美味しいカレーの作り方
美味しいカレーの作り方(おいしいかれーのつくりかた)は、の都市伝説の一種である[1]。2005年、に投稿され3日で削除された動画が発端とされ、同時期の凄惨な事件と結びつけて語られることがある[1]。
概要[編集]
「美味しいカレーの作り方」という名称は、伝承によれば“調理手順”の体裁をとりながら、視聴者の注意力や言語感覚をねじ曲げるという都市伝説であると言われている。噂の中心にあるのは、へ投稿されたとされる動画であり、画面上では普通の食材の切り方が紹介されているにもかかわらず、終盤になると内容が不気味な独白や反復へ切り替わったと目撃談が語られてきた。
また、この都市伝説には別称があるとされる。「カレー手順書」「甘い手口」「三日で消えるレシピ」などが挙げられており、検索しようとした者が“うまく見つからない”のではなく、“見つかると何かが残る”という言い方が多いのが特徴である。全国に広まったきっかけとしては、コメント欄で「思い出したくない」や「気味が悪い」といった短文が連鎖し、ブームと同時にパニックが発生した点が指摘されている[2]。
歴史[編集]
起源と投稿の経緯[編集]
伝承では、2005年ごろに内の小規模な作家コミュニティで“料理動画の読み上げ企画”が流行したことが起源とされる。そこでは、レシピのナレーションをあえて滑舌よく録り、視聴者の記憶に残るようにするのが流儀とされたが、ある編集担当と名乗る人物が「味の手順は、最後の一行で決まる」と主張し始めたと噂がある。
その「最後の一行」として投稿されたのが、問題の動画だといわれている。動画はへ「一般投稿枠」で登録されたとされ、目撃談ではタイトル以外に“香辛料の分量表”らしき画像が数秒だけ表示されたとも語られる。ただし、視聴者の記録媒体に残りやすい仕様ではあったが、投稿から3日で削除された点が最も語り継がれてきた。削除理由については、著作権ではなく“不適切な内容”とだけ告知されたとされるが、具体的な審査基準は不明であるとされる[3]。
さらに、同時期に起こった殺人及び死体損壊事件との関連が囁かれたとされる。噂では、動画の撮影場所がの廃校旧調理室に近い“という話”が出回り、撮影者の知人が「香りの演出が異常にリアルだった」と供述したという。しかし、真偽は定まっておらず、あくまで怪談として語られている。
流布と“検索してはいけない言葉”化[編集]
全国に広まった経緯は、ブーム期の掲示板文化と結びつけて語られることが多い。投稿削除の直後、視聴者がスクリーンキャプチャを試みたところ、画像が不自然にボケたり、レシピ部分だけが“別の文字列”へ変換されて見えたりしたという目撃談が相次いだと言われる。こうした現象が“正体”を示す証拠として扱われた一方で、実際にはデバイスのフォント差によるものだとする反論も存在したという。
ただし、噂はそこで終わらず、「『美味しいカレーの作り方』の語を検索すると、次に表示される動画が“同じ画面の焼き増し”に見える」と言われ、やがて検索回数と精神状態の相関が語られるようになったとされる。とくに“夜間に見た者だけが夢で匂いを再生できた”という噂が拡散し、教育現場の注意喚起では「閲覧ではなく記憶の混線を起こす」と表現されたとする伝承も残っている[4]。
その結果、2000年代後半のネット文化では、特定の単語を“検索してはいけない言葉”のカテゴリに入れる風習が広がり、この都市伝説もそこへ分類されたと語られた。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
伝承の中で“投稿者”として語られる人物像は、いずれも名が曖昧である。最初は「調理音声の編集に詳しい学生」と言われ、次に「放送字幕の整合性にこだわる編集者」と言い換えられ、最終的には「自分の声が食べ物に混ざるのを恐れていた男」といった怪談めいた表現へ発展したと言われている。
内容面では、動画は最初から最後まで家庭的な調理手順として進むが、途中で香辛料の分量が不自然に“語呂”を優先した数字に変わるとされる。噂では「玉ねぎは分炒めると“悲鳴の温度になる”」という言い方があり、次の行では「にんにくは秒、ただし黙って数える」とされていたという。さらに、終盤で「湯気が立つのは、煮込みではなく“説明の後”である」と断言する字幕が出ると、目撃されたと言われる。
正体については複数の説が並存している。「料理動画のふりをした自動再生による悪質編集」説もあるが、都市伝説としては“視聴者の記憶をカレーの匂いへ変換してしまう”とされるお化けの類型に分類されることがある。噂が噂を呼び、気味が悪いという感想だけで終わらず、恐怖とパニックが同時に語られるのが特徴である[5]。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとして、複数の“再投稿疑惑”が語られている。第一の型は「レシピのみが再現され、音声が抜け落ちているが、代わりにコメントが説明を補う」タイプである。第二の型は「開始5秒で画面が反転し、調理器具の配置だけが現実と逆になる」タイプとされる。
