第五人格
| タイトル | 第五人格 |
|---|---|
| 画像 | 第五人格のロゴ(架空) |
| 画像サイズ | 240px |
| caption | 霧の処刑場を背景にした“第五の印章”[2] |
| ジャンル | 非対称協力対戦(救出×追跡) |
| 対応機種 | P-Cloud VR / Switchio Lite / PC(DGPクライアント) |
| 開発元 | 幽憐工学社 |
| 発売元 | 幽憐工学社(パブリッシャー兼任) |
| プロデューサー | 天童 暁祐(たんどう ぎょうすけ) |
| ディレクター | 李 瑠霜(り るそう) |
『第五人格』(だいごじんかく、英: Dai-Go Personhood、略称: DGP)は、[[2021年]][[7月23日]]に[[日本]]の[[幽憐工学社]]から発売された[[P-Cloud VR]]用[[非対称協力対戦ゲーム]]。『[[仮面の記録]]』シリーズの第5作目である[1]。
概要[編集]
『第五人格』は、霧に沈む“記録施設”を舞台に、複数人の[[囚われ人]]側と、単独の[[看守]]側に分かれて対戦する非対称協力対戦ゲームである[1]。
本作は、各プレイヤーが「人格の層」を切り替えるという独特の理念で設計されており、勝敗は単なる撃ち合いではなく、救出ゲートの起動手順と追跡側の“記録改竄”能力によって決まるとされる[3]。
開発当初、公式プロモーションでは「第五人格とは、同じ人間でも五度目に“説明される側”へ回る現象である」と説明され、後にこの比喩がゲーム内メカニクスに変換された経緯が報告された[4]。なお、この説明は当時の学会関係者により“比喩の暴走”と批判されてもいる[5]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
プレイヤーは救助側の[[囚われ人]]または追跡側の[[看守]]として操作する。囚われ人は試合中に「人格スイッチ(人格I〜V)」を切り替えることができ、人格が切り替わるたびに移動速度・聴覚範囲・解読成功率・救出時の“反証”挙動が変化する仕様である[6]。
看守側は“記録装置”を用いて、地形上の痕跡を再構成する。これにより、同じ場所でも匂い(アラート)や音の到達が変わるため、プレイヤーの記憶と観測の両方が試されるとされる[7]。
特に第五人格(人格V)は、一定条件を満たした囚われ人のみが短時間だけ扱えるモードである。条件は「解読完了に至らなかった暗号文が3枚以上残存していること」「救出ゲートの反転が1回以上発生していること」「看守の“追跡熱量”が時間帯係数(Z-係数)7以上であること」と、妙に具体的に設定されている[8]。
戦闘・アイテム・対戦モード[編集]
囚われ人の攻撃力は原則として持たない一方で、アイテムとして[[糸の栞(しおり)]]、[[曇り眼鏡]]、[[沈黙の蝋]]などの“観測阻害具”が用意されている。糸の栞は足音の位相をずらし、曇り眼鏡は看守の記録装置の補正計算を一時的に誤差化させると説明される[9]。
対戦はラウンド制で、囚われ人側は救出ゲートを合計4か所起動することで勝利となる。ただし、各ゲートには「起動率」が設定され、起動率が100%に達する前に人格Vが発動すると“勝ち筋が二重化”する仕様が入れられた[10]。このため、熟練者ほどギリギリを攻める傾向が見られたとされる。
オフラインモードでは、対戦ではなく“記録改竄の訓練”として、同じマップが12の観測バイアス(視界・音・匂い)で再生成される。開発者コメントによれば、オンラインで起きた誤認をオフラインで学習できるよう設計したという[11]。
ストーリー[編集]
ストーリーは、失踪した人々の「説明不能な記録」を回収するため、プレイヤーが“第三調査官補助”として記録施設に入る場面から始まるとされる[12]。
施設の管理者は当初[[館長]]と呼ばれていたが、作中の資料が読み解かれるにつれ、館長が“人格の分類法”をめぐる学術機関から派遣された連絡役であることが示唆される。この分類法の中心にあるのが第五人格であり、説明されなかった感情が最後に“人格Vとして返ってくる”と描かれる[13]。
終盤では看守側が「救出は救出ではない。救出とは“矛盾の持ち越し”だ」と語る場面があり、プレイヤーの行動がその矛盾をどれだけ正確に次の世代へ繋ぐかに焦点が当てられる。なお、この台詞は後のファン翻訳で“法医学的な詩”と称され、公式もこれを肯定する姿勢を見せた[14]。
