『』(びょうしんたんさくき、英: 、略称: )は、にのから発売された用。『』の第1作目である。
概要[編集]
『』は、と呼ばれる迷宮都市を舞台とした作品で、プレイヤーは兼として操作する。ゲームシステムの特徴として、画面右下に常時表示される「秒針盤」により、行動の遅延が実時間の単位で記録される点が挙げられる。
本作は、がに立ち上げた社内企画「逆行する探索ゲーム」の流れをくみ、当初は教育用ソフトとして構想されたが、開発途中でへと大きく変質したとされる。なお、発売当時の販促資料には「シリーズ一作目にあたる」と記されていたが、のちにスタッフの証言により、実際にはから番号だけ繰り上げられたことが判明している[1]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
プレイヤーはと呼ばれる装置を用いて、敵や仕掛けの「時間のずれ」を撃ち抜く。これにより、通常のとは異なり、HPよりも「遅延値」が戦闘の成否を左右する。遅延値は刻みで蓄積され、一定値を超えると主人公の影だけが先に移動し始めるという奇妙な現象が起きる。
また、地形上のは踏むたびに回転方向が変わり、連続して3回以上同じ床を踏むとマップ全体のBGMが半音ずれる。この仕様は当初バグと見なされたが、後に「探索の緊張感を高める演出」として正式採用された。
戦闘[編集]
戦闘は見下ろし型の形式で、敵弾は直線ではなく「時系列に沿って曲がる」ように見えるのが特徴である。ボス戦では、敵の名前の下に「残り寿命」という独自ゲージが表示され、これを削ることで弱体化する。
中でも有名なのが戦で、ゲーム内で最も長いとされるの無敵演出が挿入される。ここでは攻撃そのものよりも、プレイヤーが何回「待つ」を選択するかでエンディング分岐が変化し、攻略本の執筆班が最初に匙を投げた箇所として知られている。
アイテム[編集]
アイテムは「拾う」よりも「発見したことにする」という表現が近い。代表的なものに、使用するとセーブデータの一部が1年前に戻る、装備すると敵の弾幕がやや礼儀正しくなる、さらに内の一部店舗限定で配布されたがある。
このうちは初回特典として5,000個のみ製造されたが、実際には4,873個しか配られていない。残る127個の所在は不明であり、公式は「倉庫の時計が止まっていたため」と説明している。
対戦モード[編集]
対戦モードは最大4人のと2人対戦に対応し、プレイヤー同士が同じ盤面で「どちらが先に正しい現在時刻に到達できるか」を競う。オンライン対応は限定的で、発売当初は経由でのみ可能であった。
なお、対戦時に稀に出現するは、開発資料では「観測用の飾り」とされていたが、対戦コミュニティではこれを見た者は高確率で回線が不安定になると語られている。要出典。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、1日1回だけ遊べる「静止の書斎」が用意されている。ここでは敵が一切出現せず、代わりに棚から落ちる本の順番を推理して物語を補完する形式になっている。
このモードは当初、地方展示会向けのデモとして作られたが、予想外に評価が高く、のちの版では本編よりも長いの追加章として再構成された。
ストーリー[編集]
物語は、の地下にある旧の遺構から始まる。主人公のは、故障した塔時計を修理する依頼を受けるが、その内部で「1秒だけ過去に戻れる穴」を発見し、以後、都市全体の時間が少しずつ分解していく現象に巻き込まれる。
中盤では、失踪した姉が実はの管理者であり、都市の分針を逆回転させることで市民の記憶を保存していたことが明らかになる。しかし、記憶の保存容量はに達しており、それ以上の出来事を保持できないため、登場人物の多くが「昨日の自分」を名乗り始める。
終盤、主人公はで「最後の一秒」を巡る裁定に挑むが、選択肢の一つを選ぶとエンディングのテロップが巻き戻され、同じスタッフロールが2回流れる。これが発売当時、最も美しい不具合として雑誌で取り上げられた[2]。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
は本作の主人公で、年齢はとされるが、作中で3回ほど誕生日を迎えるため、実際の年齢は不明である。武器はとで、探索中はメモ帳に敵の出現間隔を手書きする癖がある。
彼は寡黙な人物として描かれる一方、会話選択肢で「時刻表が好きだ」を選び続けると急に饒舌になる。開発者の証言によれば、この分岐はプログラム上は存在しないはずだったが、テスト用キーボードのが偶然押され続けたことで実装されたという。
仲間[編集]
仲間キャラクターには、機械鳥、修道士、都市記録官がいる。特にミナツは、プレイヤーが迷子になるたびに前方へ飛び、マップの未踏部分をだけ表示する能力を持つ。
藍川しずくは、全編を通じて最も多くの台詞を持つが、半分以上が「ここで記録してはいけない」である。この台詞数の多さから、ファンの間では彼女が真の主人公ではないかという議論が長年続いている。
敵[編集]
敵勢力はと呼ばれ、都市の時間を「遅らせる」ことで永遠の統治を目指す組織である。幹部には、、などがおり、いずれも肩書きが妙に事務的である。