また、派生シリーズでは地域性が付与される傾向がある。例えばの掲示板では「粉の香りが強すぎるときは“砂糖を入れてはいけない”」という言い回しが確認されたとされるが、別の地域では「砂糖は入れる。ただし入れた瞬間に火を消す」と矛盾したルールが語られている。こうした齟齬は、派生動画が“焼き増し”ではなく“変形する手順書”として理解されていることの証左として扱われている。
さらに、動画の時間に関する伝承も増えたとされる。噂では、視聴時間が「ちょうど分秒」で止まると、次に見るページが料理番組ではなく“何も書かれていないレシピ帳”になると言われる。一方で、実際には視聴者側の通信遅延が原因だとする冷静な指摘もあるが、都市伝説としては「遅延であることこそが呪いの演出」とされ、納得されてしまう方向に進んだと言われている。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法は、見たくないのに見てしまう心理を利用した“儀式”として語られることが多い。最も広まったと言われるのは「途中で音量をにし、代わりに鍋の音だけを聞く」という方法である。これは、言葉そのものがレシピを侵食するという考えに基づくとされ、視聴者は鍋のふるえだけを頼りに回避しようとしたという目撃談がある。
次に挙げられるのは「コメント欄を読まず、投稿者名が表示される前にウィンドウを閉じる」という対処である。ただし、早すぎる閉じ方が逆に危険とされ、「閉じるなら回目の湯気の合図が出た後に」といった細かい条件が付くのが都市伝説らしい。全国に広まった理由として、こうした対処が“失敗しても笑える形”で語られ、実験ごっこのように共有された点が指摘されている[6]。
さらに過激な対処として、「カレーを作る必要はないが、代わりに別の匂い(酢やコーヒー)を強制的に嗅ぐと回復する」と言われた。これは怪談としての恐怖を和らげるための儀礼に近く、信じる側ほど真剣になり、パニックが逆に深まったとする語りもある。
社会的影響[編集]
社会的影響としては、まずメディア側の自衛行動が挙げられる。2005年当時、検索の自粛を促すような注意喚起が出回り、学校単位の“家庭でインターネット利用をする際のルール”が改訂されたとする言い伝えがある。ある教育委員会の報告書“らしき”文書が掲示板で引用され、「検索した単語の周辺に類似の映像が生成される」とする趣旨が書かれていたという[7]。
一方で、噂が過熱するにつれて、誤認や風評被害も生んだとされる。とくに同時期の凄惨な事件との関連が語られたことで、料理動画や台所関連の嗜好を“危険な前兆”として見てしまう動きがあったと言われる。冷静な見解では、因果は証明されておらず、都市伝説の符号合わせに過ぎないとされるが、マスメディアの切り取り報道では「怖い動画が事件を招いたのでは」といった見出しが独り歩きしたと指摘されている。
その結果、ネット文化では“怪談をネタとして消費する”流れが強まりつつも、逆に恐怖を煽る側面も残った。ブームの終盤では、動画タイトルだけで閲覧を促す行為が増え、検索してはいけない言葉というラベルがさらに強化されたとされる。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化的には、料理番組の“安心感”を逆手に取った都市伝説として扱われることが多い。「美味しそうな映像ほど危険」という類型が成立し、映像制作の界隈でも“手順の見せ方”が議論されたとされる。噂では、テレビの料理コーナーで調理音のBGMを差し替えたら視聴者のコメントが急に荒れた、という逸話も語られるが、裏付けはない。
また、脚本家の間では「レシピの数字が不吉な合図になる」という考え方が採用され、映画の一場面や小説の章タイトルとして“語呂の良い分量”が登場したとする説明が広まった。特にの文芸サークルでは、カレーに関する短編で「玉ねぎ7分」「にんにく11秒」「沈黙13秒」という定型が使われたという“伝承”がある。
ただし批判的な意見もあり、噂が実害をもたらす可能性を重視して、ネット上での再拡散を避ける呼びかけが増えたとされる。とはいえ、都市伝説は完全な禁止だけでは消えず、注意喚起自体が“見たくなる理由”として働くという皮肉が語られ、怪談としての寿命が長くなったと言われる。
脚注[編集]
参考文献[編集]
架空編集部『検索してはいけない言葉辞典(第2版)』インターネット怪談研究会, 2009.