登場キャラクター[編集]
囚われ人側には、解読に長けた[[ルミナ・カナリア]]、観測阻害具を巧みに扱う[[静脈の料理人]]、人格切替のタイミングに癖がある[[野火の保育士]]などが登場する[15]。
看守側の代表としては、記録装置に“唱題”を仕込む[[聖霧(せいむ)]]、数理的追跡を好む[[渦原]]、そして稀にマップ全体の温度を変える[[霜点監督]]が挙げられる[16]。特に霜点監督は「追跡熱量が時間帯係数Z-係数7に達したとき、足元の影が“本来の座標”からずれる」能力で知られたとされる[8]。
個々のキャラクターは背景設定が似通っているようでいて、実際には“第五人格の定義”に対する解釈が異なる点が強調される。この差が、同じ行動でも結果が変わる“プレイヤー物語の分岐”を生む設計になっていると説明されている[17]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、“人格”は生物学的なものではなく、観測結果が積み上がったときに現れる仮構成要素として扱われるとされる[18]。
施設内で用いられる重要用語として[[反転ゲート]]、[[解読残骸]]、[[記録改竄]]、[[追跡熱量]]などがあり、いずれもゲーム内での数値(パーセントや係数)と結び付いている。たとえば[[反転ゲート]]は、起動率が50%未満のときは“逆方向の増幅”として働き、50%以上では“矛盾の蓄積”として振る舞うと説明される[10]。
また、第五人格(人格V)には共通の象徴があり、「五弁の傷痕」と呼ばれる紋様がプレイヤーのUI周辺に一瞬だけ表示される仕様になっている[19]。この紋様がどこから由来するかは作中で明言されないが、開発資料では「古い刑具の図面を“ゲーム用に焼き直した”」とだけ記録されているという指摘がある[20]。
開発/制作[編集]
制作経緯[編集]
幽憐工学社は、当時流行していた“対戦の勝ち筋の最適化”に反発する形で、本作を「観測のズレを楽しむゲーム」として立ち上げたとされる[21]。
企画の核は、心理学・法工学・記録媒体研究の三分野を、ゲームデータ構造へ直結させる試みであった。プロデューサーの[[天童 暁祐]]はインタビューで「人格を抽象にしたかったのではなく、抽象が抽象のまま勝てる設計にしたかった」と述べたとされる[22]。
開発チームは試作段階で“第五人格”を四つ目のモードとしていたが、テストプレイで「四度目の切替は慣れすぎる」という意見が多数出たため、最終的に5番目へ繰り上げたという経緯が残っている[23]。この調整が、後年に「偶然の発明」と呼ばれる要因になったと批評された[24]。
スタッフ[編集]
ディレクターは[[李 瑠霜]]であり、UIの文言設計を担当したライターには[[花嶋 透]]が名を連ねる[25]。プログラミングは[[鶴見 亜紗]]率いる“観測補正班”が行い、マップ生成は[[壱岐 宗介]]が中心となって行ったと報じられた[26]。
なお、開発中に仕様変更が繰り返された結果、パッチノートが計[[3120]]行に達したことが当時のコミュニティで話題となった。特に「Z-係数の閾値は当初8だったが、7に下げることで演出が“間に合う”ようになった」と記された箇所は、後の検証記事で“ゲーム側の詩情”と評された[8]。
音響設計は[[澤野 礼音]]によって行われ、囚われ人の足音は人間の歩行ではなく“紙を裂く摩擦音”から生成されたという。これが過度にリアルであるとして、音量制限の議論にも繋がったとされる[27]。
音楽[編集]
サウンドトラックは『霧録(むろく)コンチェルト』の題で、全24曲+ボーナストラック3曲で構成されるとされる[28]。
第5人格の発動時には、通常のBGMから一度だけ“停止小節”が挿入され、プレイヤーの心拍推定に同期してテンポが微調整される演出が入れられた。同期の基準値は“平均歩幅”とされ、開発者ブログでは「測れるところは測る」と豪語されたという[29]。
また、テーマ曲である[[「五弁の傷痕」]]は、歌詞の一部が後にグレーな表現として論じられた。とはいえ、当時の編曲者が「言葉は符号であり、符号は音になる」と説明したため、論争は沈静化したと見られている[30]。
他機種版/移植版[編集]
家庭用への移植は当初遅れたが、P-Cloud VRの観測補正ロジックを、Switchio Lite向けに“軽量化疑似人格モデル”へ置換することで対応したとされる[31]。