最終ボスのは、公式設定では「都市の地下で育った伝説生物」とされるが、取扱説明書の隅には「本来は配管点検用ロボットの誤登録」と書かれている。なお、この記述は初版のみで、改訂版では黒塗りされている。
用語・世界観[編集]
作中の世界は、1日の長さが人によって異なるで成り立っている。市民は生まれた日から「自分の1日」が少しずつずれていくため、朝に起きた者が夜の会議へ先に到着することもある。
は都市を何層にも覆う見えない地層であり、地下鉄、法廷、郵便局、書庫の順に濃くなると説明される。開発段階ではの古い地図を参考にしたとされるが、実際には市販の時計分解図を拡大印刷しただけだったという説もある[3]。
開発[編集]
制作経緯[編集]
企画は、ルミナス・オートマタ社の社内公募「奇妙なRPG案」から生まれた。最初は「時計を直すだけの退屈なゲーム」と見なされていたが、プロトタイプ版で敵の発射した弾が毎回1秒ずつ遅れて飛ぶことが発見され、これがそのまま中核システムになった。
制作会議では、ディレクターのが「時間の敵は時間で倒すべきである」と発言し、以後、社内ではその一言が便利な免罪符として使われた。なお、会議録には2時間にわたり「秒」と「針」の書き間違いを修正していた記録が残る。
スタッフ[編集]
主要スタッフは、プロデューサーの、ディレクターの、シナリオの、メインプログラマーのである。音楽担当にはと海外作曲家のM. R. Vanceが起用され、前者が旋律、後者が実在しない秒針音を作成したとされる。
また、グラフィック班には当初11名が配属されたが、最終的に「時計文字盤の針先を描きすぎたため」3名が別部署へ異動した。開発スタッフの実数については資料ごとに差があり、13名説と16名説が併存している。
音楽[編集]
音楽は、機械音と弦楽を重ねた「歯車室内楽」と呼ばれる様式で統一されている。中でもタイトル曲『』は、ゲーム発売から後にテレビ番組で使用され、逆輸入的に知名度を上げた。
サウンドトラック『』は全で構成され、収録曲「0:59:60」は1トラックであるにもかかわらず再生時間がある。これはマスター音源の再生ソフトがうるう秒を認識できなかったためと説明されている。
他機種版・移植版[編集]
発売後、に版が発売され、背景演出の一部が高解像度化された。続くには向けの短縮版が配信され、全6章のうち第4章だけがなぜか完全収録された。
その後、に対応版が配信されたが、秒針盤の表示位置が画面中央に寄りすぎてプレイしづらいとして、購入者の約3割が設定を変更したとされる。さらにには海外向けに名義で再配布され、ようやく英語圏でも「hand」が人の手なのか時計の針なのかで議論が起きた。
評価[編集]
本作は発売初週でを販売し、年末商戦では累計を突破した。最終的には全世界累計に達し、同社の看板作となったことで、社内では「秒針でミリオンセラーを記録した」として表彰されている。
評価面では、の審査委員会で「意味はよく分からないが記憶に残る」と評され、創作部門の特別賞を受賞した。また、発売から3か月後のアンケートで、購入者のが「続編ではなく、同じ時計をもう一度直したい」と回答したという。
関連作品[編集]
続編として、前日譚としてが企画されたが、いずれも開発途中で頓挫した。後者はストーリーよりも「分針が主役になると地味すぎる」という社内意見で棚上げされたとされる。
また、に向けた企画書『』が存在したが、毎話の尺がしか合わないため、最終的に朗読CDに変更された。これはメディアミックス史上でもかなり特殊な例といえる。
関連商品[編集]
攻略本『』は、マップよりも敵の生活リズムを中心に解説した異色の一冊で、全にもかかわらず重要情報の半分が欄外に記されている。書籍版『』は観光ガイド風の体裁を取りながら、実際にはボス戦の再現手順が半ページで説明されている。
そのほか、、、などの関連グッズが発売された。特には、袋を開けてから以内に食べると硬くならないという触れ込みで販売されたが、実際には最初からかなり硬かった。
脚注[編集]
注釈
1. 企画書の版数に関しては異説がある。 2. 公式パンフレットではこの演出を「時差型演出」と呼んでいる。 3. 開発資料の一部は社外流出したとされるが、現物は確認されていない。
出典
- もっとも、これらの出典はいずれも後年の再編集版に基づくものであり、初版の記述とは一致しない箇所が多い。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 西園寺 恒一郎『秒針探索記 企画成立史』桜時電子工房出版部, 2004.
- ^ 藤堂 ミドリ『時計が先か、弾が先か』ゲームデザイン研究, Vol. 12, No. 4, pp. 44-61, 2005.
- ^ 久我山 透「可変日制の物語構造」『デジタル遊戯学紀要』第8巻第2号, pp. 103-129, 2006.
- ^ M. R. Vance,
外部リンク
- ルミナス・オートマタ社 公式年表
- 秒針探索記 ファンアーカイブ
- クロノワーム博物館 デジタル展示
- 時間層保存会 資料室
- 桜時電子工房 旧作ページ