風間錬太『ネット都市伝説の分量学——レシピと恐怖の相関』青葉出版, 2011.
Dr.エリナ・マルコフ『Online Deletions and Memory Distortion: A Case Study』Vol.3, pp.44-67, Digital Folklore Review, 2007.
佐伯紗和子『掲示板文化における拡散の力学』第4巻第1号, pp.12-39, 社会情報学雑誌, 2010.
カルロス・ベナビデス『“湯気”表象の半導体的誤読』pp.201-233, Journal of Culinary Hauntology, 2013.
田所恵理『ブーム期におけるパニック生成モデル』第18巻第2号, pp.88-104, メディア心理学紀要, 2014.
『家庭内ネット利用ガイドライン(試案)』第3稿, pp.5-9, 東京都教育委員会, 2006.
架空書店企画『削除された動画の後日譚』ライトニング文庫, 2008.
M.ハンナ『Deleted Content and Urban Legend Persistence』Vol.11, No.2, pp.77-99, Communications and Myths, 2012.
西条海人『カレーは安全か——不気味な調理手順の社会史』皐月書房, 2016.
(表題がやや不自然)『美味しいカレーの作り方——完全再現の手引き』レンタル怪談出版, 2005.
関連項目[編集]
脚注
- ^ 架空編集部『検索してはいけない言葉辞典(第2版)』インターネット怪談研究会, 2009.
- ^ 風間錬太『ネット都市伝説の分量学——レシピと恐怖の相関』青葉出版, 2011.
- ^ Dr.エリナ・マルコフ『Online Deletions and Memory Distortion: A Case Study』Digital Folklore Review Vol.3 pp.44-67, 2007.
- ^ 佐伯紗和子『掲示板文化における拡散の力学』社会情報学雑誌 第4巻第1号 pp.12-39, 2010.
- ^ カルロス・ベナビデス『“湯気”表象の半導体的誤読』Journal of Culinary Hauntology pp.201-233, 2013.
- ^ 田所恵理『ブーム期におけるパニック生成モデル』メディア心理学紀要 第18巻第2号 pp.88-104, 2014.
- ^ 【東京都教育委員会】『家庭内ネット利用ガイドライン(試案)』東京都教育委員会, 2006.
- ^ 架空書店企画『削除された動画の後日譚』ライトニング文庫, 2008.
- ^ M.ハンナ『Deleted Content and Urban Legend Persistence』Communications and Myths Vol.11 No.2 pp.77-99, 2012.
- ^ 西条海人『カレーは安全か——不気味な調理手順の社会史』皐月書房, 2016.
- ^ (表題が微妙におかしい)『美味しいカレーの作り方——完全再現の手引き』レンタル怪談出版, 2005.
外部リンク
- 怪談アーカイブ倉庫
- 削除動画ログ研究所
- 料理都市伝説フォーラム
- 検索注意喚起資料館
- 匿名掲示板史資料室