2022年にはPC版の最適化アップデートが配信され、入力遅延が平均[[13.4]]ms改善したと公式に発表された。ただし同時期に、一部の環境では第五人格のUI表示が[[0.7]]秒遅延する不具合が確認され、補填として特別スキンが配布された[32]。
オフライン版も同年に整備され、訓練モードの“12バイアス再生成”が全難度で解放された。ところが一部ユーザーは、訓練モードの挙動がオンラインの“学習効果”に近いと感じ、単なるオフラインではなく“準オンライン”だと主張した[11]。
評価(売上)[編集]
発売初月で、全世界累計が[[118万]]本を突破したとされる[33]。続く3か月でミリオンセラーへ到達し、日本ゲーム大賞の関連部門で話題を呼んだと報じられた[34]。
一方で、ゲームデザインの評価は割れた。非対称対戦のストレスが強いという声がある反面、「人格切替が読み合いの媒体になった」という肯定も多かった[35]。
メディアのレビューでは、操作性や演出の“細かさ”が称賛される傾向がある。特に、第五人格の発動条件を“覚える”ことで勝率が安定する点が、ゲーマー向けには好意的に受け止められたとされる[8]。ただし一般向けには「条件が説明されすぎて怖い」との批判があり、ここが作品のファン層を分けた要因と指摘されている[36]。
関連作品[編集]
本作は[[メディアミックス]]として、テレビアニメ『霧録の代理体(だいりたい)』がテレビ放送されたほか、記録風小説『解読残骸の章』が刊行された[37]。
また、漫画『反転ゲート通信』では、ゲームよりも先に“第五人格の定義”が語られる構成になっているとして注目された[38]。
さらに、関連シナリオとして「第零回観測訓練」がイベント形式で実装され、ゲーム内のデータを改竄する“紙芝居UI”が追加された。これらはファンの検証により、公式設定が一部アニメと食い違う箇所があることが指摘されている[39]。
関連商品[編集]
攻略本として『第五人格 完全反証ガイド(上巻・下巻)』が発売された。上巻では囚われ人の人格スイッチ手順が、下巻では看守の記録改竄手順と、Z-係数の運用表が収録されたとされる[40]。
書籍としては、学術風の体裁をとった『記録施設の倫理:第五人格の読み方』が登場し、内容はゲーム開発資料を“再翻訳”したものだと評された[41]。
また、音楽関連では『霧録コンチェルト ピアノ・スコア集』が流通し、演奏会でも五弁の傷痕モチーフが扱われたと報告されている[42]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 李 瑠霜「第五人格における人格スイッチ設計の思想」『ゲームシステム研究誌』第12巻第3号, pp. 41-58, 2021.
- ^ 天童 暁祐「観測のズレを勝利へ接続する方法」『インタラクティブ・エンターテインメント年報』Vol.7 No.1, pp. 9-27, 2022.
- ^ 澤野 礼音「霧録コンチェルトの同期設計:心拍推定との相関」『サウンド再現技術レビュー』第5巻第2号, pp. 101-119, 2021.
- ^ 花嶋 透「“五弁の傷痕”の文体分析:歌詞が符号となる条件」『メディア表象学研究』第18巻第4号, pp. 233-247, 2022.
- ^ 鶴見 亜紗「記録改竄アルゴリズムの軽量化:Switchio Liteへの移植報告」『コンシューマー最適化論叢』Vol.3, pp. 77-95, 2022.
- ^ 壱岐 宗介「12バイアス再生成の実装と訓練モードの設計指針」『空間生成工学会誌』第9巻第1号, pp. 12-33, 2021.
- ^ 荒井 朔「Z-係数の運用と体験の差:コミュニティ検証の系譜」『デジタル文化批評』第2巻第8号, pp. 51-70, 2023.
- ^ Game Industry Review編『Dai-Go Personhood: A Field Guide to Fifth Identity』Frostgate Press, 2022.
- ^ 幽憐工学社『第五人格 設計資料集(限定配布)』幽憐工学社, 2021.
- ^ 日本ゲーム大賞委員会『受賞作品の社会的影響:非対称協力対戦の事例』第6号, pp. 1-40, 2022.
外部リンク
- 霧録公式記録庫
- 幽憐工学社サポートポータル
- 非対称対戦研究会
- DGP譜面データベース
- 第五人格用語辞典